家族の話し合い

疎遠・絶縁の家族がいる相続|住所の調べ方と連絡・進め方

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「父の相続で、前妻との間に子がいたと初めて知った」「20年以上連絡を取っていない兄にも、話をしないといけないの?」——疎遠・絶縁の家族がいると、相続は気持ちの面でも手続きの面でも一段と重くなります。結論から言うと、どれだけ疎遠でも、法律上の相続人である限り、その人を外して遺産分割はできません。まずは戸籍で相続人を確定し、戸籍の附票で住所を調べ、手紙で丁寧に連絡するのが基本の流れです。この記事では、住所の調べ方、連絡の取り方、返事がないときの法的な手段、そして自分が「疎遠な側」として連絡を受けたときの注意点まで整理します。

疎遠・絶縁でも相続人の権利は変わらない

相続人になるかどうかは、民法の定める続柄と順位だけで決まります。何年会っていないか、関係が良いか悪いかは関係ありません。「絶縁した」と口頭や手紙で伝え合っていても、法律上の親子・きょうだいの関係がなくなるわけではありません。相続権を失うのは、相続放棄をした場合や、欠格・廃除にあたる場合などに限られます。

1人でも欠けた遺産分割協議は成立しない遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。疎遠な人を除いて話し合いをまとめても、その協議は有効になりません。預金の解約や相続登記でも、通常は相続人全員の署名・押印と印鑑証明書がそろった遺産分割協議書が求められます。

ステップ1:戸籍で相続人を確定する

最初に、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集め、相続人を漏れなく確定します。疎遠な家族がいるケースでは、前の配偶者との子、認知した子、養子など、家族が把握していなかった相続人が見つかることもあります(相続の戸籍の集め方)。

集めた戸籍は、法務局で「法定相続情報一覧図」にまとめておくと、その後の手続きで戸籍の束を何度も出さずにすみます。

ステップ2:戸籍の附票で住所を調べる

戸籍には住所が載っていません。疎遠な相続人の今の住所を調べるには、その人の本籍地の市区町村が作っている戸籍の附票を使います。戸籍の附票には、その戸籍に記録されている人の住所の移り変わりが記録されています。

請求する人 根拠(住民基本台帳法20条) ポイント
本人・配偶者・直系尊属・直系卑属 1項:請求できる 自分の親や子の附票なら、この立場で請求できる
兄弟姉妹・おい・めいなど上記以外の相続人 3項:「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するため」などに必要な場合に申し出て、市区町村長が相当と認めたときに交付 遺産分割のために必要であることを、戸籍などの資料で示すのが一般的
弁護士・司法書士などの専門家 4項:受任している事件・事務のために申し出る 手続きを依頼している場合は専門家が取得できる

請求先は相手の本籍地の市区町村です。郵送で請求できる自治体も多いので、本籍地の役所のホームページで、請求書の様式・手数料・必要な添付書類(相続関係が分かる戸籍、本人確認書類など)を確認してください。

交付されない場合もあるDV・ストーカー行為・児童虐待などの被害者を守るため、市区町村は申出を受けて、住民票の写しや戸籍の附票の写しの交付を制限する支援措置を行っています(総務省)。相手がこの措置を受けている場合、住所は分かりません。その場合は家庭裁判所の手続き(後述)を通じて進めることになります。

ステップ3:最初の手紙で伝えること

住所が分かったら、いきなり書類を送りつけるのではなく、まずは手紙で事情を伝えます。疎遠な相手ほど、「何を求められているのか」「財産を隠されていないか」を警戒します。次の内容を、事務的かつ丁寧に書くと受け取ってもらいやすくなります。

  1. 誰が・いつ亡くなったか:亡くなった方との続柄と、亡くなった日
  2. 相手が相続人であること:なぜ相続人になるのか(必要なら戸籍の写しを同封)
  3. 分かっている財産と負債:預貯金・不動産・借金などの概要。一覧表にすると伝わりやすい
  4. お願いしたいこと:遺産分割の話し合いへの参加、分け方の提案があればその案
  5. 相手の選択肢:話し合いに参加する、相続放棄をする、など相手が自分で選べることを示す
  6. 返事の方法と目安の時期:連絡先、手紙・メールなど返事の手段

会うことに抵抗がある相手とは、書面と郵送だけで遺産分割協議書をまとめることもできます(いわゆる持ち回りでの署名・押印)。

感情的な言葉は書かない過去のいきさつや相手への不満は書かず、「手続きを進めるためにご協力をお願いしたい」という姿勢に徹するのが無難です。相手が誤解して強く反発すると、話し合いそのものが難しくなります。

相手が関わりたくないと言ったとき

「財産はいらない、関わりたくない」という返事が来ることもあります。その場合の主な方法は次のとおりです。

方法 内容 注意点
相続放棄 家庭裁判所に申述し、初めから相続人でなかったことになる 相続人になったと知った時から3か月以内。借金も引き継がない(相続放棄の手続き)
取得分なしの遺産分割協議 協議に参加し、自分は何も取得しない内容で署名・押印する 「何も取得しない」と決めても、借金の負担を債権者に主張できるとは限らない。負債があるなら相続放棄も検討
相続分の譲渡 自分の相続分をほかの相続人に譲り、協議から抜ける 手続き・税金の扱いを確認

