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「実家の広い土地を、兄と私で半分ずつ相続したい」——そんなときに使われるのが分筆(ぶんぴつ)です。登記上は1つの土地を、測量して複数の土地に分け、それぞれを別の相続人が単独で取得します。結論から言うと、相続での分筆は①測量と境界の確認→②分筆の登記→③分筆後の土地ごとに遺産分割・相続登記の順に進めるのが一般的です。ただし、分け方しだいで道路に接しない土地ができて建物が建てられなくなったり、相続税の評価で分割が認められなかったりすることがあります。この記事では、相続した土地の分筆の流れ、費用の内訳、分け方の注意点を、法令と国の資料をもとに解説します。
分筆とは:登記上の1つの土地を複数に分けること
土地は、登記上「筆(ふで)」という単位で数えます。分筆は、登記上一筆の土地を、二筆以上の土地に分ける登記です。分筆すると、それぞれの土地に新しい地番が付き、別々に売ったり、担保に入れたり、相続したりできるようになります。
| 分筆して単独所有 | 分筆せずに共有 | |
|---|---|---|
| 売却・建築 | 自分の土地だけで決められる | 売却や建て替えなどに共有者の同意が必要 |
| 次の相続 | 自分の土地だけが自分の相続人に引き継がれる | 持分が相続され、共有者が増えていく |
| 手間と費用 | 測量・登記の費用と時間がかかる | 当面の費用は少ない |
共有は先送りの手段としては手軽ですが、後で解消するのは大変です。共有を避けたい場合の選択肢の一つが分筆です(共有不動産の解消方法)。
分筆と遺産分割・相続登記の順番
不動産登記法39条1項は、分筆の登記は表題部所有者または所有権の登記名義人以外の者は申請できないと定めています。ただし同法30条により、登記名義人が亡くなった場合は、相続人が分筆などの表示に関する登記を申請できます。つまり、亡くなった方の名義のままでも、相続人が分筆の登記を申請できるということです。
実務では、次の流れで進めるのが一般的です。
| 順番 | やること | 主な担い手 |
|---|---|---|
| 1 | 相続人全員で「分筆して誰がどこを取得するか」の方針を決める | 相続人 |
| 2 | 資料調査・測量・隣地との境界確認 | 土地家屋調査士 |
| 3 | 分筆線を決め、分筆の登記を申請する(分筆後の地番が決まる) | 土地家屋調査士 |
| 4 | 分筆後の地番を書いた遺産分割協議書を作り、全員が署名・実印で押印する | 相続人(司法書士が作成を支援) |
| 5 | 分筆後の土地ごとに相続登記を申請する | 相続人または司法書士 |
相続登記は、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が義務です。分筆に時間がかかりそうなときは、期限も意識して早めに着手しましょう。
分筆の流れ:測量から登記完了まで
①資料の調査
土地家屋調査士が、登記記録、地図・公図、地積測量図、近隣の測量資料などを集めます。相続人は、手元にある権利証、購入時の測量図、隣地との境界確認書などを探して渡すとスムーズです。
②測量と境界の確認
現地を測量し、隣地の所有者などと立ち会って境界を確認します。分筆の登記では、分筆前の土地を図示し、分筆線を明らかにして分筆後の各土地を表示した地積測量図を提出する必要があります(不動産登記規則78条)。地積測量図には、筆界点の座標値や境界標の表示なども記録します(同規則77条)。境界の確認の詳しい流れは相続と土地の境界・測量で解説しています。
③分筆線を決める
面積だけでなく、道路への接し方、形、日当たり、水道・ガスの引き込みなどを考えて線を引きます。この段階で、後述する建築や税金の注意点を確認しておくことが大切です。
④分筆の登記の申請
土地を管轄する法務局に分筆の登記を申請します。土地家屋調査士は、表示に関する登記の申請代理を業務としています(土地家屋調査士法3条)。登記が完了すると、分筆後の土地にそれぞれ地番が付きます。
⑤遺産分割協議書と相続登記
分筆後の地番と地積を正確に書いた遺産分割協議書を作り、その内容で各相続人が相続登記をします。協議書の書き方は遺産分割協議書の作り方を参照してください。
分筆にかかる費用の内訳
| 費用の項目 | 金額の決まり方 |
|---|---|
| 測量・境界確定の費用 | 土地家屋調査士の報酬。土地の広さや形、隣地の数、道路などとの境界確認の要否で大きく変わる |
| 分筆の登記の登録免許税 | 分筆後の土地の個数×1,000円(登録免許税法 別表第一)。2つに分ければ2,000円 |
| 分筆の登記の申請代理の報酬 | 土地家屋調査士の報酬 |
| 相続登記の登録免許税 | 原則として不動産の価額(固定資産税評価額)×0.4% |
| 相続登記の司法書士報酬 | 依頼する場合。事務所ごとに異なる |
| 境界標の設置など | 必要に応じて |
登録免許税は法律で決まっていますが、専門家の報酬は事務所や土地の状況で差が大きいため、事前に見積もりを取りましょう。相続登記の登録免許税の計算は相続登記の登録免許税はいくら?で詳しく解説しています。
分け方で失敗しないための注意点
①道路に2m以上接しない土地を作らない
建築基準法43条1項は、建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならないと定めています。奥の土地が道路に接しないように分けると、その土地には原則として建物を建てられず、価値が大きく下がります(再建築不可物件の相続)。旗竿状に通路部分を設けるなら、幅を2m以上確保します。
