家族の話し合い

高齢の親の財産管理|認知症で困る前に子ができることと注意点

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「最近、親が通帳をどこにしまったか忘れるようになった」「入院費を親の口座から払いたいけれど、自分が引き出してよいのか」——親が高齢になると、財産の管理は避けて通れないテーマになります。結論から言うと、まずは親が元気なうちに財産の在り処を一緒に把握し、判断能力が落ちたときに誰がどう管理するかを決めておくことが大切です。銀行の預金は本人の資産なので、家族であっても本人の意思確認なしに払い出すことはできないのが原則です。この記事では、子ができることの順番と、制度の選び方、家族間でもめないための管理ルールを整理します。

高齢の親の財産管理は「把握」から始める

管理の方法を考える前に、親がどんな財産や契約を持っているかを知る必要があります。把握できていないと、入院や介護が始まったときに支払いが滞ったり、詐欺や不要な契約に気づけなかったりします。

項目 把握したいこと 手がかり
預貯金 金融機関名・支店、年金の振込口座、引き落とし口座 通帳、キャッシュカード、届く郵便物
証券・投資信託 証券会社名 取引報告書、年間取引報告書
保険・共済 契約先、受取人、入院給付の有無 保険証券、控除証明書
年金 受給している年金の種類 年金証書、年金額改定通知書
不動産 所在地、名義、ローンの有無 固定資産税の納税通知書、権利証・登記識別情報
借入・保証 ローン、カードの分割払い、連帯保証 返済予定表、カード明細
毎月の支払い 公共料金、サブスク、施設・介護費用 口座の引き落とし履歴

暗証番号やパスワードまで聞き出す必要はありません。「どこに・何が・どの書類で分かるか」が分かれば十分です。親に切り出すときの言い方は親に財産を聞く切り出し方で紹介しています。なお、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」は、本人が亡くなった場合だけでなく、認知判断能力が低下した場合にも、一定の家族などが加盟各社の契約の有無を照会できる制度です(医師の診断書などが必要)。

判断能力が落ちると、家族でも預金を引き出せない

全国銀行協会が2021年に公表した「金融取引の代理等に関する考え方」は、銀行の預金は基本的に本人の資産であり、払い出すには本人の意思確認が必要で、家族といえども預金を払い出すことはできないと整理しています。認知判断能力が低下した方との取引は、成年後見人や任意後見人などを介して行うのが一般的とされています。

「家族なら引き出せる」は例外的な対応同じ考え方では、成年後見制度を利用していない(できない)場合に、本人の医療費の支払いなど本人の利益に適合することが明らかな場合に限って、親族からの依頼に応じることも考えられるとしています。ただしこれは極めて限定的な対応とされ、対応は金融機関ごとに異なります。成年後見人などが選ばれた後は、その人からの依頼が基本になります。

預金だけでなく、不動産の売却や介護施設の入居契約、遺産分割協議なども、本人に判断能力がなければ本人だけでは進められません。だからこそ、判断能力があるうちの準備が重要になります(認知症になる前の相続対策)。

親が元気なうちに選べる財産管理の方法

方法 しくみ 向いている場面
金融機関の代理人制度 本人が届け出て、家族を代理人として登録する(名称や範囲は金融機関ごと) 本人の判断能力に問題がないうちの、日常の入出金の手伝い
任意後見契約 本人が将来の後見人と任せる内容を決め、公正証書で契約する。判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選ぶと効力が生じる 判断能力が落ちた後の財産管理や契約を、信頼できる人に任せたい
家族信託 財産の管理・処分を家族に託す契約 自宅の売却や賃貸不動産の管理など、柔軟な運用をしたい
遺言 亡くなった後の財産の分け方を決める 管理ではなく相続に備える

金融機関の代理人制度は手軽な反面、本人の判断能力が低下した後も使い続けられるかは金融機関の規定によります。全銀協の考え方でも、本人から有効に代理権が与えられ届出があれば代理人との取引は可能とされていますが、判断能力の低下後は成年後見制度などの利用が基本とされています。必ず取引先に条件を確認しましょう。

