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「孫の進学や将来のために、財産を残してあげたい」——そう考える祖父母は多いものです。ただ、孫は原則として相続人ではないため、何もしなければ財産は孫に渡りません。結論から言うと、孫に財産を残す方法は大きく「遺言で遺贈する」「生前に贈与する」「生命保険の受取人にする」「養子にする」の4つです。どの方法でも、孫が相続や遺贈で財産を受け取ると、相続税の2割加算の対象になる点が共通の注意点です。この記事では、4つの方法の違いと税金のしくみを、国税庁の情報をもとに比べます。
孫に財産を残す4つの方法と税金の違い
| 方法 | かかる税金 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 遺言で遺贈 | 相続税(2割加算あり) | 子の遺留分に配慮。孫が受けた生前贈与も加算対象になる |
| 生前贈与(暦年課税) | 贈与税(年110万円まで非課税) | 孫が相続・遺贈で何も受け取らなければ、原則として相続財産への持ち戻しはない |
| 生前贈与(相続時精算課税) | 贈与税(特別控除2,500万円・年110万円の基礎控除) | 相続時に相続財産へ加算。孫は2割加算の対象 |
| 生命保険の受取人 | 相続税(2割加算あり) | 孫は相続人でないため死亡保険金の非課税枠が使えない |
| 養子縁組 | 相続税(孫養子は2割加算あり) | 基礎控除などに数えられる養子の数に上限。他の家族の相続分が減る |
税額は財産の総額や家族構成で大きく変わります。ここでは制度のしくみを説明し、具体的な有利・不利の判断は税理士や税務署に確認することをおすすめします。
孫が相続人になる例外:代襲相続
孫の親(祖父母から見て子)が先に亡くなっている場合は、孫が代わりに相続人になります(代襲相続。代襲相続とは)。代襲相続人になった孫は、相続税の2割加算の対象から外れます。この記事で扱うのは、孫の親が健在で、孫が相続人ではないケースです。
相続税の2割加算のしくみ
相続税法は、相続や遺贈で財産を取得した人が「被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫を含む)および配偶者以外の人」である場合、その人の相続税額に2割を加算すると定めています(18条)。一親等の血族とは父母と子(養子を含む)のことです。
- 孫が遺贈や保険金で財産を受け取る → 2割加算の対象
- 孫を養子にした(孫養子) → 子として相続人になっても、代襲相続人でない限り2割加算の対象
加算額は「その人の税額控除前の相続税額×0.2」が基本です。そもそも相続税がかからない規模の遺産なら、2割加算も問題になりません。詳しくは相続税の2割加算で解説しています。
方法1:遺言で孫に遺贈する
「孫の○○に、△△銀行の預金を遺贈する」のように遺言で定めれば、孫に確実に財産を渡せます(遺贈とは)。孫が未成年の場合、受け取った財産は親権者である親が管理することになる点も知っておきましょう。
また、子には遺留分があります。孫に多くを遺贈して子の取り分が遺留分を下回ると、子が孫に対して金銭を請求できます。家族の関係を考え、遺言の付言で理由を伝えておくのも一つの方法です。
方法2:生前贈与で孫に渡す
暦年課税:年110万円の基礎控除
1年間(1月1日〜12月31日)に受けた贈与の合計が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です。110万円を超えると、翌年2月1日から3月15日までに申告が必要です。父母や祖父母から、その年の1月1日時点で18歳以上の人が受けた贈与には、一般より低い「特例税率」が使われます。
亡くなる前の贈与を相続財産に足し戻す期間は、2024年1月1日以後の贈与から段階的に3年から7年へ延びています。
| 相続が開始した日 | 加算の対象期間 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 相続開始前3年以内 |
| 2027年1月1日〜2030年12月31日 | 2024年1月1日から亡くなった日まで |
| 2031年1月1日以降 | 相続開始前7年以内 |
延びた期間(相続開始前3年より前)の贈与は、合計100万円までは加算されません。ただし、ここまで見たとおり加算されるのは相続・遺贈などで財産を取得した人です。孫に遺贈しない設計なら、孫への暦年贈与はこの影響を受けにくくなります(暦年贈与と2024年改正)。
なお、祖父母名義の通帳に孫の名前で積み立てているだけでは、贈与が成立していないとみなされることがあります。贈与のたびに孫(未成年なら親権者)が受け取り、孫自身が管理する形にしておくことが大切です。
相続時精算課税:孫も選べる
贈与した年の1月1日に60歳以上の祖父母から、18歳以上の孫への贈与にも、相続時精算課税を選べます。特別控除は累計2,500万円で、2024年1月1日以後の贈与は年110万円の基礎控除を差し引けます。選ぶには最初の贈与の翌年3月15日までに届出書を提出し、一度選ぶと撤回できません。祖父母が亡くなったときは、基礎控除を除いた贈与額を相続財産に加えて相続税を計算するため、孫には2割加算がかかる点も踏まえて検討します(相続時精算課税制度)。
教育費・住宅資金の特例
- 都度の教育費・生活費:扶養義務者から、生活費や教育費として必要な都度、直接充てるために受け取ったお金には贈与税がかかりません。ただし預金したり投資に回したりすると課税されます。
