相続の手続き

遺産分割の方法|現物分割・代償分割・換価分割・共有の違いと選び方

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「実家と預金をどう分ければ公平になるのか」——遺産に不動産が含まれると、分け方で話し合いが止まりがちです。遺産分割の方法には、財産をそのまま分ける「現物分割」、取得した人がお金で調整する「代償分割」、売って代金を分ける「換価分割」の3つがあり、さらに持分で共同所有する「共有」という形もあります。これらは組み合わせて使えます。一方で、どの方法を選ぶかで、相続税の計算や売却時の所得税、登記の手間が変わります。この記事では、4つの方法の違いと選び方を、税金面の注意点とあわせて国税庁や法令の情報をもとに整理します。

遺産分割の方法は4つ:違いを一覧で比較

民法は、遺産の分割は財産の種類や性質、各相続人の年齢・職業・生活の状況など「一切の事情」を考えて行うと定めています(第906条)。具体的な分け方は相続人全員の協議で自由に決められ、国税庁の通達も「分割」の方法として現物分割・代償分割・換価分割を挙げています。

方法 内容 向いているケース 主な注意点
現物分割 財産をそのままの形で分ける(自宅は妻、預金は長男など) 財産の種類が多く、価値のバランスを取りやすい きっちり公平にするのが難しい
代償分割 1人が財産を取得し、他の相続人に代償金を払う 自宅や事業用資産を1人が引き継ぎたい 取得する人に支払い資金が必要
換価分割 財産を売却し、代金を分ける 誰も住まない実家など、残す必要がない 売却の手間・費用と譲渡所得の申告
共有 1つの財産を持分の割合で共同所有する 当面は売るか残すか決められない 後の売却や建て替えで全員の同意が必要

現物分割:財産をそのままの形で分ける

現物分割は、「自宅の土地建物は配偶者、A銀行の預金は長男、株式は次男」のように、財産ごとに取得する人を決める方法です。手続きがシンプルで、売却や代償金の支払いも発生しません。遺産分割の基本になる方法です。

弱点は、財産ごとに価値が違うため、法定相続分どおりにぴったり分けるのが難しいことです。特に遺産の大半が自宅という場合、自宅を取得した人だけが多くを受け取る形になりやすく、他の相続人の納得を得にくくなります。広い土地なら、分筆して区画ごとに取得する方法もあります(相続した土地を分ける「分筆」)。

代償分割:取得した人がお金で調整する

代償分割は、相続人の1人が不動産などを取得する代わりに、他の相続人に対して債務を負担する(代償金を払う)方法です。「実家を継ぐ長男が、次男に代償金を払う」という形で、財産を売らずに残しながら公平を図れます。協議書には、誰が誰にいくらを、いつまでにどう払うかを具体的に書きます。

相続税は代償金を差し引き・上乗せして計算する

国税庁によると、代償金を払った人の相続税の課税価格は「取得した財産の価額−払った代償金」、受け取った人は「取得した財産の価額+受け取った代償金」で計算します。国税庁の例を使うと、次のようになります。

前提(国税庁の例) 代償金を払った人 代償金を受け取った人
相続税評価額4,000万円(時価5,000万円)の土地を取得し、代償金2,000万円を払った 4,000万円−2,000万円=2,000万円 2,000万円
代償金を時価をもとに決めた場合などで、評価額に合わせて調整して計算したとき 4,000万円−2,000万円×(4,000万円÷5,000万円)=2,400万円 2,000万円×(4,000万円÷5,000万円)=1,600万円

どちらの計算になるかは、代償金をどう決めたかなどの事情によります。実際の申告では税務署や税理士に確認してください。

お金以外の財産で代償すると譲渡所得になることも

代償金の代わりに、自分がもともと持っていた土地などを渡すこともできます。ただし所得税の通達では、代償分割の債務の履行として資産を移転した場合、渡した人がその時の価額で資産を譲渡したことになるとされています。また、払った代償金は、取得した不動産を将来売るときの取得費には含まれません。資金が足りない場合の対処は代償分割の資金がないときで詳しく解説しています。

換価分割:売却して代金を分ける

換価分割は、不動産などを売却し、売却代金から経費を差し引いた残りを分ける方法です。現金になるので割合どおりに分けやすく、誰も住む予定のない実家の整理にも向いています。一方で、売却の手間や仲介手数料などの費用がかかり、思い出のある家を手放すことにもなります。

売るために1人の名義にしても、贈与税の問題にはならない場合

実務では、売却の手続きを進めやすくするため、相続人の1人の名義で相続登記をしてから売ることがあります。国税庁の質疑応答事例では、1人の名義にしたのが単に換価のための便宜で、代金が分割の内容どおり実際に分配される場合には、贈与税の課税は問題にならないとしています。協議書に「換価のために代表者名義で登記し、代金を○分の1ずつ分配する」と明記しておくと、後で説明しやすくなります。

