相続の準備・終活

散骨・樹木葬・海洋葬の違い|法律上の扱いと選ぶ前の注意点

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「お墓を継ぐ人がいない」「自然に還りたい」という思いから、散骨や樹木葬を考える人が増えています。ただ、言葉は似ていても、法律上の扱いはまったく違います。結論から言うと、樹木葬は「墓地」の中で遺骨を埋める形で、墓地埋葬法のルールに沿ったお墓の一種です。一方、散骨(海洋葬を含む)は遺骨を粉状にして海や陸にまく形で、厚生労働省が公表した「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」が、場所や方法、契約のあり方の目安を示しています。この記事では、3つの違いと、選ぶ前に家族と確認しておきたいことを整理します。

散骨・樹木葬・海洋葬の違い一覧

項目 樹木葬 散骨(陸上) 海洋葬(海洋散骨)
遺骨の扱い 墓地の区域内に埋蔵する 粉状にして特定の区域にまく 粉状にして海にまく
法律上の位置づけ 墓地埋葬法の「墓地」での埋蔵 墓地埋葬法が想定する埋蔵・収蔵以外の方法 同左
行う場所 都道府県知事等の許可を受けた墓地 あらかじめ特定した区域(河川・湖沼を除く) 海岸から一定の距離以上離れた海域
手を合わせる場所 墓地に残る 残らない 残らない
継ぐ人 合葬型は不要なことが多い 不要 不要
やり直し 合葬前なら移せることもある できない できない

散骨の場所や形状の欄は、厚生労働省のガイドラインの内容です。ガイドラインは散骨事業者向けですが、個人で検討するときにも判断の目安になります。

樹木葬は「墓地」で行うお墓の一種

墓地埋葬法は、遺体の埋葬や焼骨の埋蔵は墓地以外の区域で行ってはならないと定め(4条)、「墓地」を都道府県知事(市・特別区は市長・区長)の許可を受けた区域としています(2条5項)。樹木の根元などに遺骨を埋める樹木葬も「焼骨の埋蔵」に当たるため、許可を受けた墓地の中で行う必要があります。自宅の庭や私有の山林に遺骨を埋めることはできません。

樹木葬には、区画ごとに遺骨を納める形や、多くの人の遺骨を一緒に埋める合葬の形などがあります。契約前に次の点を確認しましょう。

  • 墓地として経営の許可を受けているか(墓地埋葬法10条)
  • 遺骨を個別に納める期間と、その後に合葬されるか
  • 骨壺のまま納めるのか、土に還る形で納めるのか
  • 合葬された後は遺骨を取り出せないこと
  • 年間管理料の有無、何人まで納められるか、家族の追加の可否
  • お参りの方法(献花できる場所、墓標の有無)

樹木葬・永代供養墓・納骨堂の比べ方は納骨堂・永代供養の選び方でも解説しています。

散骨の法律上の扱いと厚生労働省のガイドライン

ガイドラインは、散骨を「墓埋法に基づき適法に火葬された後、その焼骨を粉状に砕き、墓埋法が想定する埋蔵又は収蔵以外の方法で、陸地又は水面に散布し、又は投下する行為」と定義しています。令和2年度の厚生労働科学特別研究事業「墓地埋葬をめぐる現状と課題の調査研究」でまとめられ、厚生労働省のホームページで公表されているものです。主な内容は次のとおりです。

項目 ガイドラインの内容
法令の遵守 墓地埋葬法、刑法、廃棄物処理法、海上運送法、民法などの法令と、地方公共団体の条例・ガイドラインを守る
場所 陸上はあらかじめ特定した区域(河川・湖沼を除く)、海は海岸から一定の距離以上離れた海域
遺骨の形状 形状が分からないよう粉状に砕く
関係者への配慮 地域住民、周辺の土地所有者、漁業者などの利益や宗教感情を害さない
自然環境への配慮 プラスチックやビニールなどの副葬品を投下しない
契約 約款を整備・公表し、契約は文書で行い、費用の明細書を契約書に添付する
証明 散骨後に散骨証明書を作成し、利用者に交付する
安全 海洋ではライフジャケットなどの安全装具、必要な訓練を受けた従事者の配置
実施状況の公表 散骨の件数や場所を年度ごとにまとめ、ホームページなどで公表する
遺骨をそのまままくのは避ける刑法190条は、遺骨を「遺棄」した者を処罰する規定を置いています。ガイドラインが粉状に砕くことや場所の選び方を求めているのは、散骨が関係者の宗教的感情に適合し、公衆衛生の見地からも適切に行われるようにするためです。自治体によっては散骨について条例やガイドラインを設けているところもあるため、場所の自治体のルールも確認しましょう。

海洋葬(海洋散骨)を依頼するときの確認点

海洋散骨は、船で沖合に出て、粉状にした遺骨を海にまく形が一般的です。家族が乗船する形のほか、事業者に任せる形もあります。ガイドラインの内容をもとに、事業者と契約する前に次の点を確認しましょう。

