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「親の土地を売ろうとしたら、隣との境界がはっきりしないと言われた」——相続した土地では、境界の目印がなくなっていたり、測量図が古かったりすることがよくあります。結論から言うと、売却・分筆・相続土地国庫帰属制度の申請を考えているなら、相続後の早い段階で境界の資料と現地を確認しておくのが安心です。境界を確定させる測量は隣地の所有者の協力が必要で、時間がかかることがあるためです。この記事では、相続した土地の境界と測量について、確認の手順から隣地ともめたときの手続きまで、法令と法務省の情報をもとに解説します。
まず知っておきたい「筆界」と「所有権の境界」の違い
「境界」という言葉には、実は2つの意味があります。
| 筆界(ひっかい) | 所有権の境界 | |
|---|---|---|
| 意味 | 土地が登記されたときに、その土地の範囲を区画するものとして定められた線 | どこまでが自分の所有かを分ける線 |
| 当事者の合意で変えられるか | 変えられない | 売買や合意で変わることがある |
| 争いを解決する手続き | 筆界特定制度、筆界確定訴訟 | 話し合い、裁判など |
不動産登記法123条は、筆界を「一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線」と定めています。法務省は、筆界は所有者同士の合意で変更できず、所有権の範囲と一致することが多いものの、一致しないこともあると説明しています。たとえば昔、隣地の一部を口約束で譲っていた場合などは、両者がずれていることがあります。
相続した土地の境界を確認する方法
法務局で取れる図面
| 図面 | 内容と注意点 |
|---|---|
| 地図(14条地図) | 不動産登記法14条で登記所に備えられる、各土地の区画と地番を明確にした図面。まだ備えられていない地域もある |
| 地図に準ずる図面(いわゆる公図) | 地図が備えられるまでの代わりの図面。土地の位置・形状のおおよそを示すもので、距離や面積の正確さには限界がある |
| 地積測量図 | 分筆や地積の更正などの登記のときに提出された測量図。現在の規則では、筆界点の座標値や境界標の表示などを記録する(不動産登記規則77条)。古いものは記載が少なく、そもそも存在しない土地もある |
これらの図面の写し(証明書)は、法務局に書面またはオンラインで請求できます。法務省の手数料一覧では、1筆ごとに書面請求500円、オンライン請求で送付なら470円、窓口受け取りなら440円です。登記事項証明書と一緒に取り寄せ、面積(地積)や形が現地と合っているかを確認します。
手元の書類と現地
- 境界確認書・筆界確認書:過去に隣地の所有者と境界を確認した書面。親の書類の中に残っていないか探す
- 購入時の測量図・売買契約書:取得時の面積や境界の状況が分かる
- 現地の境界標:コンクリート杭や金属標など。工事や年月でなくなっていることも多い
測量の種類:現況測量と確定測量
| 現況測量 | 確定測量(境界確定測量) | |
|---|---|---|
| 内容 | 今あるブロック塀や杭などを基準に、現状の面積や形を測る | 隣地の所有者(道路などに接するときは役所も)の立会いのもと、境界を確認して確定させる |
| 隣地の協力 | 原則不要 | 必要 |
| 主な用途 | 建物の計画、おおよその面積の把握 | 売却、分筆の登記、境界トラブルの予防 |
確定測量のおおまかな流れは次のとおりです。
- 資料の調査:登記記録、地図・公図、地積測量図、近隣の測量資料などを集める
- 現地の測量:境界標や塀などの位置を測る
- 立会い:隣地の所有者などと現地で境界を確認する。道路や水路に接するときは、その管理者との確認も必要になる
- 境界標の設置と確認書の取り交わし:合意した点に境界標を設置し、書面を交わす
- 必要に応じて登記:面積が登記と違えば地積の更正、分けるなら分筆の登記をする
隣地の所有者が多い、所有者が亡くなって相続人が分からない、道路との境界の確認に時間がかかる、といった事情があると長引きます。売却などの予定があるなら、早めに相談を始めるのがおすすめです。
相続で境界の確認が必要になる3つの場面
①土地を売るとき
買主は、境界がはっきりしている土地を望むのが一般的です。境界が確定していないと、引渡し後に隣地ともめるおそれがあり、売買の条件として確定測量を求められることがあります。誰が測量費を負担するかも、売買の条件として決めておきます。売却の進め方は相続した家を売る流れで解説しています。
②土地を分けて相続するとき(分筆)
分筆の登記には、分筆前の土地を図示し、分筆線を明らかにした地積測量図が必要です(不動産登記規則78条)。そのため、分筆の前提として測量と境界の確認が欠かせません。分筆の流れと注意点は相続した土地の分筆を参照してください。
③国に引き取ってもらうとき(相続土地国庫帰属制度)
法務省の案内では、境界が明らかでない土地や、所有権の存否・範囲について争いがある土地は申請できません。制度を使うなら、隣地との境界が分かる状態にしておく必要があります。制度の要件と費用は相続土地国庫帰属制度とはで詳しく説明しています。
境界標の設置費用は誰が負担する?
