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「親から相続した家、住む予定がないので売りたい。でも何から始めればいいの?」——相続した家の売却は、普通の売却の前に「誰が売るのか」を決めて、名義を変えるという段取りが入ります。結論から言うと、流れは①家族で方針を決める → ②相続登記 → ③査定 → ④媒介契約 → ⑤片付け・境界の確認 → ⑥売買契約 → ⑦決済・引渡し → ⑧翌年の確定申告の8ステップです。この記事では、各ステップでやることと、共有で売るときの注意点を整理します。売却にかかる税金と特例は相続した不動産の売却と税金で詳しく解説しています。
相続した家を売る流れ(8ステップの全体像)
| ステップ | やること | 関わる人 |
|---|---|---|
| ①方針を決める | 売るか、誰の名義で売るか、代金をどう分けるか | 相続人全員 |
| ②相続登記 | 故人名義から相続人名義へ変更 | 法務局、司法書士 |
| ③査定 | 複数の不動産会社に価格の見込みを出してもらう | 不動産会社 |
| ④媒介契約 | 売却を依頼する会社と契約の形式を決める | 不動産会社 |
| ⑤売却準備 | 家財の片付け、境界・設備の確認、解体するかの判断 | 相続人、業者、土地家屋調査士 |
| ⑥売買契約 | 重要事項の説明を受け、契約・手付金の受領 | 買主、不動産会社 |
| ⑦決済・引渡し | 残代金の受領、買主への所有権移転登記、鍵の引渡し | 買主、司法書士、金融機関 |
| ⑧確定申告 | 売却した翌年に譲渡所得を申告(必要な場合) | 税務署、税理士 |
①まず家族で「売る」方針と分け方を決める
相続した家は、遺産分割が終わるまで相続人全員の共有の状態です。誰か一人の判断では売れないため、最初に次の3点を相続人どうしで決めます。
- 売るかどうか:住む・貸すという選択肢と比べる(相続した実家・空き家の選択肢)
- 誰の名義で売るか:一人が相続して売るのか、相続人の共有で売るのか
- 代金をどう分けるか:売却代金から費用を差し引いた残りを、誰にどの割合で渡すか
売った代金を分ける方法を「換価分割」といいます。遺産分割協議書には「不動産を売却し、売却代金から諸費用を差し引いた残額を〇分の1ずつ取得する」のように、分ける割合と費用の扱いまで書いておくと、後の行き違いを防げます(現物分割・代償分割・換価分割の違い)。
②売る前に必ず相続登記を済ませる
家の名義が故人のままでは、買主への所有権移転登記ができません。売却の前提として、相続人名義への相続登記が必要です。相続登記は2024年4月から義務になっており、取得を知った日から3年以内という期限もあります(相続登記の義務化)。
換価分割で売るときの登記の2パターン
| 方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 相続人全員の共有で登記 | 分ける割合どおりの持分で登記し、全員が売主になる | 契約・決済に全員の関与(署名・実印・本人確認など)が必要 |
| 代表者一人の名義で登記 | 協議書に「換価のため代表者が取得する」旨を書き、代表者が売主になる | 代金を他の相続人に渡すときに贈与と見られないよう、協議書の書き方が大切 |
相続人申告登記は相続登記の義務を果たす簡易な手続きですが、権利の移転を登記するものではないため、これだけでは売却できません。
③④査定を受けて不動産会社と媒介契約を結ぶ
査定は、不動産会社が近隣の取引事例などから「いくらで売れそうか」の見込みを出すものです。会社によって金額や根拠が違うため、複数社に依頼し、金額だけでなく根拠と販売方法を比べるのが基本です。相場の目安は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で周辺の取引価格を調べることもできます。
依頼先を決めたら媒介契約を結びます。宅地建物取引業法で、次の3つの形式が定められています。
| 形式 | 他社への依頼 | 自分で見つけた買主との直接取引 | 報告の頻度 |
|---|---|---|---|
| 一般媒介 | できる | できる | 法律上の定めなし |
| 専任媒介 | できない | できる | 2週間に1回以上 |
| 専属専任媒介 | できない | できない | 1週間に1回以上 |
専任媒介・専属専任媒介の有効期間は3か月以内で、不動産会社は物件を指定流通機構(レインズ)に登録する義務があります。
⑤売り出す前の準備:片付け・境界・解体の判断
- 家財の片付け:引渡しまでに空にするのが一般的。形見分けや、遺品の中に権利証・通帳がないかの確認を先に
- 境界の確認:隣地との境界標が見当たらない、測量図が古いといった場合は、測量や境界確認が必要になることがある(相続と土地の境界・測量)
- 建物の状態の把握:雨漏りや設備の不具合は、売買契約時に買主へ伝える。後から不具合が見つかると、契約不適合責任を問われることがある
- 解体するかどうか:更地のほうが売りやすい場合もあるが、解体費がかかり、更地になると翌年度から土地の固定資産税の住宅用地の軽減がなくなる。空き家の3,000万円控除は、売却後に買主が解体・耐震改修する形でも使える場合がある
解体や耐震改修のタイミングは税金の特例の要件に関わります。判断する前に、税務署や税理士に確認しておくと安心です。
⑥⑦売買契約から決済・引渡しまで
買主が見つかったら、宅地建物取引士から重要事項の説明を受け(説明を受けるのは買主)、売買契約を結んで手付金を受け取ります。その後、決済日に残代金を受け取り、司法書士が買主への所有権移転登記を申請し、鍵を渡して完了です。売主が相続人の共有の場合は、全員が契約と決済に関わります。遠方に住む相続人がいるなら、委任状や郵送での手続きをどうするか、早めに不動産会社と打ち合わせましょう。
⑧翌年の確定申告と、期限から逆算するスケジュール
売却で利益(譲渡所得)が出たら、売った年の翌年に確定申告をします。換価分割で共有のまま売った場合は、持分を持つ相続人それぞれが自分の持分について申告します。利益が出なくても、特例を使う場合は申告が必要です。
相続した家の売却では、次の期限を意識してスケジュールを組みます。
| 期限 | 関係すること |
|---|---|
| 亡くなったことを知った日の翌日から10か月 | 相続税の申告・納税 |
| 相続税の申告期限の翌日以後3年 | 取得費加算の特例を使える売却の期限 |
| 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日 | 空き家の3,000万円控除を使える売却の期限 |
| 取得を知った日から3年 | 相続登記の申請義務 |
2つの特例の要件や計算、どちらを選ぶかは相続した不動産の売却と税金をご覧ください。
よくある質問
遺産分割協議の前に家を売ることはできますか?
相続人全員が売主になれば、法定相続分で相続登記をしたうえで売ることは可能です。ただし代金の分け方を決めておかないと、売った後にもめる原因になります。先に分け方を合意しておくのが安全です。
共有者の一人が売却に反対しています。
家全体を売るには共有者全員の同意が必要です。自分の持分だけを売ることは法律上できますが、買い手が限られます。解決の選択肢は共有名義の相続で整理しています。
住宅ローンが残っている家でも売れますか?
抵当権を消すには残債の返済が必要です。団体信用生命保険でローンが完済される場合もあるため、まず金融機関に確認してください。
まとめ:相続した家は「分け方→登記→査定」の順で
相続した家を売るときは、家族で方針と代金の分け方を決め、相続登記を済ませてから、複数社の査定・媒介契約・売却準備・売買契約・引渡しへと進みます。共有で売るなら全員の関与が必要で、利益が出たら翌年に各自が申告します。相続税・特例・登記の期限から逆算して動き出すと、慌てずに済みます。全体像は相続した不動産の手続き完全ガイドで確認できます。
※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関の案内をもとにした一般的な解説です。登記の方法や協議書の書き方、税金の扱いは個別の事情で異なります。登記は司法書士、税金は税務署・税理士、売却は宅地建物取引業者にご確認ください。
法務省「相続登記の申請義務化について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
法務省「相続人申告登記について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html
e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第34条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176
国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bf_000013.html
国土交通省「不動産情報ライブラリ」https://www.reinfolib.mlit.go.jp/
国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm






