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家族の働き手が亡くなったとき、残された家族の暮らしを支える公的な制度が遺族年金です。ただ、「自分は対象なのか」「いくらくらい受け取れるのか」は、亡くなった方が入っていた年金の種類と家族構成によって大きく変わります。結論から言うと、遺族年金には国民年金から出る「遺族基礎年金」と、厚生年金から出る「遺族厚生年金」の2種類があります。遺族基礎年金は子のある配偶者か子が対象で、遺族厚生年金は子のない配偶者や父母なども対象になり得ます。さらに2025年の年金制度改正により、2028年4月から遺族厚生年金の見直しが段階的に始まります。この記事では、受給要件・対象者・年金額・手続きと、改正で何が変わるのかを、日本年金機構と厚生労働省の資料をもとに整理します。
遺族年金とは:2種類のしくみを比べる
遺族年金は、年金の加入者や受給者が亡くなったとき、その方に生計を維持されていた遺族に支給される年金です。会社員や公務員だった方が亡くなった場合は、要件を満たせば両方をあわせて受け取れます。
| 項目 | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 |
|---|---|---|
| 出どころ | 国民年金 | 厚生年金保険 |
| 受け取れる遺族 | 子のある配偶者、子 | 配偶者、子、父母、孫、祖父母のうち最も順位が高い人 |
| 年金額 | 定額+子の加算 | 亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3 |
| 子がいない配偶者 | 対象外 | 対象になり得る(年齢などの条件あり) |
「生計を維持されていた」とは
亡くなった当時に生計を同じくしていて(同居、または別居でも仕送りを受けていた・健康保険の被扶養者だったなど)、原則として年収850万円未満の人が該当します。死亡当時は850万円以上でも、おおむね5年以内に退職などで850万円未満になると認められる場合は対象になります。なお、ここでの配偶者には、婚姻届を出していない内縁の配偶者も含まれます。内縁の配偶者は民法上の相続人にはなりませんが(事実婚・内縁の配偶者と相続)、遺族年金では対象になり得る点が異なります。子は実子か養子で、養子縁組をしていない配偶者の連れ子は含まれません。
遺族基礎年金の受給要件と年金額
亡くなった方の要件
次のいずれかに当てはまる方が亡くなったときに支給されます。
- 国民年金の被保険者である間に亡くなったとき
- 国民年金の被保険者だった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住んでいた方が亡くなったとき
- 老齢基礎年金の受給資格(加入期間などが25年以上)を満たした方が亡くなったとき
1と2には保険料の納付要件があり、加入期間の3分の2以上の期間で保険料を納めている(免除を含む)ことが必要です。ただし、亡くなった日が2036年(令和18年)3月末までで65歳未満の場合は、直近1年間に未納がなければよいという特例があります。
受け取れる遺族と年金額(令和8年4月分から)
対象は「子のある配偶者」または「子」です。子とは、18歳になった年度の3月31日までの方、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある方をいいます。
| 受け取る人 | 年額 |
|---|---|
| 子のある配偶者(昭和31年4月2日以後生まれ) | 847,300円+子の加算額 |
| 子のある配偶者(昭和31年4月1日以前生まれ) | 844,900円+子の加算額 |
| 子が受け取るとき | 847,300円+2人目以降の子の加算額を、子の数で割った額 |
子の加算額は、1人目・2人目が各243,800円、3人目以降が各81,300円です。現在の制度では、子のある配偶者が受け取っている間や、子が生計を同じくする父または母と暮らしている間は、子には支給されません(この点は2028年4月から見直されます。後述)。
遺族厚生年金の受給要件と年金額
亡くなった方の要件
- 厚生年金保険の被保険者である間に亡くなったとき
- 被保険者期間中に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に亡くなったとき
- 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が亡くなったとき
- 老齢厚生年金の受給資格(加入期間などが25年以上)を満たした方が亡くなったとき
1と2には、遺族基礎年金と同じ保険料の納付要件があります。
受け取れる遺族の順位と条件
| 順位 | 遺族 | 主な条件(現行制度) |
|---|---|---|
| 1 | 子のある配偶者・子 | 子は18歳到達年度末まで(障害がある場合は20歳未満) |
| 2 | 子のない配偶者 | 30歳未満の妻は5年間のみ。夫は55歳以上に限り、受給は60歳から |
| 3 | 父母 | 55歳以上に限り、受給は60歳から |
| 4 | 孫 | 18歳到達年度末まで(障害がある場合は20歳未満) |
| 5 | 祖父母 | 55歳以上に限り、受給は60歳から |
年金額と加算
年金額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。在職中の死亡などで、厚生年金の加入期間が300月(25年)未満のときは、300月あるものとして計算します。65歳以上で自分の老齢厚生年金を受け取れる方は、自分の老齢厚生年金が優先して全額支給され、遺族厚生年金はその額に相当する分が支給停止になります。
夫が亡くなったとき40歳以上65歳未満で、生計を同じくする子がいない妻などには、65歳になるまで中高齢寡婦加算(年額635,500円、令和8年度)が上乗せされます。昭和31年4月1日以前生まれの妻には、65歳以降に経過的寡婦加算がつく場合があります。
2025年の年金制度改正で何が変わる?(2028年4月から段階的に)
2025年(令和7年)に成立した年金制度改正法で、遺族年金の見直しが決まりました。施行は2028年(令和10年)4月で、遺族厚生年金の男女差の解消は、男性は2028年4月から、女性は2028年4月から20年かけて段階的に実施されます。
遺族厚生年金:子のない配偶者は「原則5年の有期給付」に
| 項目 | 現在 | 見直し後 |
|---|---|---|
| 子のない妻 | 30歳未満で死別は5年間、30歳以上は無期 | 60歳未満で死別は原則5年間(対象年齢を段階的に引き上げ) |
| 子のない夫 | 55歳未満で死別は給付なし、55歳以上は60歳から無期 | 60歳未満で死別は原則5年間(2028年4月から) |
