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遺言書を書き終えてほっとしたあと、多くの方が迷うのが「このことを家族に話すべきか」です。結論から言うと、遺言の内容まで家族に話すかどうかは自由ですが、「遺言があること」と「どこにあるか」は、もしものときに確実に分かる状態にしておくべきです。見つからなければ、遺言は書かなかったのと同じになってしまうからです。法務局の自筆証書遺言書保管制度を使えば、亡くなったあとに、あらかじめ指定した人へ通知が届く仕組みもあります。この記事では、伝える範囲の考え方と、遺言の種類ごとの「見つけてもらう方法」、伝えるときのコツを整理します。
遺言書を家族に伝えるかは「3つの選択肢」で考える
遺言を書いたことを家族に知らせる法律上の義務はありません。伝え方は、大きく次の3つに分けられます。
| 選択肢 | よい点 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 何も伝えない | 生前の関係に波風が立たない。気兼ねなく書ける | 見つからない、見つかっても発見が遅れる、自宅保管なら隠されたり捨てられたりするおそれ |
| 存在と保管場所だけ伝える | 確実に見つけてもらえる。内容をめぐる生前の衝突は避けられる | 「何が書いてあるのか」と気にする家族もいる |
| 内容まで伝える | 理由を自分の言葉で説明でき、家族も心の準備ができる | 不満を持つ家族との関係が生前にぎくしゃくすることがある |
多くの家庭で現実的なのは、真ん中の「存在と保管場所だけ伝える」です。そのうえで、家族の関係が良好で、分け方に偏りがある場合などは、内容と理由まで話しておくと、あとの受け止め方が大きく変わります。
遺言の種類別:確実に見つけてもらう方法
「見つけてもらえるか」は、遺言をどこに保管するかでほぼ決まります。
| 遺言の種類と保管先 | 家族が見つける方法 | 家庭裁判所の検認 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言(自宅などで保管) | 家族が探すしかない | 必要 |
| 自筆証書遺言(法務局で保管) | 指定者通知・関係遺言書保管通知、証明書の請求 | 不要 |
| 公正証書遺言 | 公証役場の遺言検索(無料) | 不要 |
自宅で保管する自筆証書遺言
自宅の金庫や引き出しに保管した遺言は、家族が気づかなければそれまでです。見つかった場合も、保管していた人や見つけた相続人は、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を受けなければならず、封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人などの立会いのもとでしか開封できません(民法1004条)。自宅保管にするなら、少なくとも保管場所を信頼できる家族に伝えておくことが欠かせません。検認の流れは遺言書の検認とはで解説しています。
法務局で保管する自筆証書遺言(死亡時の通知あり)
法務局の自筆証書遺言書保管制度は、本人が法務局に出向いて申請し、遺言書の原本を預ける制度です。手数料は遺言書1通につき3,900円で、保管された遺言書は検認が不要になります。この制度には、家族に知らせるための通知が2種類あります。
| 通知 | 届く相手 | 届くタイミング |
|---|---|---|
| 指定者通知 | 遺言者があらかじめ指定した人(3名まで) | 法務局が戸籍の担当部局との連携で遺言者の死亡を確認したときなど |
| 関係遺言書保管通知 | 相続人・受遺者・遺言執行者など、すべての関係相続人等 | 関係相続人等のだれかが遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付を受けたとき |
また、相続人などは、法務局で「遺言書保管事実証明書」(1通800円)を請求し、自分に関係する遺言書が保管されているかを確認できます。
公正証書遺言
公正証書遺言は、原本が公証役場に保管されます。日本公証人連合会は、平成元年以降に作成された公正証書遺言の情報を管理しており、全国どの公証役場でも無料で検索を申し出られます。ただし、生前に照会できるのは遺言者本人だけで、亡くなった後に照会できるのは相続人などの利害関係人です。公証役場から家族へ自動で知らせが届くわけではないので、家族が「検索してみよう」と思えるよう、公正証書遺言を作ったことは伝えておくと安心です(公正証書遺言とは)。
遺言のことを伝えるときのコツ
誰に伝えるか
