相続税・お金

相続時精算課税制度とは|2500万円控除と年110万円の注意点

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「親からまとまった資金を早めに受け取りたいけれど、贈与税が心配」——そんなときに選択肢になるのが相続時精算課税制度です。結論から言うと、この制度を選ぶと、同じ親(または祖父母)からの贈与は年110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除の範囲なら贈与税がかからず、超えた部分も一律20%です。その代わり、その親が亡くなったときに、贈与された財産(基礎控除分を除く)を相続財産に足して相続税を計算し直します。そして一度選ぶと、その親からの贈与は暦年課税に戻せません。この記事では、国税庁の情報をもとに、しくみ・手続き・暦年課税との違い・選ぶ前に確かめたい点を整理します。

相続時精算課税制度のしくみ(要点)

項目 内容(2026年10月時点)
あげる人(特定贈与者) 贈与した年の1月1日に60歳以上の父母・祖父母など
もらう人 贈与を受けた年の1月1日に18歳以上の、子・孫などの推定相続人または孫
基礎控除 毎年110万円(2024年1月1日以後の贈与から)
特別控除 特定贈与者ごとに累計2,500万円まで
税率 控除後の金額に一律20%
相続のとき 贈与時の価額(基礎控除分を除く)を相続財産に加算し、納めた贈与税は差し引く
手続き 最初の贈与の翌年2月1日〜3月15日に「相続時精算課税選択届出書」を提出

この制度は、贈与者ごとに選べます。たとえば「父からの贈与は相続時精算課税、母からの贈与は暦年課税」という組み合わせも可能です。財産の種類・金額・回数に制限はありません。

「推定相続人」とは贈与の日現在で、贈与者の相続人のうち最も先順位の人をいいます。孫は推定相続人でなくても対象になります。一方、養子縁組をしていない義理の父母からの贈与には、原則としてこの制度は使えません。

2024年からの年110万円の基礎控除

2023年までの相続時精算課税は、少額の贈与でも毎回申告が必要で、贈与した分はすべて相続時に加算されました。2024年1月1日以後の贈与からは、暦年課税とは別に、毎年110万円の基礎控除が設けられています。

  • その年の特定贈与者からの贈与が合計110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です
  • 基礎控除で差し引いた部分は、相続時に加算されません
  • 同じ年に2人以上の特定贈与者(例:父と母の両方)から贈与を受けた場合、110万円はもらう人1人につき110万円で、贈与額の割合であん分します
  • 2,500万円の特別控除は、贈与者ごとの累計枠です
特別控除は期限内申告が条件110万円を超える贈与を受けた年は、贈与税の申告が必要です。2,500万円の特別控除は、期限内に申告書を出した場合に限って差し引けます。届出書を期限後に出した場合、その年から相続時精算課税を選ぶことはできません(国税庁の質疑応答)。

贈与税と相続税の計算例(目安)

国税庁が示している例に沿って、流れを確認します。子が父からの贈与で相続時精算課税を選び、令和7年に1,610万円、令和8年に1,890万円の贈与を受けたケースです(他の贈与はないものとします)。

年 計算 贈与税
令和7年 1,610万円−基礎控除110万円=1,500万円。特別控除を1,500万円使う(残り1,000万円) 0円
令和8年 1,890万円−110万円=1,780万円。残りの特別控除1,000万円を引いた780万円×20% 156万円

父が亡くなったときは、基礎控除を引いた後の1,500万円+1,780万円=3,280万円を相続財産に加えて相続税を計算します。そこから、すでに納めた贈与税156万円を差し引きます。相続税から引ききれない贈与税は、相続税の申告をすることで還付を受けられます。

なお、加算した後の遺産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下なら、相続税はかかりません(相続税の基礎控除)。ここでの金額は国税庁の例にもとづく目安で、実際の税額は他の財産や特例によって変わります。

暦年課税との違い

項目 暦年課税 相続時精算課税
年間の非課税 もらう人1人につき年110万円 年110万円(暦年課税の110万円とは別)
累計の枠 なし 贈与者ごとに2,500万円
超えた部分の税率 10〜55%の累進税率 一律20%
相続時の加算 相続などで財産を取得した人について、亡くなる前の一定期間の贈与を加算(基礎控除内の分も含む) 選択後の贈与は期間に関係なく全額加算(年110万円の基礎控除分は除く)
やめられるか — 一度選ぶと、その贈与者からは暦年課税に戻せない

暦年課税の加算期間は、2024年1月1日以後の贈与から段階的に延びています。国税庁によると、相続開始日が2026年12月31日までなら3年以内、2027年1月1日〜2030年12月31日は2024年1月1日以後の贈与、2031年1月1日以後は7年以内です(延びた4年分は合計100万円まで加算しない調整あり)。くわしくは暦年贈与と2024年改正で解説しています。

