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「親に借金があったらしい。相続しないためにはどうすればいい?」——借金などマイナスの財産を引き継がないための方法が相続放棄です。結論から言うと、相続放棄は自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所へ申述して行います。費用は申述人1人につき収入印紙800円と郵便切手です。ただし、期限内でも、亡くなった方の財産を処分すると放棄できなくなることがあります。この記事では、相続放棄の期限・必要書類・流れと、失敗しないための注意点を、民法と裁判所の案内をもとに解説します。
相続放棄とは:プラスもマイナスも一切引き継がない手続き
相続放棄をした人は、その相続についてはじめから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。預貯金や不動産などのプラスの財産も、借金や保証債務などのマイナスの財産も、一切引き継ぎません。相続人それぞれが単独で行えるのが特徴です。
| 選択肢 | 内容 | 手続き |
|---|---|---|
| 単純承認 | プラスもマイナスもすべて引き継ぐ | 不要(期間内に何もしなければ単純承認とみなされる) |
| 限定承認 | 引き継いだプラスの財産の範囲で借金を返す | 相続人全員が共同で家庭裁判所に申述 |
| 相続放棄 | 一切引き継がない | 各相続人が単独で家庭裁判所に申述 |
借金とプラスの財産のどちらが多いか分からないときの選択肢である限定承認は、限定承認とはで詳しく解説しています。
相続放棄の期限は3か月(熟慮期間)
起算日は「知った時」
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければなりません(民法915条1項)。この期間を熟慮期間といいます。亡くなった日ではなく、亡くなったことと自分が相続人になったことを知った時が基準です。たとえば先の順位の人が全員放棄して自分が相続人になった場合は、そのことを知った時から数えます。
- 相続人が未成年者や成年被後見人の場合は、法定代理人が知った時から数えます(民法917条)
- 相続人が放棄も承認もしないまま亡くなった場合は、その人の相続人が知った時から数えます(民法916条)
3か月で決められないときは「伸長」を申し立てる
財産の調査をしても判断する材料がそろわない場合は、熟慮期間の伸長(延長)を家庭裁判所に申し立てられます。費用は収入印紙800円と郵便切手です。3か月が過ぎる前に申し立てる必要があります(熟慮期間の伸長)。
相続放棄の手続きの流れ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①財産と借金を調べる | 通帳、ローンの契約書、督促状、信用情報機関への開示請求などで負債を確認する |
| ②書類をそろえる | 申述書と戸籍などの添付書類を準備する |
| ③家庭裁判所へ申述 | 亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出する |
| ④裁判所の確認 | 裁判所から申述の内容について問い合わせがあった場合は、それに答える |
| ⑤受理の通知 | 受理されると通知が届き、相続放棄が成立する |
債権者や他の手続き先から放棄したことの証明を求められたときは、家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書を申請できます。手数料は証明書1通につき収入印紙150円です(静岡家庭裁判所などの案内による)。借金の調べ方は借金・ローンの相続で解説しています。
相続放棄の必要書類と費用
費用
- 収入印紙:申述人1人につき800円
- 連絡用の郵便切手:家庭裁判所ごとに異なるため、申述先の裁判所に確認します
- このほか、戸籍謄本や住民票除票などの取得費用がかかります
必要書類(裁判所の標準的な案内)
| 申述する人 | 主な書類 |
|---|---|
| 全員共通 | 相続放棄の申述書、亡くなった方の住民票除票または戸籍附票、申述する人の戸籍謄本 |
| 配偶者 | 亡くなった方の死亡の記載のある戸籍謄本 |
| 子・孫 | 亡くなった方の死亡の記載のある戸籍謄本。孫など代襲相続人の場合は、親(被代襲者)の死亡の記載のある戸籍謄本も |
| 父母・祖父母、兄弟姉妹 | 亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本など、先の順位の相続人がいないことを示す戸籍 |
同じ書類は1通で足り、申述後に追加で提出できる書類もあります。戸籍の取り寄せに時間がかかりそうなときは、期限内に申述を済ませることを優先し、家庭裁判所に相談してください。相続人の順位は法定相続人とはで確認できます。
