相続税・お金

海外資産の相続税|国外の不動産・預金の課税範囲と外国税額控除

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亡くなった親がハワイにコンドミニアムを持っていた、海外の銀行に口座があった——海外資産の相続では「日本の相続税はかかるのか」がまず気になります。結論から言うと、亡くなった方か相続人が日本に住んでいる一般的なケースでは、海外にある財産も日本の相続税の対象になります。対象になるかどうかは、財産のある場所ではなく、亡くなった方と相続人の住所・国籍・過去10年の居住歴で決まります。海外でも相続税にあたる税金を払った場合は、一定の上限まで日本の相続税から差し引けます(外国税額控除)。この記事では、課税の範囲、財産の所在と円換算、外国税額控除のしくみを、国税庁の資料と条文をもとに整理します。

海外資産に日本の相続税がかかるかは「納税義務者の区分」で決まる

相続税法は、財産を取得した人を、住所や国籍などによって区分し、課税される財産の範囲を決めています(相続税法1条の3・2条)。国税庁の No.4138 をもとに、大まかに整理すると次のとおりです。

財産を取得した人 主な条件 課税される財産
日本に住所がある人 原則 国内・国外のすべて
日本に住所がある人(例外) 在留資格のある一時居住者で、亡くなった方も外国人被相続人・非居住被相続人に当たる 国内の財産のみ
日本に住所がない人(日本国籍あり) 相続開始前10年以内に日本に住所があった、または亡くなった方が外国人被相続人・非居住被相続人でない 国内・国外のすべて
日本に住所がない人(日本国籍なし) 亡くなった方が外国人被相続人・非居住被相続人でない 国内・国外のすべて
上記以外の日本に住所がない人 — 国内の財産のみ

「非居住被相続人」とは、おおまかに言えば、亡くなった時に日本に住所がなく、相続開始前10年以内に日本に住所がなかった人(または10年以内に住所があってもその間ずっと日本国籍がなかった人)を指します。「外国人被相続人」は、亡くなった時に在留資格を持ち日本に住所があった人です。

よくあるケースに当てはめると

ケース 海外資産への課税(一般的な判定)
日本に住む日本人の親が、海外に不動産や預金を持っていた 相続人が日本在住でも海外在住でも、海外資産も対象
海外赴任中の日本人の子が、日本に住む親から相続した 親が日本に住んでいたので、海外資産も対象
日本国籍の親子が、ともに10年を超えて海外に住んでいた 日本国内にある財産だけが対象になりうる

なお、国税庁は、留学や海外出張などで一時的に日本を離れている人は、日本国内に住所があるものとしています。長期の海外居住や外国籍の家族がいる場合は判定が複雑になるため、税理士や税務署に確認してください。

財産が「国内」か「国外」かの判定

課税される範囲が「国内の財産のみ」の人にとっては、財産がどこにあるかが重要です。国税庁の No.4138 は、財産の所在を次のように判定するとしています(主なもの)。

財産の種類 所在の判定
不動産・不動産の上の権利 その不動産の所在
預貯金 預け入れた営業所・事業所の所在
株式・社債・出資 発行法人の本店・主たる事務所の所在
投資信託など 信託の引受けをした営業所の所在
生命保険金・損害保険金 契約した保険会社の本店・主たる事務所の所在
貸付金債権 債務者の住所・本店の所在
国債・地方債 日本国内。外国の公債は、その外国
その他の財産 亡くなった方の住所

たとえば外国企業の株式は、日本の証券会社の口座で保有していても、発行法人の本店がある国の財産として判定されます。証券口座の移管など株式の相続手続きの流れは株式・投資信託の相続で解説しています。

海外資産の評価と円換算のルール

国税庁の財産評価基本通達は、国外にある財産も、国内の財産と同じ通達の方法で評価するとしています(5-2)。通達の方法で評価できない財産は、通達の方法に準じるか、売買実例価額や精通者意見価格などを参考に評価します。日本の路線価や固定資産税評価額がない海外不動産は、この「評価できない財産」に当たることが多く、現地の価格資料が必要になります。

円換算はTTB(電信買相場)が原則外貨建ての財産や国外財産を円に換算するときは、原則として、取引金融機関が公表する相続開始日の最終の対顧客直物電信買相場(TTB)を使います。その日に相場がなければ、直前で最も近い日の相場です。一方、外貨建ての債務は電信売相場(TTS)で換算します(財産評価基本通達4-3)。外貨預金やFXの扱いはFX・外貨建て資産の相続も参考になります。

海外資産も、国内の財産と合計して相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)と比べます。海外資産を加えると基礎控除を超え、申告が必要になることもあります(相続税の基礎控除)。

二重課税を調整する外国税額控除

海外の財産には、その国でも相続税にあたる税金がかかることがあります。日本の相続税法20条の2は、国外にある財産を取得し、その国の法令で相続税に相当する税が課された場合、その税額を日本の相続税額から差し引くと定めています。これを一般に「外国税額控除(在外財産に対する相続税額の控除)」と呼びます。

差し引ける額には上限がある

控除できるのは、外国で課された税額のうち、次の算式で計算した上限額までです。

上限額の算式(相続税法20条の2)その人の相続税額(他の税額控除を適用した後)×(国外財産の価額 ÷ その人の課税価格の計算に入った財産の価額)

たとえば、ある相続人の相続税額が1,000万円、課税価格の計算に入った財産が1億円で、そのうち国外財産が2,000万円なら、上限額は1,000万円×2,000万円÷1億円=200万円です。外国で300万円の税金を払っていても、差し引けるのは200万円が目安になります。実際の計算は、他の税額控除の順序なども関係するため、税理士に確認してください。

外国で課された税額を示す資料(現地の申告書や納税証明など)が必要になります。国によって相続税にあたる税金の有無やしくみは異なるため、現地の制度もあわせて確認が必要です。

申告と手続きで気をつけること

  • 申告期限は国内の相続と同じ10か月:海外資産の調査や評価に時間がかかるため、早めに着手する(相続税の申告期限)
  • 海外に住む相続人は納税管理人を定める:日本に住所がない人が申告する場合、納税管理人を定めて「納税管理人届出書」を提出し、申告・納税する
  • 国外転出(相続)時課税に注意:1億円以上の有価証券などを持つ一定の居住者が亡くなり、非居住者の相続人がそれを取得すると、含み益に所得税がかかる制度がある。対象なら準確定申告を4か月以内に行う
  • 現地の相続手続きは国ごとに異なる:名義変更や払戻しに裁判所の手続きなどが必要な国もある。現地の専門家への依頼が必要になることが多い

相続人が海外に住んでいる場合の書類(サイン証明・在留証明など)は、相続人が海外にいるときの手続きで解説しています。

よくある質問

海外の銀行口座の残高も基礎控除の計算に入りますか?

海外資産が課税対象になる区分の人なら入ります。国内の財産と合計した正味の遺産額を基礎控除と比べるため、海外資産を含めると申告が必要になることがあります。

海外に住んでいる子どもも日本で申告が必要ですか?

取得した財産が課税対象で、相続税がかかる場合は必要です。日本国籍があり、亡くなった親が日本に住んでいたなら、海外在住でも国内外の財産すべてが対象になるのが一般的です。申告は納税管理人を定めて行います。

外国の相続税を払ったかどうかが分かりません。

国によっては相続税にあたる税金がなかったり、遺産そのものに課税するしくみだったりします。外国税額控除は、その国の法令で相続税に相当する税が課された場合に使えるものなので、現地の専門家に課税の有無と金額を確認し、証明資料をそろえましょう。

海外の不動産はどう評価すればよいですか?

日本の路線価などは使えないため、通達の方法に準じたり、売買実例価額や不動産鑑定などの精通者意見価格を参考にしたりして評価するのが一般的です。評価方法は税額に大きく影響するため、国際的な相続を扱った経験のある税理士に相談してください(相続に強い税理士の見分け方)。

まとめ:海外資産は「区分の判定」と「存在の把握」から

海外資産に日本の相続税がかかるかは、亡くなった方と相続人の住所・国籍・10年の居住歴で決まり、日本に住む方の相続では国外財産も対象になるのが一般的です。評価は国内と同じ通達の方法が基本で、円換算はTTBを使います。外国でも課税されたときは、上限の範囲で外国税額控除が使えます。何より大変なのは、家族が海外資産の存在や中身を知らないことです。どの国に、どの金融機関や不動産があるのかを、元気なうちに一覧にして共有しておきましょう。

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※本記事は2026年10月時点の日本の法令と国税庁の公表資料をもとにした一般的な解説です。納税義務者の区分、財産の評価、外国税額控除の額は個別の事情で大きく異なり、外国の税制や相続手続きは国ごとに異なります。具体的な判断は税理士・税務署、現地の専門家にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
国税庁「No.4138 相続人が外国に居住しているとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4138.htm
国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm
国税庁「財産評価基本通達 第1章 総則(4-3 邦貨換算、5-2 国外財産の評価)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/01/01.htm
国税庁「No.1468 相続又は遺贈により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例(国外転出(相続)時課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1468.htm
e-Gov法令検索「相続税法」第1条の3・第2条・第10条・第20条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073

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