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親が亡くなり、誰も住まなくなった実家。「思い出があって決められない」「遠くて手が回らない」と、そのままになっている家は少なくありません。結論から言うと、空き家は持っているだけで固定資産税と管理の責任がかかり続け、手入れが行き届かないと市区町村から「管理不全空家」「特定空家」として勧告を受け、土地の固定資産税の軽減がなくなることがあります。選択肢は「住む・貸す・売る・解体する・手放す」の5つです。この記事では、放置のリスクと、それぞれの選択肢の向き不向き、決める順番を整理します。
相続した空き家を放置する4つのリスク
①固定資産税の軽減が外れる(管理不全空家・特定空家)
住宅が建っている土地は「住宅用地の特例」で、固定資産税の課税標準が小規模住宅用地(200㎡以下の部分)は6分の1、それを超える部分は3分の1に軽減されています。2023年12月13日に施行された改正空家法で、次の2段階の空き家について、市区町村長から勧告を受けるとこの特例の対象から外れることになりました。
| 区分 | 状態のイメージ | 市区町村の措置 |
|---|---|---|
| 管理不全空家 | そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある(窓や壁の一部破損、雑草の繁茂など) | 指導 → 改善しなければ勧告(住宅用地特例の解除) |
| 特定空家 | 倒壊など保安上危険、衛生上有害、景観を著しく損なう、周辺の生活環境を損なう状態 | 助言・指導 → 勧告(特例の解除)→ 命令 → 行政代執行 |
特例が外れると、土地の固定資産税が大きく上がることがあります(実際の増え方は土地の評価や負担調整などで異なります)。特定空家への命令に違反すると50万円以下の過料の対象になり、行政代執行で取り壊された場合、その費用は所有者に請求されます。固定資産税の仕組みは相続した不動産の固定資産税で詳しく解説しています。
②倒壊や落下物で損害賠償を負うおそれ
民法717条は、建物や塀などの設置・保存に欠陥があって他人に損害を与えた場合、占有者が責任を負い、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が賠償しなければならないと定めています。屋根瓦の落下やブロック塀の倒壊でけが人が出れば、空き家の所有者が責任を問われる可能性があります。
③傷みが進み、選択肢が狭まる
人が住まない家は換気や通水がされず、傷みが早く進みます。雨漏りやシロアリ被害が進むと、貸すにも売るにも修繕費がかさみ、建物の価値が下がります。不法侵入や放火、ごみの不法投棄の心配も出てきます。
④相続が重なり、決められなくなる
兄弟姉妹の共有のまま放置しているうちに共有者の誰かが亡くなると、その配偶者や子が新たな共有者になります。人数が増えるほど、売るにも貸すにも合意を取るのが難しくなります。また、相続登記は2024年4月から義務になっており、3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になり得ます。
相続した実家の5つの選択肢
| 選択肢 | 向いているケース | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 住む | 家族の誰かが移り住む予定がある | 他の相続人との公平(代償金など)、リフォーム費用 |
| 貸す | 借り手が見込める立地で、建物の状態がよい | 修繕費、管理の手間、一度貸すと自由に使いにくい |
| 売る | 使う予定がなく、維持費の負担を終わらせたい | 相続登記が先。特例の期限を意識する |
| 解体して土地で活用・売却 | 建物の老朽化が激しい | 解体費。更地になると住宅用地の特例がなくなる |
| 手放す(国庫帰属・相続放棄) | 売れず、使い道もない | 国庫帰属は建物があると申請できない。放棄は3か月以内で全財産が対象 |
住む・貸す
相続人の一人が住むなら、その人が実家を取得し、他の相続人に代償金を払う形(代償分割)が考えられます。貸す場合は、賃貸として成り立つかを不動産会社に確認し、修繕費と家賃収入を比べます。活用方法の比較は相続不動産の活用方法6つにまとめています。
売る
使う予定がないなら、売却で維持費と管理の責任から解放されます。故人が一人で住んでいた1981年5月31日以前に建てられた家などは、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ると、譲渡所得から最高3,000万円(相続人3人以上なら1人2,000万円)を控除できる特例があります。売却の段取りは相続した家を売る流れ、税金と特例の要件は相続した不動産の売却と税金をご覧ください。買い手が見つかりにくい地域なら、自治体の空き家バンクに登録する方法もあります。
