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「とりあえず兄弟で半分ずつにしておけば公平」——相続した実家を共有名義にする家族は少なくありません。ただ、結論から言うと、不動産の共有は「分けたつもりで、実は決め事を先送りにした状態」になりがちです。売却や建て替えには共有者全員の同意が必要で、誰かが亡くなるたびに共有者は増えていきます。この記事では、相続で共有にしたときに起きやすいことを民法のルールに沿って整理し、共有を避ける分け方と、それでも共有にするなら先に決めておくことを解説します。すでに共有になっている不動産の解消方法は共有不動産の解消方法で詳しく扱っています。
相続で不動産が共有名義になる2つの場面
遺産分割が終わるまでは、自動的に共有になる
民法898条は、相続人が複数いるとき、相続財産は相続人の「共有に属する」と定めています。このときの持分は法定相続分です。つまり、亡くなった直後の実家は、遺産分割がまとまるまで相続人全員の共有(遺産共有)になっています。これは一時的な状態で、遺産分割で誰が取得するかを決めれば解消します。
遺産分割で「共有で取得する」と決めた場合
問題になりやすいのは、遺産分割の結果として共有を選んだり、話し合いがまとまらず共有のまま登記したりするケースです。相続登記は2024年4月から義務になり、遺産分割が成立したら、その日から3年以内に内容に沿った登記をする必要があります(法務省)。登記を急ぐあまり、よく考えずに共有で登記してしまわないよう注意しましょう(相続登記の義務化)。
共有名義で相続する5つのリスク
1. 売る・建て替えるには共有者全員の同意が必要
民法251条は、共有物に「変更」を加えるには、他の共有者全員の同意が必要としています(形や効用が大きく変わらない軽微なものを除く)。建物の建て替えや大規模な改修はこれに当たり、不動産全体の売却にも全員の同意が要ると考えられています。1人でも反対したり連絡がつかなかったりすると、話が止まります。
自分の持分だけを売ることは単独でもできますが、持分だけでは買った人も自由に使えないため、買い手が見つかりにくいのが一般的です。
2. 貸す・管理の方針は「持分の過半数」で決まる
民法252条は、管理に関する事項は持分の価格の過半数で決めるとしています。共有者の一部の意見だけで方針が決まることがある一方、賃貸の期間には上限があり、建物は3年、土地は5年を超える賃貸借を過半数だけで設定することはできません。
| やりたいこと | 必要な同意(民法) |
|---|---|
| 雨漏りの修理などの保存行為 | 各共有者が単独でできる(252条5項) |
| 短期の賃貸、管理方法の決定 | 持分の価格の過半数(252条1項・4項) |
| 建て替え・大規模改修などの変更 | 共有者全員(251条1項) |
| 不動産全体の売却 | 共有者全員の同意が必要とされる |
3. 住む人と住まない人の不公平が生まれやすい
共有者はそれぞれ、持分に応じて全体を使えます(民法249条1項)。たとえば兄が実家に住み続け、弟は別の場所で暮らしている場合、弟から見れば「自分の持分も兄が使っている」状態です。民法249条2項は、別段の合意がない限り、持分を超えて使う共有者は他の共有者に対価を償還する義務を負うとしています。家賃相当額を払うのか、払わないのか。合意がないまま年月が経つと、相続のときより関係がこじれることがあります。
4. 固定資産税は共有者が連帯して納める
地方税法10条の2は、共有物にかかる地方税は共有者が連帯して納付する義務を負うと定めています。持分が半分でも、未納があれば全額を求められる可能性があるということです。納税通知書は代表者に届くことが多く、代表者だけが立て替え続ける不満も起きやすいところです(相続した不動産の固定資産税)。
5. 次の相続で共有者がどんどん増える
共有者の1人が亡くなると、その持分はさらにその相続人へ分かれます。兄弟2人の共有が、それぞれの配偶者と子に引き継がれれば、共有者は一気に増えます。世代が進むと、顔を知らない親族と共有している状態にもなりかねません。相続が重なったときの問題は数次相続とはでも解説しています。
共有を避ける4つの分け方
不動産を公平に分けたいときは、共有以外の方法を先に検討しましょう。
| 分け方 | 内容 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 単独取得+他の財産で調整 | 不動産は1人が相続し、預貯金などをほかの相続人に多めに配分する | 不動産以外の財産が十分ある | 価値の見積もりで意見が割れやすい |