| 60歳以上で死別 | 無期給付(現行どおり) | |
- 女性の対象は段階的:施行直後に5年の有期給付となるのは、18歳年度末までの子がいない、2028年度末時点で40歳未満の方です。その後、約20年かけて対象年齢が引き上げられます
- 年金額は増える:有期給付には「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の約1.3倍になります。年収850万円未満という収入要件もなくなります
- 5年で一律に終わるわけではない:障害の状態にある方や収入が十分でない方は、5年経過後も最長65歳まで給付が続きます(継続給付)。厚生労働省は、単身で就労収入が月額約10万円以下なら継続給付が全額支給されると説明しています
- 中高齢寡婦加算:2028年4月1日以降に新しく発生する加算額は、2053年度(令和35年度)まで25年かけて段階的に縮小されます。すでに受け取り始めた加算は65歳まで変わりません
遺族基礎年金:子が受け取りやすくなる
2028年4月から、父または母と生計を同じくしていても、子が遺族基礎年金を受け取れるようになります。たとえば、受給していた親が再婚した場合や、親の収入が要件を超えている場合、離婚後に子を育てていた親が亡くなり、もう一方の親に引き取られた場合などです。また、子の加算額は子1人あたり281,700円に見直され、3人目以降も同じ額になる予定です(厚生労働省の改正法概要資料に示された額)。
遺族年金の請求手続き
窓口と必要書類
遺族年金は自分で請求しないと受け取れません。遺族基礎年金の請求書は、住所地の市区町村役場、年金事務所、街角の年金相談センターに備え付けられています。厚生年金に加入していた方の遺族は、年金事務所または街角の年金相談センターで相談するのが確実です。
- 年金請求書
- 戸籍謄本、または法定相続情報一覧図の写し(マイナンバーの記入で省略できる場合あり)
- 世帯全員の住民票の写し・亡くなった方の住民票の除票
- 請求する方の収入が分かる書類(所得証明書など)
- 死亡診断書のコピーまたは死亡届の記載事項証明書
- 受取口座の通帳など
戸籍謄本や住民票は、受給権が発生した日以降で、提出日から6か月以内に交付されたものが必要です。戸籍の集め方は相続の戸籍の集め方、戸籍の束の代わりに使える書類は法定相続情報一覧図とはで解説しています。
時効と税金
遺族年金を受ける権利は、支給事由が生じた日の翌日から5年で時効により消滅します。また、遺族年金には所得税などの税金はかかりません(国民年金法25条・厚生年金保険法41条で、遺族年金を基準に課税することが禁じられています)。遺族年金は相続人が分け合う遺産とも別のものです(相続財産の種類)。
年金を受け取っていた方が亡くなった場合は、未支給年金の請求もあわせて行います(死亡後の年金手続き)。国民年金だけに加入していた方の遺族には、寡婦年金や死亡一時金が出る場合もあります。
よくある質問
Q. 子どもがいない妻は遺族基礎年金をもらえませんか?
遺族基礎年金は「子のある配偶者」か「子」が対象のため、子がいない場合は受け取れません。亡くなった夫が厚生年金に加入していた場合は、遺族厚生年金の対象になり得ます。
Q. 2028年の改正で、今もらっている遺族年金は減りますか?
厚生労働省の説明では、すでに遺族厚生年金を受け取っている方は見直しの影響を受けません。見直しの対象は、2028年4月以降に受給権が発生する方のうち、条件に当てはまる方です。
Q. 再婚したら遺族年金はどうなりますか?
受給している配偶者が婚姻(内縁関係を含む)すると、受給権はなくなります。遺族基礎年金は14日以内、遺族厚生年金は10日以内に、年金事務所などへ失権の届出が必要です。
Q. 自分がいくら受け取れるか知りたいです。
遺族厚生年金の額は、亡くなった方の加入記録によって変わります。年金事務所や街角の年金相談センター(予約制)で、加入記録をもとに確認してもらうのが確実です。
まとめ
遺族年金には、子のある配偶者・子が対象の遺族基礎年金と、配偶者・子・父母などが対象の遺族厚生年金があります。どちらも亡くなった方の加入状況と保険料の納付要件、遺族の生計維持(原則年収850万円未満)などで受け取れるかが決まり、請求しないと支給されません(時効5年)。2028年4月からは、子のない60歳未満の配偶者の遺族厚生年金が原則5年の有期給付(加算で増額・継続給付あり)になるなどの見直しが段階的に始まります。自分のケースに当てはめるときは、年金事務所で確認しましょう。
※本記事は2026年10月時点の法令と、日本年金機構・厚生労働省の公表情報にもとづく一般的な解説です。年金額は令和8年度の額で、毎年度改定されます。2028年4月施行の見直しは、今後公表される政省令や案内で細部が定まる場合があります。受給の可否や金額は、年金事務所にご確認ください。
日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html
日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html
日本年金機構「遺族基礎年金を受けられるとき」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/izoku/seikyu/20140617-01.html
日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-3.pdf
日本年金機構「年金の時効」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/kyotsu/shikyu/20140421-01.html
厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00020.html
厚生労働省「年金制度改正法の主な改正内容」https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001537487.pdf
厚生労働省「遺族厚生年金の見直しに対して寄せられている指摘への考え方」https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001499009.pdf
e-Gov法令検索「国民年金法」(25条・37条・37条の2)https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141
e-Gov法令検索「厚生年金保険法」(41条・58条・59条)https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115






