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「相続の手続きは、平日に役所や法務局を回らないといけないの?」——仕事や子育てで時間がとれない方や、実家が遠い方にとって、オンラインでどこまで済ませられるかは切実な問題です。結論から言うと、登記の申請や税金の申告など「送信」の部分はオンラインでできるものが増えています。ただし、戸籍は紙の証明書でしか出ず、実印と印鑑証明書が必要な手続きも残っているため、相続を最初から最後までオンラインで完結させるのは、2026年10月時点ではまだ難しいのが実情です。この記事では、オンラインでできる手続きを一覧にし、それぞれの限界と使うときの注意を整理します。戸籍の集め方そのものは相続の戸籍の集め方で詳しく解説しています。
相続手続きのオンライン対応一覧
| 手続き | オンライン | 主な限界・注意 |
|---|---|---|
| 登記事項証明書の取得 | ○ 請求できる | 窓口より手数料が安い。内容の確認だけなら登記情報提供サービスも |
| 所有不動産記録証明の請求 | ○ 請求できる | 必要書類もすべてオンラインで出す。後から補えない |
| 相続登記の申請 | △ 申請はできる | 戸籍などの書面は別に郵送・持参。オンラインだけでは完結しない |
| 相続人申告登記 | ○ ブラウザでできる | 押印・電子署名が不要 |
| 法定相続情報一覧図 | × 窓口か郵送 | 交付後は番号で登記の添付を省略できる |
| 準確定申告 | ○ e-Taxで出せる | 確定申告書等作成コーナーでは作れない。e-Taxソフトなどが必要 |
| 相続税の申告 | ○ e-Taxで出せる | e-Taxソフトか民間の税務ソフトが必要。自動計算はされない |
| 相続放棄の申述 | × 家庭裁判所へ書面 | 郵便料は電子納付できる |
| 預貯金の相続手続き | 金融機関しだい | 相続人全員の署名・押印や印鑑証明書を求められるのが一般的 |
以下、分野ごとに中身を見ていきます。各手続きの案内は2026年10月時点のもので、変更されることがあります。
不動産・登記でオンラインにできること
登記事項証明書は家から請求できる
法務局の主な手続きは、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」から行えます。相続した不動産の登記事項証明書は、オンラインで請求して郵送で受け取ることができ、窓口で請求するより手数料が安くなります。内容を確認するだけなら、「登記情報提供サービス」で登記情報を画面上で見る方法もあります。
所有不動産記録証明はオンライン請求に対応
2026年2月から、亡くなった方が登記名義人になっている不動産を一覧にして証明してもらえる「所有不動産記録証明制度」が始まりました。全国の法務局に、書面(郵送可)またはオンラインで請求できます。法務省の案内では、手数料は検索条件1件・1通あたり、書面請求が1,600円、オンライン請求が1,500円(郵送で受け取り)または1,470円(窓口で受け取り)です。
相続登記は「オンライン申請+書類の郵送」
相続登記もオンラインで申請できますが、法務局は「相続の登記をオンラインで完結することはできません」と明記しています。理由は、相続登記に必要な戸籍の証明書が、市区町村長の電子署名つきの電子文書では発行されていないためです。オンライン申請の流れは次のとおりです。
- 事前準備:マイナンバーカード(電子証明書)、ICカードリーダライタ、申請用総合ソフト、申請者情報の登録
- 申請情報の送信:ソフトで申請書を作り、電子署名をして送信
- 登録免許税の納付:インターネットバンキングなどによる電子納付か、収入印紙
- 書面の提出:戸籍や遺産分割協議書などの原本を、受付の日から2日以内(初日・休日などを除く)に法務局に届くよう郵送または持参
マイナンバーカードの電子証明書で申請すると、住民票の写しの提出を省略できるという利点があります。一方、ソフトの準備や操作に慣れていない場合は、書面で申請したほうが早いこともあります。自分で申請する手順や法務局の相談窓口の使い方は相続登記を自分でやる方法で紹介しています。
相続人申告登記はブラウザから手続きできる
遺産分割の話し合いが長引き、3年の登記期限に間に合わないときに使える「相続人申告登記」は、オンラインとの相性がよい手続きです。法務省の案内では、押印や電子署名が不要で、専用ソフトを使わずにWebブラウザ上の「かんたん登記・供託申請」から申し出られるとされています。登録免許税もかかりません。制度の中身は相続人申告登記とはをご覧ください。
法定相続情報一覧図は窓口か郵送で
戸籍の束の代わりに使える法定相続情報一覧図は、法務局の案内では、登記所の窓口か郵送で申し出る手続きです(2026年10月時点で、オンラインでの申出の案内はありません)。一方で、2024年4月からは、相続登記の申請書に一覧図の写しの右上にある法定相続情報番号を書けば、一覧図の写しの添付を省略できるようになりました。この番号は不動産登記以外の手続きでは使えません。作り方は法定相続情報一覧図とはで解説しています。
税金の申告でオンラインにできること
準確定申告はe-Taxで出せる
亡くなった方の所得税の申告(準確定申告)は、2020年分以後の申告からe-Taxに対応しています。ただし、国税庁の確定申告書等作成コーナーでは準確定申告書を作れないため、e-Taxソフトなどを使います。送信は相続人の代表者が自分のIDと電子証明書で行い、相続人が1人でも付表をあわせて送ります。相続人が2人以上いる場合は、各相続人が内容を確認して署名した「確認書」をPDFにして送信する必要があります。
相続税の申告もe-Taxで出せる
相続税の申告は、2019年1月1日以降に相続などで財産を取得した人の申告からe-Taxの対象です。注意したいのは次の点です。
- 作成はe-Taxソフトか民間の税務会計ソフトで行う。確定申告書等作成コーナーやe-Taxソフト(WEB版)では相続税の申告書を作れない
- e-Taxソフトは、画面の案内に従えば税額が自動計算されるものではなく、自分で計算した金額を入力するしくみ
- 本人が送信する場合は、財産を取得した人ごとに申告書を送信する(ほかの相続人の分をまとめて送ることはできない)。税理士が代理で送信する場合は、複数人の申告をまとめて送れる
- 添付書類はPDFのイメージデータで送れる。2025年4月からはグレースケールで読み取ったデータも認められている
- 本人確認書類の写しの添付は省略できる
e-Taxに対応したことで提出の手間は減りましたが、財産の評価や税額の計算が簡単になったわけではありません。自分で申告できるかの判断は相続税を自分で申告する方法を参考にしてください。
