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「相続した田舎の土地、使い道もなく売れもしない。でも固定資産税と草刈りは毎年かかる」——そんな土地を国に引き取ってもらえるのが相続土地国庫帰属制度です。結論から言うと、相続や遺贈で土地を取得した人が申請でき、建物がない・担保が付いていない・境界がはっきりしているなどの要件を満たせば、審査を経て国のものになります。ただし、審査手数料(1筆14,000円)と、10年分の管理費相当の負担金(原則20万円)がかかります。この記事では、要件・費用・手続きの流れと、2026年8月末までの利用実績を法務省の情報をもとに整理します。
相続土地国庫帰属制度のしくみ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開始日 | 2023年4月27日(それより前に相続した土地も対象) |
| 申請できる人 | 相続または相続人への遺贈で土地を取得した人 |
| 対象 | 土地のみ(建物は不可)。宅地・田畑・山林など地目は問わない |
| 費用 | 審査手数料:土地1筆14,000円/負担金:原則20万円(面積に応じて増える土地あり) |
| 申請先 | 土地がある都道府県の法務局・地方法務局の本局(不動産登記部門) |
| 審査期間 | 標準処理期間は8か月(事案により超えることも) |
相続登記がされずに放置され、所有者が分からなくなる土地を減らすために作られた制度で、相続登記の義務化と同じ一連の法改正で導入されました。
申請できる人:相続・遺贈で取得した人
申請できるのは、相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した人です。売買や生前贈与で取得した土地は対象外です。相続登記をまだしていない土地でも、戸籍などで所有者であることを証明すれば申請できます。
引き取ってもらえない土地(却下・不承認の要件)
要件は、申請の段階で門前払いになる「却下事由」と、審査の結果承認されない「不承認事由」の2段階です。
申請できない土地(却下事由)
- 建物がある土地
- 抵当権などの担保権や、賃借権・地上権などの使用収益権が設定されている土地
- 通路・墓地・境内地・ため池など、他人による使用が予定されている土地
- 土壌汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲について争いがある土地
審査で承認されない土地(不承認事由)
- 勾配が急な崖があり、管理に過分な費用・労力がかかる土地
- 管理の妨げになる工作物・車両・樹木などが地上にある土地
- 除去が必要な物が地下に埋まっている土地
- 隣の土地の所有者などとの争訟をしなければ管理・処分できない土地
- その他、通常の管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地
建物がある場合は、原則として取り壊してから申請します。境界が不明な土地は、隣地所有者との境界確認が先に必要です(相続と土地の境界・測量)。解体費や測量費は申請者の負担なので、負担金と合わせた総額で考えることが大切です。
費用:審査手数料と負担金
審査手数料:土地1筆14,000円
申請時に、申請書に収入印紙を貼って納めます。申請を取り下げたり、却下・不承認になったりしても返ってきません。
負担金:10年分の管理費相当、原則20万円
承認された場合に納める負担金は、国がその土地を管理する10年分の標準的な費用を考慮して決められています。基本は土地1筆あたり20万円ですが、次のような土地は面積に応じて算定され、20万円より高くなります。
| 土地の種類 | 負担金 |
|---|---|
| 宅地・田畑・森林などの多く | 原則20万円 |
| 市街化区域などにある一部の宅地 | 面積に応じて算定 |
| 市街化区域・農用地区域などにある一部の田畑 | 面積に応じて算定 |
| 森林 | 面積に応じて算定 |
正確な額は、法務省ホームページの負担金の算定方法や自動計算シートで確認できます。隣り合う同じ種類の土地が2筆以上あるときは、申出によりまとめて1つの土地として負担金を計算できる特例もあります。負担金は、通知が届いた日の翌日から30日以内に納めないと承認の効力が失われ、改めて申請し直すことになります。
申請から国庫帰属までの流れ
- 事前相談:土地がある法務局(本局)に予約して相談する(事前予約制)
- 承認申請:申請書と添付書類を提出し、審査手数料を納める(窓口または郵送)
- 審査:法務局の担当官が書面調査と現地調査を行う。隣地所有者への通知や、関係する省庁・自治体への情報提供もある
