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「親の家は借地の上に建っている。相続したら地主さんに承諾料を払うの?」——借地や底地の相続では、権利関係が見えにくいぶん不安を感じる方が多いはずです。結論から言うと、借地権は相続財産になり、相続であれば地主の承諾なしに引き継げます。一方、相続した借地権を第三者に売る場合や、相続人以外の人に遺贈する場合は、地主の承諾(または裁判所の許可)が必要です。この記事では、借りる側(借地権)と貸す側(底地)それぞれの相続で押さえたいポイントと、相続税の評価方法を、法令と国税庁の情報をもとに整理します。
借地権・底地とは?相続で引き継ぐもの
借地借家法2条は、借地権を「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義しています。他人の土地を借りて自分の家を建てている人が持つ権利です。反対に、借地権が設定されている土地の所有権を一般に底地と呼び、国税庁の評価では「貸宅地」といいます。
| 立場 | 相続で引き継ぐもの | 主な義務・制約 |
|---|---|---|
| 借地人(借地権) | 土地を使う権利と、その上の建物 | 地代の支払い。売却・建て替えなどに地主の承諾が要る場合がある |
| 地主(底地) | 土地の所有権と、地代を受け取る権利 | 固定資産税の負担。借地人がいるため自由に使えない |
国税庁は、借地権を「旧借地法・借地借家法による借地権」と「定期借地権等(定期借地権、事業用定期借地権等など)」に分けて評価するとしています。昔からの借地か定期借地かで扱いが変わるため、まず契約書で種類を確認しましょう。
借地権の相続に地主の承諾は要らない(売却・遺贈との違い)
相続は「譲渡」ではないので承諾は不要
民法612条は、賃借人は賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲り渡したり転貸したりできないと定めています。しかし相続は、亡くなった方の権利義務を相続人が当然に引き継ぐもので、譲渡には当たらないと考えられています。そのため、相続人が借地権を相続すること(遺産分割で相続人の1人が取得する場合を含む)に、地主の承諾は要りません。
承諾が必要になる場面
| 場面 | 地主の承諾 | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| 相続人が相続する(遺産分割を含む) | 不要 | 相続は譲渡に当たらないと考えられている |
| 相続人以外の人に遺言で遺贈する | 必要とされる | 特定の人への遺贈は譲渡と同様に扱われると考えられている |
| 相続した借地権を第三者に売る | 必要 | 民法612条。承諾が得られないときは裁判所の許可を求める手続きがある(借地借家法19条) |
| 建て替え・増改築(増改築を制限する特約がある場合) | 必要 | 協議が調わないときは裁判所の許可を求める手続きがある(借地借家法17条2項) |
遺言で孫や内縁の配偶者など相続人以外に借地上の家を残したい場合は、遺言を書く前に地主の意向を確認しておくと安心です(遺贈とは)。
借地権を相続したらやること
- 契約書を確認する:契約の時期と種類(旧借地法・普通借地・定期借地)、期間と更新、地代、増改築や譲渡に関する特約
- 地主に相続を伝える:亡くなったこと、今後の地代を誰が払うか、連絡先を伝える
- 地代を払い続ける:遺産分割が終わるまでの間も滞納しないよう、誰が立て替えるか家族で決める
- 建物の相続登記をする:借地借家法10条は、土地の上に借地権者名義で登記された建物があれば、借地権の登記がなくても第三者に対抗できるとしています。底地が売られた場合などに備え、建物の名義を相続人に移しておくことが大切です(相続登記の必要書類)
借地権・底地の相続税評価と計算例
借地権=自用地としての価額×借地権割合
国税庁のタックスアンサー(No.4611)によると、借地権の価額は、その土地を更地(自用地)として評価した価額に借地権割合を掛けて求めます。借地権割合は地域ごとに定められ、路線価図では路線価の右隣のアルファベットで示されます(A:90%、B:80%、C:70%、D:60%、E:50%、F:40%、G:30%)。
底地(貸宅地)=自用地としての価額×(1-借地権割合)