まだ紙・対面が中心の手続き
戸籍は紙の証明書が基本
2024年3月からは、最寄りの市区町村の窓口で全国の戸籍をまとめて請求できる「広域交付」が始まり、戸籍集めは大きく楽になりました。ただし、広域交付は本人が窓口に行く必要があり、郵送や代理人では請求できません。マイナポータルを通じて戸籍の情報を行政機関に送る「戸籍電子証明書」のしくみもありますが、法務省が例に挙げるのはパスポートの申請など、国が指定した行政手続きです。相続登記や銀行の手続きには、紙の戸籍証明書(または法定相続情報一覧図の写し)を出すのが今も基本です。
相続放棄は家庭裁判所に書面で
相続放棄は、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所に申述書を提出して行います。申述書をオンラインで出すしくみは裁判所の案内にはなく、オンライン化されているのは、連絡用の郵便料を保管金としてインターネットバンキングなどで納める電子納付です。
預貯金の手続きは書類の原本が中心
全国銀行協会の案内では、預金の相続手続きには、遺産分割協議書(相続人全員の署名・捺印のあるもの)、戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書などが求められるのが一般的です。必要書類は金融機関によって異なりますが、実印と印鑑証明書が必要な手続きは、原本のやりとりが残ると考えておきましょう。
オンラインで手続きするときの注意
- 公式サイトから入る:登記・供託オンライン申請システムやe-Taxは、法務省・国税庁のページからたどってアクセスします
- 使うのは相続人自身のマイナンバーカード:電子署名には申請する人のカードが必要です。電子証明書には有効期限があるため、事前に確認しておきます
- ご本人のIDでログインしない:亡くなった方のマイナンバーカードの電子証明書は死亡で使えなくなります。亡くなった方のIDやパスワードで各種サービスにログインして手続きしようとするのはやめましょう
- 期限から逆算する:オンラインでも、書類の郵送や補正の対応には日数がかかります。相続放棄の3か月や相続税の10か月など、期限に余裕を持って進めます
専門家への相談も、ウェブ会議で受け付けている事務所があります。相談前の準備や注意点は相続のオンライン相談で紹介しています。
よくある質問
Q. 相続手続きをすべてオンラインで終わらせることはできますか?
2026年10月時点では難しいのが実情です。登記の申請や税金の申告は送信できても、戸籍の証明書や遺産分割協議書、印鑑証明書などの原本を郵送したり持参したりする場面が残ります。
Q. 相続税を自分でe-Taxで申告できますか?
制度上はできます。ただし、e-Taxソフトは税額を自動計算しないため、財産の評価や計算は自分で行う必要があります。財産に不動産が多いなど判断が難しい場合は、税理士への相談も検討してください。
Q. 遠方の実家の相続登記も、オンラインで申請できますか?
できます。登記は不動産の所在地を管轄する法務局に申請しますが、オンライン申請なら現地に行く必要はありません。戸籍などの書面は、郵送で法務局に送ります。
Q. 法定相続情報一覧図はオンラインで取れますか?
法務局の案内では、申出は登記所の窓口か郵送です。郵送なら、返信用の封筒と切手を同封すれば一覧図の写しも郵送で受け取れます。
まとめ
相続手続きのオンライン化は、登記事項証明書や所有不動産記録証明の請求、相続登記と相続人申告登記の申請、準確定申告と相続税のe-Taxまで広がっています。一方で、戸籍は紙の証明書が基本で、相続放棄は家庭裁判所に書面で、預貯金は実印と印鑑証明書の原本が必要です。「送信はオンライン、証明書類は郵送」という組み合わせで考えると、窓口に行く回数を大きく減らせます。どの手続きも、まず亡くなった方の財産と相続人がそろっていることが出発点です。
※本記事は2026年10月時点の法令と法務省・法務局・国税庁・裁判所などの案内をもとにした一般的な解説です。オンラインで利用できる手続きや手数料は変更されることがあります。実際の手続きは各窓口に、税額や登記の内容は税理士・司法書士などの専門家にご確認ください。
法務局「オンライン申請のご案内」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/category_00003.html
法務局「不動産の所有者が亡くなった(相続の登記をオンライン申請したい方)」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/fudosan_online03.html
法務省「所有不動産記録証明制度について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00740.html
法務省「相続人申告登記について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html
法務局「『法定相続情報証明制度』について」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000013.html
法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html
法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html
国税庁「所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/jyunkaku/index.htm
国税庁「相続税申告書の代理送信等に関するQ&A」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0019009-058.pdf
e-Tax「申告書はどのようにして作成・送信するのですか(相続税)」https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/souzoku/10.htm
e-Tax「添付書類のイメージデータ送信について、送信可能なファイル数とデータ容量に制限はありますか」https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/souzoku/24.htm
裁判所「相続の放棄の申述」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
全国銀行協会「預金相続の手続に必要な書類」https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-f/7705/






