相続の準備・終活

生前にやる相続対策|争族・納税・認知症に備えるチェックリスト

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「相続対策」と聞くと節税を思い浮かべる方が多いかもしれません。けれども実際には、家族がもめないための準備(争族対策)こそが、財産の多い少ないに関係なく最も大切です。結論から言うと、生前の相続対策は、①相続人と財産と相続税の目安を把握し、②争族・納税資金・税負担・認知症の4つの柱で、自分の家に必要なものを選ぶ、という順番で進めるのが基本です。この記事では、それぞれの柱でできることを公的な情報をもとに整理し、最後にチェックリストにまとめます。

相続対策は「現状把握」から始める

どの対策が必要かは、家族構成と財産の中身で変わります。まず次の3つを確認しましょう。

確認すること 見るポイント
相続人は誰か 配偶者、子、親、兄弟姉妹のどこまでが相続人になるか。前婚の子や養子も含めて確認
財産は何があるか 預貯金・不動産・株式・保険・借入金。分けにくい不動産の割合が大きいかどうか
相続税がかかりそうか 遺産の合計が基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えるか

たとえば相続人が配偶者と子2人なら、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。遺産がこの範囲内なら、原則として相続税の申告も納税も必要ありません。人数の数え方や早見表は相続税の基礎控除とはで解説しています。ただし、小規模宅地等の特例などを使って税額がゼロになる場合でも、特例を受けるには申告が必要なことがあります。

相続対策の4つの柱

柱 目的 主な方法
①争族対策 家族がもめないようにする 遺言、遺留分への配慮、分け方の準備、想いを伝える
②納税資金対策 相続税を期限内に払えるようにする 現金の確保、保険の受取人の確認、売却の検討
③税負担の軽減 使える制度を無理なく使う 生前贈与、配偶者・自宅の特例、非課税枠
④認知症への備え 判断能力が衰えても財産を動かせるようにする 任意後見、家族信託
相続税がかからない家庭でも①と④は必要相続税がかからない家庭でも、分け方をめぐる争いや、判断能力の低下で預金や不動産を動かせなくなる問題は起こります。②③は相続税がかかりそうな家庭向け、①④はすべての家庭向けと考えると整理しやすくなります。

①争族対策:遺言と遺留分への配慮

遺言書で分け方を決めておく

遺言がなければ、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で分け方を決めることになります。話し合いがまとまらないと、預金の解約や不動産の名義変更が進みません。遺言で「誰に何を」を決めておけば、その負担を大きく減らせます。

  • 公正証書遺言:公証人が関与して作り、原本は公証役場で保管。家庭裁判所の検認が不要
  • 自筆証書遺言:全文・日付・氏名を自書して押印。法務局の保管制度(1通3,900円)を使えば検認が不要になり、紛失や改ざんの心配も減る

遺留分を意識した分け方にする

兄弟姉妹以外の相続人には、最低限の取り分である遺留分があります。全体の割合は、相続人が親などの直系尊属だけなら3分の1、それ以外は2分の1です(民法1042条)。遺留分を大きく下回る遺言は、遺留分侵害額請求のきっかけになり、かえって争いを招くことがあります(遺留分とは)。

分けにくい財産と想いを準備する

自宅しか大きな財産がない場合、誰が住み、ほかの相続人にどう報いるかが争点になりがちです。自宅を受け継ぐ人が他の相続人にお金を払う「代償分割」を想定するなら、その資金をどう用意するかも考えておきます。また、遺言の付言事項で分け方の理由や家族への感謝を書き添えると、受け止め方が変わります。

②納税資金対策:10か月以内に現金で払えるか

相続税の申告と納付の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。税金は金銭で一度に納めるのが原則で、延納(分割払い)や物納(財産で納める)は、申告期限までに申請して許可を受ける必要があります。

  • 財産の多くが不動産の場合:現金が足りず、期限までに売却を迫られることがあります。どの財産を納税に充てるかを考えておきます
  • すでにある生命保険を確認する:亡くなった人が保険料を負担していた死亡保険金は、相続人が受け取る分について「500万円×法定相続人の数」まで非課税になります。受取人が誰になっているか、受け取った人が納税資金に充てられるかを確認しておきましょう(生命保険の非課税枠)

③税負担の軽減:使える制度を無理なく

制度 概要
暦年贈与 受け取る人1人につき年110万円までは贈与税がかからない。ただし2024年以後の贈与は、相続などで財産を取得した人について相続開始前7年以内の分が相続財産に加算される(段階的に延長)
相続時精算課税 年110万円の基礎控除と、累計2,500万円の特別控除。相続時に精算する
贈与税の配偶者控除 婚姻期間20年以上の夫婦間で、自宅やその購入資金を贈与する場合、基礎控除とは別に最高2,000万円まで控除
小規模宅地等の特例 一定の要件を満たす自宅の土地は、330㎡までの部分の評価額を80%減額できる

