本ページはプロモーションを含みます
「相続税の申告を済ませたけれど、税務調査は来るのだろうか」——相続税は、申告した後も気がかりが残りやすい税金です。結論から言うと、相続税の実地調査が行われるのは申告全体の一部ですが、調査を受けた案件の8割以上で何らかの申告漏れなどが指摘されています。指摘が多いのは現金・預貯金で、家族名義の預金(名義預金)や生前の引き出しがよく確認されます。この記事では、国税庁が公表している最新の調査事績をもとに、調査の実情と、申告の段階でできる備えを整理します。
相続税の税務調査の最新統計(令和6事務年度)
国税庁は毎年、相続税の調査の状況を公表しています。2025年12月に公表された令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月)の数字は次のとおりです。
| 項目 | 実地調査 | 簡易な接触 |
|---|---|---|
| 件数 | 9,512件 | 21,969件 |
| 申告漏れ等の非違件数 | 7,826件(非違割合 82.3%) | 5,796件 |
| 申告漏れ課税価格 | 2,942億円 | 1,123億円 |
| 追徴税額(本税+加算税) | 824億円 | 138億円 |
| 1件あたりの追徴税額 | 867万円 | 63万円 |
実地調査では、非違があった7,826件のうち1,065件(13.6%)に重加算税が課されています。重加算税は、財産を隠したり事実を偽ったりした場合に課される重い加算税です。
なお、令和6年分の相続税の申告書が提出された被相続人は166,730人でした。集計の期間や対象が違うため単純には比べられませんが、実地調査の件数はその1割に満たない規模です。「申告すれば必ず調査が来る」わけではない一方、実際に調査に進んだ案件では高い割合で申告漏れが見つかっている、というのが統計から読み取れる実情です。
申告漏れが見つかりやすい財産は現金・預貯金
令和6事務年度の実地調査で見つかった申告漏れ相続財産は2,879億円で、そのうち現金・預貯金等が1,247億円(43.3%)と最も多くなっています。土地や家屋のように登記で把握される財産より、お金の流れのほうが申告から漏れやすいことがうかがえます。
国税庁が公表した調査事例にも、次のようなものがあります。
- 相続開始前に引き出した多額の現金を相続人の自宅で保管し、関与した税理士にも伝えず申告から外していた
- 相続開始前に、被相続人の口座から相続人やその家族名義の口座へ預金を移し、財産が基礎控除以下に見えるようにしていた(無申告)
どちらも、被相続人の口座からの大きな出金や資金移動がきっかけで調査に至っています。自宅に置いていた現金の扱いはタンス預金と相続税で詳しく解説しています。
調査で確認されやすい3つのポイント
家族名義の預金(名義預金)
国税庁の「相続税の申告のしかた」は、家族名義の預金について「名義にかかわらず、被相続人が取得等のための資金を拠出していたことなどから被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象」と説明しています。子や孫の名義でも、お金を出したのが被相続人で、通帳や印鑑も被相続人が管理していたような預金は、申告に含める必要があります。判断の考え方は名義預金とはで整理しています。
生前贈与の加算
相続などで財産を取得した人が、亡くなる前の一定期間に被相続人から暦年贈与を受けていた場合、その贈与財産は相続税の計算に足し戻します。2026年中に相続が始まった場合、加算する期間は相続開始前3年以内で、年110万円以下の贈与も加算の対象です。この期間は2024年以後の贈与から段階的に7年へ延びます(暦年贈与と2024年改正)。
生前の多額の引き出しと使い道
亡くなる前の数年間に口座から大きな金額が出金されている場合、そのお金が何に使われ、相続開始時にどこにあったのかが確認されます。医療費や介護施設の費用、生活費などに使ったのであれば、領収書や契約書で説明できるようにしておくと安心です。
税務調査の流れと時期
実地調査を行う場合、税務署は原則として事前に、調査を始める日時・場所・目的・対象となる税目や期間・確認する帳簿書類などを納税者に通知します(国税通則法74条の9)。税理士が税務代理をしている場合は、税理士にも通知されます。日時や場所は、合理的な理由があれば変更を相談できます。
調査がいつ来るかについて、国税庁は時期の目安を公表していません。法律上、税務署が申告内容を正す更正は、法定申告期限から原則5年、偽りその他不正の行為があった場合は7年まで行えます(同法70条)。申告後しばらく連絡がなくても、関係書類はこの期間を目安に保管しておきましょう。
申告漏れを指摘されたときにかかる税金