解体する
倒壊の危険がある家は、解体によって賠償リスクや管理不全空家の心配はなくなります。一方で解体費がかかり、更地になると土地の住宅用地の特例は使えなくなります。解体を条件に補助金を出している自治体もあるため、解体前に市区町村の空き家担当窓口に確認しましょう。
手放す(国庫帰属・相続放棄)
どうしても売れない土地は、相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう方法があります。ただし建物がある土地は申請できないため解体が前提になり、審査手数料と負担金(原則20万円)もかかります(相続土地国庫帰属制度)。相続放棄は、相続を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があり、実家だけでなく預金などすべての財産を放棄することになります。
どれを選ぶか:決める順番
- 相続人と名義を確定する:遺言の有無、誰が相続人か、共有にするのか一人が取得するのか
- 家の状態とお金を把握する:固定資産税の額、修繕が必要な箇所、住宅ローンや抵当権の有無
- 相場を知る:複数の不動産会社の査定や、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で周辺の取引価格を確認
- 期限を確認する:相続登記(3年)、空き家の3,000万円控除(3年目の年末)、相続放棄(3か月)
- 家族で話し合って決める:売る・持つの結論と、費用の分担
すぐに決められない場合でも、少なくとも誰が管理するのかと、管理費用を誰がどう負担するのかは決めておきましょう。
当面、空き家のまま持つときの管理
- 定期的に訪れて、換気・通水・郵便物の回収をする
- 庭木や雑草が隣地にはみ出していないか確認する
- 屋根・外壁・塀の破損は早めに直す
- 空き家でも入れる火災保険になっているか、契約内容を確認する
- 遠方で通えないなら、近所の親族や管理を請け負う事業者に頼むことも検討する
市区町村から指導の通知が届いたら、放置せず内容を確認し、窓口に相談してください。指導の段階で改善すれば、勧告や住宅用地特例の解除には進みません。
よくある質問
空き家を相続放棄すれば、管理しなくてよくなりますか?
放棄をした時点でその家を現に占有している場合は、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意をもって保存する義務があります(民法940条)。詳しくは相続放棄後の管理義務をご覧ください。
固定資産税は誰が払うのですか?
名義変更前でも、相続人が納税義務を引き継ぎます。共有の場合は、共有者が連帯して納める義務を負います。
実家の片付けが進みません。
家財の整理は売却や賃貸の前提になります。形見分けをする物、権利証や通帳など手続きに必要な書類を先に探し出してから、残りを処分する順番にすると、後で困りにくくなります。
まとめ:空き家は「管理する人」と「期限」を先に決める
相続した実家を放置すると、管理不全空家・特定空家の勧告で固定資産税の軽減が外れたり、倒壊などで賠償責任を負ったりするおそれがあります。選択肢は住む・貸す・売る・解体する・手放すの5つ。名義と相続人を確定し、家の状態と相場、相続登記や3,000万円控除の期限を確認してから、家族で決めましょう。全体の流れは相続した不動産の手続き完全ガイドで確認できます。
※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関の案内をもとにした一般的な解説です。管理不全空家・特定空家の判断や固定資産税の額、特例の適用は、市区町村や個別の事情で異なります。具体的には市区町村の窓口、税務署、専門家にご確認ください。
国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年6月14日公布)概要」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001621265.pdf
e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」第13条・第22条・第30条 https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127
e-Gov法令検索「民法」第717条・第940条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
国土交通省「不動産情報ライブラリ」https://www.reinfolib.mlit.go.jp/






