本ページはプロモーションを含みます
「実家と貸しアパートがあるけれど、相続のときに子どもたちがもめないか心配」——不動産は、相続でもっとも問題になりやすい財産です。結論から言うと、不動産の生前対策は、①持っている不動産を正確に把握し、②誰が引き継ぐかを遺言で決め、③相続税を払う現金の当てを作り、④評価の特例を正しく理解し、⑤使わない不動産は元気なうちに整理する、の順で考えるのが基本です。また、2027年1月1日以後の相続からは、取得から5年以内の貸付用不動産などの評価を見直すことが、令和8年度税制改正の大綱で決まっています。この記事では、それぞれの対策の考え方を公的な情報をもとに整理します。
不動産が相続で問題になりやすい理由
| 問題 | 起こりやすいこと |
|---|---|
| 分けにくい | 1つの家を複数の相続人で分けられず、「誰が継ぐか」でもめる。とりあえず共有にすると、売却や建て替えに全員の同意が必要になる |
| 現金にしにくい | 相続税は申告期限(亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内)までに、金銭で一度に納めるのが原則。不動産が多く現金が少ないと納税に困る |
| 手間と費用がかかる | 相続登記、固定資産税、管理、境界の確認など、相続後も負担が続く |
相続人が不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記も、法律上の義務になっています。相続した後の手続きまで見通して、生前に整えておくことが大切です。
対策1:持っている不動産を正確に把握する
最初の一歩は、所有する不動産をすべて洗い出すことです。固定資産税の納税通知書だけでは、非課税の私道や、別の市町村にある土地が漏れることがあります。市区町村の名寄帳や、法務局の所有不動産記録証明制度を使うと、一覧で確認しやすくなります。登記簿を取り、名義が祖父母のままになっていないか、共有者はいないかも確認しましょう。
対策2:誰が引き継ぐかを遺言で決める
遺言がないと、不動産の分け方は相続人全員の話し合いで決めることになり、意見が割れると長引きます。実家を誰が継ぐか、賃貸物件をどうするかを、本人が遺言で決めておくのがもっとも確実な争い防止策です。
- 共有は避けるのが一般的:共有にすると、次の相続で持分がさらに細かく分かれる(不動産を共有名義で相続するリスク)
- 代償分割を想定する:1人が不動産を取得し、他の相続人にお金で調整する方法。取得する人に払う資金があるかが鍵になる
- 換価分割も選択肢:売却して代金を分ける方法。誰も住まない実家に向く
分け方の種類とそれぞれの注意点は遺産分割の方法で解説しています。遺留分にも配慮した内容にしておくと、相続後の請求を防ぎやすくなります。
対策3:納税資金と代償金の準備
相続税がかかりそうなら、払う現金の当てがあるかを確認します。金銭で納めるのが難しい場合には延納や物納の制度もありますが、要件があり、誰でも使えるわけではありません。生前に考えられる方法は次のとおりです。
| 方法 | 考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 預貯金を残しておく | 納税や代償金に充てる現金を確保する | 使い道を家族に伝えておく |
| 使わない不動産を売却する | 生前に現金化して分けやすくする | 譲渡所得税がかかる場合がある。売却は本人に判断能力があるうちに |
| 生命保険の受取人を考える | 受取人に現金が入り、納税や代償金に使える | 既存契約の受取人や契約形態を確認する |
| 賃貸収入を積み立てる | 家賃収入を納税資金として残す | 空室・修繕のリスクも見込む |
対策4:相続税の評価のしくみを理解する
自宅の土地:小規模宅地等の特例
亡くなった方の自宅の土地は、要件を満たす人が相続すれば、330㎡までの部分について評価額を80%減らせる小規模宅地等の特例があります。配偶者が取得する場合や同居している親族が取得する場合など、要件は取得する人によって違います。誰が自宅を継ぐかを決めるときは、特例の要件も確認しておきましょう(小規模宅地等の特例とは)。
貸している土地・建物の評価
アパートなどを建てて貸している土地は「貸家建付地」として、自用地としての価額から、借地権割合×借家権割合×賃貸割合に応じた額を差し引いて評価します。空室が多いと賃貸割合が下がり、評価の減り方も小さくなります。賃貸物件の相続で確認したい点は賃貸アパート・マンションを相続したらで解説しています。分譲マンションの評価方法も、2024年1月1日以後の相続などから見直されています。
2027年からの貸付用不動産の評価見直し
2025年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」には、貸付用不動産の市場価格と相続税評価額との差を踏まえた、次の見直しが盛り込まれています。
