専門家の選び方

行政書士に相続で頼めること|できない業務・費用の目安と選び方

本ページはプロモーションを含みます

相続の相談先を調べていると、税理士や司法書士と並んで「行政書士」の名前を目にします。結論から言うと、行政書士に頼めるのは、遺産分割協議書や相続関係説明図の作成、相続人と財産の調査といった「書類まわり」です。一方で、不動産の相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人同士の争いの代理は弁護士の業務で、行政書士は扱えません。この記事では、行政書士法の条文と2026年1月に施行された改正をもとに、相続で行政書士に頼めること・頼めないこと、費用の目安、向いているケースを整理します。

行政書士に相続で頼めることの全体像

まず、相続手続きのどこを誰が担当するかを一覧にします。

相続の手続き 行政書士 担当する専門家
相続人の調査(戸籍の収集)・相続関係説明図 ○ 行政書士・司法書士など
財産の調査・財産目録の作成 ○ 行政書士・司法書士・税理士など
遺産分割協議書の作成 ○(争いのない場合) 行政書士・司法書士など
自動車の名義変更など官公署への提出書類 ○ 行政書士
遺言書の文案づくりの支援 ○ 行政書士・司法書士・弁護士など
不動産の相続登記の申請 × 司法書士
相続放棄の申述書など家庭裁判所に出す書類 × 司法書士(書類作成)・弁護士
相続税の申告書の作成・税務相談 × 税理士
もめている相続人との交渉・調停の代理 × 弁護士

日本行政書士会連合会も、行政書士の遺言・相続業務として、遺言書の作成支援、遺産分割協議書の作成、相続人関係説明図などの書類作成、相続人を確定するための調査を挙げています。

行政書士法で決まっている業務(1条の3・1条の4)

行政書士の業務は、行政書士法で定められています。2026年1月1日施行の改正後の条文では、次のようになっています。

  • 1条の3(業務):他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類、その他権利義務または事実証明に関する書類を作成することを業とする。ただし、その作成がほかの法律で制限されているものは行えない(同条2項)
  • 1条の4(付随する業務):作成できる書類を官公署に提出する手続きの代理、契約などの書類を代理人として作成すること、作成できる書類について相談に応じること など

相続でいえば、遺産分割協議書は「権利義務に関する書類」、相続関係説明図や財産目録は「事実証明に関する書類」にあたり、行政書士の業務の中心になります。自動車の名義変更のように運輸支局へ出す書類も「官公署に提出する書類」です。

ポイントは1条の3第2項です。書類の作成でも、ほかの法律で特定の資格者に限られているものは扱えない――ここが、司法書士・税理士・弁護士との境界になります。

2026年1月施行の行政書士法改正で変わったこと

行政書士法は2025年(令和7年)に改正され、2026年(令和8年)1月1日から施行されています。総務省の通知によると、主な内容は次のとおりです。

改正の項目 内容
使命・職責の規定 行政書士の使命(1条)と職責(1条の2)の規定を新設。これに伴い、業務の条文は1条の3・1条の4になった
業務の制限の明確化(19条) 行政書士でない者は「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」書類作成の業務を行えないと明記
特定行政書士の業務範囲 行政庁への不服申立ての代理ができる範囲を、行政書士が「作成することができる」書類に係る許認可等に拡大

相続の利用者にとって関係が深いのは19条です。総務省は、行政書士でない者が「手数料」や「コンサルタント料」などどのような名目でも、対価を受け取って業として書類を作成することは違法という従来の解釈を条文に明示したもの、と説明しています。相続の「サポート料」「代行料」をうたうサービスを使う場合も、実際に書類を作るのが誰で、どの資格に基づくのかを確認しておくと安心です(相続手続き代行サービスとは)。

行政書士が扱えない相続の業務と、その理由

相続登記は司法書士

司法書士法3条は、登記の手続きの代理や、法務局に提出する書類の作成を司法書士の業務とし、同法73条は司法書士でない者がこれらを行うことを禁じています。そのため、相続した不動産の名義変更(相続登記)の申請を代わりに行えるのは司法書士です。遺産分割協議書は行政書士も作れますが、登記に使う前提なら、最初から司法書士に頼むほうが二度手間になりにくい場合があります(相続で司法書士に頼める範囲)。

家庭裁判所に出す書類も司法書士・弁護士

司法書士法3条1項4号は、裁判所に提出する書類の作成を司法書士の業務としています。相続放棄の申述書や遺言書の検認の申立書などは家庭裁判所に出す書類なので、行政書士の業務には含まれません。

相続税の申告は税理士

税理士法2条は、税務代理・税務書類の作成・税務相談を税理士の業務とし、同法52条は税理士でない者がこれを行うことを禁じています。行政書士が作った財産目録を税理士に渡して申告を頼む、という分担はよく見られますが、「相続税はいくらになるか」「どの特例が使えるか」といった相談は税理士の領域です。

もめている相続の交渉は弁護士

弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件の代理や和解などを扱うことを禁じています。相続人の間で意見が対立し、交渉や調停が必要になった段階では、行政書士は一方の代理人として関わることはできません。遺産分割協議書を作れるのは、あくまで全員の合意ができている場合と考えてください。

