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「父がビットコインを持っていたらしい。でも、どこにあるのか分からない」——暗号資産(仮想通貨)は、通帳も郵便物もないまま持てるため、相続の場面で見落とされやすい財産です。結論から言うと、暗号資産は相続税の対象で、国税庁は交換業者が公表する亡くなった日の取引価格で評価するとしています。ただし、取引所(交換業者)に預けている分は相続手続きで引き継げる一方、自分で管理するウォレットの分は、鍵が分からなければ事実上取り出せません。この記事では、評価・手続き・税金と、アクセス不能を防ぐ生前の備えを、国税庁と金融庁の情報をもとに整理します。
暗号資産の相続で押さえる4つの結論
| 疑問 | 結論(一般的な扱い) |
|---|---|
| 相続税はかかる? | かかる。経済的価値のある財産として相続税の対象 |
| いくらで評価する? | 活発な市場がある銘柄は、交換業者が公表する亡くなった日の取引価格 |
| どう引き継ぐ? | 取引所の口座は、交換業者の相続手続きで相続人へ。自己管理ウォレットは鍵がないと動かせない |
| 相続後に売ったら? | 売却益は原則として雑所得。取得価額は亡くなった方の評価額を引き継ぐ |
暗号資産は相続税の対象になる
国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」は、暗号資産を相続や遺贈で取得した場合には相続税が課税されると明記しています。資金決済法で暗号資産は「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値」とされており、金銭に見積もることができる経済的価値のある財産にあたるためです。
預金や株式と同じく、ほかの財産と合計して基礎控除を超えるかどうかで申告の要否が決まります(相続税の基礎控除)。値動きが大きいため、「保有していた量はわずか」と思っていても、亡くなった日の価格によっては評価額が膨らむことがあります。
暗号資産の相続税評価の方法
活発な市場がある銘柄は「死亡日の取引価格」
暗号資産の評価方法は財産評価基本通達に直接の定めがないため、国税庁は通達の考え方に準じて評価するとしています。ビットコインのように取引所や販売所で十分な数量と頻度で取引され、価格情報が継続的に提供されている(活発な市場がある)銘柄は、相続人などが取引を行っている暗号資産交換業者が公表する、亡くなった日(課税時期)の取引価格で評価します。
| 場面 | 国税庁FAQの扱い |
|---|---|
| 残高証明書がある | 交換業者が発行する残高証明書に記載された取引価格も使える |
| 購入価格と売却価格が別々に公表されている | 交換業者に売却する価格(売却価格)で評価してよい |
| 複数の交換業者で取引している | 納税義務者が選んだ交換業者の取引価格で評価してよい |
| 活発な市場がない銘柄 | 内容や取引実態をふまえ個別に評価(売買実例価額や精通者の意見価格を参考にするなど) |
たとえば、亡くなった日の売却価格が1BTCあたり1,000万円で、0.3BTCを保有していた場合、評価額は1,000万円×0.3=300万円が目安です。実際の評価は銘柄や取引状況で変わるため、申告の際は税理士や税務署に確認してください。
相続手続きは「取引所の口座」か「自己管理ウォレット」かで変わる
取引所(交換業者)に預けている場合
国内の暗号資産交換業者に口座がある場合は、銀行や証券会社と同じように、交換業者に死亡を伝えて相続手続きを進めます。一般的には、所定の依頼書、戸籍謄本、遺産分割協議書や遺言書、相続人の本人確認書類などを提出し、暗号資産のまま相続人の口座へ移すか、売却して円で受け取るかを選ぶ形です。方法や必要書類は業者ごとに違うので、各社の案内に従ってください。家族が故人のIDやパスワードでログインして操作する必要はありません。
国内で暗号資産と円との交換サービスを行うには、金融庁(財務局)への登録が必要です。相続手続きの連絡先が正規の業者か迷ったときは、金融庁の「暗号資産交換業者登録一覧」で確認できます。
自分で管理するウォレットの場合
本人がハードウェアウォレットやスマホのアプリなどで自分で管理していた暗号資産は、手続きを受け付ける会社がありません。送金に必要な鍵(秘密鍵など)が分からなければ、相続人も含めて誰も動かせないのが実情です。相続財産として存在していても、取り出せないまま残ってしまうおそれがあります。
保有の手がかりを探す
- 交換業者からのメール(取引通知、年間取引報告書の案内)
- 銀行通帳の入出金履歴に残る交換業者名
- 確定申告書の控え(雑所得の欄、暗号資産の計算書)
- スマホのアプリ一覧、ハードウェアウォレットらしき機器
スマホが開けない場合の考え方は故人のスマホが開けないで解説しています。
相続後に売ったときの税金
暗号資産の売却や使用による利益は、国税庁によると、事業所得などの基因となる行為に付随する場合を除き、原則として雑所得として所得税の確定申告が必要です。相続で取得した暗号資産の取得価額は、亡くなった方が死亡時に選択していた方法(総平均法または移動平均法)で評価した金額を引き継ぎます。
また、亡くなった年に本人が暗号資産を売って利益を出していた場合は、相続人が本人に代わって準確定申告をする必要が出ることがあります。年間取引報告書が届いていないか確認しましょう。暗号資産の税制は見直しの議論が続いている分野なので、売却の前に最新の国税庁の情報を確認してください。
アクセス不能を防ぐ生前の備え
- 保有している交換業者の名前と、おおよその銘柄を家族が分かるようにしておく
- 自己管理のウォレットにある分は、家族が相続手続きで引き継げない形であることを本人が理解し、使っていないものは生前に整理を検討する
- 鍵の扱いに不安があれば、元気なうちに税理士などの専門家と、承継の方法を相談しておく
暗号資産に限らず、ネット上の財産全体の整理の進め方はデジタル遺品とはとデジタル終活のやり方がまとめて参考になります。
よくある質問
暗号資産の存在を知らずに遺産分割を終えてしまいました。
後から見つかった財産は、改めて相続人で分け方を話し合う必要があります。相続税の申告をしていた場合は修正申告が必要になることもあります(相続財産が後から見つかったら)。
家族が故人のアカウントにログインして売却してもいいですか?
おすすめしません。本人以外の操作は利用規約に反するおそれがあり、相続人どうしのトラブルや税務上の問題にもつながります。交換業者の正式な相続手続きを使ってください。
評価に使う価格はどの業者のものでもいいのですか?
国税庁のFAQでは、相続人などが取引を行っている交換業者の価格を使い、複数の業者で取引している場合は選んだ業者の価格でよいとされています。どの価格を使ったかは記録しておきましょう。
まとめ:暗号資産は「存在」と「在り処」を伝えておく
暗号資産は相続税の対象で、活発な市場がある銘柄は交換業者が公表する亡くなった日の取引価格で評価します。取引所に預けている分は交換業者の相続手続きで引き継げますが、自己管理のウォレットは鍵がなければ取り出せません。相続後に売った利益は原則として雑所得です。鍵そのものを書き残すのではなく、持っていることと口座のある業者を家族と共有しておくことが、いちばん現実的な備えになります。
※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関の公式情報をもとにした一般的な解説です。評価額・税額・手続きは、銘柄や保有方法、個別の事情で異なります。手続きは各交換業者に、税金は税務署・税理士にご確認ください。特定の暗号資産や事業者を勧めるものではありません。
国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和7年12月)」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/index.htm
国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」1-5・2-2・4-1・4-2 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
国税庁「財産評価基本通達 4-3(邦貨換算)・5(評価方法の定めのない財産の評価)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/01/01.htm
金融庁「暗号資産・電子決済手段関係(暗号資産交換業者登録一覧)」https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency02/index.html






