相続の手続き

ゴルフ会員権・貸付金など「その他の財産」の相続と評価

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相続の財産というと預貯金と不動産を思い浮かべがちですが、実際にはゴルフ会員権、知人への貸付金、電話加入権、絵画や骨とう品、貴金属など、さまざまな財産があります。結論から言うと、これらも原則として相続の対象で、相続税がかかる場合は国税庁の財産評価基本通達に沿って評価します。たとえば取引相場のあるゴルフ会員権は取引価格の70%、貸付金は返してもらうべき元本+経過した利息が基本です。この記事では、見落としやすい「その他の財産」を種類別に、相続の手続きと評価の考え方、探し方を整理します。

見落としやすい「その他の財産」一覧

財産 相続の手続きの確認先 相続税の評価の基本(財産評価基本通達)
ゴルフ会員権 ゴルフ場・クラブの会則、名義書換の窓口 取引相場あり:取引価格の70%(+取引価格に含まれない預託金等)。取引相場なし:株式・預託金等の部分ごとに評価(211)
リゾート会員権など 運営会社の規約 個別の内容による
貸付金・未収金 借用書、相手方 元本+既経過利息。回収不能・著しく困難な部分は除く(204・205)
電話加入権 契約先の電話会社 売買実例価額、精通者意見価格等を参酌(161)
書画骨とう品 (名義変更の手続きは通常なし) 売買実例価額、精通者意見価格等を参酌(135)
貴金属・宝石・家財・自動車など 自動車は名義変更が必要 一般動産として売買実例価額等を参酌。1個5万円以下の家庭用動産は一括評価できる(128・129)
著作権・特許権 出版社・特許庁など 著作権:年平均印税収入をもとに計算(148)。特許権:将来受ける補償金の現在価値(140)

預貯金・不動産・保険も含めた相続財産の全体像は、相続財産の種類で整理しています。

ゴルフ会員権の相続

引き継げるかどうかは会則しだい

ゴルフ会員権には、株主になる「株主会員制」、預託金を預ける「預託金会員制」などの種類があり、相続で会員の地位を引き継げるか、どんな手続きや費用がかかるかは、クラブの会則で決まります。会員証と会則を用意して、ゴルフ場に次の点を問い合わせましょう。

  • 相続人が会員の地位を引き継げるか(理事会の承認が必要かなど)
  • 名義書換の必要書類と、名義書換料の額
  • 引き継がない場合、預託金を返してもらえるか、返還の時期はいつか
  • 相続人が手続きするまでの年会費の扱い

相続税の評価

国税庁の財産評価基本通達211では、ゴルフ会員権を次のように評価します。

区分 評価のしかた
取引相場のある会員権 亡くなった日の通常の取引価格の70%。取引価格に含まれない預託金等があれば、その返還を受けられる金額(すぐ返還されるものは規約の金額、一定期間後なら複利現価の額)を加える
取引相場のない会員権 株主でないと会員になれないものは株式として評価。株式と預託金の両方が必要なものは、それぞれ評価して合計。預託金だけのものは預託金等として評価
評価しないもの 株式の所有が不要で譲渡もできず、返還される預託金等もなく、単にプレーができるだけの会員権
年会費は相続人の負担になる会員の地位を引き継ぐと、年会費や名義書換料がかかり続けます。使う予定がなければ、引き継いだ後の売却や退会、預託金の返還請求も含めて家族で検討しましょう。売却や退会の可否・時期も会則によります。

貸付金・未収金の相続

「返してもらう権利」も相続財産

亡くなった人が知人や親族、自分の会社にお金を貸していた場合、その貸付金(返してもらう権利)も相続財産です。相続人は、借りた人に返済を求めることができます。まず借用書(金銭消費貸借契約書)、振込の記録、返済の記録を探し、相手に残高を確認しましょう。

  • 返済期限を決めていなかった:相当の期間を定めて返済を催告できます(民法591条)
  • 時効に注意:貸したお金を返してもらう権利は、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年で時効により消滅します(民法166条)。放置せず、早めに相手と話をしましょう
  • 誰が回収するか決めておく:遺産分割協議で、貸付金を誰が引き継ぐかを決めておくと、相手とのやりとりの窓口が一本になります

相続税の評価

貸付金は、返済されるべき元本の金額+亡くなった日までの経過利息で評価します(財産評価基本通達204)。ただし、相手が破産手続開始の決定を受けた、事業を廃止し6か月以上休業している、といった事情で回収が不可能または著しく困難と見込まれる部分は、元本に入れません(同205)。「どうせ返ってこない」と思っても、それだけで評価から外れるわけではない点に注意が必要です。

未収のお金も忘れずに亡くなった時点で受け取っていなかったお金も相続財産になります。たとえば、未払いの給与、受け取る前の家賃や地代、本人が請求しないまま亡くなった入院給付金などです(入院給付金の請求漏れ)。

