家族の話し合い

相続人が海外にいるとき|サイン証明・在留証明の取り方と手続き

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仕事や結婚で海外に住む子やきょうだいが相続人になるケースは珍しくありません。海外に住んでいても相続人であることは変わらず、遺産分割協議にも加わる必要があります。結論から言うと、日本に住民登録がない人は印鑑証明書を取れないため、現地の日本大使館・総領事館(在外公館)で「署名証明(サイン証明)」を、住民票の代わりに「在留証明」を取得して手続きします。署名証明は本人が在外公館に出向いて領事の前で署名する必要があり、郵送や代理では取れません。この記事では、外務省の案内をもとに2つの証明の条件と取り方、協議書のやり取りの流れ、外国籍の相続人の場合、相続税の注意点を整理します。

相続人が海外にいるときの結論

国内の相続人が使う書類 海外在住の日本人の代わり ポイント
印鑑証明書(+実印の押印) 署名証明(サイン証明) 在外公館で領事の面前で署名。本人出頭が必須、手数料1通1,700円相当
住民票(住所の証明) 在留証明 在外公館が現地の住所を証明。手数料1通1,200円相当
—(外国籍の相続人) 現地の公証人による署名の証明など 在外公館の署名証明は原則日本国籍の人が対象

どの書類が必要かは、提出先(法務局、金融機関など)によって異なります。取得する前に、必ず提出先に確認しましょう。

海外に住んでいても相続人であることは変わらない

相続人の範囲は、住んでいる国ではなく、亡くなった人との身分関係で決まります。日本の法の適用に関する通則法36条は「相続は、被相続人の本国法による」と定めているため、亡くなった人が日本人であれば、相続人が海外在住でも外国籍でも、日本の民法に従って相続人と相続分が決まります(法定相続人の範囲と順位)。

遺産分割協議は、全員が一堂に会する必要はありません。協議書を郵送で回して署名してもらう方法が一般的で、国内の遠方の相続人との進め方は遠方に住む相続人との相続手続きで解説しています。海外の相続人がいる場合は、ここに在外公館での証明の取得が加わります。

印鑑証明書の代わり:署名証明(サイン証明)

外務省によると、署名証明は日本に住民登録をしていない海外在留の人に、日本の印鑑証明に代わるものとして日本での手続きのために発給されるもので、申請者の署名(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことを証明します。日本の住民登録を抹消して海外に住むと、印鑑登録も同時に抹消されるため、法務局や銀行は海外在留の日本人に署名証明を求めています。

項目 内容(外務省の案内より)
発給条件 日本国籍を有する人のみ
申請方法 本人が在外公館に出向いて申請。代理申請・郵便申請は不可
必要書類 日本国籍と本人確認ができる書類(有効な日本国旅券など)。綴り合わせ形式の場合は、日本から送られた署名すべき書類
手数料 1通につき邦貨1,700円相当(現地通貨の現金)

証明の形式は2種類

  • 形式1:在外公館が発行する証明書と、申請者が領事の面前で署名した書類(遺産分割協議書など)を綴り合わせて割り印をするもの
  • 形式2:申請者の署名だけを単独で証明するもの

どちらにするかは提出先の意向によるため、事前に法務局や金融機関に確認してください。遺産分割協議書に使う場合は、協議書と綴り合わせる形式1を求められた場合は、協議書の原本を海外に送る段取りが必要です。

事前に署名しない署名は領事の面前で行う必要があります。日本から届いた協議書に先に署名してしまうと、その署名を抹消して改めて署名し直すことになります。協議書は署名欄を空けたまま在外公館に持参するよう、海外の相続人に伝えておきましょう。

なお、元日本人(日本国籍を離脱・喪失した人)でも、失効した日本国旅券や戸籍謄本などがあれば、遺産相続の手続きのために署名証明を発給できるケースがあるとされています。条件は在外公館に直接問い合わせてください。

住民票の代わり:在留証明

在留証明は、外国に住む日本人がどこに住所(生活の本拠)を有しているかを、その地を管轄する在外公館が証明するものです。外務省は、不動産登記などで日本国内の提出先から外国の住所の証明を求められた場合に発給されると説明しています。相続で不動産を取得する海外在住の相続人は、登記の住所証明として求められるのが一般的です。

項目 内容(外務省の案内より)
発給条件 日本国籍を有する人(二重国籍者を含む)。現地に3か月以上滞在し居住している(今後3か月以上の滞在見込みでも可)。原則として日本に住民登録がないこと
申請方法 本人が在外公館に出向くのが原則。オンライン在留届(ORRネット)を使ったオンライン申請は、一定の要件を満たせば出向く必要がない
必要書類 日本国籍と本人確認ができる書類(旅券など)、住所を確認できる文書(現地の滞在許可証、運転免許証、公共料金の請求書など)、滞在開始時期を確認できるもの。本籍を番地まで記載したい場合は戸籍謄(抄)本
手数料 1通につき邦貨1,200円相当(現地通貨の現金)

