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「兄弟3人の共有名義になった実家を、そろそろ整理したい」——共有の不動産は、売るにも貸すにも共有者の足並みがそろわないと動かせず、時間がたつほど共有者が増えていきます。結論から言うと、共有の解消は①共有者の話し合い(持分の売買・全体の売却・分筆)→②まとまらなければ裁判所への共有物分割請求が基本の順番です。共有者の一部が行方不明のときは、2023年4月施行の民法改正で、裁判所の決定を得てその持分を取得・譲渡できる制度ができました。この記事では、すでに共有になっている不動産を解消する方法を、法務省の資料と民法の条文をもとに整理します。
共有不動産を解消する6つの方法(比較表)
| 方法 | 内容 | 他の共有者の協力 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 持分の買い取り・売り渡し | 共有者の一人が他の共有者の持分を買い、単独名義にする | 売買の当事者の合意 | 住み続けたい人・使いたい人がいる |
| 全体を売って代金を分ける | 共有者全員で第三者に売却し、持分に応じて分ける | 全員の合意 | 誰も使う予定がない |
| 分筆して分ける(土地) | 土地を分けて、それぞれを単独所有にする | 合意が基本 | 広い土地で、分けても使える |
| 持分を第三者に売る | 自分の持分だけを売る | 不要 | 自分だけでも共有から抜けたい |
| 持分の放棄 | 放棄した持分は他の共有者に帰属する(民法255条) | 意思表示は単独 | 持分に価値がなく、手放したい |
| 共有物分割請求 | 協議が調わないとき、裁判所に分割を求める(民法258条) | 不要(裁判で決める) | 話し合いが行き詰まった |
民法256条は「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる」と定めています(5年以内の不分割の契約がある場合を除く)。共有者の誰かが「共有をやめたい」と言い出せば、それ自体は正当な権利です。ただし、相続した不動産でまだ遺産分割をしていない場合は、使える手続きが変わるので、先に次の点を確認してください。
まず確認:遺産分割の前か後か
相続人が複数いると、遺産分割が終わるまで相続財産は相続人の共有になります(民法898条)。この「遺産共有」と、遺産分割や売買の結果として生じた普通の共有(通常共有)とでは、解消の手続きが違います。
| 状態 | 主な解消の手続き |
|---|---|
| 遺産分割がまだ(遺産共有) | 相続人全員の遺産分割協議。まとまらなければ家庭裁判所の遺産分割調停・審判。共有物分割請求は原則として使えない(民法258条の2第1項) |
| 遺産分割で共有にした、共有者の一人が亡くなった、など(通常共有) | 共有者の協議。まとまらなければ地方裁判所などへの共有物分割請求 |
2023年の改正で、通常共有と遺産共有が混ざっている場合に、相続開始から10年を経過していれば、遺産共有の部分もまとめて共有物分割の手続きで解消できるようになりました(民法258条の2第2項)。ただし、遺産分割の請求があり、相続人が期限内に異議を申し出たときは使えません。
遺産分割の段階なら、そもそも共有にしない分け方(代償分割・換価分割など)を選ぶのが一番の予防策です。共有を避ける分け方は不動産の共有名義の相続で解説しています。話し合いがまとまらないときの家庭裁判所の手続きは遺産分割がまとまらないときを参照してください。
共有のままでもできること(2023年4月改正後のルール)
解消までに時間がかかる場合でも、2023年4月の改正で共有物の管理はしやすくなりました。法務省の資料をもとに、必要な同意をまとめます。
| 行為の種類 | 例 | 必要な同意 |
|---|---|---|
| 変更(軽微でないもの) | 建物の建て替え、建物を建てる目的で土地を貸す | 共有者全員 |
| 軽微な変更 | 外壁・屋上防水などの大規模修繕、砂利道の舗装、土地の分筆の登記 | 持分の過半数 |
| 管理 | 使う人を決める、短期の賃貸 | 持分の過半数 |
| 保存 | 小さな補修 | 各共有者が単独で |
ほかにも、改正で次のルールが明確になりました。
- 使っている共有者の負担:共有物を使う共有者は、別段の合意がなければ、自分の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務を負う(民法249条2項)
- 連絡しても賛否を示さない共有者がいる場合、裁判所の決定を得れば、その人を除いた共有者の持分の過半数で管理の事項を決められる
- 共有者の持分の過半数で管理者を選び、管理を任せられる(共有者以外の人でも可)
話し合いで解消する:持分の売買・全体の売却・分筆
持分を買い取る・売り渡す
住み続けたい人が他の共有者の持分を買い取れば、単独名義になります。価格は当事者で決めますが、時価より著しく低い価格で譲り受けると、差額を贈与で取得したものとみなされることがあります(相続税法7条)。売った側には譲渡所得の課税が生じる場合があります。価格の決め方と税金は、不動産会社の査定や税理士の意見を参考にしてください。相続した不動産を売ったときの税金は相続した不動産の売却と税金で解説しています。
全体を売って代金を分ける
誰も使う予定がなければ、共有者全員で売却し、代金を持分に応じて分けるのが分かりやすい方法です。法務省も、持分だけを売るより不動産全体を売ったほうが高額になりやすいと指摘しています。売却の流れは相続した家を売る流れを参照してください。
土地を分筆して分ける
広い土地なら、分筆してそれぞれが単独で所有する方法もあります。分けた後の土地が道路に十分接しているかなどで価値が大きく変わるため、測量と分け方の検討が欠かせません。詳しくは相続した土地の分筆で説明しています。
