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「お墓が遠くてお参りに行けない」「自分の代で継ぐ人がいなくなる」——そうした事情から、墓じまいを考える人が増えています。厚生労働省の統計では、遺骨を別のお墓や納骨堂へ移す改葬の件数は2020年度の117,772件から2024年度には176,140件に増えました。結論から言うと、墓じまいは①家族・親族で方針を決める、②遺骨の行き先を決める、③お墓の管理者と相談する、④改葬の許可を受ける、⑤撤去して区画を返すという順番で進めると、もめごとや手戻りを防げます。この記事では、墓じまいの手順と費用の内訳、親族やお寺との話し合いのコツを整理します。改葬許可の申請書類の書き方は改葬の手続きで詳しく解説しています。
墓じまいとは:お墓を片付けて区画を返すこと
墓じまいとは、今あるお墓から遺骨を取り出して別の場所に移し、墓石を撤去して墓地の区画を管理者に返すことをいいます。法律上の用語ではありませんが、次の2つの手続きが組み合わさったものと考えると分かりやすくなります。
| 手続き | 内容 | 根拠・相手 |
|---|---|---|
| 改葬 | 遺骨を別のお墓や納骨堂に移す | 墓地埋葬法5条。遺骨がある市区町村長の許可が必要 |
| 墓所の返還 | 墓石を撤去し、区画を元に戻して返す | 墓地の使用規則・契約。管理者(寺院・霊園・自治体)との手続き |
墓地の区画は多くの場合「買った土地」ではなく、使用する権利を得ているものです。たとえば豊橋市の市営墓地は、不要になったら更地に戻して市に返還することを条件とし、返還時には永代使用料の半額を返すとしています。返還のルールや返金の有無は墓地ごとに違うため、使用規則を最初に確認しましょう。
墓じまいの進め方:7つの手順
| 手順 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 家族・親族と話し合う | 墓じまいをするか、遺骨をどこに移すかを相談 | お墓に眠る人と縁のある親族には、決める前に声をかける |
| 2. 名義と書類を確認 | 墓地の使用者(名義人)、使用許可証、納められている遺骨の人数 | 名義人が亡くなっていれば、承継の手続きが先に要ることがある |
| 3. 遺骨の行き先を決める | 新しいお墓、永代供養墓、納骨堂、樹木葬など | 改葬許可の申請に「改葬の場所」を書くため、先に決める |
| 4. 管理者・お寺に相談 | 墓じまいの意向を伝え、返還の手順と費用を確認 | 埋蔵の証明をもらう相手でもあるので、早めに丁寧に |
| 5. 改葬許可を受ける | 遺骨がある市区町村に申請し、改葬許可証を受け取る | 詳しくは改葬の手続き |
| 6. 遺骨の取り出しと撤去 | 閉眼供養などの儀式、遺骨の取り出し、墓石の撤去と区画の整地 | 石材店の指定があるか墓地に確認し、見積もりを比べる |
| 7. 納骨と返還の手続き | 新しい納骨先に改葬許可証を出して納骨。墓所の返還届を出す | 返金がある墓地では請求の手続きも |
遺骨を取り出してから納骨先を探すと、遺骨を長く自宅で預かることになりかねません。行き先を決めてから取り出すのが基本です。
誰が決めるのか:祭祀承継者と親族の話し合い
お墓は、預金などの遺産とは別のルールで引き継がれます。民法897条は、墳墓などの所有権は「祖先の祭祀を主宰すべき者」(祭祀承継者)が承継するとし、亡くなった人の指定、慣習、家庭裁判所の決定の順で決まると定めています。墓じまいの手続きを進めるのは、通常この祭祀承継者で、墓地の使用者でもある人です。改葬許可の申請者が墓地の使用者でない場合は、使用者の承諾書が必要になります(墓地埋葬法施行規則2条)。
法律上は祭祀承継者が判断できる立場でも、先祖のお墓には兄弟姉妹やおじ・おばも思いを持っています。話し合いでは次の点を伝えると、理解を得やすくなります。
- 墓じまいを考える理由(距離、体力、継ぐ人がいないなど)
- 遺骨の行き先の候補と、そこでお参りできること
- 費用の見込みと、誰がどう負担するか
- 親族が遺骨の一部を引き取りたい場合の対応(分骨)
費用の負担は法律で決まっていないため、話し合いで決めておくことが大切です。家族会議の進め方は相続会議の開き方も参考になります。
お寺との相談と離檀料のトラブル
寺院の墓地にお墓がある場合、墓じまいはそのお寺の檀家をやめる「離檀」を伴うことがあります。国民生活センターには、墓に関する相談が2025年度に1,077件寄せられており、最近の事例として次のようなものが紹介されています。
- 菩提寺に墓じまいを依頼したところ高額な離檀料を請求され、支払える金額でない上、規約などの定めもなく請求根拠が不明
- 遠方の寺院の永代供養墓から近くの霊園へ両親の遺骨を移したいが、寺院から高額な離檀料を請求され円滑に進まない
墓じまいの費用の内訳
墓じまいの費用は、お墓の大きさや立地、遺骨の数、行き先によって大きく変わります。公的な調査で確認できる全国的な相場はないため、ここでは内訳を整理します。
| 費用の項目 | 主な支払先 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 墓石の撤去・整地の工事費 | 石材店 | 区画の広さ、重機が入れるか、指定業者の有無。複数の見積もりを比べる |
| 閉眼供養などのお礼 | 寺院・宗教者 | 儀式の有無と内容は宗派やお寺の考え方による |
| 離檀に伴う支払い | 寺院 | 規約に定めがあるか、請求の根拠を確認 |
| 遺骨の取り出し・運搬 | 石材店など | 遺骨の数、納骨室の状態 |
