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デジタル終活でいちばん迷うのが、パスワードの扱いです。「家族のために書いておくべき?」「でも紙に書くのは危ないのでは?」——。ゆいのわの考え方は、パスワードは書き残さないというものです。その代わりに、①どのサービスを使っているかを一覧にして家族に伝え、②AppleやGoogleが用意している公式の生前設定で、データを受け取る人をあらかじめ指定しておきます。なお、国民生活センターはパスワードも含めて整理しておくよう勧めており、この点は考え方が異なります。この記事では、その違いも含めて、書き残さずに家族へつなぐ方法を説明します。
結論:書き残すのは「パスワード」ではなく「使っているサービス」
| 家族に残すもの | 残さないもの |
|---|---|
| 使っているサービスの名前と種類(銀行、証券、サブスク、フリマ、SNSなど) | パスワード、暗証番号 |
| 登録しているメールアドレスや電話番号 | 「秘密の質問」の答え、認証用のコード |
| 支払い方法(どのカード・口座から引き落としか) | カード番号の全桁やセキュリティコード |
| 亡くなったあと家族にしてほしいこと(解約、残す、削除) | — |
| 公式の生前設定をしたかどうか、誰を指定したか | — |
家族が手続きを進めるのに必要なのは、多くの場合「どこに何があるか」という手がかりです。たとえばメルカリは、亡くなった名義人の売上金などの払戻しについて、相続人が自分のアカウントから戸籍謄本などを添えて申し出る手続きを案内しています(故人のメルカリ・フリマアカウント)。ネット銀行やネット証券も、口座の存在が分かれば相続の手続きを申し出られます(ネット銀行・ネット証券の相続)。
パスワードを書き残さない3つの理由
理由1:生前に見られたら、すべてが危険にさらされる
エンディングノートやメモにパスワードを書くと、それは家族だけでなく、見つけた人なら誰でも使える鍵になります。紛失や盗み見があれば、銀行やメールなど、多くのアカウントがまとめて危険にさらされます。総務省のサイバーセキュリティの案内も、パスワードは第三者に教えず秘密にすること、メモを人目に触れる場所に貼らないことを基本とし、やむを得ずメモにする場合は鍵のかかる机や金庫で保管するよう求めています。終活のノートは何年も保管するものなので、そのあいだずっとリスクを抱えることになります。
理由2:公式の手続きは、パスワードを前提にしていない
Googleは、故人のアカウントについて家族や代理人がアカウントの閉鎖、資金の取得、データの取得を申請できる窓口を用意する一方で、パスワードなどのログイン情報は伝えられないと明記しています。メルカリも、故人のアカウントからログアウトした状態で連絡するよう求めています。相続の手続きは、戸籍などで相続人であることを示して進めるのが基本です。
理由3:故人として操作すると、トラブルのもとになる
パスワードが分かっても、家族が故人のアカウントにログインして本人のように操作すると、取引の相手やサービスとの間で行き違いが起きやすくなります。財産を動かせば、相続人どうしの疑いを招くこともあります。故人のアカウントは、運営の公式な窓口を通して整理しましょう。
国民生活センターの助言との違い
公平のために、異なる考え方も紹介します。国民生活センターは2024年11月の公表で、デジタル遺品で困らないための事前の対策として、次のことを挙げています。
- 万が一の際に、遺族がスマホやパソコンのロックを解除できるようにしておく
- ネット上の資産やサブスクの契約は、サービス名・ID・パスワードを整理しておく
- エンディングノートの活用を検討する
- アカウントにアクセスできる人を指名できるサービスを活用する
また、パスワードを書いた紙を修正テープで隠した「スマホのスペアキー」を作り、家族が見つけられる場所に保管する方法も紹介しています。背景には、スマホのロックが解除できず携帯電話会社の店舗でも「初期化はできるが解除はできない」と言われた、IDとパスワードが分からずサブスクをすぐに解約できなかった、といった実際の相談があります。
書き残さずに家族へつなぐ3つの備え
備え1:「使っているサービス」の一覧を作る
銀行・証券、キャッシュレス決済、サブスク、フリマ、SNS、メール、クラウドなど、種類ごとにサービス名を書き出します。家族に「何をしてほしいか」(解約してよい、写真は残してほしい、など)を添えると、家族が判断に迷いません。洗い出しの進め方はデジタル終活のやり方でまとめています。
備え2:公式の生前設定をしておく
| 仕組み | 概要 | ポイント |
|---|---|---|
| Apple「故人アカウント管理連絡先」 | 指定した人が、本人の死後に写真・メッセージ・メモ・ファイル・デバイスのバックアップなどへのアクセスを申請できる | 申請にはアクセスキーと、日本では死亡の記載がある戸籍謄本が必要。iCloudキーチェーンのパスワードや、購入した音楽・映画などは対象外 |
