相続の手続き

自動車の相続・名義変更|普通車と軽自動車の必要書類の違い

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「父の車、名義変更しないと乗ったり売ったりできないの?」——自動車も、亡くなった人の財産として相続の対象です(相続財産の種類)。結論から言うと、普通車(登録自動車)は運輸支局等、軽自動車は軽自動車検査協会で手続きし、必要書類は大きく違います。普通車は原則として相続人全員の実印を押した遺産分割協議書などが必要ですが、車の査定額が100万円以下なら、引き継ぐ人1人の申立書で済む方法もあります。軽自動車は、戸籍謄本などで相続関係が確認できれば、手数料無料で名義を変えられます。この記事では、国土交通省と軽自動車検査協会の公式案内をもとに、手続きの違いと注意点を整理します。

まず決めること:誰が引き継ぐか・乗るか手放すか

自動車は、遺言がなければ相続人全員の共有の財産になり、誰が引き継ぐかは遺産分割で決めます(遺産分割協議書の作り方)。手続きに入る前に、次の点を確認しておきましょう。

  • 車検証の「所有者」欄:亡くなった人の名前か、ローン会社・販売店の名前か
  • 普通車か軽自動車か:ナンバープレートが黄色(自家用)なら軽自動車
  • 乗り続けるか、売るか、廃車にするか
  • 相続放棄の可能性:借金が多く放棄を考えているなら、車を売る・廃車にするのは待つ
放棄を考えている間は車を処分しない相続財産を処分すると、相続を単純承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなります(民法921条)。車を売る、廃車にする、名義を自分に変えて乗り始めるといった行動は、放棄するかどうか決めてからにしてください(相続放棄の手続き)。

普通車と軽自動車の手続きの違い(一覧)

項目 普通車(登録自動車) 軽自動車
手続き先 新しい使用の本拠の位置を管轄する運輸支局・自動車検査登録事務所 新しい使用の本拠の位置を管轄する軽自動車検査協会の事務所・支所
手続きの名前 移転登録 自動車検査証記録事項の変更
相続関係の書類 戸籍謄本等または法定相続情報一覧図の写し 戸籍謄本等または法定相続情報一覧図(コピー可)
誰が引き継ぐかを示す書類 遺産分割協議書(相続人全員の実印)など。査定100万円以下なら申立書も可 協会の案内上は求められていない
印鑑証明書 新所有者のもの(発行から3か月以内) 不要(住所の証明として住民票の写しか印鑑証明書のどちらか1点)
車庫証明 使用の本拠の位置が変わり、証明が必要な地域なら必要 協会の手続きには不要。地域によっては後で警察署への届出が必要
手数料 登録手数料(手数料納付書で納める) 無料

普通車の相続による名義変更(移転登録)

普通車は、所有者が変わったとき、新しい所有者がその事由があった日から15日以内に移転登録を申請することになっています(道路運送車両法13条)。相続では、誰が引き継ぐか決まるまでに時間がかかるのが普通なので、遺産分割がまとまったら早めに手続きしましょう。

1人が引き継ぐ場合の主な必要書類

国土交通省の「自動車登録業務等実施要領」では、1人が相続する場合の提出書類として、次のものが挙げられています。

  • 移転登録申請書(新所有者が直接申請する場合は実印を押す)と、手数料納付書
  • 誰が引き継ぐかを示す書類(次のいずれか)
    • 相続人全員の実印を押した遺産分割協議書
    • 遺言書(公正証書遺言以外は家庭裁判所の検認済みのもの)、または法務局の遺言書情報証明書
    • 遺産分割の調停調書・審判書など
    • 引き継ぐ人の実印を押した遺産分割協議成立申立書(査定額100万円以下の場合)
  • 戸籍謄本等または法定相続情報一覧図の写し:亡くなったことと、相続関係が分かるもの(法定相続情報一覧図とは)
  • 新所有者の印鑑証明書(発行から3か月以内)
  • 自動車検査証(車検証):有効期間のあるもの
  • 自動車保管場所証明書(車庫証明):使用の本拠の位置が変わり、証明が必要な地域の場合(証明の日からおおむね1か月以内)
  • 代理人が申請する場合は新所有者の委任状、管轄が変わる場合はナンバープレート

遺産分割協議書を添付する場合、戸籍は「亡くなった人と相続人全員の関係」がすべて分かるものが必要です。書き方の様式と記載例は、国土交通省の自動車検査登録総合ポータルサイトで公開されています。

査定100万円以下なら「遺産分割協議成立申立書」が使える

相続人全員の実印がなくても申請できる方法引き継ぐ車の価格が100万円以下であることを確認できる査定証(または査定価格が分かる資料の写し)を添付すれば、引き継ぐ人1人が実印を押す「遺産分割協議成立申立書」で申請できます。申立書には、遺産分割協議が成立した日と、申立書で申請することについてほかの相続人の同意を得た日を書きます。この場合、戸籍は「亡くなったことと、申請する人が相続人であること」が分かるもので足ります。遠方に住む相続人から実印や印鑑証明書を集める手間を減らせる、自動車の登録手続き特有のしくみです。

なお、この申立書は相続人の間で協議が成立していることが前提で、「問題が発生した場合は申請者が責任をもって処理する」旨を誓約する書面です。話し合いがついていないのに使うものではありません。