任意後見は、判断能力が低下する前の段階で使える委任契約(財産管理の委任)と組み合わせる例もあります。詳しくは任意後見契約の始め方、家族信託の特徴や注意点は家族信託とはを参照してください。

すでに判断能力が落ちているなら法定後見

判断能力がすでに不十分な場合は、家庭裁判所に申し立てて、成年後見人・保佐人・補助人を選んでもらう法定後見制度を使います。法定後見では家庭裁判所が後見人などを選び、権限は法律で定められます。後見人は本人の意思を尊重し、心身の状態や生活の状況に配慮して財産を管理する義務を負います(民法858条)。家族が選ばれるとは限らない点も含め、成年後見制度とはで確認しておきましょう。

子が管理を手伝うときに守りたい5つのルール

親のためにお金を出し入れしていても、後から他のきょうだいに「使い込んだのでは」と疑われることがあります。相続のときに争いの火種にしないため、次のルールを決めておきましょう。

  1. 親の意思を確認してから動く:判断能力があるうちは、使い道を本人に確認する
  2. 親のお金は親の口座で:自分の口座と混ぜない。立て替えたら領収書を残して精算する
  3. 出入りを記録する:日付・金額・使い道・領収書を、家計簿やノートに残す
  4. きょうだいと共有する:定期的に記録を見せ、大きな支出は事前に相談する
  5. 「管理」と「贈与」を分ける:親から子へのお金の移動が贈与なのか管理なのかを曖昧にしない

記録がないと、親が亡くなった後に預金の減少を説明できず、遺産分割でもめる原因になります(相続の預金使い込み)。また、子の名義で親のお金を預けていると、相続税の調査で「名義預金」として親の財産と判断されることがあります(名義預金とは)。

よくある質問

親のキャッシュカードを預かって引き出すのは問題ありますか?

キャッシュカードを本人以外が使うことの扱いは、金融機関の規定によります。預かる前に取引先の規定を確認しましょう。親の判断能力があるうちは、親と一緒に窓口へ行くか、金融機関の代理人制度を使うのが安全です。判断能力が落ちた後は、成年後見制度などの利用が基本になります。

成年後見と任意後見はどちらを選べばよいですか?

親に判断能力があるうちなら、自分で後見人や任せる内容を決められる任意後見を検討できます。判断能力がすでに不十分なら、法定後見を家庭裁判所に申し立てることになります。どちらが合うかは家庭の状況によるため、市区町村の窓口や専門家に相談しましょう。

介護費用を親の財産から出すことに、きょうだいが反対しています。

親本人の生活や介護のための支出は、本来は親の財産から出すものです。親が判断できるうちに本人の意向を確認し、記録を共有することで、誤解を減らせます。意見が対立したままなら、第三者を交えて話し合いましょう。

まとめ:把握・仕組み・記録の3つで親の財産を守る

高齢の親の財産管理は、まず財産と契約の在り処を親と一緒に把握することから始まります。判断能力が落ちると、家族でも預金を払い出せないのが原則で、例外的な対応は限られています。元気なうちに金融機関の代理人制度や任意後見契約、家族信託などから合う方法を選び、すでに判断能力が不十分なら法定後見を検討します。子が管理を手伝うときは、親の意思確認・口座の区別・記録・きょうだいとの共有を徹底し、使い込みを疑われない形にしておきましょう。

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※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関・業界団体の公表資料をもとにした一般的な解説です。金融機関の取扱いは各社の規定によって異なります。制度の選択や個別の判断は、金融機関、市区町村の窓口、家庭裁判所、司法書士などの専門家にご確認ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方」(2021年2月公表)https://www.zenginkyo.or.jp/news/2021/n021801/
法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A(Q1〜Q2)」https://www.moj.go.jp/MINJI/a01.html
法務省「成年後見制度・成年後見登記制度」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji95.html
生命保険協会「生命保険契約照会制度のご案内」https://www.seiho.or.jp/contact/inquiry/
e-Gov法令検索「民法」(858条)https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

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