| 代償分割 | 不動産を取得した人が、ほかの相続人にお金を払う | 住み続けたい人がいて、その人に資金がある | 払うお金を用意できるか |
| 換価分割 | 不動産を売り、代金を分ける | 誰も住む予定がない | 売却までの管理と、譲渡所得の税金 |
| 現物分割(分筆) | 土地を分筆して、それぞれ単独で取得する | 広い土地で、分けても使える | 測量・分筆の費用、分けた後の使い勝手 |
それぞれのしくみは遺産分割の3つの方法(現物・代償・換価)で詳しく説明しています。代償金を用意できないときの考え方は代償分割の資金がないときをご覧ください。
換価分割では税金の特例も確認する
相続した不動産を売ると、売った人それぞれに譲渡所得の税金がかかる場合があります。亡くなった方が1人で住んでいた家とその敷地を一定の要件のもとで売ったときは、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があり(令和9年12月31日までの譲渡が対象)、2024年1月1日以後の譲渡で、その家や敷地を相続した人が3人以上の場合は2,000万円までになります(国税庁)。共有で相続する人数が税金の扱いにも影響するということです。要件は細かいため、売却前に税務署や税理士に確認してください(相続した不動産の売却と税金)。
それでも共有で相続するなら決めておくこと
「すぐには決められない」「親が住み続けるあいだだけ共有にしたい」など、共有を選ぶ理由がある場合もあります。そのときは、少なくとも次の点を相続人で話し合い、書面に残しておくとトラブルを減らせます。
- 誰が住む(使う)のか、使う人は家賃相当額を払うのか
- 固定資産税・修繕費・保険料を誰がどの割合で負担するか
- 売るときの条件:いつまでに、いくら以上なら売るか、誰が窓口になるか
- 共有者の誰かが持分を手放したくなったときは、まず他の共有者に声をかけるか
- 次の相続への備え:共有者それぞれが遺言で持分の行き先を決めておくか
すでに共有になっている場合
遺産分割がまだなら、遺産共有の状態なので、遺産分割の話し合いで誰か1人が取得する形に改めることができます。なお民法258条の2により、相続開始から10年を過ぎると、遺産共有の持分についても通常の共有物分割の手続きを使える場合があります。遺産分割で共有と決めて登記まで済ませた場合は、持分の売買や共有物分割請求などで解消することになります。具体的な方法と最近の法改正は共有不動産の解消方法で解説しています。
よくある質問
Q. 兄弟で揉めたくないので、共有にするのがいちばん公平では?
相続の時点では公平に見えますが、売る・貸す・直すたびに意見を合わせる必要があり、後になって揉める原因になりがちです。住む人がいるなら代償分割、誰も使わないなら換価分割など、共有以外の方法をまず検討するのがおすすめです。
Q. 共有のまま、自分の持分だけを売れますか?
自分の持分だけなら、ほかの共有者の同意がなくても売ることはできます。ただし、持分だけでは不動産を自由に使えないため、買い手は限られ、価格も低くなりやすいのが一般的です。
Q. 兄が実家に住んでいます。家賃を請求できますか?
民法249条2項は、別段の合意がない限り、持分を超えて使う共有者に対価を償還する義務があるとしています。ただ、家族間で「無償で住んでよい」という合意があったと判断される場合もあり、個別の事情しだいです。揉めそうなときは早めに専門家に相談してください。
まとめ
相続で不動産を共有名義にすると、売却や建て替えに全員の同意が必要になり、管理や費用負担での不公平、固定資産税の連帯納付、次の相続での共有者の増加といった問題を抱えやすくなります。分けるときは、単独取得と他の財産での調整、代償分割、換価分割、分筆による現物分割を先に検討しましょう。それでも共有にするなら、使う人・費用の負担・売る条件を書面で決めておくことが大切です。
※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関の公開情報をもとにした一般的な解説です。分け方の選択や税金の扱いは、財産の内容や家族の事情によって異なります。遺産分割は司法書士・弁護士に、税金は税務署・税理士にご確認ください。
e-Gov法令検索「民法」第249条・第251条・第252条・第258条の2・第898条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
e-Gov法令検索「地方税法」第10条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
法務省「相続登記の申請義務化について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm






