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相続の相談先を探していると、保険や不動産の担当者の名刺などで「相続診断士」という肩書きを見かけることがあります。結論から言うと、相続診断士は、一般社団法人相続診断協会が認定する民間資格で、国家資格ではありません。相続の悩みを聞き取って問題点を整理し、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士などの専門家につなぐ「入口の案内役」です。一方で、相続税の申告書の作成や相続登記の申請の代理、相続人どうしの交渉の代理といった、法律で士業に限られている仕事はできません。この記事では、相続診断士の役割と資格のしくみ、士業との違い、相談するときの注意点を整理します。
相続診断士とは:相続の悩みを整理して専門家につなぐ民間資格
相続診断協会は、相続診断士を「相続の基本的な知識を身につけ相続診断が出来る資格」と説明しています。同協会が掲げる役割は、相続が「争族」にならず、笑顔で相続を迎えられるよう手助けすることです。具体的には、次のような働きを想定しています。
- 相談者から現状を聞き取り、「相続診断」を行って問題点をはっきりさせる
- 生前から相続の問題や、思いを残すことの大切さを伝える
- トラブルが起きそうなときは、弁護士・司法書士・税理士などの専門家に伝え、連携する
協会は、聞き取りに使う独自の「相続診断チェックシート」を用意しており、10分ほどの相談で相続について考えるべきことを把握できるとしています。いわば、相続の「問診」を担う存在です。
相続診断士の資格のしくみ
| 項目 | 内容(相続診断協会の案内より) |
|---|---|
| 認定する団体 | 一般社団法人相続診断協会(2011年12月1日設立) |
| 資格の種類 | 民間資格(国家資格ではない) |
| 受験資格 | 初回の受験はだれでも可能 |
| 試験 | 個人受験はCBT方式(全国の会場で随時受験)、団体受験はペーパー試験。70点以上で合格 |
| 受験料(税込) | 初回は個人3万8,500円、団体3万3,000円 |
| 資格の有効期間 | 2年。更新には更新用確認テストの合格と更新料1万6,500円(税込)が必要 |
協会の案内では、生命保険業界や不動産業界で働く人のほか、一般の方も資格を取得しています。保険会社の営業担当者や不動産会社の担当者が、相続の知識を身につけるために取っている例が多いのはこのためです。
士業の独占業務との違い
相続にかかわる士業には、それぞれの法律で「その資格がないとできない仕事(独占業務)」が定められています。相続診断士は民間資格なので、これらの業務を行う権限はありません。
| 資格 | 相続で関係する主な業務 | 資格のない人への制限 |
|---|---|---|
| 税理士 | 相続税の申告の代理、申告書の作成、税務相談 | 税理士法52条:税理士でない者は税理士業務を行えない |
| 司法書士 | 相続登記の申請の代理、法務局・裁判所に出す書類の作成 | 司法書士法73条:司法書士でない者はこれらの業務を行えない |
| 弁護士 | 相続人どうしの交渉の代理、調停・審判・訴訟の代理など | 弁護士法72条:報酬を得る目的で法律事件の代理などを業とすることはできない |
| 行政書士 | 争いのない遺産分割協議書などの書類作成 | 行政書士法19条:報酬を得て業として書類作成を行えない |
| 相続診断士 | 悩みの聞き取り、問題点の整理、専門家への橋渡し | 上記の独占業務はできない |
なお、税理士や司法書士などの士業が相続診断士の資格をあわせて持っていることもあります。その場合は、本来の士業としての業務を引き受けられます。相談相手が「どの資格で」話をしているのかを意識しておくと、誤解を防げます。専門家ごとの業務範囲は相続の専門家の選び方で詳しく整理しています。
相続診断士に相談すると役立つ場面
- 相続について、何から考えればいいか分からないとき
- 親と相続の話を始めるきっかけや、家族で考えるべきことの全体像がほしいとき
- 自分のケースでどの専門家が必要になりそうか見当をつけたいとき
- 遺言やエンディングノートなど、思いを残す方法について話を聞きたいとき
逆に、相続税の申告が必要か、登記をどう申請するか、相続人どうしの対立をどう解決するかといった具体的な手続きや判断は、それぞれの士業の出番です。争いのない書類作成を頼める行政書士の役割は行政書士に相続で頼めること、もめごとの代理については相続で弁護士に頼むべきケースで解説しています。