生前贈与のやり方と注意点は生前贈与の基本、自宅の土地の特例は小規模宅地等の特例とはで詳しく解説しています。

節税だけを目的にしない税金を減らすことだけを優先すると、特定の家族に財産が偏って不公平感を生んだり、形だけの贈与が「名義預金」として相続財産に戻されたりすることがあります。税制は改正も多いため、相続税がかかりそうな場合は、税理士など専門家に家族全体の状況を見てもらうのが確実です。

④認知症への備え:判断能力があるうちに

認知症などで判断能力が衰えると、遺言を書く、贈与をする、不動産を売るといった行為が難しくなり、ここまでの対策が進められなくなります。元気なうちに選べる備えには次のようなものがあります。

  • 任意後見契約:判断能力が不十分になったときの財産管理などを、自分で選んだ人に託す契約。公正証書で結び、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだときから効力が生じます
  • 家族信託:自宅や預金などの管理・処分を、信頼できる家族に託す契約

どちらが合うかは、守りたい財産や家族の状況で変わります。比較は認知症になる前の相続対策をご覧ください。

生前の相続対策チェックリスト

現状の把握

  • ☐ 財産(プラスもマイナスも)を一覧にした
  • ☐ 相続人が誰になるかを確認した
  • ☐ 相続税がかかりそうか、基礎控除額と比べた
  • ☐ ネット口座やサブスクなど、見えにくい契約も把握した

争族対策

  • ☐ 遺言書を作った(または作るかどうか決めた)
  • ☐ 遺留分に配慮した分け方になっている
  • ☐ 自宅など分けにくい財産の扱いを考えた
  • ☐ 分け方の理由や想いを伝えた、または付言事項に書いた

納税資金・税負担

  • ☐ 相続税を払う現金の当てがある
  • ☐ 保険の受取人と契約形態を確認した
  • ☐ 生前贈与をするなら、記録の残し方を決めた
  • ☐ 自宅の特例など使えそうな制度を確認した

認知症への備え

  • ☐ 任意後見や家族信託を検討した
  • ☐ 財産の管理方法や希望を家族と話した

よくある質問

相続対策は何から始めればいいですか?

財産と相続人の把握からです。何がどれだけあり、誰が相続人になるかが分からなければ、遺言も贈与も計画できません。そのうえで、相続税がかかりそうかを基礎控除額と比べて確認しましょう。

財産が少ないので相続対策はいりませんか?

相続税がかからなくても、分け方の争いや、判断能力の低下による財産の凍結は起こり得ます。遺言や財産の一覧、任意後見の検討など、争族対策と認知症への備えはどの家庭にも役立ちます。

相続対策は誰に相談すればいいですか?

相続税は税理士、不動産の名義や遺言書の作成手続きは司法書士、相続人同士の争いがある場合の代理は弁護士が担当します。遺言の形式は公証役場や法務局でも案内しています。生前相談のメリットや相談先は相続の生前相談のメリットで整理しています。

生前贈与はいつから始めるべきですか?

暦年贈与は、2024年以後の分について相続開始前7年以内の贈与が相続財産に加算される仕組みに変わったため、亡くなる直前の贈与は効果が小さくなります。始めるなら早めに、計画的に行うのが一般的です。

まとめ:把握してから、4つの柱で選ぶ

生前の相続対策は、まず相続人・財産・相続税の目安を把握し、そのうえで争族対策・納税資金対策・税負担の軽減・認知症への備えの4つの柱から、自分の家に必要なものを選びます。相続税がかからない家庭でも、遺言と認知症への備えは役に立ちます。節税は家族の納得を大切に、無理のない範囲で。判断が難しいところは専門家と一緒に進めましょう。

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※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関の案内をもとにした一般的な解説です。どの対策が合うか、税額がいくらになるかは、財産の内容や家族の状況で異なります。具体的な判断は税務署や税理士・司法書士などの専門家にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
国税庁「No.4152 相続税の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm
国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm
国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4452.htm
国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
法務省「自筆証書遺言書保管制度 手数料一覧」https://www.moj.go.jp/MINJI/09.html
e-Gov法令検索「民法」第968条・第1004条・第1042条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
e-Gov法令検索「任意後見契約に関する法律」第2条・第3条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000150

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