外務省は、在留証明は遺産分割協議や不動産登記など重要な用途に使われるため、本人の意思や提出先の確認と同時に生存確認も行っていると説明しています。また、在留証明は在外公館だけが発行しており、一時帰国中に日本で取得することはできません。

海外の相続人がいるときの手続きの流れ

  1. 相続人と財産を確定する:戸籍を集め、財産を一覧にする。在外公館に戸籍謄本を出す場面では、2025年3月24日以降「電子戸籍パス」で代用できる
  2. 分け方を話し合う:メールやオンライン通話で合意をつくる
  3. 協議書を作り、原本を海外へ送る:署名欄は空けておく。国際郵便は追跡できる方法で
  4. 海外の相続人が在外公館で署名証明・在留証明を取る:開館日や予約の要否は公館ごとに確認
  5. 書類を日本に返送してもらう
  6. 登記・預金などの名義変更:法務局や金融機関に、協議書、署名証明、在留証明などを提出する

在外公館が遠い地域では、往復の移動や郵送だけで数週間かかることもあります。相続税の申告が必要な場合は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内が期限なので、早めに動き出しましょう(相続税の申告期限)。

不動産を取得する場合の国内連絡先不動産登記法では、所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、国内における連絡先となる者の氏名・住所なども登記事項とされています(73条の2)。海外在住の相続人が不動産を相続する場合は、国内の連絡先を誰にするかもあらかじめ決めておくと手続きが進めやすくなります。必要書類は相続登記の必要書類一覧も参考にしてください。

外国籍の相続人がいる場合

在外公館の署名証明は、原則として日本国籍の人が対象です。外務省は、本人の署名を証明するのは基本的には現地の公証人であり、外国籍の人は現地の公証人に依頼することになると案内しています。どのような書類(署名の証明、宣誓供述書など)で足りるかは提出先が判断するため、法務局や金融機関に事前に確認しましょう。外国語の書類には、日本語訳の添付を求められることがあります。

相続税の注意点

国税庁によると、相続などで財産を取得した時に外国に住んでいて日本に住所がない人は、原則として日本国内にある財産だけが相続税の対象です。ただし、日本国籍があり、亡くなった人の死亡日前10年以内に日本に住所があったことがある場合などは、国外の財産も含めて課税対象になります。留学や海外出張など一時的に日本を離れている人は、日本国内に住所があるとされます。

課税の範囲は、相続人と亡くなった人の国籍や住所の履歴の組み合わせで変わり、判断が複雑です。海外の財産がある場合の考え方は海外資産の相続税で解説しています。最終的な判断は税務署や税理士に確認してください。

よくある質問

一時帰国したときに、日本で印鑑証明書を取れますか?

印鑑登録は住民登録と結びついており、住民登録を抹消して海外に住んでいる人は印鑑登録も抹消されています。そのため、一般的には署名証明で手続きします。在留証明も一時帰国中に日本で取ることはできません。

家族が代わりに在外公館で署名証明を取れますか?

取れません。署名証明は領事の面前で本人が署名することを証明するもので、代理申請や郵便申請はできないとされています。

海外の相続人が相続放棄をしたい場合は?

相続放棄は家庭裁判所への申述が必要で、原則として相続の開始を知った時から3か月以内です。海外からの手続きは郵送のやり取りに時間がかかるため、早めに家庭裁判所に確認しましょう(相続放棄の手続き)。

署名証明や在留証明に有効期限はありますか?

提出先によっては、発行からの期間に条件を設けていることがあります。早く取りすぎて使えなくならないよう、取得のタイミングは提出先に確認してから決めましょう。

まとめ:在外公館の2つの証明と、早めの段取りが鍵

海外に住んでいても相続人であることは変わらず、遺産分割協議には全員の参加が必要です。日本に住民登録がない日本人は、印鑑証明書の代わりに在外公館で署名証明を、住民票の代わりに在留証明を取ります。署名証明は本人出頭が必須で、協議書は署名せずに持参します。外国籍の相続人は現地の公証人を利用します。郵送と在外公館での手続きには時間がかかるため、提出先に必要書類を確認したうえで、早めに動き出しましょう。

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※本記事は2026年10月時点の法令と外務省・国税庁などの公式案内をもとにした一般的な解説です。証明の手数料・必要書類・受付方法は在外公館や現地事情により異なり、提出先が求める書類もそれぞれ異なります。手続きは各在外公館・提出先に、税金は税務署・税理士にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
外務省「在外公館における証明」https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000554.html
外務省「証明(公印確認・アポスティーユ)・在外公館における証明」https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/todoke/shomei/index.html
国税庁「No.4138 相続人が外国に居住しているとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4138.htm
国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
e-Gov法令検索「法の適用に関する通則法」第36条 https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000078
e-Gov法令検索「不動産登記法」第73条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123

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