| 対象 | 見直しの内容(大綱より) |
|---|---|
| 亡くなった方などが、亡くなる前5年以内に購入・新築した一定の貸付用不動産 | 通常の取引価額に相当する金額で評価する。課税上の弊害がない限り、取得価額をもとに地価の変動などを考慮した価額の80%で評価できる |
| 不動産特定共同事業契約などに基づく、いわゆる小口化商品の対象となっている貸付用不動産 | 取得の時期にかかわらず、通常の取引価額に相当する金額で評価する |
この見直しは、2027年(令和9年)1月1日以後に相続などで取得する財産の評価に適用されるとされています。ただし、1つ目の見直しは、改正が通達に定められる日までに、その5年前から持っていた土地に新築した家屋(その日に建築中のものを含む)には適用しないとされています。具体的な評価方法は国税庁の通達で定められる予定で、2026年10月時点では国税庁の通達一覧で該当する改正を確認できませんでした。「相続直前に賃貸不動産を買えば評価が下がる」という考え方は、今後は通用しにくくなると理解しておきましょう。
対策5:使わない不動産は元気なうちに整理する
誰も住む予定のない実家、遠方の土地、管理していない山林などは、相続人が引き継いでも困ることがあります。売却や賃貸などの判断は、本人に判断能力があるうちにしかできません。境界があいまいな土地は、売却や分割の前に確認しておくと手続きが進めやすくなります。
相続後に土地を手放す制度として相続土地国庫帰属制度がありますが、法務省によると、利用できるのは相続や遺贈で土地を取得した相続人です。所有者本人が生前に使う制度ではないため、要件や負担金を確認したうえで「相続後の選択肢」として家族に伝えておきましょう。
よくある質問
相続税がかからない場合も、不動産の生前対策は必要ですか?
必要なことがあります。相続税がかからなくても、分け方の争い、共有による売却の難しさ、名義変更や管理の負担は残ります。遺言で継ぐ人を決め、名義や境界を整えておくことは、どの家庭でも役立ちます。
生前に子へ不動産を贈与したほうがよいですか?
一概には言えません。不動産の贈与は、贈与税に加えて登録免許税(相続より高い税率)や不動産取得税がかかり、自宅の土地は相続時の小規模宅地等の特例が使えなくなる場合があります。判断の観点は生前贈与と相続どちらが得かで整理しています。
2027年の評価見直しは、すでに持っている賃貸物件にも影響しますか?
大綱では、亡くなる前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産と、小口化商品の対象となっている不動産が対象とされています。対象となる範囲や評価方法の詳細は今後の通達で定められるため、国税庁の発表を確認し、所有している物件が当てはまるかは税理士に相談してください。
まとめ:把握から始めて、分け方と現金を先に整える
不動産の生前対策は、所有する不動産を正確に把握することから始まります。そのうえで、誰が継ぐかを遺言で決め、納税や代償金の現金を準備し、小規模宅地等の特例や賃貸物件の評価のしくみを理解しておきます。2027年1月からは取得後5年以内の貸付用不動産などの評価が見直される予定で、評価の引き下げだけを狙った対策は通用しにくくなります。使わない不動産は元気なうちに整理し、判断の難しい点は税理士・司法書士などの専門家に相談しましょう。
※本記事は2026年10月時点の法令・税制改正の大綱と公的機関の案内をもとにした一般的な解説です。2027年からの評価見直しは、今後定められる通達の内容によって詳細が変わる可能性があります。個別の評価額や税額、対策の適否は、税理士・司法書士などの専門家や税務署にご確認ください。
財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/20251226taikou.pdf
国税庁「財産評価基本通達 第1章 総則(6 この通達の定めにより難い場合の評価)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/01/01.htm
国税庁「財産評価関係 個別通達目次」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hyoka/zaisan.htm
国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm
国税庁「No.4667 居住用の区分所有財産の評価」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4667.htm
国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
法務省「相続土地国庫帰属制度について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html