まず伝えたいのは、遺言執行者に指定した人と、手続きを中心になって進めそうな家族です。遺言執行者は遺言の内容を実現する役割を担うため、存在を知らなければ動けません(遺言執行者とは)。一部のきょうだいにだけ内容を話すと、話されなかった側が不信感を持つこともあるので、内容まで話すなら、できるだけ同じ場で、同じ説明をするのが無難です。
何を伝えるか
- 遺言を書いたこと、遺言の種類(自筆か公正証書か)
- 保管場所(自宅のどこか、どの法務局か、どの公証役場か)
- 遺言執行者を決めたなら、その人の名前と連絡先
- 相談した専門家がいれば、その連絡先
エンディングノートにこれらを書いておくのも一つの方法です。ただし、ノートそのものに法的な効力はなく、ノートが見つからなければ意味がないので、ノートの置き場所も家族と共有しておきます。
内容を伝えるなら「理由」もセットで
分け方だけを伝えると、少なく受け取る家族は「なぜ自分は」と感じがちです。「家を継いでもらうから」「介護で世話になったから」など、理由と気持ちを一緒に伝えると、受け止め方が変わります。口頭で話すのが難しければ、遺言の最後に付言事項として書き添える方法もあります(付言事項の書き方)。
内容を伝えたあとに気をつけたいこと
また、内容を話したことで、家族から「こう書き直してほしい」と求められることもあります。遺言は本人の意思で書くものです。迷うときは、家族の意見を聞いたうえで、時間をおいて自分で判断すれば十分です。偏った分け方にする場合は、兄弟姉妹以外の相続人に認められる遺留分にも配慮しておくと、あとの争いを避けやすくなります。
よくある質問
家族に内緒で法務局に遺言を預けても、亡くなったあとに伝わりますか?
保管の申請時に指定者通知を希望し、通知先を指定しておけば、法務局が死亡を確認したときなどに、その人へ遺言書が保管されていることが通知されます。希望しなかった場合でも、関係相続人等のだれかが閲覧や証明書の交付を受ければ、ほかの関係相続人等にも通知されます。
指定者通知の相手は家族でなければいけませんか?
2023年10月2日以降は、推定相続人・受遺者・遺言執行者などに限られず、3名まで指定できるようになりました。誰を指定できるかの細かな扱いは、申請先の法務局で確認してください。
遺言の内容を話したら、家族から反対されました。どうすればよいですか?
反対の理由を聞いてみると、分け方そのものより「理由を知らされていない」ことへの不満であることもあります。理由を説明し直す、付言事項を書き足す、必要なら内容を見直すなど、時間をかけて考えて構いません。最終的に決めるのは本人です。
家族が遺言の有無を調べる方法はありますか?
公正証書遺言は公証役場の遺言検索、法務局に預けた自筆証書遺言は遺言書保管事実証明書で確認できます。自宅保管の自筆証書遺言は、自宅や貸金庫を探すしかありません。調べ方は遺言書があるか分からないときで詳しく解説しています。
まとめ:内容は選べても「存在と保管場所」は必ず届く形に
遺言を書いたことを家族に伝えるかどうか、内容まで話すかどうかに正解はありません。ただ、存在と保管場所が伝わらなければ、遺言は役目を果たせません。法務局の保管制度なら指定者通知で最大3名に知らせることができ、公正証書遺言なら公証役場で検索できます。内容を伝えるなら理由も一緒に、書き換えたら伝え直す。この2点を押さえておけば、遺言に込めた想いは届きやすくなります。
※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関の案内をもとにした一般的な解説です。遺言の内容や伝え方についての個別の判断は、法務局・公証役場や専門家にご確認ください。
法務省「自筆証書遺言書保管制度」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
法務省「自筆証書遺言書保管制度 通知」https://www.moj.go.jp/MINJI/10.html
法務省「自筆証書遺言書保管制度 手数料一覧」https://www.moj.go.jp/MINJI/09.html
日本公証人連合会「遺言」https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02
e-Gov法令検索「民法」第1004条・第1022条・第1023条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
e-Gov法令検索「法務局における遺言書の保管等に関する法律」第4条・第9条〜第11条 https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC0000000073