行政書士に相続を頼む費用の目安

行政書士の報酬は事務所ごとに決められており、行政書士法10条の2は、事務所の見やすい場所に報酬の額を掲示するよう義務づけています。全国的な傾向は、日本行政書士会連合会の「令和7年度報酬額統計調査」(2026年1月実施)で分かります。金額は消費税込み、立替金(戸籍の手数料など)を含みません。

業務 平均 最頻値 回答数
遺産分割協議書の作成 69,752円 55,000円 705
相続人及び相続財産の調査 61,722円 50,000円 443
遺言書の起案及び作成指導 76,855円 50,000円 459

同じ調査で、遺産分割協議書の作成は最小1,000円から最大100万円まで回答に幅があります。相続人の人数、戸籍の量、財産の種類で手間が大きく変わるためです。統計はあくまで目安とし、実際には見積もりで、どこまでが報酬に含まれ、戸籍の手数料などの実費がいくらかかるかを確認してください(相続手続きの見積もりの見方)。

行政書士への依頼が向いているケース

  • 相続人同士で分け方の合意ができている、または合意できる見込みがある
  • 相続人が多い、きょうだいが相続人になるなどで、戸籍の収集や相続関係説明図づくりの手間が大きい
  • 不動産がない、または登記は別に司法書士へ頼む予定
  • 相続税の申告が不要、または税理士に別途頼む予定
  • 預貯金や自動車など、書類の作成と窓口への提出が中心の手続きをまとめて任せたい

行政書士は、戸籍法10条の2により、受任した業務に必要な範囲で戸籍謄本等を職務上請求できます。なお、戸籍の広域交付は本人・配偶者・直系の親族が窓口で請求する制度で、法務省は代理人や郵送での請求はできないと案内しています。自分で窓口に行けない場合は、専門家に戸籍の収集を頼むことも選択肢です(相続の戸籍の集め方)。

「窓口の一本化」は分担の確認を行政書士事務所のなかには、司法書士や税理士と連携して相続全体を案内するところもあります。その場合も、登記は司法書士、申告は税理士が担当し、それぞれ別に報酬がかかるのが一般的です。誰がどの業務を担当し、費用がどこに含まれるのかを最初に確認しましょう。

よくある質問

遺産分割協議書は行政書士と司法書士のどちらに頼めばよいですか?

どちらも作成できます。不動産があり相続登記もする場合は、登記とあわせて司法書士に頼むと手続きがつながりやすくなります。不動産がなく、預貯金や自動車の手続きが中心なら、行政書士に頼むのも選択肢です。

行政書士に相続税の相談をしてもよいですか?

相続税がかかるかどうかの個別の判断や税額の計算は、税理士の業務です。行政書士に相談した場合でも、税金の話になったら税理士や税務署へ確認するよう案内されるのが通常です。

相続人の一人ともめています。行政書士に間に入ってもらえますか?

代理人として交渉することはできません。争いがある場合は、弁護士への相談や家庭裁判所の調停を検討することになります(遺産分割がまとまらないとき)。

行政書士に頼むと、生命保険の加入の有無も調べてもらえますか?

生命保険協会の「生命保険契約照会制度」は、法定相続人の任意代理人として弁護士・司法書士・行政書士からの照会を受け付けています。依頼できるかどうかは事務所に確認してください。

まとめ

行政書士は、行政書士法1条の3にもとづき、遺産分割協議書・相続関係説明図・財産目録などの相続の書類づくりと、相続人・財産の調査を担う専門家です。相続登記は司法書士、家庭裁判所の書類は司法書士・弁護士、相続税は税理士、争いの代理は弁護士と、法律で線が引かれています。2026年1月の改正で、資格のない者が名目を問わず報酬を得て書類を作ることはできないと明記されました。もめていない相続で書類の手間を減らしたいときに、費用と担当範囲を確かめたうえで依頼を検討しましょう。

誰に頼むかは、財産と家族の整理から。

財産の在り処や手続きの進み具合を家族で共有できるアプリ「ゆいのわ」は、ただいま準備中です。

ゆいのわについて見る

※本記事は2026年10月時点の法令と公式情報をもとにした一般的な解説です。業務の範囲や費用は、事務所や個別の事情によって異なります。具体的なご依頼の可否や費用は、各専門家にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
e-Gov法令検索「行政書士法」第1条の3・第1条の4・第10条の2・第19条 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000004
総務省「行政書士法の一部を改正する法律の公布について(通知)」令和7年6月13日 https://www.soumu.go.jp/main_content/001014708.pdf
日本行政書士会連合会「遺言・相続」https://www.gyosei.or.jp/service/testament
日本行政書士会連合会「報酬額統計について」(令和7年度報酬額統計調査の結果)https://www.gyosei.or.jp/about/disclosure/reward
e-Gov法令検索「司法書士法」第3条・第73条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000197
e-Gov法令検索「税理士法」第2条・第52条 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237
e-Gov法令検索「弁護士法」第72条 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205
e-Gov法令検索「戸籍法」第10条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
法務省「戸籍証明書等の広域交付について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html
生命保険協会「生命保険契約照会制度のご案内」https://www.seiho.or.jp/contact/inquiry/

この続きは、ゆいのわで。

手続きの期限や必要書類を、家族で一緒に進められます。

アプリを使ってみる

相続の「これからやること」を、家族みんなで。

ゆいのわは、生前のそなえから相続の手続きまで、家族で一緒に進められるアプリです。

アプリについて見る

ただいま準備中です