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「父が知人の借金の連帯保証人になっていたらしい。私たちが払うの?」——結論から言うと、連帯保証人としての責任(保証債務)は、原則として相続人に引き継がれます。ただし、賃貸住宅の家賃保証のような「根保証」は、保証人が亡くなった時点で保証の対象となる元本が確定し、その後に生じた債務は引き継がないルールがあります。保証債務は、契約書が手元にないと気づきにくい負債です。この記事では、引き継ぐ範囲、2020年の民法改正で変わった点、調べ方と相続放棄の判断を、条文と法務省の資料をもとに整理します。
連帯保証人の地位も相続される
相続人は、亡くなった人の財産に属した一切の権利と義務を引き継ぎます(民法896条)。保証人としての支払い義務も、その「義務」に含まれます。借金そのものの相続とあわせて、借金・ローンの相続も確認してください。
「連帯」保証がとくに重い理由
普通の保証人は、お金を貸した側(債権者)から請求されても「まず借りた本人(主債務者)に請求して」「本人の財産から先に取り立てて」と主張できます(民法452条・453条)。ところが連帯保証人には、この2つの主張が認められていません(民法454条)。法務省も、連帯保証では主債務者に財産があるかどうかにかかわらず、債権者が保証人に支払いを求めたり財産を差し押さえたりできると説明しています。相続人は、この重い立場をそのまま引き継ぐことになります。
通常の保証と根保証で、引き継ぐ範囲が違う
保証には、金額の決まった1つの借金を保証する「通常の保証」と、一定の範囲で将来生じる不特定の債務をまとめて保証する「根保証」があります。
| 種類 | 例 | 相続人が引き継ぐ範囲 |
|---|---|---|
| 通常の保証 | 知人の事業資金の借入1件、親族の住宅ローン | 保証していた債務(残っている元本・利息など) |
| 個人の根保証 | 子のアパートの家賃などの保証、親の介護施設の入居費用などの保証、取引先への債務のまとめての保証 | 保証人が亡くなった時点で元本が確定する。亡くなった後に生じた主債務は保証の対象外(民法465条の4第1項3号) |
たとえば父が、子の住むアパートの家賃の保証人だった場合、父が亡くなった時点ですでに滞納していた家賃などは相続人に引き継がれますが、その後に発生する家賃は保証の対象から外れます。法務省のパンフレットも、主債務者または保証人が亡くなったときなどは、その後に発生する主債務は保証の対象外になると説明しています。
2020年4月の民法改正で変わった保証のルール
2020年4月1日に施行された民法改正で、個人の保証人を守るルールが整えられました。相続の場面でも、次の点が関係します。
個人の根保証は「極度額」がないと無効
個人が保証人になる根保証契約は、支払いの上限である極度額を書面などで定めなければ効力を生じません(民法465条の2)。保証人は極度額の範囲でしか責任を負わないため、相続人が引き継ぐ負担も、その上限が目安になります。根保証の契約書が見つかったら、まず極度額の欄を確認しましょう。なお、借入金を対象とする根保証には、2005年4月から、極度額や元本確定期日についてさらに厳しいルールがあります。
保証人が受けられる情報提供
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 履行状況の情報提供(民法458条の2) | 主債務者に頼まれて保証人になった場合、保証人は債権者に、支払いが遅れていないか・残高はいくらかを問い合わせられる |
| 期限の利益喪失の通知(民法458条の3) | 主債務者が分割払いを続けられなくなり一括払いの義務を負ったとき、債権者は、知った時から2か月以内に個人の保証人に通知しなければならない |
| 契約時の情報提供(民法465条の10) | 事業のための債務の保証を頼むとき、主債務者は自分の財産・収支や他の借金の状況を説明しなければならない |
保証人の地位を引き継いだ相続人が、債権者に主債務の状況を確認できる場合があります。残高や延滞の有無が分かれば、相続放棄をするかどうかの判断材料になります。
保証債務の調べ方
保証債務は、本人の借金と違って毎月の引き落としがないため、通帳からはまず分かりません。次のような手がかりを探します。
| 手がかり | 確認すること |
|---|---|
| 契約書・保証書・公正証書 | 「保証人」「連帯保証人」の欄に署名・押印した書類がないか。賃貸借契約書や施設の入居契約書も確認 |
| 郵便物 | 金融機関や保証会社、家主・施設からの通知。期限の利益喪失の通知が届いていないか |
| 手帳・メモ・家族の記憶 | 「保証人を頼まれた」という話がなかったか |
| 事業の関係者 | 家族や知人の事業の借入、自分が役員だった会社の借入を保証していないか |