  • 約款と契約書:契約内容が文書で示され、約款を見せてもらえるか
  • 費用の明細:粉骨、乗船人数、献花、悪天候時の延期などの費用が分かれているか
  • 場所:どの海域で、海岸からどれくらい離れた場所で行うか
  • 安全:ライフジャケットなどの装具と、乗員の体制
  • 散骨証明書:実施後に日時や場所を記した証明書を交付してもらえるか
  • 解約:約款に定める解約の方法と費用
  • 実施状況の公表:散骨の件数や場所を公表しているか

花や手紙を海に流したい場合は、プラスチックやビニールを使わないなど、環境に配慮したものを選びます。

家族の同意と「手を合わせる場所」

散骨は一度行うと遺骨を取り戻せません。合葬型の樹木葬も、合葬後は遺骨を取り出せないのが一般的です。本人の希望であっても、残された家族が「お参りする場所がない」と感じることがあります。次のような工夫を家族と話し合っておきましょう。

  • 遺骨の一部を手元供養として残す、または一部だけ散骨する
  • 散骨した海域や日時を記録し、命日にその方角へ手を合わせる
  • 位牌や写真を置いて、家で手を合わせる場所をつくる

お墓や供養のことは、通常、お墓などを引き継ぐ祭祀承継者(民法897条)を中心に、家族で話し合って決めることになります。本人の希望は、エンディングノートなどに理由と一緒に書き、家族に伝えておくと受け入れてもらいやすくなります(エンディングノートの書き方)。

今あるお墓の遺骨を散骨・樹木葬にするとき

すでにお墓に納めている遺骨を樹木葬の墓地に移す場合は、墓地埋葬法の改葬に当たり、遺骨がある市区町村の改葬許可が必要です。一方、散骨のためにお墓から取り出す場合は、法律上の改葬(他の墳墓・納骨堂へ移すこと)の形に直接当てはまらないため、取扱いは自治体によって異なります。取り出す前に、遺骨がある市区町村に確認しましょう(改葬の手続き、墓じまいの進め方)。

亡くなった直後に散骨や樹木葬を予定している場合も、火葬のときに受け取る火葬許可証は保管しておきます。樹木葬の墓地に納めるときに必要になるほか、後で気が変わってお墓に納める可能性もあるためです(火葬許可証・埋葬許可証とは)。

よくある質問

散骨に役所の許可は必要ですか?

墓地埋葬法で市区町村長の許可が必要とされているのは、埋葬・火葬・改葬です(5条)。散骨そのものについて同法に許可の仕組みはありませんが、自治体の条例やガイドラインで定めがある場合もあります。また、お墓から遺骨を取り出して散骨する場合の手続きは、遺骨がある市区町村に確認してください。

自宅の庭に遺骨を埋めてもいいですか?

できません。焼骨の埋蔵は墓地以外の区域で行ってはならないとされています(墓地埋葬法4条)。自宅で遺骨を手元に置いて供養すること(手元供養)とは区別して考えましょう。

自分で海に散骨してもいいですか?

ガイドラインは散骨事業者向けですが、粉状に砕くこと、海岸から離れた海域を選ぶこと、漁業者などへの配慮、環境への配慮といった内容は、個人で行う場合にも参考になります。海水浴場や漁場の近くは避けるなど、周囲への配慮が欠かせません。不安があれば、ガイドラインに沿って実施状況を公表している事業者に相談する方法もあります。

樹木葬なら継ぐ人がいなくても大丈夫ですか?

合葬型など承継を前提としない樹木葬は、継ぐ人がいない方にも選ばれています。ただし、区画型で管理料がかかるものもあるため、契約前に承継の要否と管理料を確認しましょう(お墓の生前準備)。

まとめ:樹木葬は「墓地」、散骨は「ガイドライン」で確認する

樹木葬は許可を受けた墓地の中で遺骨を埋める形で、墓地埋葬法のルールに沿ったお墓の一種です。散骨や海洋葬は、遺骨を粉状にして海や特定の区域にまく形で、厚生労働省が公表した散骨ガイドラインが、場所・方法・契約・散骨証明書などの目安を示しています。どちらも、やり直しが難しい選択です。本人の希望と家族の気持ちを両方大切にし、一部を手元に残すなど「手を合わせる場所」のことも話し合ったうえで決めましょう。

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※本記事は2026年10月時点の法令・公的資料をもとにした一般的な解説です。散骨に関する条例や取扱いは自治体によって異なり、樹木葬の契約条件は墓地ごとに異なります。具体的な手続きは自治体と墓地の管理者に、契約内容は事業者にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
厚生労働省「散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)」https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001321304.pdf
厚生労働省「墓地・埋葬等のページ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000123872.html
e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」第2条・第4条・第5条・第10条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000048
e-Gov法令検索「刑法」第190条 https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045
e-Gov法令検索「民法」第897条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

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