遺言・遺留分

遺言でできること・できないこと|法的効力のある事項一覧

本ページはプロモーションを含みます

「遺言に書いておけば、どんなことでも家族に守ってもらえる」——そう思われがちですが、実は遺言で法的な効力が生じるのは、民法などの法律で「遺言でできる」と定められた事項に限られます。財産の分け方や遺贈、子の認知、遺言執行者の指定などはできますが、遺留分をなくすことや、家族に介護を義務づけることはできません。この記事では、遺言でできること・できないことを条文つきの一覧で整理し、できないことを実現したいときの代わりの方法も紹介します。

遺言でできることは法律で決まっている

民法960条は、遺言は法律に定める方式に従わなければすることができないと定めています。そのうえで、遺言で何ができるかは、民法や信託法、保険法などの条文で一つずつ定められています。こうした法律上の効力が生じる事項を、一般に「遺言事項」と呼びます。

遺言事項以外のことを書いても遺言が無効になるわけではありませんが、その部分に法的な拘束力はありません。家族へのメッセージとして書く部分は「付言事項」と呼ばれます(付言事項の書き方)。

遺言でできること一覧(財産に関すること)

できること 内容 根拠
相続分の指定 「妻に2分の1、長男と長女に4分の1ずつ」など、法定相続分と違う割合を決める。第三者に決めるよう委ねることもできる 民法902条
遺産分割方法の指定 「自宅は妻に、預金は長男に」など、誰がどの財産を取るかを決める(「相続させる」遺言) 民法908条1項・1014条2項
遺産分割の禁止 相続開始から5年を超えない期間、遺産の分割を禁じる 民法908条1項
遺贈 相続人以外の人や団体にも、財産を割合(包括)または特定して渡す 民法964条
負担付遺贈 「財産を渡す代わりに妻の世話をすること」など、受遺者に義務を負わせる 民法1002条
特別受益の持ち戻し免除 生前贈与などを相続分の計算で差し引かないよう意思表示する 民法903条3項
配偶者居住権の遺贈 配偶者が住み続ける権利を遺贈する(要件あり) 民法1028条1項2号
遺留分侵害額の負担割合 受遺者が複数のとき、誰がどの割合で負担するかを定める 民法1047条1項2号
遺言信託 信頼できる人に財産を託し、家族のために管理・処分してもらう 信託法3条2号
保険金受取人の変更 生命保険の受取人を遺言で変更する(保険会社への通知が必要) 保険法44条

もっともよく使われるのは、相続分や遺産分割方法の指定、遺贈です。遺贈のしくみは遺贈とは、自宅に住み続ける権利は配偶者居住権とはで詳しく解説しています。

保険金受取人の変更は通知を忘れずに保険法44条は、遺言による保険金受取人の変更は、遺言の効力が生じた後に保険契約者の相続人が保険会社に通知しなければ、保険会社に対抗できないと定めています。通知の前に元の受取人へ支払われてしまうおそれもあります。また、保険法の規定は原則として同法の施行日以後に結ばれた契約に適用されるため(同法附則2条)、古い契約や、共済の種類によっては遺言で変更できない場合もあります。確実にしたいなら、生前に保険会社で受取人を変更しておくのが安心です(生命保険の受取人の見直し)。

遺言でできること一覧(身分・手続きに関すること)

できること 内容 根拠
子の認知 婚姻外で生まれた子を、遺言で認知する 民法781条2項
未成年後見人の指定 最後に親権を行う人が、未成年の子の後見人を指定する 民法839条
未成年後見監督人の指定 未成年後見人を監督する人を指定する 民法848条
推定相続人の廃除・取り消し 虐待などがあった相続人の相続権を失わせるよう求める。廃除の取り消しも遺言でできる 民法893条・894条2項
祭祀を主宰する人の指定 お墓や仏壇などを引き継ぐ人を指定する 民法897条1項
遺言執行者の指定 遺言の内容を実現する人を指定する。指定を第三者に委ねることもできる 民法1006条1項

子の認知や相続人の廃除は、遺言が効力を生じた後に遺言執行者が届出や家庭裁判所への請求を行います。こうした遺言では執行者の指定が特に重要です(遺言執行者とは)。廃除は、家庭裁判所が認めて初めて効力が生じる点にも注意しましょう。

遺言でできないこと

次のようなことは、遺言に書いても法的な効力が生じない、または法律で禁じられています。

できないこと 理由 代わりの方法
遺留分をなくす・請求を禁じる 兄弟姉妹以外の相続人の遺留分は法律で保障されている(民法1042条) 相続人本人が生前に家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄する(民法1049条)。遺留分を意識した分け方にする
2人で1通の遺言を作る 共同遺言は禁止(民法975条) 夫婦それぞれが1通ずつ作る
婚姻・離婚・養子縁組をする 届出によって効力が生じる行為(民法739条・799条など) 生前に手続きする。財産を渡したいなら遺贈
介護や同居などを家族に義務づける 法的な強制力のない希望にとどまる 負担付遺贈、遺言信託、生前の契約
借金の負担者を決めて債権者に主張する 遺言で相続分を指定しても、債権者は法定相続分に応じて各相続人に請求できる(民法902条の2) 債権者の承認を得る、相続人間で精算方法を決めておく
ペットに直接財産を残す 財産を受け取れるのは人や法人 ペットの世話を条件にした負担付遺贈、信託
遺言を撤回しないと約束する 撤回権は放棄できない(民法1026条) —(遺言者はいつでも書き換えられる)

