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「相続税は何%かかるのか」と調べると、10%から55%まで幅のある表が出てきて、かえって分からなくなることがあります。結論から言うと、相続税の税率は遺産全体にそのままかけるものではなく、「基礎控除を引く→法定相続分で分けたと仮定して税率をかける→実際の取得割合で分ける」という3ステップの途中で使います。この記事では、国税庁の速算表と計算例をもとに、税率の使い方と計算の流れを数字で追っていきます。相続税がかかるかどうかの判定(基礎控除)は相続税の基礎控除、制度全体の見取り図は相続税の基本で解説しています。
相続税の税率は10%〜55%の8段階(速算表)
相続税は、金額が大きくなるほど高い税率がかかる超過累進税率です。国税庁の速算表(2026年4月1日現在の法令)は次のとおりです。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | — |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超〜2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超〜3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超〜6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
注意したいのは、表の左端が「遺産の総額」ではなく「法定相続分に応ずる取得金額」だという点です。この金額をどう出すかが、次の3ステップです。
相続税の計算は3ステップ
国税庁の「相続税の計算」をもとに、流れを3つに分けて整理します。
ステップ1:課税遺産総額を出す
各人が取得した財産(死亡保険金などのみなし相続財産を含む)から、非課税財産、債務、葬式費用を差し引き、加算対象の生前贈与を加えて、各人の課税価格を出します。全員分を合計し、そこから基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を引いた残りが課税遺産総額です。
ステップ2:相続税の総額を出す
課税遺産総額を、実際の分け方に関係なく、法定相続人が法定相続分どおりに取得したと仮定して分けます。一人ひとりの「法定相続分に応ずる取得金額」に速算表をあてはめて税額を出し、合計したものが相続税の総額です。法定相続分の割合は法定相続分の早見表で確認できます。
ステップ3:各人の納付税額を出す
相続税の総額を、各人が実際に取得した財産の割合(課税価格の割合)で按分します。そのうえで、次の加算・控除を行います。
| 加算・控除 | 内容(国税庁の案内より) |
|---|---|
| 2割加算 | 配偶者と1親等の血族(子・親)以外の人は、税額に2割を加算。兄弟姉妹、甥・姪、代襲相続人でない孫養子など |
| 配偶者の税額軽減 | 配偶者の取得分が1億6千万円か法定相続分相当額の多い方までなら、配偶者の税額はゼロ |
| 未成年者控除 | 18歳未満の法定相続人は、18歳になるまでの年数×10万円を控除(1年未満は1年に切り上げ) |
| 障害者控除・相次相続控除など | 障害のある相続人や、10年以内に相続が続いた場合(相次相続控除)などに控除がある |
2割加算の対象者の細かい範囲は相続税の2割加算、短期間に相続が重なったときの控除は相次相続控除で解説しています。
国税庁の計算例に沿った目安:遺産2億円・妻と子2人
国税庁の速算表のページには、課税遺産総額1億5,200万円、法定相続人が妻と子2人の計算例が載っています。課税価格の合計が2億円なら、基礎控除4,800万円を引いてちょうどこの金額になります。この例をもとに、3ステップを最後まで追ってみます(数字は相続税法の式にあてはめた目安です)。
| 手順 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 1.課税遺産総額 | 2億円 −(3,000万円+600万円×3人) | 1億5,200万円 |
| 2.妻(法定相続分1/2) | 7,600万円×30%−700万円 | 1,580万円 |
| 2.子A(1/4) | 3,800万円×20%−200万円 | 560万円 |
| 2.子B(1/4) | 3,800万円×20%−200万円 | 560万円 |
| 2.相続税の総額 | 合計 | 2,700万円 |
ここまでは国税庁の例と同じです。次に、実際の分け方を2パターン置いて、ステップ3を計算します。
| 分け方 | 按分後の税額 | 配偶者の軽減後 | 家族の納付額合計 |
|---|---|---|---|
| 妻1億円・子A5,000万円・子B5,000万円 | 妻1,350万円、子各675万円 | 妻0円、子各675万円 | 約1,350万円 |
| 妻0円・子A1億円・子B1億円 | 子各1,350万円 | (軽減なし) | 約2,700万円 |
相続税の総額は同じ2,700万円でも、配偶者がどれだけ取得するかで、家族全体の納付額は大きく変わります。ただし、配偶者に多く分けると、配偶者が亡くなったときの相続(二次相続)の税負担が増えることがあります。軽減の計算と二次相続の考え方は配偶者の税額軽減で詳しく扱っています。
もう一つの目安:遺産1億円・配偶者と子1人
| 手順 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 課税遺産総額 | 1億円 −(3,000万円+600万円×2人) | 5,800万円 |
| 配偶者(1/2) | 2,900万円×15%−50万円 | 385万円 |
| 子(1/2) | 2,900万円×15%−50万円 | 385万円 |
| 相続税の総額 | 合計 | 770万円 |
配偶者と子が5,000万円ずつ取得すれば、按分後の税額は各385万円で、配偶者は軽減によりゼロ、子が385万円を納める計算です。子が全額を取得すれば、子が770万円を納めることになります。「遺産の何%」ではなく、家族構成と分け方で決まることが分かります。
よくある質問
「遺産の55%が税金で取られる」ことはありますか?
ありません。55%は、法定相続分に応ずる取得金額が6億円を超えた部分にかかる最高税率です。基礎控除を差し引いたうえで、低い区分の部分には低い税率がかかるため、遺産全体に対する負担の割合はそれよりずっと低くなります。
相続放棄をした人がいると、税額は変わりますか?
相続税の総額の計算では、放棄がなかったものとした場合の相続人の数と法定相続分を使います。そのため、誰かが放棄しても相続税の総額は変わらず、実際に取得した人の間で按分し直すことになります。
税率の表は毎年変わりますか?
毎年変わるものではありませんが、税制改正で変わることはあります。計算するときは、その時点の国税庁「相続税の税率」のページで確認してください。
自分で計算して申告してもよいですか?
相続税の申告を自分で行うことは可能です。ただ、財産の評価や特例の判定は専門性が高く、計算を誤ると加算税の対象になることもあります。自分で進める場合でも、税務署の相談窓口や税理士に確認すると安心です。
まとめ:税率は「3ステップの途中」で使う
相続税の税率は10%〜55%の8段階ですが、遺産全体にかけるものではありません。基礎控除を引いた課税遺産総額を法定相続分で仮に分け、速算表で税額を出して合計し、実際の取得割合で按分するのが基本の流れです。最後に2割加算や配偶者の税額軽減などを反映して、各人の納付額が決まります。まずは財産の総額と相続人を確認し、国税庁の計算例と見比べながら全体像をつかんでおきましょう。
※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁の案内をもとにした一般的な解説です。計算例は制度の理解のための目安であり、実際の税額は財産の評価や特例の適用などの個別事情で異なります。正式な税額は税務署または税理士にご確認ください。
国税庁「No.4155 相続税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
国税庁「No.4152 相続税の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4157.htm
国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm
国税庁「No.4164 未成年者の税額控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4164.htm
e-Gov法令検索「相続税法」第15条・第16条・第19条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073






