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親が亡くなって数か月後、税務署から相続税に関する「お尋ね」の書類が届いた——「税金を払えということ?」「無視したらどうなる?」と不安になる方は少なくありません。結論から言うと、お尋ねが届いても、相続税がかかると決まったわけではありません。税務署が、相続税の申告が必要な相続かどうかを確認するために送る書類です。まずは亡くなった方の財産と債務を整理し、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)と比べて申告の要否を判断します。この記事では、お尋ねが届く理由、対応の手順、放置した場合のリスクを、国税庁の資料と条文をもとに整理します。
相続税の「お尋ね」とは|なぜ税務署から届くのか
相続税法58条は、市区町村長が死亡届を受理したとき、亡くなった方が持っていた土地・家屋の固定資産課税台帳の登録事項などを、翌月末日までに所轄の税務署長に通知すると定めています。法務大臣から国税庁長官への通知の定めもあります。税務署はこうした情報をもとに、相続税の申告が必要になりそうな相続を把握し、申告の要否を確認するための書類を送ることがあります。
書類の名称や様式は一律ではありませんが、「相続税についてのお尋ね」や、財産の概要を記入して申告の要否を確かめる「申告要否検討表」といった形で届くことが多いようです。いずれも、届いた時点では「確認のお願い」の段階です。
| 種類 | 性格 | 届いたときの考え方 |
|---|---|---|
| お尋ね・申告要否の確認書類 | 申告が必要かどうかの確認 | 財産を整理し、要否を判断して対応する |
| 税務調査の事前通知 | 申告内容などを確認する調査 | 日時の調整などをして調査に対応する |
| 相続税の申告 | 基礎控除を超える場合の法律上の手続き | お尋ねの有無にかかわらず、期限までに提出が必要 |
お尋ねが届いたらやること|3つのステップ
ステップ1:書類の内容と回答期限を確認する
同封の案内で、何を記入して返送するのか、回答の期限、問い合わせ先を確認します。相続人が複数いる場合は、誰に届いたのかを共有し、記入を担当する人を決めておくと進めやすくなります。
ステップ2:財産と債務を洗い出す
国税庁 No.4102 によると、相続税がかかるかどうかは「正味の遺産額」が基礎控除額を超えるかで判断します。正味の遺産額は、次のように計算します。
| 区分 | 主なもの |
|---|---|
| 足す | 預貯金・不動産・有価証券などの遺産、相続時精算課税を選んだ贈与財産、生命保険金・死亡退職金のうち非課税枠を超える部分 |
| 引く | 借入金などの債務、葬式費用 |
| 足す | 加算対象期間内の暦年贈与(相続開始日が令和8年12月31日以前なら相続開始前3年以内) |
見落としやすいのは、ネット銀行・証券の口座、家族名義でも実質は亡くなった方のお金だった預金(名義預金)、生前の贈与です。通帳、郵便物、固定資産税の課税明細書、保険証券などを手がかりに集めましょう。
ステップ3:基礎控除と比べて申告の要否を判断する
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です(法定相続人に含める養子の数には上限があります)。たとえば法定相続人が3人なら4,800万円が目安です。国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」では、画面の案内に沿って入力すると申告が必要かどうかの目安を確認できます。詳しい数え方は相続税の基礎控除で解説しています。
申告が不要なとき・必要なときの対応
正味の遺産額が基礎控除以下なら
相続税の申告も納税も必要ありません(国税庁 No.4205)。お尋ねには、財産の概要を記入して回答するのが一般的です。記入の根拠にした資料(残高証明書、評価の計算メモなど)は、控えと一緒に保管しておきましょう。
基礎控除を超えるなら
相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に、亡くなった方の住所地を所轄する税務署へ申告し、同じ期限までに納めます。お尋ねへの回答は、申告書の提出の代わりにはなりません。申告書の作成を自分で進めるか、税理士に依頼するかも早めに決めましょう(相続税を自分で申告する方法)。
放置したり期限を過ぎたりするとどうなる?
申告が必要なのに期限までに提出しないと、本来の税金に加えて無申告加算税と延滞税がかかることがあります(国税通則法66条、国税庁 No.9205)。
| ペナルティ | 内容(一般的な扱い) |
|---|---|
| 無申告加算税 | 原則15%。納付すべき税額のうち50万円を超える部分は20%、300万円を超える部分は30% |
| 自主的な期限後申告の場合 | 税務調査の通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば5% |
| 延滞税 | 法定納期限の翌日から納付の日までの日数に応じてかかる。令和8年中は年2.8%(2か月経過後は年9.1%) |
| 重加算税 | 財産を隠したり事実を偽ったりしていた場合に課される |
お尋ねを放置しても申告の義務が消えるわけではなく、申告が必要な相続であれば、後から調査で指摘されて負担が大きくなるおそれがあります。期限の数え方と遅れた場合の扱いは相続税の申告期限も参考にしてください。
回答を書くときのポイント
- 分かる範囲で正確に書く:概算で記入した部分は、概算であることが分かるようにしておく
- 生命保険金や死亡退職金も忘れずに:非課税枠があっても、受け取った事実と金額は把握しておく
- 記入した内容と資料の控えを残す:後で申告や問い合わせが必要になったときに役立つ
- 迷う財産は税務署や税理士に確認する:土地の評価や名義預金の判断は専門的になりやすい
よくある質問
お尋ねが届いたということは、税務署は相続税がかかると考えているのですか?
必ずしもそうではありません。税務署は死亡届や固定資産の情報などをもとに確認の書類を送りますが、送られた相続のすべてで相続税がかかるわけではありません。財産を整理して、基礎控除と比べて判断しましょう。
回答期限までに財産の全体が分かりません。
書類に記載の問い合わせ先に連絡し、状況を伝えて相談しましょう。相続税の申告が必要な場合の期限(10か月)は、お尋ねの回答期限とは別に決まっています。
相続税がかからないのに、回答する必要はありますか?
申告が不要でも、税務署が要否を確認できるよう回答するのが一般的です。回答しておくことで、後日の問い合わせに備えて事実関係を整理しておくことにもなります。
税理士に相談したほうがよいのはどんな場合ですか?
基礎控除をわずかに超える・下回る、土地や非上場株式がある、名義預金や生前贈与がある、といった場合は判断が分かれやすいため、相談を検討するとよいでしょう。
まとめ:お尋ねは「申告が必要か確かめる」きっかけ
相続税のお尋ねは、税務署が申告の要否を確認するために送る書類で、届いただけで相続税がかかるわけではありません。財産と債務を洗い出し、特例を適用する前の金額で基礎控除と比べて判断します。基礎控除以下なら回答して資料を保管し、超えるなら10か月以内に申告・納付します。放置すると、申告が必要な場合に無申告加算税や延滞税の負担が増えるおそれがあります。落ち着いて対応するためにも、日ごろから財産の在り処を家族で共有しておくことが大切です。
※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁の公表資料をもとにした一般的な解説です。税務署から届く書類の名称・内容・回答方法は、税務署や時期によって異なることがあります。申告の要否や税額の判断は、書類に記載の税務署や税理士にご確認ください。
国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm
国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」https://www.keisan.nta.go.jp/sozoku/yohihantei/top
国税庁「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」問2 https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm
国税庁「No.9205 延滞税について」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
e-Gov法令検索「相続税法」第58条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
e-Gov法令検索「国税通則法」第66条 https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066






