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「相続の手続きには、全部でどのくらいお金がかかるの?」——相続税のことは聞いたことがあっても、それ以外に何が必要か分からない方は多いはずです。結論から言うと、相続の費用は①税金、②手続きの実費(戸籍・証明書・裁判所の手数料など)、③専門家への報酬の3つに分けて考えると整理できます。①と②は法律や政令で金額や計算方法が決まっているものが多く、③は依頼する内容と事務所によって変わります。この記事では、それぞれの費用を一覧にし、金額の決まり方と抑えるコツを公的な情報をもとにまとめます。
相続にかかる費用の一覧
| 区分 | 費用 | かかる場面 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|---|
| 税金 | 相続税 | 遺産が基礎控除額を超えるとき | 相続税法の計算による |
| 所得税(準確定申告) | 亡くなった方に申告が必要な所得があったとき | 所得税法の計算による | |
| 登録免許税 | 不動産の相続登記をするとき | 不動産の価額×0.4%(免税措置あり) | |
| 実費 | 戸籍・除籍などの証明書 | 相続人を確定するとき | 政令の標準額(戸籍450円、除籍750円) |
| 登記事項証明書・住民票・評価証明書など | 財産や相続人の確認、登記・申告 | 法務省・市区町村が定める額 | |
| 家庭裁判所の手数料 | 遺言書の検認、相続放棄など | 収入印紙800円など | |
| 報酬 | 税理士・司法書士・弁護士・行政書士など | 手続きを依頼するとき | 各事務所が自由に定める |
このほか、葬儀やお墓の費用、郵送料や交通費もかかります。葬儀費用の負担については葬儀費用は誰が払う?で解説しています。
相続にかかる税金
相続税:かかるのは一部の家庭
相続税は、遺産の課税価格の合計が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合にかかります。国税庁の「令和6年分 相続税の申告事績の概要」では、亡くなった方のうち相続税の課税対象になったのは10.4%でした。申告の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。基礎控除の数え方は相続税の基礎控除をご覧ください。
準確定申告の所得税
亡くなった方に事業所得や不動産所得などがあった場合、相続人がその年の1月1日から亡くなった日までの所得について、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に申告します(準確定申告)。払いすぎた税金が戻る場合もあります。
登録免許税:不動産の相続登記にかかる
土地・建物の相続登記には登録免許税がかかります。国税庁の税額表によると、相続による所有権の移転登記の税率は1,000分の4(0.4%)で、課税標準となる不動産の価額は、固定資産課税台帳に登録された価格がある場合は原則その価格です。
法務局によると、次の2つの免税措置が2027年(令和9年)3月31日まで設けられています。①相続で土地を取得した人が登記をしないまま亡くなった場合の、その人を名義人とするための登記、②不動産の価額が100万円以下の土地の相続登記です。免税を受けるには、申請書に根拠となる法令の条項を書く必要があり、書いていないと免税は受けられません。
なお、相続による不動産の取得には不動産取得税がかかりません(地方税法73条の7)。一方、固定資産税は相続後も毎年かかり続けます。
手続きの実費:戸籍・証明書・裁判所の手数料
専門家に頼まなくても必ずかかるのが実費です。主なものを整理します。
| 書類・手続き | 手数料(2026年10月時点) | 根拠・案内 |
|---|---|---|
| 戸籍謄本(戸籍証明書) | 1通450円 | 地方公共団体の手数料の標準に関する政令 |
| 除籍謄本(除籍証明書) | 1通750円 | 同上 |
| 法定相続情報一覧図の写し | 無料 | 法務局 |
| 不動産の登記事項証明書 | 書面請求600円/オンライン請求・送付520円/オンライン請求・窓口交付490円 | 法務省(2025年4月1日改定) |
| 住民票・印鑑証明書・固定資産評価証明書 | 市区町村が定める額 | 各市区町村 |
| 遺言書の検認の申立て | 遺言書1通につき収入印紙800円+連絡用の郵便切手 | 裁判所 |
| 検認済証明書の申請 | 遺言書1通につき収入印紙150円 | 裁判所 |
| 相続放棄の申述 | 申述人1人につき収入印紙800円+連絡用の郵便切手 | 裁判所 |
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍は、転籍や改製があると何通にもなり、戸籍の費用は数千円になることもあります。2024年3月1日からは、本籍地以外の市区町村の窓口でもまとめて請求できる「広域交付」が始まりました(相続の戸籍の集め方)。集めた戸籍をもとに法定相続情報一覧図を作っておけば、無料で必要な枚数の写しを受け取れ、銀行や法務局ごとに戸籍の束を出し直す手間も減らせます。
専門家への報酬:自由化されている
士業の報酬は、いまはどれも各事務所が自由に決めています。公的な料金表はないため、見積もりで確認するのが基本です。
| 専門家 | 主な依頼内容 | 報酬の決まり方 |
|---|---|---|
| 税理士 | 相続税の申告、準確定申告 | 2002年4月施行の改正税理士法で報酬規定が廃止され、自由に定める(税理士費用の相場と料金体系) |