- 教育資金の一括贈与:最大1,500万円まで非課税になる特例は2026年3月31日で終了し、同年4月1日以後は新たに使えません。すでに適用を受けた資金は、引き続き契約に沿って扱われます。
- 住宅取得等資金の贈与:父母や祖父母から、住宅の新築・購入・増改築のためのお金を受けた場合、2024年1月1日から2026年12月31日までの贈与について、省エネ等住宅は1,000万円、それ以外は500万円まで非課税です。孫が18歳以上で合計所得金額2,000万円以下などの要件があり、適用には贈与税の申告が必要です(住宅取得等資金の贈与)。
方法3:生命保険の受取人を孫にする
祖父母が保険料を負担し、孫を受取人とする死亡保険金は、相続税の対象(みなし相続財産)になります。死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がありますが、適用されるのは相続人が受け取った保険金だけです。相続人でない孫が受け取った分には使えず、2割加算の対象にもなります(生命保険の非課税枠)。受取人の指定・変更の手続きは保険会社ごとに確認してください。
方法4:孫を養子にする
孫を養子にすると、孫は子として相続人になり、相続分も実子と同じです。一方で、税金と家族関係の両面で注意点があります。
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 法定相続人に数える養子の数 | 基礎控除・生命保険金の非課税枠などの計算では、実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人まで |
| 2割加算 | 孫養子は、代襲相続人でない限り2割加算の対象 |
| 他の相続人への影響 | 相続人が増えるため、他の子(孫のおじ・おばなど)の相続分が減り、不満の原因になりやすい |
| 税負担の不当な減少 | 相続税の負担を不当に減らす結果になると認められる場合は、人数に含められないことがある |
養子縁組は身分関係を変える重い手続きです。孫の親の考えや、他のきょうだいの理解も含めて慎重に検討しましょう。
よくある質問
孫への贈与は亡くなる直前でも相続税に足し戻されないのですか?
孫が相続・遺贈・相続時精算課税で財産を取得しなければ、暦年贈与は原則として加算されません。ただし、遺言で孫にも財産を渡すと加算の対象になります。死亡保険金を孫が受け取る場合の扱いも含め、事前に税理士や税務署に確認すると安心です。
孫の学費を祖父母が払うと贈与税はかかりますか?
必要な都度、学費として直接支払う分には、一般に贈与税はかかりません。まとめて渡して預金しておくと、課税されることがあります。
孫を養子にすれば相続税は必ず安くなりますか?
必ずではありません。基礎控除の人数が増える一方で、孫養子は2割加算の対象になり、数えられる養子の数にも上限があります。家族関係への影響も大きいため、税理士などに試算してもらったうえで判断しましょう。
まとめ:孫への想いは「方法」と「税金」をセットで考える
孫は原則として相続人ではないため、財産を残すには遺言による遺贈、生前贈与、生命保険の受取人指定、養子縁組のいずれかを選びます。遺贈・保険金・孫養子はいずれも2割加算の対象で、保険金の非課税枠は孫には使えません。暦年贈与は、孫が相続や遺贈で財産を受け取らなければ持ち戻しの影響を受けにくく、住宅資金の特例は2026年12月31日まで、教育資金の一括贈与はすでに終了しています。家族全体のバランスを見ながら、専門家と一緒に組み合わせを考えましょう。
※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁の案内をもとにした一般的な解説です。税制は改正されることがあり、特例の期限や要件は変わる可能性があります。具体的な税額や有利・不利の判断は、税務署や税理士にご確認ください。
国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4157.htm
国税庁「No.4170 相続人の中に養子がいるとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4170.htm
国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm
国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm
国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4405.htm
国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
国税庁「No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4510.htm
国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm
国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm
e-Gov法令検索「相続税法」(15条・18条・21条の9)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073