- 承認・負担金の通知
- 負担金の納付(30日以内)
- 国庫に帰属:納付した時点で所有権が国に移る。その後は財務大臣または農林水産大臣が管理する
申請があった土地の情報は関係する省庁や自治体にも提供されます。法務省の統計では、取り下げの理由で最も多いのが「有効活用の見込みが生じた」で、申請をきっかけに引き取り手や使い道が見つかるケースもあることが分かります。
利用実績:申請5,997件、帰属3,119件(2026年8月末)
法務省が公表している統計(2026年8月31日現在の速報値)は次のとおりです。
| 項目 | 件数 |
|---|---|
| 申請件数 | 5,997件(田・畑2,335件、宅地2,091件、山林902件、その他669件) |
| 帰属件数 | 3,119件(宅地1,164件、農用地989件、森林203件、その他763件) |
| 却下件数 | 85件 |
| 不承認件数 | 100件 |
| 取下げ件数 | 1,139件(うち有効活用の見込みが生じた586件、却下・不承認になると判明した405件、その他148件) |
単純に比べると、申請の半数ほどが国庫帰属に至っています。一方で、要件に合わないと分かって取り下げた件数は却下・不承認の合計の2倍を超えており、事前相談で要件を確かめておくことの大切さがうかがえます。
国庫帰属と、売却・相続放棄の比較
| 方法 | 手放せる範囲 | 期限 | 費用・注意点 |
|---|---|---|---|
| 売却・隣地への譲渡 | その土地だけ | なし | 買い手が必要。売れれば負担金は不要 |
| 相続土地国庫帰属 | その土地だけ | なし(相続後いつでも) | 手数料・負担金、解体や境界確認の費用 |
| 相続放棄 | すべての財産(預金なども含む) | 相続を知った時から3か月以内 | 家庭裁判所への申述。いらない土地だけを放棄することはできない |
まずは売却や、隣地の所有者・自治体への譲渡ができないかを検討し、それでも難しい場合の選択肢として国庫帰属を考えるのが一般的です。売却の進め方は相続した不動産の売却と税金、相続放棄は相続放棄の手続きをご覧ください。農地については農地の相続も参考になります。
よくある質問
空き家が建っている実家の土地も引き取ってもらえますか?
建物がある土地は申請できないため、解体して更地にしてからの申請になります。解体費と負担金を合わせると負担が大きくなることもあるので、売却などと比べて判断しましょう(相続した実家・空き家はどうする)。
相続登記をしていなくても申請できますか?
できます。ただし、所有者であることを証明する戸籍などの添付が必要です。なお、相続登記は別途3年以内の申請義務があります(相続登記の義務化)。
不承認になったら手数料は戻りますか?
戻りません。取り下げ・却下・不承認のいずれでも返還されないため、申請前に法務局の事前相談で要件を確認することをおすすめします。
まとめ:国庫帰属は「更地・境界明確」と費用の総額で判断
相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈で取得したいらない土地を、審査を経て国に引き取ってもらえる制度です。建物がない、担保や境界の問題がないなどの要件があり、審査手数料1筆14,000円と、原則20万円の負担金がかかります。2026年8月末までに3,119件が国庫に帰属しています。解体・測量費も含めた総額を売却などと比べ、まずは土地がある法務局の事前相談を利用しましょう。不動産相続の全体像は相続した不動産の手続き完全ガイドで確認できます。
※本記事は2026年10月時点の法令と法務省の案内をもとにした一般的な解説です。統計は法務省公表の速報値です。要件への該当や負担金の額は土地ごとに異なります。具体的には土地がある法務局(本局)の事前相談や専門家にご確認ください。
法務省「相続土地国庫帰属制度について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html
法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html
法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00459.html
法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00579.html
法務省リーフレット「相続土地国庫帰属制度~相続した土地の管理にお困りの方へ~」https://www.moj.go.jp/content/001399973.pdf






