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「相続した土地は、いくらとして扱われるのか」。相続税がかかるかどうかも、家族での分け方も、この評価額が分からないと先へ進めません。結論から言うと、相続税を計算するときの土地の評価額は、路線価のある地域なら「路線価×面積」、路線価のない地域なら「固定資産税評価額×倍率」で求めます。建物は固定資産税評価額がそのまま評価額です。この記事では、国税庁の路線価図を使った調べ方、計算例、評価額が下がるケースを順に整理します。読み終えると、手元の納税通知書と路線価図だけで、おおよその評価額をつかめます。
相続した土地の評価額は「路線価」か「倍率」で決まる
国税庁は、相続税・贈与税で土地を評価する方法を2つ定めています。どちらを使うかは土地の場所で決まり、自分で選ぶものではありません。
| 対象 | 評価方法 | 計算のしかた |
|---|---|---|
| 路線価が定められている地域の土地 | 路線価方式 | 路線価 × 各種補正率 × 面積 |
| 路線価が定められていない地域の土地 | 倍率方式 | 固定資産税評価額 × 倍率 |
| 家屋(建物) | 固定資産税評価額による | 固定資産税評価額 × 1.0 |
土地には目的別に4つの価格がある
同じ土地でも、何に使う価格かによって金額が変わります。相続で出てくる価格を整理すると次のとおりです。
| 価格の種類 | 主な使いみち | 水準の目安 |
|---|---|---|
| 実勢価格(時価) | 実際の売買 | 取引ごとに決まる |
| 公示地価 | 土地取引の指標 | 国が毎年公表 |
| 路線価(相続税路線価) | 相続税・贈与税 | 地価公示価格等を基にした価格の80%程度 |
| 固定資産税評価額 | 固定資産税、相続登記の登録免許税、倍率方式・建物の相続税評価 | 宅地は地価公示価格等の7割が目途 |
使うのは「亡くなった年」の路線価
評価に使う路線価図・評価倍率表は、亡くなった日の属する年分のものです。路線価は1月1日時点の価格として毎年公表され、2026年分は7月1日に国税庁ホームページで公開されました。その年分がまだ公開されていない時期に相続が起きた場合は、公開を待ってから評価します。
路線価方式での土地評価額の調べ方と計算例
路線価図の見方
路線価は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で誰でも無料で確認できます。都道府県、市区町村、町名の順に選ぶと地図が表示されます。
- 道路に書かれた数字が路線価で、1平方メートルあたり・千円単位です
- 数字の右のアルファベットは借地権割合を示します(A:90%、B:80%、C:70%、D:60%、E:50%、F:40%、G:30%)
- 「215D」とあれば、路線価は1平方メートルあたり215,000円、借地権割合は60%です
- 図に「倍率地域」と書かれていれば、路線価方式ではなく倍率方式で評価します
計算例:路線価20万円・150平方メートルの宅地
普通住宅地区にある、間口10m・奥行15m(150平方メートル)の整った形の宅地で、正面の道路の路線価が「200」(20万円)の場合です。奥行15mに対応する普通住宅地区の奥行価格補正率は1.00なので、次のように計算します。
実際の評価では、土地の形や道路との接し方に応じた補正が加わります。あくまで目安としてご覧ください。
形や道路づけで評価額は増減する
路線価は「その道路に面した標準的な宅地」の価格です。実際の土地は形がさまざまなので、次のような補正を行います。
| 土地の状況 | 評価への影響 |
|---|---|
| 奥行が短すぎる・長すぎる | 奥行価格補正率で減額 |
| 間口が狭い、奥行が間口に比べて長い | 間口狭小補正率・奥行長大補正率で減額 |
| 形がいびつ(不整形地) | 不整形地補正率で減額 |
| 角地、表と裏で道路に面する | 側方路線影響加算・二方路線影響加算で増額 |
| 建て替え時に道路として提供する部分(セットバック)がある | その部分は70%相当額を控除 |
| 面積が大きい宅地(三大都市圏500平方メートル以上、それ以外1,000平方メートル以上など一定の要件) | 規模格差補正率で減額 |
補正率の表は国税庁ホームページに掲載されています。形が複雑な土地ほど、補正の当てはめで評価額に差が出ます。
倍率方式の土地と建物・マンションの評価額
倍率方式は「固定資産税評価額×倍率」
路線価のない地域では、その土地の固定資産税評価額に、地域ごとに定められた倍率を掛けます。倍率は国税庁の評価倍率表で確認できます。たとえば固定資産税評価額800万円、倍率1.1の宅地なら、800万円×1.1=880万円が目安です。
固定資産税評価額は、毎年届く固定資産税の課税明細書の「価格」または「評価額」の欄で確認します。税額計算用の「課税標準額」とは別の数字なので、取り違えに注意してください。手元にない場合は、市区町村役場(東京23区は都税事務所)で固定資産評価証明書を取得できます。