財産に手をつけると放棄できなくなる(法定単純承認)
単純承認とみなされる行為
民法921条は、次の場合に単純承認をしたものとみなすと定めています。
- 相続財産の全部または一部を処分したとき(保存行為や短期の賃貸は除く)
- 3か月の期間内に限定承認も相続放棄もしなかったとき
- 放棄した後でも、相続財産を隠したり、ひそかに使ったり、悪意で財産目録に載せなかったりしたとき
判断に迷いやすい行動
亡くなった方の預金を引き出して自分のために使う、遺品や車を売る、亡くなった方が持っていた債権を取り立てる、といった行為は「処分」と判断されるおそれがあります。一方、建物が傷まないようにする修繕などの保存行為は除かれます。どこまでが許されるかは個別の判断になるため、放棄を考えているうちは支払いや片付けの前に専門家へ確認するのが安全です。
相続放棄をした後の注意点
次の順位の人が相続人になる
子の全員が放棄すると父母などの直系尊属が、直系尊属もいなければ兄弟姉妹が相続人になります。借金を理由に放棄した場合、何も知らせないと親族が突然督促を受けることになりかねません。放棄したことを次の順位の人に伝えておくと、その人も期限内に判断できます。
手元にある財産は引き渡すまで保存する
放棄した時点で相続財産を現に占有している人は、相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意をもって保存しなければなりません(民法940条)。空き家になった実家などで問題になりやすい点です(相続放棄後の管理義務)。
生命保険金や相続税の扱い
受取人が指定された生命保険金の扱いや、放棄した人が保険金を受け取った場合の税金は、相続放棄と生命保険金で解説しています。なお、相続税の基礎控除を計算するときの「法定相続人の数」には、放棄した人も含めて数えます。
よくある質問
Q. 亡くなってから3か月が過ぎてしまいました。もう放棄できませんか?
3か月は「自分のために相続が始まったことを知った時」から数えます。亡くなったことや自分が相続人であることを後から知った場合は、その時から3か月以内なら申述できる可能性があります。いつ知ったのかを説明できる資料をそろえ、早めに家庭裁判所や専門家に相談してください。
Q. 相続放棄は自分でできますか?
申述書の書式や記入例は裁判所のウェブサイトで公開されており、相続人が自分で申述することもできます。期限が迫っている、ほかの相続人との関係が複雑、借金の調査が難しいといった場合は、専門家に相談すると安心です。
Q. 家族全員で放棄する必要がありますか?
相続放棄は一人ひとりが判断して申述します。ほかの相続人の同意は要りません。ただし、放棄によって相続人の顔ぶれが変わるため、家族で情報を共有しておくと手続きがスムーズです。
Q. 葬儀費用を亡くなった方の預金から払ってもよいですか?
預金の引き出しや支払いが「処分」に当たるかどうかは、個別の事情で判断されます。放棄を考えている場合は、支払う前に専門家へ確認してください。
まとめ
相続放棄は、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所へ申述する手続きです。費用は収入印紙800円と郵便切手で、必要な戸籍は続柄によって変わります。判断が間に合わなければ期限内に伸長を申し立てられます。財産を処分すると放棄できなくなることがあり、受理後も撤回はできません。放棄すると次の順位の人が相続人になるため、家族への連絡も忘れずに進めましょう。
※本記事は2026年10月時点の民法と裁判所の公表情報にもとづく一般的な解説です。相続放棄の可否や期限の起算日、どの行為が処分に当たるかは個別の事情で判断されます。具体的な判断は家庭裁判所や専門家にご確認ください。
裁判所「相続の放棄の申述」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_25/index.html
静岡家庭裁判所「相続放棄受理証明書について」https://www.courts.go.jp/shizuoka/saiban/souzoku3/index.html
e-Gov法令検索「民法」第915条・第916条・第917条・第919条・第921条・第923条・第938条・第939条・第940条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
国税庁「No.4152 相続税の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
CIC「亡くなった父の情報開示をすることはできるのでしょうか?」https://www.cic.co.jp/faq/detail/kaiji/kaiji02/002536.html