調査で申告漏れが見つかると、不足していた相続税(本税)に加えて、加算税と延滞税がかかります。加算税の割合は国税通則法で次のように定められています。
| 種類 | 主なケース | 割合 |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 期限内に申告したが、税額が少なかった | 10%(一定額を超える部分は15%)。調査の通知後、指摘を予知する前の修正申告は5%、通知前の自主的な修正申告は課されない |
| 無申告加算税 | 期限までに申告しなかった | 15%(50万円超の部分は20%、300万円超の部分は30%)。調査通知前の自主的な期限後申告は軽減 |
| 重加算税 | 財産を隠す・事実を偽るなどした | 過少申告の場合35%、無申告の場合40% |
このほか、納付が遅れた日数に応じて延滞税がかかります。申告後に自分で誤りに気づいたときは、調査の通知が来る前に修正申告をすれば加算税の負担を抑えられます(相続税の修正申告・更正の請求)。
税務調査に備えるために申告の段階でできること
- 通帳を数年分さかのぼって確認する:大きな出金・家族への振込があれば、使い道を確かめて記録しておく
- 家族名義の預金・保険を洗い出す:誰がお金を出し、誰が管理していたかを確認する
- 生前贈与の記録を残す:贈与契約書、振込記録、贈与税の申告書の控えを保管する
- 手元の現金も相続開始日の残高で計上する
- 根拠資料を申告後も保管する:残高証明書、評価の資料、領収書など
よくある質問
相続税を申告すると、必ず税務調査が来ますか?
必ず来るわけではありません。国税庁の公表では、令和6事務年度の実地調査は9,512件、令和6年分の申告書提出に係る被相続人は166,730人でした。ただし、調査とは別に文書や電話で申告内容の確認を求める「簡易な接触」が2万件以上行われています。
税務調査はいつごろ来ますか?
国税庁は時期の目安を公表していません。法律上は法定申告期限から原則5年(偽りその他不正の行為があれば7年)まで更正ができるため、この期間は資料を保管しておくのが無難です。
海外の預金や不動産も調べられますか?
国税庁は、租税条約などに基づく情報交換を活用して海外資産の把握に取り組んでいるとしています。令和6事務年度の海外資産関連事案の実地調査は1,359件でした。海外資産の扱いは海外資産の相続税をご覧ください。
指摘された内容に納得できないときはどうすればよいですか?
調査の結果に基づく更正などの処分に不服がある場合は、再調査の請求や審査請求といった不服申立ての制度があります。期限や手続きは処分の通知書に記載されています。判断に迷うときは、税理士に相談してください。
まとめ
相続税の実地調査は申告の一部に対して行われますが、令和6事務年度は調査した案件の82.3%で申告漏れなどが見つかり、1件あたりの追徴税額は867万円でした。指摘が最も多いのは現金・預貯金で、名義預金、生前の引き出し、生前贈与の加算がよく確認されます。調査の通知前に誤りを自分で直せば加算税の負担は小さくなります。通帳の動きや贈与の記録を確かめ、財産をもれなく申告することが、いちばんの備えです。
※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁の公表資料をもとにした一般的な解説です。統計は公表時点の数値で、調査の有無や指摘の内容は個別の事情によって異なります。個別の申告内容や調査への対応は、税務署または税理士にご確認ください。
国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月)https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf
国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(令和7年12月)https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf
国税庁「相続税の申告のしかた(令和8年分用)」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2026/index.htm
国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
e-Gov法令検索「国税通則法」第65条・第66条・第68条・第70条・第74条の9 https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
e-Gov法令検索「税理士法」第33条の2・第35条 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237