複数の相続人で共有する場合

遺産分割をせずに相続人全員の共有名義にすることもできます。この場合は、相続関係がすべて分かる戸籍謄本等と、新所有者になる相続人全員の印鑑証明書が必要です。共有のままだと、後で売るときにも全員の書類が必要になるため、乗る人が決まっているなら1人の名義にしておくほうが後の手続きは簡単です。

軽自動車の相続による名義変更

軽自動車は、軽自動車検査協会で「名義変更」の手続きをします。協会の案内では、相続の場合に必要な書類は次のとおりです。

  • 自動車検査証(車検証)の原本
  • 相続を確認できる書面:所有者が亡くなったことと、新しい所有者が相続人であることが分かる戸籍謄本等、または法務局の法定相続情報一覧図(いずれもコピー可。死亡診断書は原則使えない)
  • 新しい使用者の住所を証する書面:住民票の写し(マイナンバーの記載がないもの)か印鑑証明書のどちらか1点(発行から3か月以内)
  • 自動車検査証変更記録申請書(軽第1号様式)
  • 管轄が変わる場合はナンバープレート、本人以外が手続きする場合は申請依頼書

手数料は無料です。あわせて、協会に隣接する窓口で軽自動車税の申告をします。協会の手続きに車庫証明は不要ですが、地域によっては手続き後に警察署への届出が必要です。戸籍の集め方は相続の戸籍の集め方を参考にしてください。

売却・廃車するときの進め方

売却する場合

故人名義のままでは売れないため、いったん相続人の名義に変えてから売るのが一般的です。買取業者が名義変更を含めて手続きを代行することもあります。その場合も、遺産分割協議書や戸籍などの書類は相続人側で用意します。

廃車(永久抹消登録)にする場合

普通車をもう使わずに解体する場合、実施要領では、所有者が亡くなっているときの永久抹消登録は相続人のうち1人の申請でも受理し、相続による移転登録はしないとされています。その際は、亡くなったことと申請する人の相続関係が分かる戸籍謄本等を添付します。いったん相続人名義に移す手間が省けるので、廃車が決まっているなら運輸支局に確認してみましょう。

ローン・保険・税金の注意点

確認すること ポイント
ローンが残っている 車検証の所有者がローン会社や販売店なら、その車は相続人が自由に名義変更できない。ローンの残高と相続の扱いを所有者に問い合わせる。軽自動車も、所有者と使用者が違う場合は所有者の同意が必要
自動車保険(任意保険) 記名被保険者や車両所有者の変更、等級を引き継げるかどうかを保険会社に確認する
自賠責保険 名義変更後に保険会社で変更の手続きをする
自動車税・軽自動車税(種別割) 名義変更とあわせて、納税通知書の送り先などを都道府県・市区町村に確認する
相続税の評価 一般動産として、売買実例価額や精通者意見価格などを参考に評価する(財産評価基本通達129)。中古車の買取相場が目安になる

よくある質問

Q. 名義変更しないまま家族が乗り続けても大丈夫ですか?

普通車は所有者の変更から15日以内の移転登録が法律で求められています。名義が故人のままだと、車検の通知や税金の扱い、事故の際の保険の確認などで支障が出るおそれがあります。乗り続けるなら、遺産分割をして早めに名義を変えましょう。

Q. 査定額はどうやって確認すればいいですか?

遺産分割協議成立申立書を使う場合は、100万円以下であることが分かる査定証や査定価格の資料が必要です。中古車の販売・買取業者などに査定を依頼して書面をもらうのが一般的です。

Q. 遠方に住んでいて運輸支局に行けません。

委任状があれば代理人が申請できます。行政書士やディーラーに依頼する方法もあります。管轄は「新しい使用の本拠の位置」で決まるため、どの窓口になるかは国土交通省のサイトで確認できます。

まとめ

自動車の相続は、普通車なら運輸支局等で移転登録、軽自動車なら軽自動車検査協会で名義変更をします。普通車は遺産分割協議書(全員の実印)と新所有者の印鑑証明書などが必要ですが、査定100万円以下なら申立書で済ませる方法があります。軽自動車は戸籍謄本等と住所の証明があれば無料で手続きできます。廃車なら相続人1人で永久抹消できる場合もあります。相続放棄を考えている間は車を処分しないこと、ローンが残る車は所有者を確認することも忘れずに。

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※本記事は2026年10月時点の法令と国土交通省・軽自動車検査協会の公式案内をもとにした一般的な解説です。必要書類は車の状況や申請の方法で変わることがあります。手続きの前に、管轄の運輸支局等・軽自動車検査協会にご確認ください。相続税の評価や相続放棄の判断は、税務署や専門家にご相談ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
国土交通省「自動車登録業務等実施要領」(3-2 相続によるもの)https://www.jidoushatouroku-portal.mlit.go.jp/assets/pdf/trk-jisshiyouryou.pdf
国土交通省 自動車検査登録総合ポータルサイト「遺産分割協議成立申立書」https://www.jidoushatouroku-portal.mlit.go.jp/assets/pdf/isanbunkatsumoushitate.pdf
国土交通省 自動車検査登録総合ポータルサイト「登録手続概要」https://www.jidoushatouroku-portal.mlit.go.jp/jidousha/kensatoroku/about/register/index.html
軽自動車検査協会「名義変更(売買・譲渡・その他)」https://www.keikenkyo.or.jp/procedures/change_name.html
e-Gov法令検索「道路運送車両法」第13条 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000185
e-Gov法令検索「民法」第921条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
国税庁「財産評価基本通達 第6章 動産 第1節 一般動産」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/06/01.htm

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