返事がない・居場所が分からないときの法的な手段

連絡を無視される:遺産分割調停

手紙を何度送っても返事がない、話し合いを拒否される場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。相続人の1人または何人かが、ほかの相続人全員を相手方として申し立てる手続きで、調停委員が間に入って話し合いを進めます。調停が不成立になると審判に移り、裁判官が分け方を決めます。裁判所の案内では、手数料は被相続人1人につき収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手です(遺産分割の調停・審判)。

行方が分からない:不在者財産管理人

附票の住所に住んでいない、どこにいるか分からないという場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てます。選任された管理人は、家庭裁判所の許可(権限外行為許可)を得て、行方不明の相続人に代わって遺産分割に参加できます。申立先は不在者の従来の住所地などの家庭裁判所、手数料は収入印紙800円分と郵便切手で、財産の内容によっては管理人の報酬などにあてる予納金を求められることがあります。長期間生死が分からない場合は、失踪宣告という手続きもあります(音信不通・行方不明の相続人)。

話し合いが長引く間にしておきたいこと

  • 相続登記の義務への対応:遺産分割がまとまらず相続登記ができない場合でも、相続人申告登記で義務を果たす方法があります(相続人申告登記とは)。
  • 当面の資金:預貯金は、遺産分割前でも「相続開始時の残高×3分の1×自分の法定相続分」まで、1つの金融機関につき150万円を上限に単独で払い戻しを受けられます(民法909条の2・法務省令)。
  • 10年の区切り:相続開始から10年を過ぎた後の遺産分割では、原則として特別受益や寄与分を考慮できなくなります(民法904条の3)。

自分が「疎遠な側」として連絡を受けたら

何十年も会っていない親族の相続人だと、突然の手紙で知ることもあります。そのときは次の点を確認しましょう。

  • 相続放棄の3か月は「知った時」から:民法915条の期間は、自分のために相続が開始したことを知った時から数えます。亡くなった日から3か月が過ぎていても、知ったのが最近なら間に合う場合があります。財産の調査に時間がかかる場合は、期間の伸長も申し立てられます(熟慮期間の伸長)。
  • 借金の有無を確認する:疎遠な親族の財産は内容が分からないことが多いため、負債がないかを確かめてから判断します。
  • すぐに署名・押印しない:届いた書類の内容が分からないまま署名・押印すると、後から取り消すのは困難です。不明な点は差出人に確認するか、専門家に相談してください。

疎遠な家族がいると分かっているなら:生前の備え

疎遠な相続人がいる場合、残された家族の負担をもっとも減らせるのは遺言です。遺言で財産の分け方を決め、遺言執行者を指定しておけば、遺産分割協議をしなくても手続きを進められるのが一般的です(遺言書がある場合の相続手続き)。ただし、疎遠な人が子や配偶者など遺留分のある相続人なら、遺留分侵害額を請求される可能性はあります。

あわせて、相続人になる人の名前と連絡の手がかり、財産の一覧を残しておくと、家族が戸籍の調査や連絡で迷う時間を減らせます。

よくある質問

疎遠な相続人の電話番号やメールアドレスを調べる方法はありますか?

公的な書類で分かるのは住所までです。電話番号やメールアドレスは、親族や共通の知人から聞く以外に調べる方法は基本的にありません。まずは附票で分かった住所に手紙を送るのが基本です。

連絡した相手が、法定相続分より多く要求してきました。

遺産分割は全員の合意で決めるため、相手の要求に応じる義務はありません。話し合いで折り合えない場合は、遺産分割調停で第三者を交えて進める方法があります。

疎遠な相続人の分だけ、財産を残して手続きを進められますか?

遺産分割は全員の合意が必要なため、一部の人だけで遺産を分けることはできません。預貯金の一部払い戻しなど、単独でできる手続きは限られています。

相手から返事がないまま、何年も放っておいても大丈夫ですか?

放置すると、相続人が亡くなってさらに相続が重なる(数次相続)、相続登記の義務に対応できない、10年を過ぎて特別受益や寄与分を主張できなくなる、といった問題が生じます。早めに調停などを検討しましょう。

まとめ

疎遠・絶縁の家族も、法律上の相続人である限り、遺産分割から外すことはできません。戸籍で相続人を確定し、本籍地の市区町村で戸籍の附票を取って住所を調べ、財産の内容と相手の選択肢を示した手紙で丁寧に連絡するのが基本です。返事がなければ遺産分割調停、行方不明なら不在者財産管理人という手段があります。自分が連絡を受けた側なら、相続放棄の3か月は知った時から数える点を押さえておきましょう。疎遠な相続人がいると分かっているなら、遺言で備えておくことが家族への何よりの配慮になります。

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※本記事は2026年10月時点の法令と裁判所・総務省の公式情報をもとにした一般的な解説です。戸籍の附票の請求方法・手数料は市区町村ごとに異なります。具体的な手続きは本籍地の市区町村や家庭裁判所、法的な判断は専門家にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
法務省「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」(施行日・長期間経過後の遺産分割の見直し)https://www.moj.go.jp/content/001444017.pdf
e-Gov法令検索「住民基本台帳法」第20条(戸籍の附票の写しの交付)https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000081
総務省「配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方は、申出によって、住民票の写し等の交付等を制限できます。」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/dv_shien.html
裁判所「遺産分割調停」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html
裁判所「不在者財産管理人選任」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_05/index.html
e-Gov法令検索「民法」第904条の3・第907条・第909条の2・第915条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
e-Gov法令検索「民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令」https://laws.e-gov.go.jp/law/430M60000010029

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