相続税・お金

相続税がかからないケース|申告不要の判断と特例で申告が要る場合

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「うちは相続税なんて関係ないはず。でも本当に何もしなくていいの?」——相続税がかかる人は一部ですが、「税金がかからない」と「申告しなくてよい」は同じではありません。結論から言うと、正味の遺産額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下なら、相続税はかからず申告も不要です。一方、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って税額がゼロになる場合は、申告をしないと特例が使えません。この記事では、申告が要らないケースと要るケースの境目を、国税庁の案内にもとづいて整理します。

相続税がかからない基本の条件は「基礎控除以下」

ここが結論国税庁は、取得した財産の価額の合計額が遺産に係る基礎控除額の範囲内であれば、申告も納税も必要ありませんと案内しています。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です(相続税の基礎控除)。
法定相続人の数 基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円

法定相続人の数には、相続を放棄した人も含めて数えます。養子は、実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人までが数に入ります。

実際に相続税がかかるのは約1割

国税庁の公表では、令和6年分の死亡者数は約160万5千人で、そのうち相続税がかかった(税額のある申告書が出された)のは16万6,730人、課税割合は10.4%でした。基礎控除の引下げがあった平成27年分以降で最も高い水準です。大多数の家庭は相続税がかからない一方で、都市部に自宅がある、退職金や保険金がまとまって入るといった事情で、思いがけず基礎控除を超えることもあります。

「正味の遺産額」の出し方|足すもの・引くもの

基礎控除と比べるのは、預貯金や不動産をただ合計した額ではなく「正味の遺産額」です。国税庁は次のように説明しています。

区分 主な中身
遺産総額(足す) 預貯金、不動産、株式、自動車など。生命保険金や死亡退職金などの「みなし相続財産」も含む
相続時精算課税で贈与を受けた財産(足す) 贈与時の価額(2024年以後の贈与は年110万円の基礎控除を差し引いた残額)
非課税財産(引く) 生命保険金・死亡退職金のうち各「500万円×法定相続人の数」まで、墓地・墓石・仏壇など日常礼拝の物
葬式費用・債務(引く) 葬儀の費用、借入金、未払いの税金など
生前贈与の加算(足す) 亡くなる前の一定期間に受けた暦年贈与。相続開始が2026年12月31日までなら3年以内

生前贈与の加算期間は、2024年1月1日以後の贈与から段階的に延び、相続開始が2031年1月1日以後になると7年以内になります。年110万円以下で贈与税がかからなかった贈与も、加算の対象です。生命保険の非課税枠は生命保険の非課税枠、精算課税は相続時精算課税制度で詳しく解説しています。

見落としやすい3つ①受取人が決まっている死亡保険金(非課税枠を超えた部分)、②名義だけ家族の預金、③亡くなる前に受けた生前贈与。これらを入れ忘れて「基礎控除以下」と判断すると、あとから申告が必要だったと分かることがあります。

相続税がかからない・申告不要のケースと、申告が必要なケース

「税額ゼロ」になる理由によって、申告の要否が分かれます。

ケース 相続税 申告
正味の遺産額が基礎控除以下 かからない 不要
生命保険金などの非課税枠を差し引くと基礎控除以下 かからない 不要
小規模宅地等の特例を使うと基礎控除以下 かからない(特例を使えば) 必要
基礎控除を超えるが、配偶者の税額軽減で税額ゼロ かからない(軽減を使えば) 必要
基礎控除を超え、税額が出る かかる 必要(納税も)

小規模宅地等の特例を使うなら申告が必要

小規模宅地等の特例は、亡くなった方が住んでいた自宅の土地などについて、一定の面積まで評価額を減らす制度です。たとえば要件を満たす自宅の土地(特定居住用宅地等)なら、330㎡までの部分の評価額が80%減ります。

ここで重要なのが、国税庁の申告要否の判定ルールです。申告が必要かどうかを判定する「財産の価額の合計額」は、小規模宅地等の特例を適用しない場合の金額とされています。つまり、特例を使う前の金額が基礎控除を超えていれば、特例で税額がゼロになっても申告が必要です。

配偶者の税額軽減も申告して初めて使える

配偶者の税額軽減は、配偶者が取得した財産が「1億6千万円」か「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までなら、配偶者に相続税がかからない制度です。適用を受けるには、税額軽減の明細を記載した相続税の申告書に、戸籍謄本や遺産分割協議書の写しなどを添えて提出する必要があります。

