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「親がFXをしていたらしい。ポジションが残ったままだったらどうなるの?」——FX(外国為替証拠金取引)や外貨預金、外国株式などの外貨建て資産は、為替や相場の動きで価値が日々変わるうえ、ネット取引が中心で家族が気づきにくい財産です。結論から言うと、FX口座や外貨預金も相続財産で、相続税の評価では原則として取引金融機関が公表する亡くなった日の対顧客直物電信買相場(TTB)で円に換算します。特にFXは、未決済の取引(建玉)が残っていると損失が膨らむおそれがあるため、口座を見つけたら早めに取引業者へ連絡することが大切です。この記事では、手続き・評価・税金を国税庁の情報をもとに整理します。
FX・外貨建て資産の相続の全体像
| 財産の種類 | 相続での主な注意点 | 相続税の評価の考え方 |
|---|---|---|
| FX口座 | 未決済の建玉が残っていると相場で損益が動き続ける | 口座の残高・損益を確認し、円換算して評価(方法は税理士に確認) |
| 外貨預金 | 銀行の相続手続きで払い戻しや名義変更 | 預入高と既経過利子(税引後)を、TTBで円換算 |
| 外国株式・外貨建て投資信託 | 証券会社で相続人の口座へ移管 | 外国の価格などをもとに評価し、TTBで円換算 |
海外の銀行口座や不動産など、外国にある財産そのものの課税範囲や外国税額控除は海外資産の相続税で扱っています。この記事は、国内の金融機関で持つ外貨建ての資産を中心に解説します。
FX口座の相続で最初に気をつけること
建玉(ポジション)は放っておくと動き続ける
FXは、証拠金を担保にその何倍もの金額の外貨を売買する取引です。決済していない取引(建玉)が残っていると、亡くなった後も為替の動きに合わせて損益が変わり続けます。相場が大きく動けば、証拠金に対する損失の割合が一定水準を超えたときに取引を自動で決済する仕組み(ロスカット)が働くこともあります。
手続きの流れ
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ①取引業者へ連絡 | 口座名義人が亡くなったことを伝え、建玉の扱いと相続手続きの案内を受ける |
| ②残高を確認 | 死亡日時点の残高・評価損益が分かる書類(残高証明書など)を依頼 |
| ③引き継ぐ人を決める | 遺言の確認、または遺産分割協議 |
| ④書類を出す | 所定の依頼書、戸籍謄本、遺産分割協議書など |
| ⑤精算・受け取り | 建玉の決済や口座の精算を経て、相続人が受け取る |
建玉を相続人がそのまま引き継げるのか、決済して現金で精算するのかは、取引業者の約款や手続きで決まります。家族が故人のIDでログインして自分で決済するのではなく、業者の正式な手続きを使ってください。
外貨建て資産の相続税評価と為替レート
原則は「取引金融機関のTTB」で円換算
財産評価基本通達4-3は、外貨建ての財産を円に換算するときは、原則として納税義務者の取引金融機関が公表する、課税時期(亡くなった日)の最終の為替相場を使うと定めています。使うのは「対顧客直物電信買相場(TTB)」またはこれに準ずる相場です。外貨預金のように取引金融機関が決まっている場合は、その金融機関の相場を使います。
| 場面 | 使うレート |
|---|---|
| 外貨建ての財産(預金・株式など) | TTB(対顧客直物電信買相場) |
| 外貨建ての債務 | TTS(対顧客直物電信売相場) |
| 亡くなった日に相場がない(休日など) | その前で最も近い日の相場 |
| 先物為替予約で相場が確定している | 予約で確定している相場 |
外貨預金の評価の計算例
預貯金は、亡くなった日の預入高に、その日に解約したとすれば受け取れる既経過利子から源泉徴収される税額相当を差し引いた額を加えて評価します(通達203)。普通預金のように既経過利子が少額なものは、預入高だけで評価します。
(10,000ドル+50ドル)×148円=148万7,400円
外国株式・FX口座の評価
外国株式や外貨建ての投資信託も、通達の考え方に沿って外貨建ての価額を求め、TTBで円に換算します。FX口座は、預けている証拠金に加え、建玉の評価損益をどう扱うかが問題になります。取引業者に死亡日時点の残高証明書を出してもらい、評価方法は税理士に確認するのが確実です。国内の株式の評価ルールは株式・投資信託の相続で解説しています。
相続後に決済・売却したときの税金
FXの損益は「先物取引に係る雑所得等」
国税庁によると、金融商品取引法上の市場デリバティブ取引や、登録業者などを相手方とする店頭デリバティブ取引にあたるFXの差金等決済による利益は、「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税(所得税15%・住民税5%。別に復興特別所得税)の対象です。損失は他の「先物取引に係る雑所得等」と通算でき、一定の要件のもとで翌年以後3年間繰り越せます。これらに当たらない取引の利益は、一般的に総合課税の雑所得です。
亡くなった年の取引は準確定申告で
亡くなった年に本人がFXで利益を出していた場合、その年分は相続人が準確定申告で申告することになります。相続後に相続人が決済・売却した分は、相続人自身の所得として申告します。外国株式を売った場合の取得費は、国内株式と同じく亡くなった方の取得費を引き継ぐのが原則です。外貨預金の為替差益など、商品によって課税の扱いが違うものもあるため、判断に迷ったら税務署や税理士に確認しましょう。
生前にできる備え
- FX・外貨預金・外国株式など、どの会社で何を持っているかを家族が分かるようにしておく
- FXで建玉を持ち続ける場合は、そのリスクを家族に伝えておく。入院などで管理できなくなったときの方針も考えておく
- 使っていない口座は、元気なうちに解約・整理する
- ID・パスワードは書き残さず、口座の在り処だけを共有する
ネット中心の口座の見つけ方はネット銀行・ネット証券の相続も参考になります。
よくある質問
為替レートはTTMやTTSを使ってはいけないのですか?
財産の円換算は、原則としてTTB(対顧客直物電信買相場)またはこれに準ずる相場です。債務を換算するときはTTSに読み替えます。どの金融機関の相場かも含めて、使ったレートは記録しておきましょう。
FX口座で損失が出ていて、口座がマイナスでした。
不足金は亡くなった方の債務として相続の対象になり得ます。ほかにも借入れがないかを確認し、相続放棄や限定承認を検討する場合は、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所での手続きが必要です(借金・ローンの相続)。
外貨預金は外貨のまま相続できますか?
外貨のまま相続人の口座へ移せるか、円で払い戻すかは金融機関ごとに異なります。相続人の口座が必要か、手数料がかかるかも含めて、取引銀行に確認してください。
まとめ:FXは「早めの連絡」、外貨資産は「TTBで円換算」
FX口座や外貨預金、外国株式も相続財産です。FXは未決済の建玉が残っていると損益が動き続け、不足金が債務になるおそれもあるため、口座を見つけたら早めに取引業者へ連絡しましょう。相続税の評価では、原則として取引金融機関が公表する亡くなった日のTTBで円に換算します。相続後のFXの決済益は「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税です。生前に、どの会社で何を持っているかを家族と共有しておくことが、いちばんの備えになります。
※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁の公式情報をもとにした一般的な解説です。評価額・税額・手続きは、商品や契約内容、個別の事情で異なります。手続きは各取引業者・金融機関に、税金は税務署・税理士にご確認ください。
国税庁「財産評価基本通達 第1章 総則(4-3 邦貨換算・5-2 国外財産の評価)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/01/01.htm
国税庁「財産評価基本通達 203(預貯金の評価)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/08.htm
国税庁「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1521.htm
国税庁「No.1464 譲渡した株式等の取得費」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1464.htm