| 司法書士 | 相続登記、相続放棄の申述書作成 | 各司法書士が自由に定め、額や算定方法を明示して依頼者と合意する(司法書士費用の相場) |
| 弁護士 | 遺産分割の交渉・調停などの代理 | 着手金・報酬金・手数料・法律相談料・日当・実費などで構成される |
| 行政書士 | 争いのない場合の遺産分割協議書などの作成 | 各事務所が定める |
相続の費用を抑えるコツ
- 自分でできる部分は自分で:戸籍の収集、法定相続情報一覧図の取得、預貯金の手続きは、相続人が自分で行えます
- 免税措置を確認する:価額が100万円以下の土地などは、登録免許税が免税になる場合があります
- 依頼の範囲を絞る:登記だけ、申告だけなど、必要な部分に絞って見積もりを取ります
- 見積もりを比べる:何が含まれた金額か、実費は別かをそろえて比べます
- 財産の情報を整理しておく:資料がそろっているほど、専門家の作業が減ります
ただし、相続税の特例の判断や複雑な土地の評価、相続人同士の対立がある場面は、無理に自分で進めると、かえって負担が増えることがあります。どこまでを任せるかは相続の専門家の選び方も参考にしてください。
よくある質問
相続の費用は誰が払うのですか?
法律で一律に決まっているわけではなく、相続人同士の話し合いで決めるのが一般的です。代表者が立て替えて遺産分割のときに精算する、取得する財産の割合で分けるなどの方法があります。後でもめないよう、立て替えた費用は領収書を残しておきましょう。
相続税がかからない場合、費用はほとんどかかりませんか?
相続税がかからなくても、戸籍などの実費はかかり、不動産があれば登録免許税もかかります。専門家に依頼しなければ実費だけで済みますが、その額は不動産の評価額や戸籍の通数によって変わります。
遺産から費用を払ってもよいですか?
相続人全員が合意していれば可能です。ただし、相続放棄を考えている場合は、遺産を処分したとみなされないよう注意が必要です。判断に迷うときは、手を付ける前に専門家や家庭裁判所の案内を確認しましょう。
相続登記をしないと費用はかかりませんか?
相続登記は2024年4月1日から義務になっており、正当な理由なく期限内に申請しないと過料の対象になり得ます。費用を理由に先送りせず、免税措置が使えるかも含めて確認しましょう。
まとめ
相続の費用は、税金(相続税・準確定申告の所得税・登録免許税)、手続きの実費(戸籍450円、除籍750円、登記事項証明書600円、裁判所の収入印紙800円など)、専門家への報酬の3つに分けると全体が見えます。税金と実費は法令で計算方法や金額が決まっており、報酬は各事務所が自由に定めます。自分でできる部分と任せる部分を分け、見積もりで範囲を確かめながら進めましょう。
※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関の案内をもとにした一般的な解説です。手数料は改定されることがあり、住民票などは市区町村ごとに異なります。税額や個別の手続きは、税務署・法務局・家庭裁判所・各専門家にご確認ください。
国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf
国税庁「No.4152 相続税の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2022.htm
法務省「相続登記の申請義務化について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000017.html
法務局「「法定相続情報証明制度」について」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000013.html
法務省「登記手数料について」https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/
法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html
e-Gov法令検索「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」https://laws.e-gov.go.jp/law/412CO0000000016
e-Gov法令検索「地方税法」第73条の7 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
裁判所「遺言書の検認」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html
裁判所「相続の放棄の申述」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
国税庁「No.4126 相続財産から控除できる債務」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4126.htm
日本税理士会連合会「税理士に相談する」https://www.nichizeiren.or.jp/consultation/expart/
日本司法書士会連合会「司法書士の報酬」https://www.shiho-shoshi.or.jp/about/remuneration/
日本弁護士連合会「弁護士費用(報酬)」https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/cost/legal_aid.html






