不動産の相続

マンションの相続|2024年からの評価方法と管理費滞納の引き継ぎ

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「親のマンションを相続することになった。評価額や管理費はどうなるの?」——分譲マンションの相続には、戸建てとは違う点がいくつかあります。結論から言うと、2024年1月1日以後の相続では、マンションの相続税評価に「区分所有補正率」を使う新しい方法が適用され、高層階や築浅の物件を中心に評価額が上がることがあります。また、亡くなった方が滞納していた管理費・修繕積立金は、相続人が引き継ぎます。この記事では、国税庁の計算例を使って評価の仕組みを説明し、管理費・登記・その後の選択肢まで整理します。

マンション相続の流れは他の不動産と同じ

手続きの大きな流れは、戸建てなど他の不動産と変わりません。

  1. 遺言の有無を確認し、相続人と財産を確定する
  2. 遺産分割協議で、誰がマンションを取得するか決める
  3. 相続登記で名義を変える(取得を知った日から3年以内の義務。相続登記の義務化)
  4. 相続税がかかる場合は、評価額を出して10か月以内に申告する
  5. 管理組合に所有者の変更を届け出て、住む・貸す・売るを決める

マンションに特有なのは、評価の方法、管理費・修繕積立金、登記での「敷地権」の扱いです。以下で順に見ていきます。

マンションの相続税評価|2024年からの新しい方法

従来の評価方法

マンションの一室は、建物部分(区分所有権)と土地部分(敷地利用権)に分けて評価し、合計します。

  • 建物部分:家屋の固定資産税評価額×1.0
  • 土地部分:敷地全体の評価額(路線価×地積など)×敷地権の割合(共有持分)

1棟の敷地を全戸で分け合うため、土地部分はごく一部になります。この方法では、特に高層の物件で、評価額が実際の売買価格を大きく下回ることが問題になっていました。土地の評価の基本は相続した土地の評価額の調べ方で解説しています。

2024年1月1日以後は「区分所有補正率」をかける

新しい評価方法国税庁の通達により、2024年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した居住用の分譲マンションは、従来の方法で出した建物部分と土地部分の価額に、それぞれ区分所有補正率をかけて評価します。

区分所有補正率は、次の順に計算します。

手順 計算
1 評価乖離率 A+B+C+D+3.220
A=築年数×△0.033
B=総階数指数(総階数÷33、上限1)×0.239
C=所在階×0.018
D=敷地持分狭小度(敷地利用権の面積÷専有面積)×△1.195
2 評価水準 1÷評価乖離率
3 区分所有補正率 評価水準が0.6未満→評価乖離率×0.6
0.6以上1以下→補正なし(従来どおり)
1超→評価乖離率

築年数が浅いほど、建物が高いほど、所在階が上の階ほど、敷地の持分が小さいほど、評価乖離率が大きくなり、補正率が上がる仕組みです。逆に評価水準が1を超える物件は、補正率が1未満となって評価額が下がります。

国税庁の計算例で見る

国税庁が示す例(築27年、11階建ての3階、専有面積60㎡、敷地利用権の面積21㎡)では、次のようになります。

項目 値
評価乖離率 △0.891+0.079+0.054+△0.419+3.220=2.043
評価水準 1÷2.043≒0.489(0.6未満)
区分所有補正率 2.043×0.6=1.2258
建物部分 400万円×1.2258=490万3,200円
土地部分 1,050万円×1.2258=1,287万900円

この例では、従来の方法より評価額が約2割上がっています。補正率は物件ごとに違うため、国税庁の「区分所有補正率の計算明細書」で、登記事項証明書の内容(築年、総階数、所在階、専有面積、敷地権の割合)をもとに計算します。ここでの数字は国税庁の例であり、実際の評価額や税額は個別に確認してください。

新しい評価方法が使われないもの

  • 事業用のテナント物件など、構造上主に居住用でないもの
  • 区分建物の登記がされていないもの(1棟所有の賃貸マンションなど)
  • 地階を除く総階数が2以下のもの
  • 居住用の専有部分が3室以下で、すべてを区分所有者か親族が住居にしているもの(二世帯住宅など)

なお、マンションの敷地に小規模宅地等の特例を使う場合や、貸している部屋を評価する場合も、補正率をかけた後の価額をもとに計算します。

「タワマン節税」は前提が変わった高層階ほど評価額と売買価格の差が大きいことを使った節税が注目されてきましたが、新しい評価方法は、この差を一定程度まで縮める仕組みです。2023年以前の情報をもとに考えないよう注意しましょう。相続税の計算や対策は、税理士に確認するのが確実です。

管理費・修繕積立金の滞納は相続人が引き継ぐ

相続人は、亡くなった方の財産に属した一切の権利と義務を引き継ぎます(民法896条)。マンションの管理費や修繕積立金の滞納も、借金と同じく相続人が支払う義務を引き継ぎます。国土交通省のマンション標準管理規約のコメントでも、包括承継人(相続人)が債務を承継するのは当然であると説明されています。

