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「家族がもめないよう、確実に有効な遺言を残したい」——そう考える人に選ばれているのが公正証書遺言です。結論から言うと、公正証書遺言は公証人が遺言者の話を聞き取って作成し、原本を公証役場側で保管する遺言で、形式の不備で無効になる心配が少なく、亡くなった後の家庭裁判所の検認も不要です。さらに2025年10月1日からは、公正証書が原則として電子データで作成されるようになり、条件を満たせばウェブ会議で公証役場に行かずに作ることもできます。この記事では、しくみ、作成の流れと必要書類、手数料の計算方法、デジタル化で変わった点を、日本公証人連合会と法令をもとに整理します。
公正証書遺言とは:公証人と証人2人で作る遺言
民法969条は、公正証書遺言の方式として、①証人2人以上の立会いがあること、②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授(口頭で伝える)すること、を定め、具体的な作成手続きは公証人法に従うとしています。公証人は、法務大臣が任命する法律の専門家で、公正証書の作成などを担います。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 無効になりにくい | 公証人が方式と内容を確認しながら作るため、形式の不備が起きにくい |
| 検認が不要 | 民法1004条2項により、家庭裁判所の検認がいらない。亡くなった後すぐ手続きに使える |
| 紛失・改ざんの心配が少ない | 原本は公証人側で保管。日本公証人連合会によると、遺言者の死亡後50年、作成後140年、または遺言者の生後170年間保存する取扱い |
| 探しやすい | 平成元年以降に作られた遺言公正証書は、亡くなった後に全国の公証役場で無料で検索できる |
| 手書き不要 | 文字が書けない人や体の不自由な人でも作れる |
一方で、費用がかかること、証人2人が必要なこと、内容を証人に知られることがデメリットです。自分で書く遺言との違いは自筆証書遺言の書き方、遺言の種類全体は遺言書の種類と効力で比べられます。
2025年10月から公正証書がデジタル化
民事手続きのIT化を進める法改正(令和5年法律第53号)により、改正後の公証人法が2025年10月1日から施行されました。公正証書遺言にも次の変化があります。
| 項目 | 2025年10月以降 |
|---|---|
| 原本の形 | 原則として電子データ(電磁的記録)で作成。電子で作ることが難しい事情があるときは書面で作成(公証人法36条) |
| 署名 | 遺言者・証人は、書面への署名に代えて、電子データ上で署名に代わる措置(電子サインなど)をとる(同法40条)。病気などで電子サインができない場合も、公証人がその旨を記録して作成できる |
| リモート方式 | 嘱託人の申出があり、公証人が相当と認めるときは、映像と音声で相互にやりとりできるウェブ会議で、内容の確認や読み聞かせ・承認を行える(同法37条・40条) |
| 正本・謄本の受け取り | 紙の書面のほか、電子データでの提供も請求できる(同法44条) |
| 保存 | 電子データの原本などは日本公証人連合会が運営するシステムで保存。災害に備えたバックアップもある |
公正証書遺言の作り方6ステップ
- 内容を考える:誰に何を残すか、遺言執行者を誰にするかを決める(遺言執行者とは)
- 必要書類を集める:下の表を参照
- 公証役場に相談する:電話・メール・来所などで相談。相談は無料
- 文案を確認する:公証人が作った案を見て、修正点を伝える
- 証人2人を手配し、作成日を決める
- 作成当日:遺言者が証人2人の前で内容を公証人に伝え、公証人が読み聞かせまたは閲覧させ、遺言者と証人が内容の正確さを承認して署名(または電子サイン)し、公証人が仕上げる
主な必要書類
| 書類 | 用途 |
|---|---|
| 遺言者の印鑑登録証明書(発行後3か月以内)または顔写真付きの身分証明書 | 本人確認 |
| 遺言者と相続人の続柄が分かる戸籍謄本 | 相続人に残す場合 |
| 財産を受け取る人の住民票 | 相続人以外に遺贈する場合 |
| 不動産の登記事項証明書と固定資産評価証明書(または納税通知書) | 不動産がある場合。手数料の計算にも使う |
| 預貯金通帳のコピーなど | 預貯金などがある場合 |
必要書類は内容によって変わるため、相談のときに公証役場で確認しましょう。
証人になれない人
民法974条により、次の人は証人になれません。①未成年者、②推定相続人と受遺者(財産を受け取る人)、その配偶者と直系血族、③公証人の配偶者・4親等内の親族・書記・使用人。つまり、配偶者や子など身近な家族は証人になれません。適当な証人がいない場合は、公証役場で紹介してもらうこともできます。
公正証書遺言の費用(公証人手数料)
手数料は政令の公証人手数料令で決まっていて、どの公証役場でも同じです。2025年10月1日施行の改正で金額が改められ、現在は次のとおりです。
基本の手数料(目的の価額ごと)
| 財産を受け取る人ごとの価額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円超〜100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超〜200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超〜500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 49,000円 |