民法は、土地の所有者は隣地の所有者と共同の費用で境界標を設けることができ(223条)、境界標の設置と保存の費用は相隣者が等しい割合で負担し、測量の費用は土地の広さに応じて分担する(224条)と定めています。
もっとも、売却などのために一方から確定測量を依頼する場合、費用をどう分けるかは当事者の話し合いで決めることになります。隣地の所有者には立会いと署名・押印をお願いする立場なので、丁寧な説明と日程の配慮が大切です。費用の分担で迷ったら、依頼する専門家に相談しましょう。
隣地と境界でもめたときの手続き
| 手続き | 内容 | 窓口 |
|---|---|---|
| 話し合い | 資料をそろえ、専門家を交えて確認する | 当事者 |
| 筆界特定制度 | 筆界特定登記官が、筆界調査委員の意見を踏まえて、現地における筆界の位置を特定する | 土地を管轄する法務局・地方法務局 |
| 裁判外の紛争解決(ADR) | 法務大臣が指定した団体による和解の仲介 | 各地の指定団体 |
| 筆界確定訴訟など | 裁判で筆界を確定させる | 裁判所 |
筆界特定制度のポイント
法務省によると、筆界特定は土地の所有者として登記されている人やその相続人などが申請できます。相続登記の前でも、相続人として申請できるということです。手数料は土地の価格によって決まり、申請人の土地と隣接地の価格の合計が4,000万円の場合は8,000円です。手続きの中で測量が必要になると、その費用も負担します。結果に納得できない場合は、後から裁判で争うこともできます。
境界・測量の専門家は土地家屋調査士
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記に必要な調査・測量、分筆などの登記の申請代理、筆界特定の手続きの代理などを業務とする国家資格者です(土地家屋調査士法3条)。一方、相続による名義変更(所有権の登記)は司法書士の分野です。分筆して相続するなら、土地家屋調査士と司法書士の両方が関わります。どこに何を頼めるかは相続の専門家の選び方も参考にしてください。
よくある質問
境界標がなくなっています。自分で打ち直してもいいですか?
境界標は隣地との境を示すものなので、一方だけで設置すると後のトラブルのもとになります。隣地の所有者と確認したうえで、土地家屋調査士に依頼して復元すると安心です。
隣の土地の所有者が亡くなっていて、誰が相続したか分かりません。
登記簿や住民票などで調べても分からない場合、立会いによる確定が難しくなります。筆界特定制度を使う、所有者不明土地の管理制度を検討するなどの方法があります。状況に応じて土地家屋調査士や法務局に相談してください。
相続した土地は、必ず確定測量しなければいけませんか?
相続しただけで測量の義務が生じるわけではありません。売却、分筆、国庫帰属の申請、建物の建築などで境界の確定が必要になったときに検討すれば足ります。ただ、隣地の所有者が代替わりすると確認が難しくなることもあるため、予定がある場合は早めが安心です。
登記の面積と実際の面積が違うようです。
古い土地では、登記された地積と実測の面積が違うことがあります。確定測量の結果に基づいて、地積の更正の登記をすることができます。売却の際は、どちらの面積で価格を決めるかも確認しましょう。
まとめ:境界は「資料の確認→確定測量」の順で早めに
相続した土地の境界は、まず法務局の地図・公図・地積測量図と、手元の境界確認書や現地の境界標で確認します。売却や分筆、国庫帰属の申請をするなら、隣地の立会いを経た確定測量が必要になることが多く、時間がかかることもあります。もめたときは、法務局の筆界特定制度やADRが使えます。隣地の所有者と良好な関係のうちに、早めに土地家屋調査士へ相談するのが近道です。
※本記事は2026年10月時点の法令と法務省の案内をもとにした一般的な解説です。境界の確定方法や費用、必要な手続きは土地の状況や個別の事情によって異なります。具体的なご判断は、土地家屋調査士などの専門家や法務局にご確認ください。
法務省「筆界特定制度」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji104.html
法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(PDF)https://www.moj.go.jp/content/001444020.pdf
法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
法務省「登記手数料について」https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/
e-Gov法令検索「不動産登記法」第14条・第123条・第131条・第132条 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
e-Gov法令検索「不動産登記規則」第77条・第78条 https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
e-Gov法令検索「民法」第209条・第223条・第224条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
e-Gov法令検索「土地家屋調査士法」第3条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000228






