家族の話し合い

事実婚・内縁の配偶者と相続|相続人になれない理由と残す方法

本ページはプロモーションを含みます

「籍は入れていないけれど、30年一緒に暮らしてきた。自分が先に亡くなったら、パートナーはこの家に住み続けられるの?」——婚姻届を出さずに夫婦として暮らす事実婚(内縁)は珍しくなくなりましたが、相続の場面では法律婚と大きな違いがあります。結論から言うと、事実婚・内縁のパートナーは法定相続人になれず、何も準備しなければ財産を受け取れないのが原則です。一方で、遺族年金は事実婚でも対象になるなど、制度によって扱いが分かれます。この記事では、事実婚のパートナーが相続でどう扱われるか、財産を残す方法と税金、受け取れる可能性のある給付を整理します。

事実婚・内縁の配偶者は相続人になれない

民法890条は「被相続人の配偶者は、常に相続人となる」と定めていますが、ここでいう配偶者は、婚姻届を出した法律上の配偶者です(婚姻は届出によって効力を生じる:民法739条)。同居の年数や、住民票に「妻(未届)」「夫(未届)」と記載されているかどうかに関係なく、事実婚のパートナーには相続権がありません。

項目 法律婚の配偶者 事実婚・内縁のパートナー
相続権 常に相続人 なし
遺留分 あり なし
配偶者居住権・配偶者短期居住権 あり なし
遺言による遺贈 受けられる 受けられる
相続税の配偶者の税額軽減 使える 使えない
相続税の2割加算 対象外 対象
遺族年金 要件を満たせば対象 要件を満たせば対象

何も準備しないと、財産はどうなる?

相続人がいる場合

亡くなった方に子・親・兄弟姉妹などの相続人がいれば、財産はすべてその相続人のものになります。パートナーと一緒に住んでいた家が亡くなった方の名義なら、その家も相続人が相続します。預貯金も、パートナーが管理していたとしても相続人の財産です。

相続人がいない場合:特別縁故者という例外

相続人が1人もいない(全員が相続放棄した場合も含む)ときは、家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人が財産を清算します。そのうえで、亡くなった方と生計を同じくしていた人や療養看護に努めた人は、「特別縁故者」として残った財産の全部または一部の分与を家庭裁判所に請求できます(民法958条の2)。請求は、相続人を捜索する公告の期間が満了してから3か月以内です。ただし、分与するかどうか、いくら分与するかは家庭裁判所が判断するため、確実ではありません(特別縁故者とは)。

賃貸住宅に住んでいた場合

借地借家法36条により、居住用の建物の借主が相続人なしに亡くなった場合、事実上夫婦と同様の関係にあった同居者は、借主の権利義務を承継します(相続人なしに死亡したことを知ってから1か月以内に、貸主に反対の意思を示せば承継しません)。相続人がいる場合の扱いは事情によって異なるため、貸主や専門家に確認してください。

パートナーに財産を残す4つの方法

方法 内容 注意点
遺言(遺贈) 遺言で財産の全部・一部をパートナーに渡す もっとも基本。子や親の遺留分に配慮
死因贈与契約 「自分が亡くなったら○○を贈与する」と2人で契約する 遺贈に関する規定が準用される(民法554条)。書面で残す
生命保険 パートナーを死亡保険金の受取人にする 保険会社ごとに受取人の条件がある。相続税の非課税枠は使えない
生前贈与 元気なうちに財産を渡す 贈与税の対象。年110万円の基礎控除の範囲など計画的に

遺言で遺贈する

もっとも確実なのは、遺言で「パートナーの○○に自宅を遺贈する」などと書いておくことです。財産の全部や割合を渡す「包括遺贈」と、特定の財産を渡す「特定遺贈」があり、包括遺贈を受けた人は借金も引き継ぐなど扱いが違います(遺贈とは)。

事実婚の場合、遺言の内容に相続人が反発することも考えられます。形式の不備で無効にならないよう、公正証書遺言を選び、手続きを任せる遺言執行者も指定しておくのが一般的です(公正証書遺言とは)。

子や親には遺留分がある亡くなった方に子や親がいる場合、その人たちには遺留分があります。「全財産をパートナーに」という遺言でも、遺留分侵害額を請求される可能性があります。兄弟姉妹には遺留分がないため、相続人が兄弟姉妹だけなら、遺言どおりに渡しやすくなります(遺留分とは)。

生命保険の受取人にする

死亡保険金は受取人固有の財産として扱われるのが一般的で、遺産分割を経ずにパートナーが受け取れます。ただし、内縁のパートナーを受取人に指定するための条件(同居期間、確認書類など)は保険会社ごとに異なります。また、国税庁は、死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は相続人が受け取った場合の制度で、相続人以外の人が取得した死亡保険金には非課税の適用はないと案内しています。

事実婚のパートナーが受け取ったときの相続税

遺贈や死因贈与、死亡保険金で財産を受け取ると、パートナーは相続税の申告・納税をする立場になる場合があります。法律婚と比べて、税負担が重くなりやすい点に注意が必要です。