「書いても効力がない」ことの代表例

葬儀の方法や納骨先の希望、臓器提供の意思、家族仲良くしてほしいという願い、遺品の扱いのこまかな指示などは、法律で定められた遺言事項ではありません。書いておくこと自体は自由で、家族が尊重してくれることも多いですが、守らなくても法的な責任は生じません。また、葬儀は亡くなってすぐに行われるため、遺言書を開くころには終わっていることもあります。こうした希望は、エンディングノートなどで家族と生前に共有しておくほうが確実です。

遺留分は遺言でも消えない遺言で全財産を一人に渡すこと自体はできます。ただし、遺留分を侵害された相続人は、侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます(知った時から1年・相続開始から10年で時効などにより消滅)。兄弟姉妹には遺留分がないため、子のいない夫婦が「全財産を妻に」と遺言すれば、兄弟姉妹から請求されることはありません(遺留分とは)。

遺言の効力を確実にするための注意点

方式を守る

遺言事項を書いても、方式を欠けば遺言そのものが無効になるおそれがあります。自筆証書遺言は全文・日付・氏名の自書と押印が必要です(財産目録はパソコン作成なども可)。遺言は15歳から作れますが、作る時点で遺言をする能力が必要です(民法961条・963条)。

受け取る人が先に亡くなる場合に備える

遺贈を受ける人が遺言者より先に亡くなると、その遺贈は効力を生じません(民法994条1項)。日本公証人連合会も、相続させるとした相続人が先に亡くなった場合に備え、「その場合は孫に相続させる」といった予備的な遺言を書いておく方法を紹介しています(夫婦で遺言を残す・予備的遺言)。

財産を特定して書く

不動産は登記事項証明書のとおり、預貯金は金融機関名・支店名・口座の種類などで特定します。あいまいな書き方は、どの財産のことか解釈が分かれ、遺産分割協議が必要になる原因になります。

よくある質問

遺言で「長男には一切相続させない」とできますか?

遺言で長男以外に全財産を渡すことはできます。ただし、長男には遺留分があるため、遺留分侵害額を請求される可能性があります。相続権そのものを失わせるには、虐待や重大な侮辱などの事情があるときに家庭裁判所が認める「廃除」が必要です。

遺言で生命保険の受取人を変えられますか?

保険法44条により、遺言による受取人の変更は認められています。ただし、遺言の効力が生じた後に相続人が保険会社へ通知しなければ保険会社に対抗できません。契約の時期や共済の種類によって扱いが違うこともあるため、加入先に確認しておきましょう。

遺言に書いた葬儀の希望は、守ってもらえますか?

葬儀の方法は遺言事項ではないため、法的な拘束力はありません。家族が希望を尊重してくれることは多いですが、確実に伝えるには、エンディングノートや生前の話し合いで共有しておくのがおすすめです。

遺言で財産を受け取った人は、必ず受け取らなければいけませんか?

いいえ。遺贈は受遺者が放棄できます。特定遺贈はいつでも、包括遺贈は相続放棄と同様の手続きで放棄します。相続人に「相続させる」遺言で財産を取得した場合に受け取らないときは、相続放棄の手続きなどを検討します。

まとめ:法的に効く部分と、想いを伝える部分を分けて書く

遺言で法的な効力が生じるのは、法律で定められた遺言事項だけです。財産に関しては相続分や分け方の指定、遺贈、配偶者居住権の遺贈、保険金受取人の変更など、身分や手続きに関しては子の認知、未成年後見人の指定、相続人の廃除、遺言執行者の指定などができます。一方、遺留分をなくすこと、共同遺言、婚姻や養子縁組、家族への義務づけはできません。できないことは負担付遺贈や信託、生前の手続きで補い、気持ちは付言事項で伝えましょう。法的に効く部分と想いを伝える部分を分けて書くことが、意思を確実に届ける近道です。

遺言に書くこと、ノートに残すこと。

遺言の準備や、遺言では伝えきれない希望を家族と共有できるアプリ「ゆいのわ」は、ただいま準備中です。

ゆいのわについて見る

※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関の案内をもとにした一般的な解説です。遺言の効力や解釈は、文言や個別の事情で異なります。具体的な遺言の作成は公証役場や、司法書士・弁護士などの専門家にご相談ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
e-Gov法令検索「民法」第739条・第781条・第799条・第839条・第848条・第893条・第894条・第897条・第902条・第902条の2・第903条・第908条・第960条・第961条・第963条・第964条・第975条・第994条・第1002条・第1006条・第1014条・第1026条・第1028条・第1042条・第1047条・第1049条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
e-Gov法令検索「保険法」第44条・附則第2条 https://laws.e-gov.go.jp/law/420AC0000000056
e-Gov法令検索「信託法」第3条 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000108
日本公証人連合会「遺言」(Q&A:負担付遺贈・遺言信託・予備的な遺言・配偶者居住権)https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02
日本公証人連合会「公正証書」(遺言で定められる事項)https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow01
裁判所「遺留分放棄の許可」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_26/index.html

この続きは、ゆいのわで。

手続きの期限や必要書類を、家族で一緒に進められます。

アプリを使ってみる

相続の「これからやること」を、家族みんなで。

ゆいのわは、生前のそなえから相続の手続きまで、家族で一緒に進められるアプリです。

アプリについて見る

ただいま準備中です