売った利益には譲渡所得の申告が必要

売却で利益が出れば、譲渡所得として所得税・住民税の申告が必要です。国税庁は、換価代金の取得割合が売却時に決まっている場合はその割合で、決まっていない場合は原則として法定相続分で、各相続人が申告するとしています。相続した不動産を売るときの取得費や特例は相続した不動産の売却と税金をご覧ください。

共有:持分で共同所有する

遺産分割の結果として、1つの不動産を「兄2分の1・弟2分の1」のように共有で取得することもできます。一見公平ですが、民法では、共有物に変更を加えるには他の共有者の同意が必要で(第251条)、売却なども全員の足並みがそろわないと進みません。共有者の誰かが亡くなればその相続人に持分が引き継がれ、共有者が増えていくおそれもあります。

共有は「先送り」になりやすい売るか残すかを決められないまま共有にすると、問題が次の世代に持ち越されがちです。共有にする場合も、将来の売却の方針や費用の負担を話し合っておきましょう。共有名義の注意点は不動産の共有名義の相続、解消の方法は共有不動産の解消方法で解説しています。

遺産分割の方法の選び方

方法は1つに絞る必要はなく、「自宅は配偶者が現物で取得し、空き家の別荘は換価して子どもで分ける」といった組み合わせができます。考えるときは、次の順で整理すると話がまとまりやすくなります。

  • 財産を一覧にする:何がいくらあるかが分からないと分け方は決められません。不動産は評価の方法も確認します(相続した土地の評価額の調べ方)
  • 残したい財産と、残さなくてよい財産を分ける:住み続ける自宅、家業の資産などは現物か代償、使う予定のない不動産は換価が候補
  • 代償金を払えるかを確認する:払えないなら換価や組み合わせを検討
  • 税金と費用を比べる:下の表のように、方法によってかかる税金が違います
方法 相続税 所得税(譲渡所得) 不動産の登記
現物分割 取得した財産の評価額で計算 相続の時点ではかからない 取得者へ相続登記(登録免許税は1,000分の4)
代償分割 代償金を差し引き・上乗せして計算 お金以外の資産で代償すると、渡した人に課税されることがある 取得者へ相続登記
換価分割 取得割合に応じて計算 売却益があれば各相続人が申告 売却前に相続登記が必要
共有 持分に応じて計算 相続の時点ではかからない 共有者全員の名義で相続登記

話し合いがまとまらず家庭裁判所の審判になった場合、裁判所は遺産の分け方を決めるために必要があれば換価を命じることができ、特別の事情があると認めるときは代償分割の方法をとることもできます(家事事件手続法第194条・第195条)。審判までの流れは遺産分割の調停・審判で解説しています。

よくある質問

現物分割と換価分割を組み合わせてもよいですか?

組み合わせられます。国税庁の通達も、分割の方法が現物分割・代償分割・換価分割のどれであっても「分割」に当たるとしています。財産ごとに向いた方法を選び、協議書に財産ごとの分け方を書きます。

代償金の額は、相続税評価額と時価のどちらで決めればよいですか?

決まりはなく、相続人全員が納得すれば、どちらを基準にしてもかまいません。ただ、相続税評価額・固定資産税評価額・時価は金額が違うため、基準によって代償金の額が大きく変わります。どの基準を使ったかを協議書に書いておくと、相続税の計算でも説明しやすくなります。

遺産分割に期限はありますか?

協議そのものに期限はありません。ただし、相続開始から10年を過ぎた後の遺産分割では、原則として特別受益や寄与分を主張できなくなります(民法第904条の3)。相続税の申告期限(10か月)や相続登記の期限(3年)もあるため、早めに方針を決めましょう。

まとめ:財産ごとに方法を選び、税金も確認する

遺産分割の方法には、現物分割・代償分割・換価分割と、共有があります。自宅を残したいなら現物分割や代償分割、残す必要のない不動産は換価分割、というように財産ごとに選び、組み合わせることができます。代償分割は代償金の扱い、換価分割は名義と譲渡所得の申告、共有は将来の同意の問題に注意が必要です。どの方法でも出発点は財産の把握です。税額は個別の事情で変わるので、具体的な計算は税務署や税理士に確認してください。

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※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁の公表資料をもとにした一般的な解説です。計算例は国税庁の例による目安で、実際の税額や課税関係は個別の事情によって異なります。具体的な判断は税務署・税理士などの専門家にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
国税庁「No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4173.htm
国税庁「相続税法基本通達 第19条の2関係(19の2-8 分割の意義)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/06.htm
国税庁「所得税基本通達 法第33条関係(33-1の5 代償分割による資産の移転)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/07.htm
国税庁「所得税基本通達 法第38条関係(38-7 代償分割に係る資産の取得費)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/18.htm
国税庁 質疑応答事例「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/13/01.htm
国税庁 質疑応答事例「未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/09/01.htm
国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
e-Gov法令検索「民法」第251条・第898条・第904条の3・第906条・第907条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
e-Gov法令検索「家事事件手続法」第194条・第195条 https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000052

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