相続診断士に相談するときの注意点
本業の商品・サービスとの関係を意識する
相続診断士の多くは、保険・不動産・金融などの仕事をしながら資格を持っています。相続の悩みを整理してもらえるのは心強い一方、話が保険の加入や不動産の売却・活用など、その人の本業の提案につながることもあります。提案を受けたときは、それが自分の課題の解決に本当に必要か、ほかの方法と比べてどうかを、いったん持ち帰って考えましょう。
紹介された専門家は自分でも確かめる
相続診断協会は、事業の一つとして弁護士・司法書士・税理士・行政書士などの専門家の紹介を挙げています。紹介を受けた場合も、依頼するかどうかは自分で決めるものです。資格の登録(税理士は日本税理士会連合会の検索サイトで確認できます)、見積もりと契約の内容、相続案件の経験などを確かめてから依頼しましょう。税理士選びの視点は相続に強い税理士の見分け方が参考になります。
中立的な窓口と使い分ける
どこにも属さない立場で話を聞きたいときは、市区町村の法律相談や国税庁の電話相談センター、法務局の登記手続案内といった公的な無料窓口も使えます(相続の無料相談窓口)。
よくある質問
相続診断士に相談するのに費用はかかりますか?
相談料の有無や金額は、相談する相手や所属する会社によって異なり得ます。相談の前に、費用がかかるかどうか、どこまでが無料かを確認しておきましょう。
名前の似た相続の資格とは同じものですか?
相続に関する民間資格は、相続診断協会以外の団体も設けています。名称が似ていても、認定する団体や学ぶ内容は別です。どの民間資格であっても、それだけで士業の独占業務を行えるわけではない点は共通しています。
相続診断士に遺言書や遺産分割協議書を作ってもらえますか?
書き方の一般的な説明を受けることはできても、他人の依頼を受けて報酬を得て、権利義務に関する書類を作成することは、行政書士法1条の3・19条で行政書士などの業務とされています。遺言書の文案や遺産分割協議書の作成は、行政書士・司法書士・弁護士などの士業や、公正証書遺言なら公証役場に相談しましょう。
相続診断士の資格を自分で取る意味はありますか?
受験資格はなく、だれでも受けられます。親の相続に備えて、全体像を学ぶ目的で取得する一般の方もいます。ただし、資格を取っても他人の申告や登記を業として代わりに行えるようになるわけではありません。
まとめ
相続診断士は、一般社団法人相続診断協会が認定する民間資格で、相続の悩みを聞き取って問題点を整理し、専門家につなぐ入口の案内役です。相続税の申告は税理士、相続登記は司法書士、交渉や調停の代理は弁護士と、具体的な手続きは法律で士業に限られており、相続診断士はこれらを行えません。全体像をつかむ相談相手として活用しつつ、本業の提案との関係や、紹介された専門家の資格・費用は自分で確かめましょう。相談の前に、相続人と財産の状況をメモしておくと話が早く進みます(相続の相談の準備)。
※本記事は2026年10月時点の法令と相続診断協会などの公式案内をもとにした一般的な解説です。資格の内容や受験料は変わることがあります。個別の相続の判断は、各専門家や公的な相談窓口にご確認ください。
相続診断協会「相続診断士について」https://souzokushindan.com/inheritance_consultant.html
相続診断協会「試験について」https://souzokushindan.com/abouttest.html
相続診断協会「協会について」https://souzokushindan.com/associationnal.html
e-Gov法令検索「税理士法」第2条・第52条 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237
e-Gov法令検索「司法書士法」第3条・第73条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000197
e-Gov法令検索「弁護士法」第72条 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205
e-Gov法令検索「行政書士法」第1条の3・第19条 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000004
日本税理士会連合会「税理士に相談する」https://www.nichizeiren.or.jp/consultation/expart/






