相続の準備・終活

ペットの終活|託す人の決め方と負担付遺贈・ペット信託の注意点

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「自分にもしものことがあったら、この子はどうなるのだろう」——ペットと暮らす人なら、一度は考える不安です。結論から言うと、法律上ペットは「物」として扱われるため、ペット自身に財産を残すことはできません。そこで、世話をしてくれる人を決め、その人に飼育費用を渡す仕組みを用意するのがペットの終活の基本になります。この記事では、託す人の決め方、負担付遺贈・負担付死因贈与・ペット信託の違いと注意点、引き継ぎで必要になる届出を、民法と環境省などの公的情報をもとに整理します。

ペットの終活の結論:「託す人」と「お金」をセットで用意する

疑問 一般的な考え方
ペットに財産を相続させられる? できない。民法上、ペットは「物」(動産)にあたる
何も決めずに飼い主が亡くなったら? ペットも相続財産の一部として相続人に引き継がれる。誰が飼うかは相続人の話し合いしだい
確実に託すには? 引き受けてくれる人の承諾を得たうえで、負担付遺贈・負担付死因贈与・信託などで費用を渡す
最初にやることは? 託す人を決めて話をし、ペットの情報を書き残す

動物愛護管理法は、飼い主に対し、動物がその命を終えるまで適切に飼うこと(終生飼養)に努めるよう求めています(7条4項)。自分が飼えなくなったときの備えも、終生飼養の一部と考えるとよいでしょう。

ペットに財産を残せない理由と、何もしないとどうなるか

民法は「物」を有体物とし(85条)、不動産以外の物はすべて動産としています(86条)。ペットは家族同然の存在でも、法律上は動産として扱われます。そのため「愛犬に100万円を相続させる」という遺言を書いても、ペットが財産を受け取ることはできません。

何も準備をしないまま飼い主が亡くなると、ペットは他の財産と同じく相続人の共有になり(民法898条)、誰が引き取るかは相続人同士の話し合いで決めることになります。相続人がペットを飼える環境にあるとは限らず、引き取り手が決まるまで世話をする人がいない、という事態も起こり得ます。おひとりさまや、家族が遠方に住んでいる方ほど、早めの準備が大切です(おひとりさまの終活と相続)。

まず「託す人」を決めて承諾を得る

どの方法を選ぶにしても、出発点は「誰に託すか」です。法的な手続きより先に、引き受けてくれる人との話し合いが必要になります。

託す相手の候補

  • 家族・親族:ペットと顔なじみなら移行がスムーズ。住まいがペット可かも確認する
  • 友人・知人:同じ動物を飼った経験がある人だと安心。相続人ではないので、遺贈や契約で費用を渡す必要がある
  • 譲渡先を探す団体や施設:条件や費用は団体ごとに大きく違う。必ず事前に内容を確かめる

話しておきたいこと

  • 引き受けてもらう時期(亡くなったときだけか、入院・施設入所のときも含むか)
  • 飼育費用の目安と渡し方
  • 引き受けられなくなったときの次の候補
「入院したとき」も考えておく飼い主が亡くなる前に、入院や介護施設への入所で世話ができなくなることもあります。遺言は亡くなった後にしか効力がないため、生前の一時預かりは、託す人との約束や預け先の確保で別に備えておく必要があります。

負担付遺贈・負担付死因贈与・ペット信託の違い

方法 しくみ 注意点
負担付遺贈 遺言で「ペットの世話をすること」を負担として、財産を遺贈する 受遺者は放棄できる。遺言だけで成り立つので、事前の承諾が欠かせない
負担付死因贈与 飼い主の死亡で効力が生じる贈与契約に、世話の負担を付ける 相手との合意(契約)が必要。生前に内容を確認し合える
ペット信託 信託の仕組みで飼育費用を管理し、世話をする人へ渡す(一般的な呼び名) 設計が複雑で、専門家への報酬など費用がかかることがある

負担付遺贈(民法1002条)

遺言で「長女に預金200万円を遺贈する。長女は、遺言者の飼い犬○○を、その命が終わるまで適切に飼育すること」のように、財産の遺贈に世話の義務を付ける方法です。民法1002条は、負担付遺贈を受けた人は遺贈の目的の価額を超えない限度でのみ負担した義務を果たす責任を負うと定めています。渡す財産が飼育費に見合わないと、十分な世話を求めにくくなる点に注意が必要です。

また、受遺者は遺言者の死亡後いつでも遺贈を放棄できます(民法986条)。放棄されると、ペットの世話をしてもらう前提が崩れてしまいます。遺言を書く前に、引き受ける人の承諾を得ておくことが大切です。

世話をしてくれないときは負担付遺贈を受けた人が義務を果たさないときは、相続人は相当の期間を定めて履行を催告でき、その期間内に履行がなければ、家庭裁判所に遺言の取消しを請求できます(民法1027条)。遺言で遺言執行者を指定しておくと、遺言の内容を実現する役割を担ってもらえます(遺贈とは)。