「無税だから申告しない」は危険特例を使えば税額ゼロになる人が申告しないと、特例の適用がない状態で税額が計算され、本来の税金に加えて加算税や延滞税がかかるおそれがあります。令和6年分では、税額のない相続税の申告書が3万9,755件提出されています。特例などで税額がゼロでも、申告している人が少なくないことが分かります。

遺産分割がまとまらないと特例が使えない

小規模宅地等の特例も配偶者の税額軽減も、原則として申告期限までに分割が決まっている財産が対象です。期限までに分割できないときは、いったん特例なしで申告し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、3年以内に分割が決まった時点で特例を使えます。期限や手続きの詳細は相続税の申告期限で解説しています。

申告が必要かどうかの判断の流れ

  1. 財産と債務をすべて洗い出す:預貯金・不動産・有価証券のほか、保険金、退職金、名義預金、生前贈与も確認する
  2. 正味の遺産額を出す:非課税枠、葬式費用、債務を差し引き、加算対象の贈与を足す。小規模宅地等の特例はまだ使わない
  3. 基礎控除額と比べる:法定相続人の数を確定させて計算する
  4. 基礎控除以下なら:相続税はかからず、申告も不要
  5. 基礎控除を超えるなら:特例で税額がゼロになる場合も含めて、申告が必要。期限は亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内

国税庁のホームページには、相続財産の金額などを入力すると申告のおおよその要否を判定できる「相続税の申告要否判定コーナー」があります。不動産の評価は路線価などで計算するため、時価や固定資産税評価額とは数字が違う点に気をつけましょう。

基礎控除ぎりぎりのときに確認したいこと

判断が難しいのは、正味の遺産額が基礎控除に近い場合です。不動産の評価方法、保険金の契約形態(誰が保険料を負担していたか)、名義預金にあたるかどうかで、結論が変わることがあります。

  • 不動産は、路線価や固定資産税評価額をもとに、評価の手順どおりに計算したか
  • 死亡保険金の保険料を負担していたのは亡くなった方か(負担者で税金の種類が変わる)
  • 家族名義でも、実質的に亡くなった方のお金だった預金はないか
  • 相続時精算課税を選んで贈与を受けた人はいないか

迷うときは、税務署の相談窓口や税理士に確認すると安心です。依頼する場合の費用感は相続税申告の税理士費用の相場も参考にしてください。

よくある質問

基礎控除以下なら、税務署に何か届け出る必要はありますか?

相続税の申告は不要です。ただし、税務署から相続税についての問い合わせの書類が届いた場合は、内容を確認して回答しておくと安心です。財産の一覧や評価の根拠になった資料は、念のため保管しておきましょう。

生命保険金を受け取りましたが、申告は必要ですか?

相続人が受け取った死亡保険金は、合計で「500万円×法定相続人の数」まで非課税です。非課税枠を差し引いたうえで、ほかの財産と合わせた正味の遺産額が基礎控除以下なら、申告は不要です。

自宅の土地に小規模宅地等の特例を使えば基礎控除以下になります。申告はいりますか?

必要です。申告要否は特例を使う前の金額で判定するため、特例前の金額が基礎控除を超えるなら、期限内に申告して特例を適用します。

相続税がかからなくても、相続登記は必要ですか?

必要です。相続税の有無にかかわらず、不動産を相続した人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。預貯金の解約なども、相続税とは別に進めます。

まとめ

相続税は、正味の遺産額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下なら、かからず申告も不要です。生命保険金などの非課税枠や債務・葬式費用は差し引いて判定できます。一方、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減で税額がゼロになる場合は、申告して初めて特例が使えます。判定は特例を使う前の金額で行う点が最大の注意点です。保険金や生前贈与の入れ忘れがないよう、まずは財産を漏れなく一覧にすることから始めましょう。

かかるかどうかは、まず全体の把握から。

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※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁の公表情報をもとにした一般的な解説です。申告の要否や特例の適用は、財産の内容や家族の状況で異なります。具体的な判断は、税務署または税理士にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm
国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
国税庁「No.4152 相続税の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
国税庁「No.4108 相続税がかからない財産」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4108.htm
国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm
国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm
国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(令和7年12月)https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_shinkoku/index.htm

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