電話加入権・書画骨とう品・貴金属・家財

電話加入権

固定電話の加入権も財産で、相続税では売買実例価額や精通者意見価格などを参考に評価します(財産評価基本通達161)。相続人がその番号を使い続けるかどうかを決めて、契約先の電話会社で承継や解約の手続きをします(公共料金・携帯などの解約・名義変更)。

書画骨とう品

絵画・掛け軸・陶磁器などの書画骨とう品は、売買実例価額や精通者意見価格などを参考に評価します(財産評価基本通達135)。購入時の領収書、鑑定書、作家名が分かる箱書きなどが手がかりです。価値が高そうなものは、専門業者の査定を受けておくと、遺産分割でも相続税の申告でも根拠になります。

貴金属・宝石・家財

金地金や宝石、家具・家電などは「一般動産」として、売買実例価額や精通者意見価格などを参考に評価します(財産評価基本通達129)。家庭用の動産で1個または1組の価額が5万円以下のものは、一世帯ごとにまとめて評価できます(同128)。形見分けをする前に、価値のあるものがないか確認しておきましょう。

著作権・特許権などの権利

本や音楽の著作権、特許権も相続の対象です。著作権は、亡くなる前年以前3年間の印税収入の年平均額をもとに計算し(財産評価基本通達148)、特許権は将来受け取る補償金の額をもとに評価します(同140)。出版社やレコード会社からの支払調書、確定申告書の控えが手がかりになります。評価の計算は複雑なので、該当する場合は税理士への相談をおすすめします。

見落としを防ぐ探し方

  • 通帳の入出金:年会費の引き落とし(ゴルフ場・リゾート会員権)、貸したお金の振込や返済の入金、印税の振込
  • 郵便物:ゴルフ場や運営会社からの案内、預託金の据置期間の通知
  • 書類:会員証、借用書、鑑定書、購入時の領収書
  • 確定申告書の控え:利息収入や印税収入の記載
  • 金庫・貸金庫:貴金属や権利証

相続税の申告後に財産が見つかった場合は、修正申告や遺産分割のやり直しが必要になることがあります(相続財産が後から見つかったとき)。

年会費などがかかる財産と相続放棄

年会費や維持費がかかる財産だけを選んで手放す、ということは相続放棄ではできません。相続放棄をすると、プラスもマイナスもすべての財産を引き継がないことになります。いらない財産があるときは、いったん相続してから売却・退会するのか、財産全体を見て相続放棄するのかを判断します。放棄を考えている間に会員権を売るなど財産を処分すると、放棄できなくなるので注意してください(相続放棄の手続き)。

よくある質問

Q. ゴルフ会員権の名義書換料は、相続税の計算で差し引けますか?

相続税の計算で差し引ける債務は、亡くなった時点で存在した確実な債務や葬式費用です。相続人が手続きのために払う名義書換料がこれに当たるかどうかは、税務署や税理士に確認してください。

Q. 親が子どもの一人にお金を貸していました。どう扱いますか?

その子に対する貸付金として相続財産になります。借用書や返済の記録がない場合、貸したのかあげたのか(贈与)で扱いが変わり、ほかの相続人との間でもめやすい点です。記録を集めたうえで、相続人全員で話し合いましょう。

Q. 自動車はどう相続しますか?

自動車は名義変更の手続きが必要な財産です。普通車と軽自動車で窓口も書類も違うため、自動車の相続・名義変更で詳しく解説しています。

まとめ

相続財産には、ゴルフ会員権、貸付金、電話加入権、書画骨とう品、貴金属、著作権など、預金や不動産以外のものも含まれます。ゴルフ会員権は会則で引き継ぎ方が決まり、取引相場があれば取引価格の70%で評価します。貸付金は元本と経過利息で評価し、時効にも注意が必要です。どれも本人しか把握していないことが多い財産なので、生前に一覧にして家族と共有しておくことが、いちばんの見落とし対策です。

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※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁の財産評価基本通達をもとにした一般的な解説です。会員権の引き継ぎ方は各クラブの会則によります。相続税の評価額や申告の要否は財産の内容と個別の事情で異なるため、税務署・税理士などの専門家にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
国税庁「財産評価基本通達 第8章 その他の財産(204 貸付金債権の評価・205・211 ゴルフ会員権の評価)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/08.htm
国税庁「財産評価基本通達 第6章 動産 第1節 一般動産(128・129)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/06/01.htm
国税庁「財産評価基本通達 第6章 動産(135 書画骨とう品の評価)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/06/03.htm
国税庁「財産評価基本通達 第7章 無体財産権(140 特許権・148 著作権)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/07/01.htm
国税庁「財産評価基本通達 第7章 無体財産権(161 電話加入権の評価)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/07/02.htm
国税庁「No.4126 相続財産から控除できる債務」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4126.htm
e-Gov法令検索「民法」第166条・第591条・第896条・第921条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

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