場面 扱い
亡くなる前の滞納 相続人が引き継ぐ。相続放棄をした人は引き継がない
亡くなった後、遺産分割までの管理費 空室でも毎月発生する。相続人の間で誰が負担するか決めておく
相続後に売却したとき 管理組合は、滞納分を買主(特定承継人)にも請求できる(区分所有法8条)。売却時に精算するのが一般的

管理組合の管理費などの債権には、その部屋の区分所有権に対する先取特権も認められています(区分所有法7条)。滞納が多額になると、売却や相続の判断に影響するため、早めに金額を確認しましょう。

相続したら管理組合に確認・届出をする

標準管理規約では、新たに組合員の資格を取得した人や失った人は、直ちに書面(または電磁的方法)で管理組合に届け出ることとされています。実際のルールは各マンションの管理規約で決まっているので、管理会社や管理組合に次の点を確認しましょう。

  • 管理費・修繕積立金の月額と、滞納の有無・金額
  • 引き落とし口座(亡くなった方の口座が凍結されると引き落としが止まる)
  • 所有者変更の届出の方法と、必要な書類
  • 大規模修繕の予定や、一時金の徴収予定
相続放棄の判断材料にも滞納が多く、ほかに目立った財産がない場合は、相続放棄も選択肢になります。期限は原則、相続の開始を知った時から3か月です(相続放棄の期限と方法)。放棄すると、マンション以外の財産も相続できない点に注意してください。

マンションの相続登記で気をつけること

一般的な分譲マンションは「敷地権付き区分建物」として登記されており、建物と敷地の権利が一体になっています。相続登記は、専有部分の建物について申請し、申請書には敷地権の種類と割合も記載します。法務局の手引きでは、不動産番号を書けば、敷地権の種類と割合以外の表示を省略できるとされています。

必要な書類は戸建てと基本的に同じです。登録免許税の計算方法は法務局ホームページで案内されているので、課税明細書と登記事項証明書を手元に置いて確認しながら作成しましょう。

相続したマンションの選択肢|住む・貸す・売る

選択肢 考えたいこと
住む 管理費・修繕積立金と固定資産税を払い続けられるか。住宅ローンが残っている場合は団体信用生命保険の有無
貸す 管理規約で賃貸に制限がないか。家賃収入の確定申告が必要(賃貸物件を相続したら)
売る 相続登記を済ませてから売却する。滞納の精算、譲渡所得の税金を確認(相続した不動産の売却)

空室のまま持ち続けると、管理費・修繕積立金と固定資産税がかかり続けます。毎年の税金の扱いは相続した不動産の固定資産税で解説しています。

よくある質問

2023年に亡くなった親のマンションにも新しい評価方法を使いますか?

使いません。新しい評価方法は、2024年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得したマンションが対象です。亡くなった日(相続開始日)で判断します。

新しい評価方法で、必ず評価額が上がりますか?

必ずではありません。評価水準が0.6以上1以下の物件は補正されず、従来どおりの評価です。評価水準が1を超える物件は、評価額が下がります。物件によっては補正がかからないこともあります。

管理費の滞納を、遺産分割で取得しない相続人も払う必要がありますか?

亡くなる前の滞納は相続債務なので、相続放棄をしない限り、相続人全員が相続分に応じて引き継ぐのが原則です。遺産分割でマンションを取得する人が全額払うと決めた場合でも、管理組合との関係でどう扱われるかは別途確認が必要です。合意の内容を管理組合に伝え、支払い方法を相談しておきましょう。

まとめ

マンションの相続は、手続きの流れは他の不動産と同じですが、2024年1月1日以後の相続では区分所有補正率を使って評価します。築浅・高層・上の階・敷地持分が小さい物件ほど補正率が上がりやすく、国税庁の例では評価額が約2割上がっています。管理費・修繕積立金の滞納は相続人が引き継ぎ、売却すれば買主にも請求できるため、相続したら早めに管理組合で滞納の有無を確認し、所有者の変更を届け出ましょう。住む・貸す・売るのどれを選ぶかは、毎月の管理費と固定資産税も含めて家族で話し合うことが大切です。

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※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁・国土交通省・法務局の公表情報をもとにした一般的な解説です。評価額や税額、管理費の扱いは物件や管理規約、個別の事情で異なります。具体的には税理士・管理組合・専門家にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
国税庁「No.4667 居住用の区分所有財産の評価」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4667.htm
国税庁「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hyoka/231004/index.htm
国税庁「B2-6 居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hyoka/annai/1470-17.htm
国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」令和6年6月7日改正版 https://mansion-info.mlit.go.jp/wp-content/uploads/2025/03/01_管理規約(単棟型).pdf
e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」第7条・第8条 https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069
e-Gov法令検索「民法」第896条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
法務省民事局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」(令和8年4月)https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001437202.pdf

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