不動産の相続

相続登記を自分でやる方法|5つの手順と法務局の相談・つまずく点

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「親の家の名義変更、司法書士に頼まず自分でできるの?」——相続登記の義務化で、そう考える人が増えています。結論から言うと、相続登記は自分で法務局に申請できます。法務局は申請書の様式と記載例、手順をまとめた手引きを公開しており、予約制の「登記手続案内」で書き方の相談もできます。一方で、戸籍の読み取りや不動産の表示の書き写しなど、正確さが求められる作業も多くあります。この記事では、法務局の案内にもとづいて、自分で進める5つの手順と、つまずきやすい点を整理します。

相続登記は自分でもできる|向いているケース

ここが結論相続登記は、相続人が自分で申請書を作り、不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に提出すれば手続きできます。司法書士の報酬はかからず、実費は戸籍などの証明書の手数料と登録免許税(原則、固定資産税評価額の0.4%)です。

相続登記は、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(相続登記の義務化)。費用を抑えつつ期限内に済ませたい人にとって、自分で申請するのは現実的な選択肢です。

自分でやりやすいケース 専門家への相談を考えたいケース
相続人が配偶者と子など少人数で、全員と連絡が取れる 相続人が多い、疎遠・行方不明の人がいる
不動産が自宅など1〜2か所で、管轄の法務局が同じ 不動産が多い、遠方の複数の法務局にまたがる
亡くなった方が登記名義人本人 祖父母など何代も前の名義のまま
平日に役所や法務局へ行く時間がとれる 相続人に海外在住者がいる、遺産分割でもめている

司法書士に頼んだ場合の費用の目安は相続登記の司法書士費用の相場で、頼める範囲は司法書士に頼める範囲と流れで解説しています。

相続登記を自分でやる5つの手順

法務省の手引き「登記申請手続のご案内(遺産分割協議編)」は、相続登記の流れを次の5ステップで示しています。

ステップ 内容 主な作業
①戸籍の証明書の取得 相続が始まったことと、相続人が誰かを証明する 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍を集める
②遺産分割協議・協議書の作成 誰が不動産を取得するか決めて書面にする 相続人全員が実印を押し、印鑑証明書をそろえる
③登記申請書の作成 法務局に出す申請書を作る 様式に記入し、添付書類と登録免許税を用意する
④登記申請書の提出 管轄の法務局に出す 窓口に持参、書留で郵送、またはオンライン
⑤登記完了 登記完了証と登記識別情報通知書を受け取る 窓口または郵送で受領する

①戸籍の証明書を集める

亡くなった方の出生から死亡までの経緯が分かる戸籍をすべてそろえ、ほかに相続人がいないことを示します。結婚や転籍で戸籍が移っていると、新しい戸籍から古い戸籍へと順にさかのぼる必要があります。2024年3月からは「広域交付」により、本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫の戸籍を、本籍地以外の市区町村の窓口でまとめて請求できるようになりました(相続の戸籍の集め方)。

あわせて、法務局の「法定相続情報証明制度」を使うと、戸籍の束の代わりになる一覧図の写しを無料で受け取れます。銀行の手続きにも使えるので、不動産以外の相続手続きがある場合は先に作っておくと便利です。必要書類の一覧は相続登記の必要書類にまとめています。

②遺産分割協議書を作る

相続人全員で話し合い、不動産を誰が取得するか決めたら、遺産分割協議書を作ります。協議書には相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添付します。登記用の印鑑証明書には「発行から3か月以内」といった期限はありません。なお、法務局では遺産をどう分けるか、協議書にどんな内容を書くかといった相談には応じていません。協議書の書き方は遺産分割協議書の作り方を参考にしてください。

③登記申請書を作る

申請書は、法務局ホームページ「不動産登記の申請書様式について」から、法定相続・遺産分割・遺言など、ケースに合った様式と記載例をダウンロードして作ります。主な記載項目は次のとおりです。

  • 登記の目的:「所有権移転」
  • 原因:亡くなった日を「令和○年○月○日相続」と書く。遺産分割協議が成立した日ではない
  • 相続人:取得する人の住所・氏名を住民票のとおりに書き、押印(認印で可)。氏名のふりがな、生年月日、本人だけが使うメールアドレスも記載する
  • 添付情報:「登記原因証明情報 住所証明情報」
  • 課税価格・登録免許税:固定資産課税明細書の「価格(評価額)」をもとに計算する
  • 不動産の表示:登記事項証明書のとおりに正確に書き写す(不動産番号を書けば一部を省略できる)

申請書はA4の丈夫な紙に片面で印刷し、鉛筆は使えません。複数枚になる場合は、つづり目に契印をします。

④法務局に提出する

提出先は、不動産の所在地を管轄する法務局です。窓口に持参するほか、封筒に「不動産登記申請書在中」と書いて書留郵便で送ることもできます。登録免許税は、収入印紙を台紙に貼って申請書とともにとじるのが一般的です。印紙には押印しないよう注意しましょう。

⑤登記完了証と登記識別情報を受け取る

登記が終わると、登記完了証と登記識別情報通知書が交付されます。登記識別情報は12桁の符号で、次に売却などの登記をするときに必要になる大切な情報です。郵送で受け取る場合は、返信用封筒と本人限定受取郵便の料金分の切手を申請時に同封します。どちらも再発行はできません。

オンライン申請はできる?