  • 2割加算の対象:相続税法18条は、亡くなった方の一親等の血族と配偶者以外の人について、相続税額に2割を加算すると定めています。事実婚のパートナーはこの「配偶者」に含まれません(相続税の2割加算)。
  • 配偶者の税額軽減は使えない:国税庁の相続税法基本通達19の2-2は、配偶者は婚姻の届出をした者に限り、内縁関係にある者は該当しないとしています。
  • 死亡保険金の非課税枠は使えない:前述のとおり、相続人以外が受け取った保険金には適用されません。

相続税がかかるかどうかは遺産全体の額で決まります。具体的な税額は税理士や税務署に相談してください。

遺族年金・未支給年金は事実婚でも対象になりうる

相続とは違い、公的年金の制度では事実婚のパートナーも「配偶者」として扱われます。国民年金法5条7項は、この法律でいう配偶者には「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」を含むと定めています。

給付 事実婚の扱い 主な条件
遺族基礎年金・遺族厚生年金 日本年金機構は、配偶者に内縁の配偶者も含まれると案内 亡くなった方に生計を維持されていたこと(同居または仕送り等で生計を同一にし、原則として年収850万円未満)。遺族基礎年金は子のある配偶者など
未支給年金 配偶者に事実婚を含む 亡くなった方と生計を同じくしていたこと
寡婦年金(国民年金) 婚姻関係(事実婚を含む)が10年以上継続している妻など 夫の国民年金第1号被保険者としての納付期間などの要件あり

請求の際は、事実婚の関係や生計維持を確認する書類を求められます。必要書類は事情によって異なるため、年金事務所に確認してください。遺族年金のしくみは遺族年金とはで詳しく解説しています。

財産以外にも決めておきたいこと

  • 子がいる場合の認知:事実婚の夫婦の子は、父が認知しなければ父の相続人になれません。認知された子の相続分は、婚姻中の夫婦の子と同じです。
  • 葬儀や死後の手続き:相続人ではないパートナーは、葬儀や役所・契約の手続きを進めにくい場面があります。死後の事務を託す契約を結んでおく方法もあります。
  • 判断能力が低下したときの備え:任意後見契約で、パートナーを後見人の候補にしておくこともできます。

よくある質問

住民票に「妻(未届)」と書かれていれば、相続人になれますか?

なれません。相続人になるのは婚姻届を出した法律上の配偶者で、住民票の続柄の記載は相続権の有無には関係しません。

パートナー名義の家に住んでいます。相続人から出て行くよう言われたら?

家を相続した相続人が所有者になるため、パートナーには配偶者居住権のような権利はありません。遺言で家を遺贈してもらう、使用を認める内容を定めておくなど、生前の準備が重要です。すでに問題が起きている場合は、早めに専門家に相談してください(配偶者居住権とは)。

二人で貯めたお金が、相手名義の口座に入っています。

口座の名義人が亡くなると、その預金は原則として名義人の相続財産として扱われます。共同で築いた財産であることを相続人に主張できる場合もありますが、証明は簡単ではありません。名義と実態が分かる記録を残し、遺言で備えておくのが確実です。

今から婚姻届を出すと、何が変わりますか?

婚姻届を出せば法律上の配偶者として相続人になり、配偶者居住権や配偶者の税額軽減の対象にもなります。どちらを選ぶかは2人の考え方しだいですが、事実婚を続ける場合は、遺言などの準備が欠かせません。

まとめ

事実婚・内縁のパートナーは法定相続人ではなく、遺留分も配偶者居住権もありません。何も準備しなければ、財産は子・親・兄弟姉妹などの相続人に渡り、相続人がいない場合に特別縁故者として分与を受けられる可能性が残るだけです。パートナーに財産を残すなら、公正証書遺言による遺贈を基本に、死因贈与や生命保険を組み合わせます。受け取ったときは相続税の2割加算の対象で、配偶者の税額軽減や保険金の非課税枠は使えません。一方、遺族年金や未支給年金は事実婚でも対象になりうるので、年金事務所で確認しましょう。大切な人を守るために、元気なうちに備えておくことが何より大切です。

大切な人に、伝わる形で残す。

遺言の有無や保険の受取人などを整理して共有できるアプリ「ゆいのわ」は、ただいま準備中です。

ゆいのわについて見る

※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁・日本年金機構・裁判所の公式情報をもとにした一般的な解説です。相続税・年金の扱いや必要書類は個別の事情で異なり、本記事は法的・税務上の判断を示すものではありません。税金は税務署・税理士、年金は年金事務所、法的な判断は専門家にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
e-Gov法令検索「民法」第554条・第739条・第890条・第958条の2・第964条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
e-Gov法令検索「借地借家法」第36条 https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
e-Gov法令検索「相続税法」第18条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
国税庁「相続税法基本通達 第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》関係(19の2-2)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/06.htm
国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm
日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-3.pdf
e-Gov法令検索「国民年金法」第5条・第19条 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141
裁判所「特別縁故者に対する相続財産分与」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_16/index.html

この続きは、ゆいのわで。

手続きの期限や必要書類を、家族で一緒に進められます。

アプリを使ってみる

相続の「これからやること」を、家族みんなで。

ゆいのわは、生前のそなえから相続の手続きまで、家族で一緒に進められるアプリです。

アプリについて見る

ただいま準備中です