相続時精算課税のメリット

  • まとまった資金を早く移せる:住宅購入や事業資金など、若い世代が必要なときに渡しやすい
  • 年110万円までは加算もなし:毎年の少額贈与なら、申告不要で相続時の加算もない
  • 値上がりしそうな財産に向く:相続時に加算するのは贈与時の価額なので、その後に値上がりしても加算額は変わらない
  • 収益を生む財産なら、その後の収益はもらった人のもの:たとえば賃貸物件を移せば、以後の家賃収入は親の財産として積み上がらない

選ぶ前に確かめたい注意点・デメリット

暦年課税に戻せない一度届出を出すと、その贈与者からの贈与は、選んだ年以降ずっと相続時精算課税です。「やっぱり暦年課税の110万円も使いたい」と思っても、同じ贈与者からは使えません。
  • 相続税がかかる規模なら節税にならないことが多い:2,500万円の部分は相続時に足し戻すため、相続税そのものを減らす効果は、基礎控除分と値上がり分などに限られます
  • 値下がりした財産は不利になりうる:贈与時の価額で加算するため、相続時に価値が下がっていても高い価額で計算されます
  • 小規模宅地等の特例が使えない:相続時精算課税で贈与を受けた宅地には、相続税の小規模宅地等の特例は適用できません(小規模宅地等の特例)。自宅の土地を生前に移すかどうかは特に慎重に
  • 記録を長く残す必要がある:相続時に贈与の年分ごとの金額が必要になります。申告書の控えなどを、家族が分かる場所に保管しておきましょう
  • 家族間の公平:税金とは別に、多額の生前贈与は、相続のときに特別受益として話し合いの材料になることがあります(特別受益とは)

届出と申告の手続き

  1. 贈与を受ける:現金なら振込など、記録が残る方法で
  2. 翌年2月1日〜3月15日に提出:最初の年は「相続時精算課税選択届出書」に、もらう人の戸籍の謄本などを添えて、もらう人の住所地の税務署へ。110万円を超える年は贈与税の申告書と一緒に出します
  3. 2年目以降:届出書の再提出は不要。その年の贈与が110万円を超える場合だけ申告します
  4. 贈与者が亡くなったとき:加算した結果、遺産の合計が基礎控除を超えるなら、相続税の申告が必要です

なお、住宅取得等資金の贈与については、贈与者が60歳未満でも相続時精算課税を選べる特例があります(2026年12月31日までの贈与。住宅取得等資金の贈与)。

よくある質問

年110万円以下の贈与なら、届出書も出さなくていいですか?

すでに相続時精算課税を選んでいる贈与者からの贈与なら、その年の合計が110万円以下であれば申告は不要です。ただし、初めてこの制度を選ぶときは、選択の意思を示すために届出書の提出が必要です。

父は相続時精算課税、祖母からは暦年課税、という使い分けはできますか?

できます。制度は贈与者ごとに選ぶため、祖母からの贈与は暦年課税の年110万円の基礎控除の対象になります。暦年課税の110万円と相続時精算課税の110万円は別枠です。

相続時精算課税を選んだ人も、相続税の申告が必要ですか?

特定贈与者が亡くなったとき、加算後の遺産の合計が基礎控除を超えるなら申告が必要です。基礎控除以下でも、納めた贈与税の還付を受けるには相続税の申告をします。

どちらの制度が得か、自分で判断できますか?

財産の額・種類、贈与者の年齢、相続人の数などで結論が変わり、しかも選択は取り消せません。届出を出す前に、税務署の相談窓口や税理士に試算してもらうのが安心です(生前贈与と相続どちらが得?)。

まとめ:選ぶのは一度きり。試算してから届出を

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について、年110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除を使い、超えた部分も一律20%で早めに財産を移せる制度です。2024年からは年110万円までなら申告も相続時の加算も不要になり、使いやすくなりました。一方で、一度選ぶと暦年課税に戻せず、相続時には贈与時の価額で足し戻すため、相続税がかかる家庭では節税効果が限られることもあります。届出を出す前に、財産全体を見渡したうえで試算しておきましょう。

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※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁の公表情報をもとにした一般的な解説です。計算例は国税庁の例にもとづく目安で、実際の税額や制度の選択は個別の事情で異なります。具体的な判断は税務署・税理士にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm
国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択(Q&A)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103_qa.htm
国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm
国税庁「No.4410 複数の人から贈与を受けたとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4410.htm
国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
国税庁「No.4503 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4503.htm

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