| Google「アカウント無効化管理ツール」 | アカウントが一定期間使われなかったとき、選んだデータを最大10人に共有したり、通知を送ったりできる | 期間は本人が設定。設定しない場合、2年以上使われていないアカウントはデータが削除されることがある |
Appleのアクセスキーは、パスワードではなく、指定された人がAppleに正式に申請するための控えです。Appleは控えをプリントし、遺産相続の書類と一緒に保管しておくと安心だとしています。設定の手順はApple・Googleの生前設定で詳しく解説しています。
備え3:自分のパスワードは安全に管理する
書き残さないことと、自分がきちんと管理することは別の話です。総務省は、推測されにくい長いパスワードを使うこと、覚えきれない場合は端末やブラウザの標準機能、専用アプリなどのパスワード管理ツールを使うことを勧めています。その場合は、マスターパスワードや端末のロック(生体認証など)でツール自体を守ることが大切だとしています。
家族の側でできること
よくある質問
スマホの画面ロックのパスコードだけは、家族に伝えておくべきですか?
国民生活センターは、遺族がロックを解除できるようにしておくことを勧めています。ゆいのわは、書き残すことはおすすめしていませんが、最終的にはご家族で決めることです。伝えない場合は、写真や書類をクラウドに移す、故人アカウント管理連絡先を設定するなど、スマホ本体を開けなくても困らない準備をしておきましょう。
エンディングノートのパスワード欄はどうすればいいですか?
空けておいてかまいません。代わりに、サービス名、登録メールアドレス、家族にしてほしいこと、公式の生前設定をしたかどうかを書いておくと役立ちます(エンディングノートの書き方)。
ネット銀行は、パスワードがないと相続できませんか?
口座の存在が分かれば、相続人が金融機関に連絡して手続きを進められます。大切なのは、どの銀行・証券会社を使っているかを家族が知っていることです。
パスワードの一覧を作ってしまいました。どうすればいいですか?
パスワードを書いた部分は、シュレッダーにかけるなどして処分し、サービス名と希望だけを書き直すことをおすすめします。心配なアカウントは、パスワードを変更しておくとより安全です。
まとめ:在り処を伝え、鍵は公式の仕組みにまかせる
終活でのパスワード管理は、「書き残さない」ことを基本に、使っているサービスの一覧と、Appleの故人アカウント管理連絡先・Googleのアカウント無効化管理ツールといった公式の生前設定で備えるのがゆいのわの考え方です。多くの相続手続きは、パスワードではなく戸籍などで相続人であることを示して進めます。国民生活センターはパスワードの整理も勧めているため、考え方の違いを知ったうえで、ご家族に合う方法を選んでください。自分のパスワードは管理ツールなどで安全に守り、家族には「どこに何があるか」を伝えておきましょう。
※本記事は2026年10月時点の公的機関・各社の公式案内をもとにした一般的な解説です。各サービスの手続きや生前設定の内容は変更されることがあります。設定や手続きは各社の公式案内をご確認ください。
国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』-スマホの中の“見えない契約”で遺された家族が困らないために-」https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20241120_1.html
国民生活センター 見守り新鮮情報 第505号「始めましょう!デジタル終活」https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen505.html
総務省 国民のためのサイバーセキュリティサイト「安全なパスワードの設定・管理」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/cybersecurity/kokumin/security/business/staff/06/
Apple サポート「Apple Accountの故人アカウント管理連絡先を追加する方法」https://support.apple.com/ja-jp/102631
Google アカウント ヘルプ「アカウント無効化管理ツールについて」https://support.google.com/accounts/answer/3036546?hl=ja
Google アカウント ヘルプ「故人のアカウントに関するリクエストを送信する」https://support.google.com/accounts/troubleshooter/6357590?hl=ja
メルカリ ヘルプセンター「アカウント名義人死亡時の返金または払戻し」https://help.jp.mercari.com/guide/articles/1283/