②敷地面積の最低限度を確認する
用途地域に関する都市計画で建築物の敷地面積の最低限度が定められている地域では、それを下回る敷地には原則として建物を建てられません(建築基準法53条の2)。小さく分けすぎないよう、市区町村で確認しましょう。
③相続税の評価では「不合理な分割」が否認される
国税庁の財産評価基本通達7-2は、宅地の分割が親族間で行われた場合に、分割後の画地が宅地として通常の用途に使えないなど、その分割が著しく不合理であると認められるときは、分割前の画地を1画地として評価するとしています。評価を下げる目的だけの不自然な分け方は、相続税の計算上認められないことがあります。相続税の申告が必要なら、分け方を決める前に税理士に相談しましょう。
④価値の差はお金で調整する
同じ面積でも、道路に面した土地と奥の土地では価値が違います。面積を等分するのではなく、価値の差を他の財産や代償金で調整する方法もあります。
⑤農地や市街化調整区域などは別の手続きに注意
地目が田や畑の土地や、建築が制限される区域の土地では、分筆後の利用に別の法律の制限がかかることがあります。農地の相続については農地の相続も参照してください。
分筆以外の分け方も比べる
土地を物理的に分ける方法がいつも最適とは限りません。
- 代償分割:一人が土地全体を取得し、他の相続人にお金を払う
- 換価分割:土地を売って、代金を分ける
- 現物分割(分筆):土地を分けて、それぞれが取得する
土地の広さや形、相続人が住む予定か売る予定か、代償金を払える人がいるかで向く方法は変わります。3つの方法の違いは遺産分割の3つの方法で解説しています。
よくある質問
分筆の登記は自分でできますか?
法律上は相続人が自分で申請することもできますが、分筆の登記には座標値などを記録した地積測量図が必要で、測量と境界の確認が前提になります。実際には土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。
相続人の一人が分筆に反対しています。
分筆の登記の申請は持分の過半数でできる場合がありますが、誰がどの土地を取得するかは遺産分割で全員が合意しなければ決まりません。話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の遺産分割調停を利用することになります。
分筆すると相続税は安くなりますか?
土地の評価は利用の単位ごとに行うため、分け方によって評価額が変わることはあります。ただし、通常の用途に使えない土地を作るような著しく不合理な分割は、分割前の土地として評価されます。節税を目的に分け方を決めるのではなく、実際の利用を前提に検討しましょう。
分筆には隣地の所有者の立会いが必要ですか?
分筆するには、もとの土地の境界を確認したうえで地積測量図を作る必要があるため、通常は隣地の所有者などとの境界確認が求められます。隣地の所有者が分からない場合などの対応は、土地家屋調査士に相談してください。
まとめ:分筆は「分け方の合意→測量→登記」の順に
分筆は、登記上1つの土地を複数に分けて、相続人がそれぞれ単独で取得する方法です。亡くなった方の名義のままでも相続人が分筆の登記を申請でき、分筆後の地番で遺産分割協議書を作って相続登記をします。費用は測量・登記の専門家報酬と、分筆後の個数×1,000円の登録免許税などです。道路への接し方、敷地面積の最低限度、相続税評価の「不合理な分割」に注意し、代償分割や換価分割とも比べながら、土地家屋調査士・司法書士・税理士に相談して進めましょう。
※本記事は2026年10月時点の法令と国の資料をもとにした一般的な解説です。分筆できるか、どのように分けるのがよいか、税金の扱いは、土地の状況や個別の事情によって異なります。具体的なご判断は、土地家屋調査士・司法書士・税理士などの専門家や法務局にご確認ください。
e-Gov法令検索「不動産登記法」第30条・第39条 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
e-Gov法令検索「不動産登記規則」第77条・第78条 https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
e-Gov法令検索「登録免許税法」別表第一 https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(PDF)https://www.moj.go.jp/content/001444020.pdf
e-Gov法令検索「建築基準法」第43条・第53条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
国税庁「財産評価基本通達 第2章 土地及び土地の上に存する権利(7-2 評価単位)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/01.htm
e-Gov法令検索「土地家屋調査士法」第3条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000228
法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html






