遺言・遺留分

秘密証書遺言とは|作り方・費用とメリット・デメリットを比較

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遺言の方式には、自筆証書遺言・公正証書遺言のほかに「秘密証書遺言」があります。名前は聞いたことがあっても、どんな遺言なのか分からないという方が多いのではないでしょうか。結論から言うと、秘密証書遺言は遺言の内容は誰にも見せずに、その遺言書が本人のものとして存在することを公証人と証人に証明してもらう方式です。本文はパソコンで作っても代筆でもよい一方、公証人は内容を確認しないため、方式の不備や内容の誤りを防げず、家庭裁判所の検認も必要です。この記事では、民法970条にもとづく作り方、費用、ほかの方式との違いを整理します。

秘密証書遺言とは:内容は秘密、存在は証明

民法967条は、普通の方式による遺言を「自筆証書、公正証書又は秘密証書」の3種類と定めています。秘密証書遺言は、その3つ目です。

  • 内容は秘密:遺言書は封筒に入れて封印した状態で公証人に提出するため、公証人も証人も中身を見ない
  • 存在は証明:公証人が封紙に提出の日付と遺言者の申述を記載し、遺言者・証人とともに署名押印する
  • 保管は本人:完成した遺言書は遺言者自身が保管する

遺言の種類と効力の全体像は遺言書の種類と効力で解説しています。

秘密証書遺言の作り方:民法970条の4ステップ

ステップ やること(民法970条1項)
1. 遺言書を作る 遺言者が、遺言書に署名し、印を押す。本文は手書きでなくてもよい
2. 封をして封印する 遺言者が遺言書を封じ、遺言書に押したのと同じ印章で封印する
3. 公証人と証人の前で申述する 公証人1人と証人2人以上の前に封書を提出し、自分の遺言書であることと、筆者の氏名・住所を述べる
4. 封紙に記載・署名押印する 公証人が提出の日付と遺言者の申述を封紙に記載し、遺言者・証人とともに署名押印する

パソコンや代筆で作ってもよい

日本公証人連合会は、秘密証書遺言は自書である必要がないため、パソコンなどで作成しても、第三者が筆記したものでも差し支えないと案内しています。ただし、遺言者本人の署名と押印は必要です。代筆してもらった場合は、ステップ3で「筆者」としてその人の氏名と住所を述べます。

証人になれない人

未成年者、推定相続人や受遺者とその配偶者・直系血族などは、証人になれません(民法974条)。家族に頼めないことが多いため、証人の手配も事前に考えておきます。口がきけない方は、通訳人の通訳による申述や封紙への自書で申述に代える方法が定められています(民法972条)。

訂正するときのルール

本文の加除や変更は、自筆証書遺言と同じルール(変更の場所を示し、変更した旨を付記して署名し、変更の場所に押印)に従わなければ効力を生じません(民法970条2項・968条3項)。

秘密証書遺言の費用

公証人の手数料は、公証人手数料令第28条で、秘密証書による遺言の方式に関する記載について1万3,000円と定められています。公正証書遺言のように財産の価額によって変わることはありません。このほか、証人を依頼する場合はその謝礼などがかかることがあります。

ほかの方式の費用(参考)公正証書遺言は、財産の価額に応じた手数料に、目的の価額が1億円以下なら遺言加算1万3,000円が加わります(公証人手数料令第19条)。自筆証書遺言を法務局に預ける場合の保管申請手数料は1件3,900円です。

自筆証書・公正証書との違い(比較表)

項目 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
本文の作り方 全文・日付・氏名を自書(財産目録は自書不要) 公証人が作成 パソコン・代筆も可。署名押印は本人
内容の秘密 守れる 公証人・証人は知る 守れる
証人 不要 2人以上 2人以上
公証人の内容チェック なし あり なし
保管 自宅など/法務局に預けられる 原本は公証役場 本人(法務局の保管制度は使えない)
家庭裁判所の検認 必要(法務局保管なら不要) 不要 必要
費用 無料(保管制度は3,900円) 財産額に応じる 公証人手数料1万3,000円