国税庁のタックスアンサー(No.4613)によると、借地権の目的となっている宅地は、自用地としての価額から借地権相当額を差し引いて評価します。借地権の取引慣行がないと認められる地域では、借地権割合を20%として計算します。
| 例:自用地としての価額3,000万円、借地権割合60%(D)の場合 | 評価額の目安 |
|---|---|
| 借地人側(借地権) | 3,000万円×60%=1,800万円 |
| 地主側(底地) | 3,000万円×(1-60%)=1,200万円 |
上の数字は計算のしくみを示す目安です。定期借地権等は残存期間などをもとに別の方法で評価し、土地の形や道路の付き方による補正もあります。自用地としての価額の出し方は相続した土地の評価額の調べ方、路線価図の読み方は路線価図の見方で解説しています。地代のない「使用貸借」など特殊な貸し借りは評価が異なるため、税務署や税理士に確認してください。
底地を相続した場合のポイント
底地を相続した人は、土地の所有権と地代を受け取る権利、固定資産税を納める義務を引き継ぎます。借地人には、地主が変わったことと新しい地代の振込先を知らせましょう。
底地は借地人がいるため自分で使うことができず、借地借家法6条により、更新を拒むには「正当の事由」が必要です。そのため、底地のままでは活用や売却の選択肢が限られがちです。整理の方法としては、主に次のようなものがあります。
- 借地人に底地を買ってもらう:借地人は完全な所有権になる
- 借地権を買い取る:地主側が完全な所有権にして、活用・売却しやすくする
- 借地権と底地を交換して分け合う:土地を分けてそれぞれが所有権を持つ
- 底地のまま第三者に売る:買い手は限られ、価格は低くなりやすい
いずれも借地人との交渉が必要で、売却すれば譲渡所得の税金がかかる場合があります(相続した不動産の売却と税金)。
よくある質問
Q. 地主が亡くなりました。借地契約はどうなりますか?
底地を相続した人が地主の立場を引き継ぐため、借地契約はそのまま続きます。新しい地主から連絡があれば、地代の支払先を確認しましょう。
Q. 借地上の家を兄弟で共有名義で相続してもよいですか?
可能ですが、売却や建て替えのたびに共有者全員の意見をそろえ、さらに地主とも調整する必要があり、話がまとまりにくくなります。共有で相続するリスクは不動産を共有名義で相続するリスクをご覧ください。
Q. 地主が売却を承諾してくれません。どうすればよいですか?
借地借家法19条により、地主に不利となるおそれがないのに承諾しない場合、借地人は裁判所に承諾に代わる許可を申し立てることができます。手続きや見通しは個別の事情で変わるため、専門家に相談してください。
まとめ
借地権も底地も相続財産です。借地権は、相続であれば地主の承諾なく引き継げますが、第三者への売却や相続人以外への遺贈には承諾が必要で、建て替えも特約によっては承諾が要ります。相続後は契約書を確認し、地主へ連絡し、地代を払い続け、建物の相続登記をしておきましょう。相続税では、借地権は自用地の価額×借地権割合、底地は自用地の価額×(1-借地権割合)が評価の基本です。権利関係が複雑なため、評価は税理士、売却や交渉は不動産と法律の専門家に相談しながら進めると安心です(相続の専門家の選び方)。
※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁の公開情報をもとにした一般的な解説です。借地契約の内容や個別の事情によって扱いは異なります。評価・税金は税務署・税理士に、地主との交渉や裁判所の手続きは専門家にご確認ください。
国税庁「No.4611 借地権の評価」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4611.htm
国税庁「No.4613 貸宅地の評価」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4613.htm
国税庁「財産評価基準書 路線価図の説明」https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prcf.htm
e-Gov法令検索「借地借家法」第2条・第6条・第10条・第17条・第19条 https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090
e-Gov法令検索「民法」第612条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089