負担付死因贈与

「自分が亡くなったら財産を贈る。その代わりペットを世話する」という内容を、生前に相手と契約で結ぶ方法です。死因贈与には、その性質に反しない限り遺贈の規定が準用され(民法554条)、負担付贈与には双務契約の規定が準用されます(553条)。相手と合意して契約するので、遺贈よりも「引き受ける意思」を確認しやすいのが特徴です。契約書を作り、公正証書にしておくと、内容をめぐる争いを防ぎやすくなります。

ペット信託(一般論)

「ペット信託」は法律上の用語ではなく、信託の仕組みを使ってペットの飼育費用を管理する方法の一般的な呼び名です。たとえば飼い主(委託者)が信頼できる人(受託者)に飼育費用を預け、受託者がペットを世話する人へ必要な費用を渡す、という形が考えられます。お金を管理する人と世話をする人を分けられるため、飼育費用が目的どおりに使われるかを確認しやすい点が利点とされます。

一方で、契約の設計には専門的な知識が要り、専門家への報酬や管理の手間がかかることもあります。信託そのものの仕組みや注意点は家族信託とはで解説しています。どの方法が合うかは、財産の額や託す人との関係によって変わるため、遺言や契約を作る段階で、司法書士・行政書士・公証役場などに相談すると安心です。

遺留分にも配慮を飼育費用として渡す財産が大きいと、ほかの相続人の遺留分を侵害することがあります。遺留分を侵害された相続人は、受け取った人に金銭を請求できます(遺留分とは)。飼育費用は、ペットの年齢や健康状態から見て無理のない額を考えましょう。

引き継ぎで必要になる手続き

ペットを引き取った人には、登録の変更などの手続きが必要になる場合があります。託す人に伝えておきましょう。

手続き 内容 根拠
犬の登録の届出 登録を受けた犬の所有者が変わったら、新しい所有者は30日以内に市町村長へ届け出る 狂犬病予防法4条5項
マイクロチップの変更登録 登録された犬・猫を登録証明書とともに譲り受けた人は、取得から30日を経過する日までに変更登録を受ける 動物愛護管理法39条の6

環境省によれば、2022年6月1日から、販売される犬や猫へのマイクロチップの装着・登録が義務になっています。マイクロチップの登録証明書の保管場所も、託す人が分かるようにしておきましょう。

託す人のために書き残しておくこと

引き継いだ人が困らないよう、ペットの情報をまとめておきます。エンディングノートの一部として書いておくと、他の情報と一緒に見つけてもらいやすくなります(エンディングノートの書き方)。

  • 名前・種類・生年月日・性格、苦手なこと
  • 食事の内容と量、回数、アレルギー
  • かかりつけの動物病院、持病、飲んでいる薬、ワクチンの記録
  • 犬の鑑札・登録の情報、マイクロチップの登録証明書の保管場所
  • 加入しているペット保険などの契約
  • 託す人と次の候補の連絡先

飼い主が倒れたとき、最初に家に入る人がペットの存在に気づけるよう、緊急連絡先と一緒に「ペットがいます」と分かるメモを残しておくのも有効です(もしもの連絡先リストの作り方)。

よくある質問

遺言に「ペットを〇〇さんに託す」とだけ書いても有効ですか?

ペットは財産(動産)なので、特定の人にペットを遺贈すると書くことはできます。ただし、飼育費用を渡さないと引き受ける人の負担が大きく、遺贈を放棄されることもあります。費用の渡し方まで含めて考え、事前に相手の承諾を得ておきましょう。

負担付遺贈で渡した財産に税金はかかりますか?

遺贈で財産を受け取ると、相続税の対象になる場合があります。負担の額をどう扱うかを含め、実際の課税関係は財産全体の状況で変わるため、税務署や税理士に確認してください。

引き取り手が見つからない場合はどうすればいいですか?

早めに、譲渡先を探す団体や地域の動物愛護の窓口などに相談しておくことが大切です。団体ごとに条件や費用が異なるため、内容を書面で確認したうえで検討しましょう。

まとめ:ペットの終活は「託す人」から始める

ペットは法律上「物」なので、ペット自身に財産は残せません。何も決めずに飼い主が亡くなると、ペットは相続人の共有になり、引き取り手が決まらないこともあります。まず託す人を決めて承諾を得てから、負担付遺贈・負担付死因贈与・信託などで飼育費用を渡す方法を選びましょう。登録変更などの手続きや、ペットの性格・病院・食事の情報も書き残しておくと、引き継ぐ人の負担が軽くなります。元気なうちの準備が、大切な家族を守ることにつながります。

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※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関の情報をもとにした一般的な解説です。特定の事業者や団体を推奨するものではありません。遺言・契約の内容や税金の扱いは個別の事情で異なります。作成にあたっては、公証役場や司法書士・行政書士・税理士などにご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
e-Gov法令検索「民法」第85条・第86条・第553条・第554条・第898条・第986条・第1002条・第1027条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
e-Gov法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」第7条・第39条の6 https://laws.e-gov.go.jp/law/348AC1000000105
e-Gov法令検索「狂犬病予防法」第4条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000247
環境省 ポスター「犬と猫のマイクロチップ情報登録」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/poster_10.pdf
環境省「動物の愛護と適切な管理」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/index.html

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