それぞれの詳しい作り方は自筆証書遺言の書き方、公正証書遺言とは、自筆証書遺言書保管制度をご覧ください。

秘密証書遺言のメリット・デメリット

メリット

  • 遺言の内容を、公証人や証人を含め誰にも知られずに残せる
  • 本文をパソコンで作れる。長い文章でも書き間違いの訂正がしやすい
  • 公証人の関与で、本人の遺言書であることと作成日がはっきりする
  • 費用が財産の額にかかわらず一定

デメリット

内容の不備と保管のリスクは残る日本公証人連合会は、秘密証書遺言の問題点として、公証人が内容を確認できないため法律的な不備があったり無効になったりする危険があること、遺言者自身が保管するため紛失や、発見した人による破棄・隠匿・改ざんの危険があることを挙げています。さらに、法務局の保管制度を使えないため、発見した人が家庭裁判所に届け出て検認を受けなければなりません。
  • 証人2人の手配と公証役場での手続きが必要
  • 本人保管のため、家族が存在に気づかないおそれがある
  • 相続開始後、検認の手続きに時間がかかる(遺言書の検認)

方式に不備があったとき:自筆証書遺言として有効になる場合

民法971条は、秘密証書遺言としての方式に欠けるところがあっても、自筆証書遺言の方式(全文・日付・氏名の自書と押印)を満たしていれば、自筆証書遺言として効力を持つと定めています。たとえば封印の仕方に不備があっても、本文がすべて手書きで日付・氏名・押印がそろっていれば、自筆証書遺言として扱われる可能性があります。逆に、パソコンで作った秘密証書遺言は、秘密証書の方式に不備があると、自筆証書遺言としても認められません。

秘密証書遺言はどんな人に向いているか

秘密証書遺言が選択肢になるのは、「内容は誰にも知られたくない」「でも本人が作ったことは公的にはっきりさせたい」「長文で手書きは難しい」といった希望がそろう場合です。一方で、内容の確実さを重視するなら公証人が関与する公正証書遺言、費用を抑えて紛失や改ざんを防ぎたいなら法務局の保管制度を使う自筆証書遺言のほうが、弱点が少ない方式といえます。どの方式でも、遺言の存在を家族にどう伝えるかは考えておきたいところです(遺言を家族に伝えるか)。

よくある質問

秘密証書遺言は、亡くなった後どうやって見つけてもらえばいいですか?

遺言書そのものは本人が保管するため、家族が保管場所を知らなければ見つからないおそれがあります。内容は秘密にしたまま、「秘密証書遺言を作ったこと」と「保管場所」だけを信頼できる人に伝えておく方法があります。遺言書の探し方は遺言書があるか分からないときで解説しています。

見つかった秘密証書遺言は、その場で開けてもいいですか?

開けてはいけません。封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などの立会いのもとで開封します(民法1004条3項)。裁判所の外で開封すると、5万円以下の過料の対象になります(民法1005条)。

秘密証書遺言を法務局に預けることはできますか?

できません。法務局の保管制度は自筆証書遺言が対象で、日本公証人連合会も、秘密証書遺言は遺言書保管制度を利用できないと案内しています。

まとめ:内容の秘密と引き換えに、確実さの面で弱点がある

秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま、遺言書の存在を公証人と証人2人に証明してもらう方式です。本文はパソコンや代筆でも作れ、公証人の手数料は1万3,000円です。一方で、公証人は内容を確認しないため不備のリスクが残り、本人保管で法務局の保管制度も使えず、検認も必要です。内容の秘密を最優先にするのでなければ、公正証書遺言や保管制度を使った自筆証書遺言も比べたうえで選びましょう。

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※本記事は2026年10月時点の法令と公的な案内をもとにした一般的な解説です。遺言の有効性や適した方式は、個別の事情によって異なります。作成にあたっては、公証役場や弁護士・司法書士などの専門家にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
e-Gov法令検索「民法」第967条・第968条・第970条・第971条・第972条・第974条・第1004条・第1005条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
e-Gov法令検索「公証人手数料令」第19条・第28条 https://laws.e-gov.go.jp/law/405CO0000000224
日本公証人連合会「遺言」(秘密証書遺言のQ&A)https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02
裁判所「遺言書の検認」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html
法務省「自筆証書遺言書保管制度 手数料」https://www.moj.go.jp/MINJI/09.html

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