まとまらないとき:共有物分割請求の流れ
共有者の間で協議が調わないとき、または協議をすることができないとき(共有者の一部の所在が分からない場合など)は、裁判所に分割を請求できます(民法258条1項)。改正で、裁判所が選ぶ分割方法の順序が条文で明確になりました。
| 順序 | 分割の方法 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 現物分割 | 共有物そのものを持分に応じて分ける |
| 1 | 賠償分割 | 一部の共有者が取得し、他の共有者に代わりのお金(代償金)を払う |
| 2 | 競売分割 | 上の方法で分けられないとき、または分けると価格が著しく下がるおそれがあるときに、競売して代金を分ける |
裁判所は、分割の裁判の中で、代償金の支払いや登記手続きなどを命じることもできます(民法258条4項)。裁判で決めると、希望した方法になるとは限らず、競売になれば市場での売却より低い価格になることも考えられます。時間と費用もかかるため、まずは話し合いや調停などで合意を目指し、裁判は最後の手段と考えるのが一般的です。
共有者が行方不明・連絡がつかないとき(所在等不明共有者)
調べても共有者の氏名や所在が分からない場合、以前は不在者財産管理人の選任などが必要で、費用と手間が大きな負担でした。2023年4月施行の改正で、次の制度ができました。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 持分の取得(民法262条の2) | 裁判所の決定を得て、所在等不明共有者の持分を申立てをした共有者が取得する |
| 持分の譲渡権限の付与(民法262条の3) | 他の共有者全員が持分を売ることを条件に、所在等不明共有者の持分も含めて不動産全体を第三者に売れる |
| 変更・管理の決定 | 裁判所の決定を得て、所在等不明共有者以外の共有者で変更・管理を決める |
法務省の資料による手続きの主な流れは次のとおりです。
- 不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てる。登記簿だけでなく住民票の調査など、必要な調査を尽くしても所在が分からないことの証明が必要
- 裁判所が公告し、3か月以上の異議届出期間を置く
- 裁判所が決めた時価相当額の金銭を供託する(所在等不明共有者は、その供託金から支払いを受ける)
- 譲渡権限の場合は、裁判の確定から原則2か月以内に売買などをする
持分を放棄するという方法
民法255条により、共有者が持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します。管理の負担から抜けたいときの選択肢になりますが、放棄したことを登記に反映するには手続きが必要で、他の共有者の側に税金の問題が生じることも考えられます。実際に選ぶ前に、司法書士や税理士に確認してください。
よくある質問
共有者の一人が住んでいて、家賃も払ってくれません。
改正後の民法249条2項は、共有物を使う共有者は、別段の合意がない限り、自分の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務を負うと定めています。ただし、それまでの経緯や合意の有無で結論は変わり得ます。請求を考えるときは専門家に相談しましょう。
遺産分割の前でも、共有物分割請求はできますか?
遺産分割をすべき財産については、原則として共有物分割請求はできず、遺産分割協議や家庭裁判所の調停・審判で解決します。相続開始から10年を経過し、通常共有と遺産共有が混在している場合などには、例外的に共有物分割の手続きでまとめて解消できることがあります。
共有者が亡くなって、その相続人と連絡が取れません。
共有者が亡くなると、その持分はさらに相続人に引き継がれ、共有者が増えていきます。まず戸籍などで相続人を確定させ、連絡を試みます。調べても所在が分からない場合は、上で紹介した所在等不明共有者の制度や、不在者財産管理人の選任を検討します。
話し合いで解消したら、何の登記が必要ですか?
持分の売買なら持分移転の登記、分筆なら分筆の登記と所有権の登記など、方法によって必要な登記が違います。登録免許税の額も変わるため、司法書士に見積もりを取って確認すると安心です。
まとめ:共有の解消は「話し合い→裁判所」の順で
共有不動産の解消方法には、持分の売買、全体の売却、分筆、持分の売却や放棄、共有物分割請求があります。遺産分割の前なら、まずは遺産分割の手続きで解決するのが原則です。2023年4月の改正で、共有のままでも管理を進めやすくなり、行方不明の共有者がいても裁判所の決定で持分を取得・譲渡できるようになりました。共有は放置するほど共有者が増えて複雑になります。関係が良好なうちに、全員で方針を話し合っておきましょう。
※本記事は2026年10月時点の法令と法務省の資料をもとにした一般的な解説です。どの方法が適するか、裁判所の手続きが使えるかは個別の事情によって異なります。具体的な判断は、司法書士・税理士・弁護士などの専門家や、裁判所・法務局の窓口にご確認ください。
法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(PDF)https://www.moj.go.jp/content/001444020.pdf
e-Gov法令検索「民法」第249条〜第264条の8、第898条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
e-Gov法令検索「相続税法」第7条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
裁判所「遺産分割調停」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html






