相続税・お金

相続税が払えないとき|延納・物納の要件と納税資金の作り方

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「相続税がかかるのに、遺産は家と土地ばかりで現金が足りない」——そんなときに知っておきたいのが、相続税を分割で納める延納と、相続財産そのもので納める物納です。結論から言うと、相続税は申告期限までに金銭で一括納付するのが原則で、延納はそれが困難な場合に担保を出して年払いにする制度、物納は延納でも金銭で納めるのが困難な場合に限って認められる制度です。どちらも税務署の許可が必要で、申請の期限は申告期限と同じです。この記事では、国税庁の資料をもとに、延納・物納の要件と、その前に検討したい納税資金の作り方を整理します。

相続税は「期限内に金銭で一括」が原則

相続税の申告と納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税の申告期限)。納付が遅れると、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて延滞税が自動的にかかります。

期間 延滞税の割合(2026年1月1日〜12月31日)
納期限の翌日から2か月を経過する日まで 年2.8%
納期限の翌日から2か月を経過した日以後 年9.1%

割合は毎年見直されます。払えないまま放置するより、期限前に税務署へ相談し、延納・物納や資金の手当てを検討するほうが負担を抑えられます。国税庁の電話相談センターは、期限内の納税が困難な場合の相談は所轄の税務署の徴収担当へ、と案内しています。窓口・電子納付・クレジットカードなどの納め方は相続税の納付方法で解説しています。

相続税が払えないときの選択肢

方法 内容 注意点
相続財産を売って現金にする 不動産や株式を売却して納税資金にする 売却益に所得税・住民税。一定期間内なら取得費加算の特例あり
手元の資金を集める 預貯金、受け取った死亡保険金、相続人自身の資金など 他の相続人との分け方の調整が必要なことも
延納 担保を提供して年払いで納める 利子税がかかる。許可が必要
物納 相続財産そのもので納める 延納でも困難な場合に限る。財産の条件が厳しい

延納:相続税を年払いで納める制度

延納の要件

国税庁のタックスアンサーによると、次のすべてを満たす場合に延納を申請できます。

  • 相続税額が10万円を超えること
  • 金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、納付を困難とする金額の範囲内であること
  • 延納税額と利子税の額に相当する担保を提供すること(延納税額が100万円以下で、延納期間が3年以下なら担保は不要)
  • 申告期限(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添えて税務署長に提出すること

担保にできるのは、国債・地方債、税務署長が確実と認める社債などの有価証券、土地、保険を付けた建物、税務署長が確実と認める保証人の保証などです。相続した財産に限らず、相続人自身の財産や第三者の財産でもかまいません。担保の書類が期限に間に合わないときは、届出により1回3か月、最長6か月まで提出期限を延ばせます。税務署長は原則として申請期限から3か月以内(最長6か月)に許可か却下を決めます。

延納できる金額の考え方(令和7年4月以後の相続)

延納できるのは「納付を困難とする金額」までです。国税庁のチラシによると、計算の骨格は次のとおりです。

  • 納期限に持っている現金・預貯金など換価しやすい財産から、申請者と生計を一にする親族の3か月分の生活費と、事業を続けるための3か月分の運転資金を差し引いた額=期限に金銭で納付できる額
  • 納付すべき相続税額から、この金額を差し引いた残りが延納許可限度額

令和7年度の税制改正で、事業の運転資金の目安が前年の事業経費の1か月分から3か月分に見直されました。実際の計算は、申請書の別紙「金銭納付を困難とする理由書」で行い、根拠資料の写しを添付します。

延納期間と利子税

延納できる期間と利子税の割合は、相続税の計算の基礎になった財産のうち不動産等が占める割合によっておおむね決まります。主な区分は次のとおりです(特例割合は、2026年1月1日現在の延納特例基準割合1.3%で国税庁が計算したもの)。

不動産等の割合 区分 最長期間 利子税(本則) 特例割合
75%以上 不動産等に係る延納相続税額 20年 3.6% 0.6%
動産等に係る延納相続税額 10年 5.4% 0.9%
50%以上75%未満 不動産等に係る延納相続税額 15年 3.6% 0.6%
動産等に係る延納相続税額 10年 5.4% 0.9%
50%未満 一般の延納相続税額 5年 6.0% 1.0%

森林計画立木など、表にない区分もあります。特例割合は毎年変わるため、申請時に所轄税務署で確認してください。延納の対象は相続税の本税で、加算税・延滞税・連帯納付責任額は延納できません。

物納:相続財産で納める制度

物納の要件と財産の順位

物納は、延納によっても金銭で納付することが困難な場合に、その困難な金額を限度として認められます。物納に充てられるのは、相続税の課税価格の計算の基礎となった財産のうち日本国内にあるもので、次の順位によります。

