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「銀行に連絡したら口座が止まって、葬儀代を払えない」——相続でよく聞く悩みです。結論から言うと、亡くなった方の口座は金融機関が亡くなったことを知った時点で取引が止まり(凍結)、遺言書や遺産分割協議書などの書類をそろえて相続の手続きをすると、払戻しや名義変更を受けられます。急ぎの支払いがあるときは、遺産分割の前でも1つの金融機関につき150万円を上限に、相続人が単独で引き出せる払戻し制度があります。この記事では、口座凍結の仕組み、手続きの流れ、ケース別の必要書類、払戻し制度の計算と注意点を整理します。
亡くなった人の銀行口座が凍結される仕組み
凍結のタイミング
金融機関は、口座の名義人が亡くなったことを知ると、相続財産を守るために入出金を止めます。きっかけの多くは、遺族からの連絡です。凍結のあとは、遺産分割が終わるまで、相続人が単独で払戻しを受けられないことがあります。
凍結されると止まるもの
- ATMや窓口での引き出し・振込
- 公共料金・携帯電話・クレジットカードなどの口座引き落とし
引き落としが止まると、料金の未払いにつながります。電気・ガス・水道・通信などは、早めに支払い方法の変更や解約を進めておきます(公共料金・携帯などの解約・名義変更)。
預貯金の相続手続きの流れ
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ①金融機関へ連絡 | 名義人が亡くなったことを伝え、手続きの案内と所定の相続届を受け取る |
| ②残高などの確認 | 口座の有無や残高を確認する。相続税の申告に備えて、亡くなった日時点の残高証明書を依頼することもある |
| ③分け方を決める | 遺言書の内容を確認する。遺言がなければ相続人全員で遺産分割協議をする |
| ④書類の提出 | 相続届に、遺言書・協議書・戸籍・印鑑証明書などを添えて提出する |
| ⑤払戻し・名義変更 | 金融機関の確認後、指定口座への払戻しや名義変更が行われる |
手続きは金融機関ごとに行います。口座が複数の銀行にあれば、そのぶん書類の提出も増えます。どこに口座があるか分からないときは、通帳・キャッシュカード・郵便物のほか、生前にマイナンバーと口座をひも付けておく制度もあります(預貯金口座付番制度とは)。ネット銀行は通帳がなく見落としやすいので注意が必要です。
預貯金の相続手続きに必要な書類(ケース別)
全国銀行協会が示している一般的な必要書類は、次のとおりです。実際の書類は金融機関によって異なるため、事前に確認してください。
遺言書がある場合
- 遺言書
- 検認調書または検認済証明書(公正証書遺言、法務局で保管されていた遺言書は不要)
- 亡くなった方の戸籍謄本など(亡くなったことが確認できるもの)
- その預金を相続する人(または遺言執行者)の印鑑証明書
- 家庭裁判所が遺言執行者を選んだ場合は、その審判書謄本
遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合
- 遺産分割協議書(相続人全員が署名・押印したもの)
- 亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本など
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
遺言書も遺産分割協議書もない場合
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本など、相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書が必要です。金融機関所定の書類に、相続人全員が署名・押印する形が一般的です。家庭裁判所の調停や審判で分け方が決まった場合は、調停調書または審判書の謄本と、預金を相続する人の印鑑証明書を使います。
遺産分割前の相続預金の払戻し制度
葬儀費用や当面の生活費のために、遺産分割の前でも預金を引き出せるよう、2019年7月1日から払戻し制度が始まりました(民法909条の2)。家庭裁判所を通さない方法と、通す方法の2つがあります。
家庭裁判所を通さずに払い戻す方法
各相続人は、口座ごと(定期預金は明細ごと)に、次の計算式で出した額まで、金融機関の窓口で単独で払戻しを受けられます。
単独で払い戻せる額=相続開始時の預金額×3分の1×その相続人の法定相続分
ただし、同じ金融機関(複数の支店がある場合は全支店の合計)からの払戻しは150万円が上限です。
| 例(相続人は長男・次男の2人) | 長男が単独で払い戻せる額の目安 |
|---|---|
| A銀行の普通預金600万円 | 600万円×1/3×1/2=100万円 |
| B銀行の普通預金1,500万円 | 1,500万円×1/3×1/2=250万円→上限の150万円 |
必要な書類は、本人確認書類に加えて、おおむね「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本など」「相続人全員の戸籍謄本」「払戻しを希望する人の印鑑証明書」です。法定相続分の計算は法定相続人とはで確認できます。
家庭裁判所の判断で払い戻す方法
遺産分割の調停や審判を家庭裁判所に申し立てている場合は、家庭裁判所に申し立てて認められれば、預金の全部または一部を仮に取得して払い戻せます。生活費の支払いなどで必要性が認められ、ほかの相続人の利益を害しない場合に限られます。この場合は、審判書謄本と印鑑証明書などが必要です。
手続きをスムーズに進めるコツ
- 連絡の前に引き落とし先を確認する:凍結で止まる支払いを把握し、変更の段取りを付けてから連絡すると混乱が少なくなります
- 戸籍は早めにまとめて取る:配偶者や子は、最寄りの市区町村窓口で遠方の戸籍もまとめて請求できます(広域交付)
- ネット銀行・証券も忘れずに:メールやアプリでのやり取りが中心で、家族が存在に気づきにくい口座です(ネット銀行・ネット証券の相続)
- ご本人のIDでログインしない:口座を調べるために亡くなった方のIDやパスワードでログインするのは避け、各社の相続窓口に相続人として問い合わせます
よくある質問
Q. 銀行には、いつまでに連絡しなければいけませんか?
連絡の期限は決まっていません。ただし、相続税の申告や遺産分割には残高の把握が必要です。引き落とし先の変更など準備を整えたうえで、早めに連絡するのが一般的です。
Q. 凍結を解除するまでどれくらいかかりますか?
書類がそろってから払戻しまでの期間は金融機関によって異なり、確認のために一定の時間がかかります。遺産分割がまとまらないと手続き自体が進まないため、早めの話し合いが近道です。
Q. 葬儀費用を立て替えた場合はどうなりますか?
立て替えた費用を誰がどう負担するかは、相続人の話し合いで決めるのが一般的です。払戻し制度で引き出して充てることもできます。領収書は必ず保管しておきましょう。
まとめ
亡くなった人の銀行口座は、金融機関が亡くなったことを知った時点で凍結され、遺言書や遺産分割協議書、戸籍、印鑑証明書をそろえて相続手続きをすると、払戻しや名義変更を受けられます。急ぎの支払いには、相続開始時の預金額×3分の1×法定相続分(1金融機関150万円まで)の払戻し制度が使えます。いちばんの備えは、元気なうちに「どの銀行に口座があるか」を家族で共有しておくことです。
※本記事は2026年10月時点の法令と公表情報にもとづく一般的な解説です。必要書類や払戻しの可否・手順は金融機関や個別の事情で異なります。詳細はお取引の金融機関に、法的な判断は専門家にご確認ください。
全国銀行協会「預金相続の手続に必要な書類」https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-f/7705/
全国銀行協会「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(リーフレット)https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/article/F/7705_heritage_leaf.pdf
e-Gov法令検索「民法」第900条・第909条の2・第921条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
法務局「法定相続情報証明制度について」https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000013.html
法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html
裁判所「遺言書の検認」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html