建物は固定資産税評価額がそのまま評価額
家屋は「固定資産税評価額×1.0」で評価します。つまり、課税明細書に書かれた家屋の評価額がそのまま相続税評価額です。
分譲マンションは補正がかかる場合がある
マンションは、敷地利用権(敷地全体の評価額×敷地権の割合)と区分所有権(建物部分の固定資産税評価額)の合計で評価します。さらに2024年1月1日以後の相続では、築年数・総階数・所在階・敷地の持分から計算する「区分所有補正率」を掛ける場合があります。計算上の「評価水準」が0.6未満になる部屋は、補正率を掛けて評価額が引き上げられるしくみです。詳しくはマンションの相続と評価ルールで解説しています。
評価額が下がるケース(貸している土地・自宅の特例)
人に貸している不動産は、自由に使えない分だけ評価額が下がります。ここまでで求めた金額を「自用地としての価額」と呼び、そこから次のように調整します。
| 区分 | 計算式 |
|---|---|
| 貸宅地(建物所有のために土地を貸している) | 自用地の価額 × (1 − 借地権割合) |
| 貸家建付地(自分のアパート・貸家の敷地) | 自用地の価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合) |
| 貸家(貸している建物) | 固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合) |
借地や底地の扱いは借地権・底地の相続もあわせてご覧ください。
小規模宅地等の特例で最大80%減額
亡くなった方の自宅や事業に使っていた土地は、要件を満たすと評価額を大きく減らせます。自宅の土地(特定居住用宅地等)は330平方メートルまで80%減額、貸付事業用の土地は200平方メートルまで50%減額です。
評価額を使う場面と自分で確認する手順
場面ごとに使う価格が違う
- 相続税:路線価方式・倍率方式による評価額を使います。財産の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかどうかが、申告が必要かの分かれ目です(相続税の基礎控除の計算)
- 遺産分割:どの価格で分けるかは相続人の合意で決められます。話し合いがまとまらず家庭裁判所の調停になった場合は、必要に応じて鑑定が行われることもあります
- 相続登記:登録免許税は固定資産税評価額×0.4%で計算します(相続登記の費用)
自分で確認する5つの手順
- 固定資産税の課税明細書や名寄帳で、土地・建物の所在、地積、固定資産税評価額を確認する
- 国税庁の路線価図で、路線価地域か倍率地域かを調べる
- 路線価×面積、または固定資産税評価額×倍率で、土地のおおよその評価額を出す
- 貸している土地か、自宅の特例が使えそうかを確認する
- 預貯金など他の財産と合計し、基礎控除と比べる
合計が基礎控除に近い、または超えそうな場合は、税理士か税務署に早めに相談すると安心です。相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月あります。
よくある質問
Q. 路線価で計算した金額で売れますか?
売買価格とは別物です。路線価は地価公示価格等の80%程度を目途に定められており、実際の取引価格は立地や需要で決まります。売却を考える場合は相続した不動産の売却の流れを確認し、査定で実勢価格を把握してください。
Q. 共有名義の土地はどう評価しますか?
土地全体の評価額を出し、それを持分の割合であん分します。評価額4,000万円の土地の2分の1を持っていた場合は、2,000万円が目安です。
Q. 固定資産税評価額はどこで分かりますか?
毎年、市区町村から届く固定資産税の納税通知書に、課税明細書が同封されています。見当たらないときは、市区町村役場で固定資産評価証明書や名寄帳を請求できます。相続人が請求するときの必要書類は、事前に窓口へ確認しておくと二度手間になりません。
Q. 土地の評価は自分でしてもよいですか?
自分で評価して申告することも認められており、国税庁は評価明細書の様式を公開しています。ただし、形がいびつな土地、貸している土地、面積の大きい土地は補正や特例の判断で評価額が大きく変わります。該当する場合は税理士に確認するのが確実です。
まとめ
相続した土地の評価額は、路線価地域なら路線価×補正率×面積、それ以外は固定資産税評価額×倍率で求めます。建物は固定資産税評価額そのままです。貸している土地や自宅の土地は、評価額が下がるしくみや特例があります。まずは課税明細書と路線価図で、対象の不動産とおおよその金額を把握するところから始めましょう。
※本記事は2026年10月時点の法令・公表情報にもとづく一般的な解説です。計算例は目安であり、実際の評価額・税額は個別の事情で変わります。最終的な判断は税理士または税務署にご確認ください。