順位 財産
第1順位 不動産、船舶、国債・地方債、上場株式等(物納劣後財産に当たるものはその後)
第2順位 非上場株式等(物納劣後財産に当たるものはその後)
第3順位 動産

相続時精算課税の適用を受けた財産などは物納できません。申請期限は延納と同じく申告期限で、物納手続関係書類の提出期限は届出により最長1年まで延ばせます。

物納できない財産・後回しになる財産

国が管理・処分しにくい財産は「管理処分不適格財産」として物納できません。たとえば、抵当権が設定されている不動産、権利の帰属に争いがある不動産、境界が明らかでない土地、共有の不動産、譲渡制限株式などです。また、建築基準法上の道路に2メートル以上接していない土地や、納税義務者が住んでいる建物とその敷地などは「物納劣後財産」とされ、ほかに適当な財産がない場合に限って物納に充てられます。

収納価額と費用に注意国が物納財産を受け取る価額(収納価額)は、原則として相続税の課税価格の計算の基礎となった価額です。小規模宅地等の特例を使った土地は、特例適用後の価額になります。境界標の設置や測量、登記などの整備費用と、許可までの固定資産税などは申請者の負担です。売却した場合の手取り額とあわせて比べる必要があります。

物納が却下されても、財産が不適格だった場合は却下の翌日から20日以内に1回に限り別の財産で再申請でき、延納で納付できると判断された場合は延納を申請できます。延納の許可を受けた後に支払いが難しくなった場合は、申告期限から10年以内に限り、まだ期限が来ていない分を物納に変更する「特定物納」の制度もあります。

延納・物納の前に考えたい納税資金の作り方

相続財産を売却する

相続した不動産や株式を、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売った場合、納めた相続税のうち一定額を売却した財産の取得費に加えられる特例があります(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)。売却益にかかる所得税を抑えられる可能性があります(相続した不動産の売却と税金)。複数の相続人で売却代金を分ける方法は遺産分割の3つの方法で整理しています。

分け方で納税資金の偏りを調整する

不動産を受け継ぐ人に現金が残らないと、その人だけが納税に困ります。不動産を取得する人が他の相続人にお金を払う代償分割で調整する場合の資金の工夫は代償分割の資金がないときを参考にしてください。

他の相続人の未納にも影響相続人の誰かが相続税を納めないと、ほかの相続人が、受け取った財産の範囲で納付を求められることがあります(連帯納付義務)。自分の分を納めて終わりではない点に注意してください(相続税の連帯納付義務)。

よくある質問

相続税をクレジットカードで分割払いにできますか?

クレジットカード納付は国税の納付手段の一つですが、税務署が年払いを認める延納とは別のものです。国税庁の案内では、納付税額に応じた決済手数料がかかり、1回の手続きで納付できるのは1,000万円未満かつカードの決済可能額以下とされています。カード会社への支払い方法は、カード会社との契約によります。

延納は相続人ごとに申請できますか?

延納は、相続税を納める義務のある人がそれぞれ申請するものです。要件を満たすかどうかも、申請する人ごとに判断されます。

延納と物納は、どちらを先に検討するものですか?

法律上、物納は延納によっても金銭で納付することが困難な場合に限られます。まず金銭での一括納付、次に延納、それでも難しい部分について物納という順番になります。

申告期限までに申請が間に合いそうにありません

期限内に申告する場合、延納・物納の申請期限は申告期限(納期限)です。担保や物納の書類は届出で提出期限を延ばせますが、申請書そのものは期限までに出す必要があります。早めに所轄税務署か税理士に相談してください。

まとめ

相続税は申告期限までに金銭で一括納付するのが原則で、遅れると延滞税がかかります。払えないときは、相続財産の売却や手元資金の確保をまず検討し、それでも難しい場合に延納(担保を出して年払い、利子税あり)、延納でも困難な部分に物納(国内の相続財産で納付、順位と条件あり)という順番です。どちらも申告期限までの申請が必要です。不動産が多い相続ほど、早い段階で財産の内訳と納税資金の見通しを立てておきましょう。

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※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁の公表資料をもとにした一般的な解説です。延滞税・利子税の割合は年ごとに変わります。延納・物納の可否や限度額、担保の適否は個別の事情で判断されるため、所轄の税務署または税理士にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
国税庁「No.4211 相続税の延納」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4211.htm
国税庁「No.4214 相続税の物納」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4214.htm
国税庁「延納・物納申請等」https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/enno-butsuno/01.htm
国税庁「令和7年度税制改正により物納許可限度額等の計算方法が変わりました」(チラシ)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0025006-033.pdf
国税庁「No.9205 延滞税について」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
国税庁「税についての相談窓口」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shirabekata/9200.htm
国税庁「クレジットカード納付」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/nofu-shomei/nofu/credit_nofu/index.htm
e-Gov法令検索「相続税法」第34条・第38条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073

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