| 1億円超〜3億円以下 | 49,000円に、超過額5,000万円までごとに15,000円を加算 |
計算のしかた
- 受け取る人ごとに計算して合計:日本公証人連合会によると、遺言は相続人・受遺者ごとに別の法律行為として扱い、一人ひとりの受取額で手数料を出して合算します。
- 遺言加算:遺言全体の財産の価額が1億円以下なら、13,000円を加算します(公証人手数料令19条)。
- 枚数・交付の手数料:書面の原本が3枚を超えると1枚300円の加算。正本・謄本は、書面なら1枚300円、電子データなら1件2,500円。
- 出張する場合:病床で作るときは基本の手数料の50%が加算されることがあり、日当(1日2万円、4時間以内なら1万円)と交通費がかかります。
・妻の分:3,000万円 → 26,000円
・長男の分:1,000万円 → 20,000円
・遺言加算(合計4,000万円で1億円以下):13,000円
→ 基本の合計 59,000円。これに正本・謄本の交付手数料などが加わります。
※不動産の評価のしかたや枚数などで変わるため、正確な金額は公証役場で確認してください。
弁護士や司法書士、信託銀行などに文案の作成や証人を頼む場合は、別にその報酬がかかります(銀行のサービスについては銀行の遺言信託とは)。
公正証書遺言が向いている人
- 不動産が複数ある、事業用の財産があるなど、内容が複雑な人
- 子のいない夫婦、再婚家庭など、相続人の関係が複雑な人
- 家族の間で、遺言の有効性をめぐる争いが心配な人
- 病気や高齢で、全文を手書きするのが難しい人
- 亡くなった後、家族にすぐ手続きを進めてもらいたい人
公正証書遺言でも、配偶者・子・親の遺留分を侵害する内容なら、相続人から金銭を請求されることがあります。配分を考える際は遺留分とはも確認しておきましょう。
亡くなった後の使い方と探し方
遺言者が亡くなったら、手元の正本または謄本を使って、預貯金の払戻しや相続登記などの手続きを進めます。検認はいりません。正本・謄本が見つからなくても、相続人など利害関係人は、全国の公証役場で遺言の有無を検索してもらえ(平成元年以降に作成されたもの)、保管している公証役場で謄本の交付を請求できます。調べ方は遺言書があるか分からないときで詳しく解説しています。
よくある質問
公正証書遺言の費用は全部でいくらくらいですか?
公証人手数料は、受け取る人ごとの財産額で決まる基本手数料の合計に、財産全体が1億円以下なら13,000円を加えた額が目安です。たとえば子1人に3,000万円なら、26,000円+13,000円で39,000円程度に、正本・謄本の手数料などが加わります。
家族を証人にできますか?
できません。推定相続人(配偶者や子など)、財産を受け取る人、その配偶者や直系血族は証人になれません。公証役場で証人を紹介してもらえます。
オンラインだけで作れますか?
2025年10月から、公証人が相当と認めればウェブ会議で作成できるようになりました。ただし、本人確認や意思確認に支障がないことが条件で、すべての遺言で使えるわけではありません。まずは公証役場に相談しましょう。
作った後に内容を変えられますか?
いつでも新しい遺言を作って撤回・変更できます(民法1022条)。撤回だけをする公正証書の手数料は原則13,000円です(公証人手数料令19条2項)。書き換えの注意点は遺言書の書き換え・撤回をご覧ください。
まとめ:確実さと検認不要が強み、2025年10月からは電子化
公正証書遺言は、証人2人の立会いのもと、公証人が遺言者の話を聞き取って作る遺言で、検認が不要、原本は長期間保管され、亡くなった後は全国の公証役場で検索できます。2025年10月1日から原本は原則電子データになり、条件を満たせばウェブ会議でも作成できます。費用は受け取る人ごとの財産額で計算し、1億円以下なら遺言加算13,000円が加わります。まずは残したい財産と相手を整理して、公証役場の無料相談を使ってみましょう。
※本記事は2026年10月時点の法令と日本公証人連合会の公式案内をもとにした一般的な解説で、手数料の計算例は目安です。実際の手数料や必要書類、リモート方式を利用できるかは、内容や事情によって異なります。詳しくは公証役場に、遺言の内容については専門家にご確認ください。
日本公証人連合会「遺言」https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02
日本公証人連合会「手数料」https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow12
e-Gov法令検索「公証人手数料令」第9条・第19条・別表 https://laws.e-gov.go.jp/law/405CO0000000224
e-Gov法令検索「公証人法」第35条〜第40条・第44条(令和5年法律第53号による改正、2025年10月1日施行)https://laws.e-gov.go.jp/law/141AC0000000053
e-Gov法令検索「民法」第969条・第974条・第1004条・第1022条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089