| 信用情報の開示 | ローンやクレジットの状況を確認する手段。ただし保証の情報がすべて分かるわけではない |
2020年4月以降、個人が事業用の借入の保証人になるには、原則として事前に公証役場で保証意思宣明公正証書を作る必要があります(民法465条の6)。主債務者の会社の役員や共同事業者などは例外です。公正証書の控えがあれば、事業用の保証をしていた手がかりになります。
保証債務が見つかったときの判断
相続放棄か限定承認か
保証債務を引き継ぎたくなければ、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所で相続放棄か限定承認をします(民法915条1項)。
- 相続放棄:保証債務を含め、プラスもマイナスも一切引き継がない。各自で申述できる(相続放棄の手続き)
- 限定承認:相続した財産の範囲内でだけ責任を負う。主債務者が今は返済していて、将来どうなるか分からない場合の選択肢になる。相続人全員で申述が必要(限定承認とは)
保証債務は、主債務者が今後返済を続けるかどうかで、負担が「ゼロ」にも「全額」にもなります。主債務者の状況、プラスの財産の額、家に住み続けたいかなどを総合して判断します。3か月で状況がつかめなければ、期限内に家庭裁判所に熟慮期間の延長を申し立てられます(熟慮期間の伸長)。
相続税の計算では原則として差し引けない
借金は相続税の計算で遺産から差し引けますが、保証債務は原則として差し引けません。例外は、主債務者が返済できない状態で、相続人が代わりに払わなければならず、しかも主債務者から取り戻せる見込みがない場合で、その部分は差し引けます(相続税法基本通達14-3)。
生前にできる備え
保証人になっている事実は、本人が伝えない限り、家族にはほぼ分かりません。誰の、どの債務を、いくらまで(極度額)保証しているのか、契約書がどこにあるのかを、財産の一覧とあわせて残しておくことが、家族を守ることにつながります(エンディングノートの書き方)。これから保証人を頼まれたときは、主債務者からの財産・収支の説明や、根保証なら極度額を必ず確認しましょう。
よくある質問
Q. 相続人が複数いると、保証債務は誰が負担しますか?
相続人は相続分に応じて義務を引き継ぎます(民法899条)。遺産分割で特定の人が引き継ぐと決めても、債権者は法定相続分に応じて各相続人に請求できます(民法902条の2)。
Q. 主債務者が完済していれば、もう心配はありませんか?
保証していた借金が完済されていれば、その保証債務はなくなります。債権者や主債務者に完済したかどうかを確認し、可能であれば書面で記録を残しておくと安心です。
Q. 親が施設に入るとき、私が保証人になりました。親が亡くなったらどうなりますか?
個人の根保証では、主債務者が亡くなったときも元本が確定し、その後に生じた債務は保証の対象外になります(民法465条の4第1項3号)。亡くなった時点で未払いの入居費用などがあれば、保証人として支払いを求められることがあります。
まとめ
連帯保証人の地位は相続され、主債務者が返済できなくなると、相続人に請求が来るおそれがあります。根保証なら保証人が亡くなった時点で元本が確定し、極度額が上限になります。契約書や郵便物で保証の有無を調べ、負担が大きいなら3か月以内に相続放棄か限定承認を検討しましょう。そして、保証人になっている人は、その事実を家族に伝えておくことが、いちばんの備えです。
※本記事は2026年10月時点の法令と法務省・国税庁の公表情報をもとにした一般的な解説です。保証債務の範囲や、相続放棄・限定承認をすべきかどうかは、契約の内容・締結日や個別の事情で異なります。具体的な判断は、家庭裁判所、または弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご確認ください。
e-Gov法令検索「民法」第446条・第452条〜第454条・第458条の2・第458条の3・第465条の2〜第465条の4・第465条の6・第465条の10・第896条・第899条・第902条の2・第915条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html
法務省「2020年4月1日から保証に関する民法のルールが大きく変わります」(パンフレット)https://www.moj.go.jp/content/001254262.pdf
裁判所「相続の放棄の申述」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
裁判所「相続の限定承認の申述」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_14/index.html
国税庁「相続税法基本通達 第14条関係(14-3 保証債務及び連帯債務)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/03.htm