相続登記は、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」からも申請できます。ただし、戸籍の証明書は電子データで発行されていないため、オンラインだけでは完結しません。申請情報を送信した後、戸籍や遺産分割協議書などの書面を法務局に郵送または持参する方法になります。

項目 オンライン申請の場合
準備するもの マイナンバーカード(電子証明書)、ICカードリーダライタ、申請用総合ソフト、申請者情報の登録
登録免許税 インターネットバンキング等での電子納付、または収入印紙
書面の添付書類 受付の日から2日以内(初日・休日等を除く)に法務局へ届くよう送付・持参
メリット マイナンバーカードで電子署名すると、住民票の写しの提出を省略できる

パソコン操作に慣れていない場合は、書面で申請するほうが確実です。中間の方法として、申請用総合ソフトで作った申請書をQRコード付きで印刷して提出する「QRコード付き書面申請」もあります。

法務局の「登記手続案内」を活用する

自分で申請する人向けに、全国の法務局が登記手続案内を行っています。登記の流れ、必要書類の集め方、申請書の書き方などを教えてもらえます。

  • 完全予約制・1回20分以内。足りなければ改めて予約する
  • 方法は、法務局での対面、ウェブ会議、電話の3つから選べる
  • 予約は「法務局手続案内予約サービス」のウェブサイトか、管轄の法務局への電話で行う
  • 事前に、対象不動産の登記事項証明書(または要約書)を取得し、手引きを読んでおくとスムーズ
相談できること・できないこと集めた戸籍に過不足がないか、申請書の記載や登録免許税の計算に誤りがないかは、20分の範囲で確認してもらえます。一方、遺産の分け方の助言や、申請書の下書きを担当者が書くことはできません。正式な審査は提出後に登記官が行うため、案内を受けても補正(訂正)を求められることはあります。

自分でやるときにつまずきやすい点

戸籍の読み取りと集め漏れ

古い戸籍は手書きで読みにくく、どこへ移ったのかを追うのに苦労しがちです。広域交付は顔写真付きの身分証を持った本人などが窓口で請求する必要があり、郵送や代理人による請求はできません。また、コンピュータ化されていない一部の戸籍は広域交付の対象外です。

登記上の住所と本籍が違う

登記簿に載っている亡くなった方の住所が、戸籍の本籍と違う場合は、同じ人であることを示すために、登記上の住所が載った住民票の除票や戸籍の附票が必要になります。何度も引っ越していると、古い住所の証明が取れないこともあります。

登録免許税の計算と免税措置

課税価格は固定資産課税明細書の「価格(評価額)」で、「課税標準額」ではありません。1,000円未満は切り捨て、税額が1,000円未満なら1,000円です。価額100万円以下の土地や、相続登記をしないまま相続人が亡くなった場合の土地には、2027年3月31日までの免税措置があり、申請書に根拠条文を書かないと適用されません(相続登記の登録免許税)。

2026年10月5日からは国籍等の申出も必要

所有権の移転の登記では、2025年4月から、新しく所有者になる人の氏名のふりがな、生年月日、メールアドレスなどの「検索用情報」を申請書に書くことになりました。さらに2026年10月5日以降の申請では「国籍等」も申し出る必要があり、法務局は新しい様式と記載例を公開しています。日本国籍の人は、本籍の記載がある住民票の写しなどが国籍等を証する書類になります。古い様式のまま作らないよう、申請直前に様式を確認しましょう。

よくある質問

相続人の1人が代表して申請できますか?

遺産分割で不動産を取得した人が申請人になります。法定相続分どおりに登記する場合は、相続人のうち1人が全員分を申請することもできます。ただし、申請人にならなかった相続人には登記識別情報が通知されません。

知人に申請書の作成を頼んでもいいですか?

法務局は、司法書士などの資格がない人が業務として登記の代理や書類作成をすることは法律で禁じられていると案内しています。同居の家族に、作成済みの申請書の提出を頼む程度なら問題ないとされていますが、作成を任せたい場合は司法書士に依頼しましょう。

提出した戸籍は返してもらえますか?

原本の還付を申し出れば、審査の後に返却されます。相続登記では「相続関係説明図」を一緒に出すと、戸籍のコピーを作らなくても返してもらえます。還付は申請の際に申し出る必要があり、登記完了後に頼んでも応じてもらえません。

どのくらいの期間で終わりますか?

書類集めにかかる時間は家族の状況で大きく変わります。不備があると法務局から連絡が来るので、申請書には平日の日中につながる電話番号を必ず書いておきましょう。

まとめ

相続登記は、①戸籍の取得→②遺産分割協議書の作成→③申請書の作成→④法務局へ提出→⑤登記完了の5つの手順で、自分でも申請できます。法務局の様式・記載例と手引きを使い、迷ったら予約制の登記手続案内(1回20分)で確認するのが近道です。オンライン申請も使えますが、戸籍などの書面は別に送る必要があります。2026年10月5日からは国籍等の申出が加わったため、最新の様式で作りましょう。相続人が多い、何代も前の名義のままといった場合は、無理をせず司法書士への依頼も検討してください。

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※本記事は2026年10月時点の法令と法務省・法務局の公表情報をもとにした一般的な解説です。必要な書類や申請書の記載は、相続の内容や不動産によって異なります。具体的な手続きは管轄の法務局、または司法書士にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
法務局「不動産登記の申請書様式について」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
法務省民事局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」(令和8年4月)https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001437202.pdf
法務局「不動産の所有者が亡くなった(相続の登記をオンライン申請したい方)」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/fudosan_online03.html
法務局「登記手続案内」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page_000001_00050.html
法務局「登記申請を御自身ですることを検討されている方からよくある質問」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page_000001_00057.html
法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000017.html
法務省「相続登記の申請義務化について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
法務省「検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00678.html
法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html

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