| 新しい納骨先の費用 | 霊園・寺院・納骨堂など | 使用料、管理料、合祀までの期間 |
| 行政の手続き | 市区町村 | 改葬許可の手数料や証明書の取得費(自治体による) |
公営墓地では、返還時に使用料の一部が戻る場合もあります(豊橋市は永代使用料の半額。納骨堂は返金なし)。全体の見積もりは、撤去と納骨先の両方がそろってから比べると、総額の見通しが立ちます。
遺骨の行き先の選び方
遺骨の行き先は、お参りする人の住まい、継ぐ人がいるか、費用で選びます。
- 近くに新しいお墓を建てる:継ぐ人がいて、お墓の形を残したい場合
- 永代供養墓・納骨堂:継ぐ人がいない、または子に負担を残したくない場合(納骨堂・永代供養の選び方)
- 樹木葬:自然志向で、許可を受けた墓地に埋蔵する形
- 散骨・手元供養:お墓を持たない形。家族の理解と、自治体の取り扱いの確認が必要(散骨・樹木葬・海洋葬の違い)
遺骨を2か所以上に分けたい場合は、分骨の証明書が必要になることがあります。新しい納骨先の要件もあわせて確認しましょう。
墓じまいをせずに放置するとどうなるか
継ぐ人がいないまま管理料の支払いや連絡が途絶えたお墓は、縁故者のいない「無縁墳墓」として扱われることがあります。その場合、墓地の管理者は官報への掲載と1年間の立札による公告を経て、遺骨を合葬墓などに移す「無縁改葬」を行えます(同施行規則3条)。2024年度の無縁墳墓等の改葬は全国で3,006件でした。自分たちの意思で行き先を決めたいなら、元気なうちに方針を決めておくことが大切です(お墓の生前準備)。
よくある質問
墓じまいは親が元気なうちにしたほうがいいですか?
墓地の使用者である親が元気なうちなら、承諾書や名義の確認がスムーズで、親自身の希望も反映できます。親が亡くなった後に行う場合は、まず誰がお墓を継ぐ(祭祀承継者になる)かを決め、墓地の使用権の承継手続きを済ませてから進めるのが一般的な順番です。
石材店は自分で選べますか?
墓地によります。豊橋市の市営墓地のように「指定の石材店はありません」としている墓地もあれば、寺院墓地や民営霊園では工事業者が決まっていることもあります。管理者に確認してから見積もりを依頼しましょう。
仏壇も一緒に片付けたほうがいいですか?
墓じまいと仏壇の整理は別の手続きですが、実家じまいとあわせて考える人も多くいます。仏壇の扱いは仏壇じまい・位牌の整理で解説しています。
墓じまいの費用は相続税で差し引けますか?
国税庁は、墓石や墓地の購入・借入の費用を、遺産から差し引ける葬式費用に含まないとしています。葬式費用として認められるのは、葬式や葬送に際して行う火葬・埋葬・納骨などの費用です。後日行う墓じまいの費用を差し引けるとは考えず、相続税の申告が必要な場合は税務署や税理士に確認してください。
まとめ:墓じまいは「話し合い」と「行き先」を先に決める
墓じまいは、遺骨を別の場所に移す改葬と、墓石を撤去して区画を返す手続きの組み合わせです。家族・親族と話し合い、名義を確認し、遺骨の行き先を決めてから、お墓の管理者に相談し、改葬許可を受けて撤去・納骨・返還へと進みます。お寺との間では離檀料をめぐる相談も寄せられているため、相談の形で丁寧に切り出し、根拠の分からない請求は消費生活センターに相談しましょう。費用は撤去工事・儀式・納骨先などの内訳ごとに見積もりを取り、負担の分け方も先に決めておくと安心です。
※本記事は2026年10月時点の法令・公的資料をもとにした一般的な解説です。手続きの方法・必要書類・費用は、自治体や墓地、寺院によって異なります。具体的な手続きはお墓のある市区町村と墓地の管理者に、トラブルは消費生活センターにご相談ください。
e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」第5条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000048
e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」第2条・第3条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100024
e-Gov法令検索「民法」第897条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
e-Stat「衛生行政報告例 第6表 埋葬及び火葬の死体・死胎数並びに改葬数」(2020〜2024年度)https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&query=%E6%94%B9%E8%91%AC&toukei=00450027&layout=dataset
国民生活センター「墓・葬儀サービス」https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/sougi.html
厚生労働省「無縁改葬後の墓石等の取扱い等について」(令和7年12月8日事務連絡)https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001626017.pdf
国税庁「No.4129 相続財産から控除できる葬式費用」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4129.htm
豊橋市「市営墓地の貸出」https://www.city.toyohashi.lg.jp/5102.htm
豊橋市「墓所返還申請書・返還金請求書」https://www.city.toyohashi.lg.jp/33523.htm






