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親が亡くなった、あるいは施設に入って、実家に誰も住まなくなった——「実家じまい」は、多くの家族がいつか向き合う課題です。結論から言うと、実家じまいは①方針を決める→②名義と権利を確認する→③家財を片付ける→④売却・活用・解体を進める→⑤税金・届出を済ませるの順で考えると迷いにくくなります。特に、親が存命か亡くなっているか、相続放棄を考えているかで、やってよいことが変わる点に注意が必要です。この記事では、実家じまいの段取りと落とし穴を、法務省・国税庁などの公的情報をもとに整理します。
実家じまいの流れ:5つのステップ
| ステップ | やること | 注意点 |
|---|---|---|
| ①方針を決める | 売る・貸す・誰かが住む・解体する・手放すを家族で話し合う | 相続人が複数なら全員の合意が必要 |
| ②名義と権利の確認 | 登記簿で名義人を確認。亡くなっていれば相続登記 | 相続登記は義務。期限は原則3年 |
| ③家財の片付け | 貴重品・重要書類を探し、残す物と手放す物を分ける | 相続放棄を考えているなら処分は慎重に |
| ④売却・活用・解体 | 方針に沿って不動産会社への相談、解体の見積もりなど | 解体すると使えなくなる特例・制度がある |
| ⑤税金・届出 | 売却益があれば確定申告、固定資産税の名義など | 空き家の3,000万円控除には期限と要件がある |
相続した空き家を持ち続けるリスクや、5つの選択肢それぞれの特徴は相続した実家(空き家)はどうする?で詳しく解説しています。この記事では、実際に「じまう」までの段取りに焦点を当てます。
①方針を決める:最初に家族で話し合うこと
片付けを始める前に、実家を最終的にどうするかの見通しを立てます。方針が決まっていないと、何を残し何を処分するかも決められません。
- 誰の名義か:親の単独名義か、共有か。親が亡くなっているなら相続人は誰か
- 家をどうするか:売る、貸す、家族が住む、解体して土地を売る、手放す
- 費用を誰が出すか:片付け・解体・登記の費用、売れるまでの固定資産税や管理費
- 窓口を誰がするか:近くに住む人に負担が偏らないよう分担を決める
- いつまでに:相続税の申告や特例の期限があれば、そこから逆算する
相続人が複数いる場合、亡くなった方の財産は遺産分割が終わるまで相続人全員の共有になります(民法898条)。家を売るにも解体するにも、原則として全員の合意が必要です。共有名義のまま持ち続けると、将来さらに相続が重なって話し合いが難しくなることもあるため、誰が相続するかも含めて話し合いましょう。
親が存命のうちに実家じまいをするとき
親が施設に入り、実家が空き家になったときも実家じまいを考える時期です。このとき、家の持ち主はあくまで親です。売却などの契約は、親本人が自分の意思で行う必要があります。
親が存命のうちに家財を整理する場合も、親の物を処分するかどうかは親が決めるのが原則です。子は運び出しや手配を手伝う立場で進めるとトラブルになりにくくなります。
②名義の確認と相続登記
親が亡くなっている場合、売却の前提として、実家の名義を相続人に移す相続登記が必要です。2024年4月から相続登記の申請は義務になっています。不動産登記法は、相続で不動産の所有権を取得した人は、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に登記を申請しなければならないと定め(76条の2)、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(164条)。
まず法務局で登記事項証明書を取り、名義人を確かめましょう。祖父母の代から名義が変わっていないこともあります。手続きの全体像は相続登記の義務化とはで解説しています。遺産分割がまとまらず期限に間に合いそうにないときは、相続人申告登記という方法もあります。
③家財の片付け:貴重品探しと処分の順番
最初は「探す」作業から
片付けの最初の目的は、捨てることではなく大切な物を見つけることです。通帳、キャッシュカード、印鑑、権利証(登記識別情報)、保険証券、年金の書類、契約書、借入れの書類、遺言書らしき封筒、現金や貴金属などを、タンスの奥・仏壇・押し入れ・郵便物の束まで確認します。見つかった物は1か所にまとめ、ほかの相続人にも共有しましょう。
処分は「自治体→許可業者」の順で検討する
家財の量が多い場合、片付け業者や不用品回収業者に頼むこともあります。国民生活センターは、家庭から出る廃棄物の収集・運搬には市区町村の一般廃棄物処理業の許可または委託が必要であり、無許可業者との間で「安い定額パックのはずが作業後に高額請求された」といったトラブルが目立つと注意を呼びかけています。市区町村の窓口や許可業者を確認し、複数社から書面で見積もりを取りましょう。モノの減らし方や家電4品目の処分方法は生前整理でモノを減らすコツを参考にしてください。
仏壇や位牌は、ほかの家財と同じようには扱いにくいものです。親族や菩提寺と相談しながら進めましょう。
④売却・活用・解体を進める
| 方針 | 主な進め方 | 考えておきたいこと |
|---|---|---|
| 売る | 相続登記の後、不動産会社に査定を依頼して売り出す | 家財を残したまま売るか、空にしてから売るか |
| 貸す | 修繕して賃貸に出す | 修繕費と家賃収入のバランス、管理の手間 |
| 解体して土地を売る | 解体業者の見積もりを比べてから | 住宅がなくなると、固定資産税の住宅用地の特例が使えなくなる |
| 手放す | 相続土地国庫帰属制度など | 建物があると使えない、要件・負担金がある |
売却の流れは相続した家を売る流れで解説しています。
すぐに方針が決まらず空き家のまま持つ場合は、定期的な換気や見回りなどの管理が必要です。国土交通省によると、空家等対策特別措置法は2023年12月13日施行の改正で、管理不全の空き家への対応が強化されています。地方税法は、管理不全空家・特定空家として市区町村から勧告を受けた家の敷地を、固定資産税の住宅用地の特例(課税標準を6分の1または3分の1にする軽減)の対象から外しています(349条の3の2)。空き家のまま持つ場合の管理の仕方は、冒頭で紹介した空き家の記事も参考にしてください。
⑤税金:空き家の3,000万円控除は期限に注意
相続した実家を売って利益(譲渡所得)が出ると、所得税・住民税がかかります。国税庁によると、相続した被相続人の居住用家屋やその敷地を2027年(令和9年)12月31日までに売り、一定の要件に当てはまれば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。主な要件は次のとおりです。
- 家屋が1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられたこと
- 相続の時から売るまで、事業・貸付け・居住に使っていないこと
- 売るときに一定の耐震基準を満たすか、家屋を取り壊すこと(売った年の翌年2月15日までに耐震改修や取壊しを行う場合も、2024年1月1日以後の譲渡なら対象)
- 相続人が3人以上の場合、2024年1月1日以後の譲渡では控除の上限が2,000万円になる
このほかにも要件があり、適用を受けるには確定申告が必要です。貸し出したり、誰かが住んだりすると使えなくなる点にも注意しましょう。税金の計算や特例の判断は、税務署や税理士に確認してください(相続した不動産の売却と税金)。
よくある質問
実家じまいは、親が亡くなってからどのくらいで始めればいいですか?
決まった時期はありませんが、相続放棄の判断(3か月)、相続税の申告(10か月)、相続登記(原則3年)などの期限があります。片付けを急ぐより、まず財産と借金の有無を確認し、方針を決めてから本格的に始めるのが安全です。
遠方に住んでいて、実家に何度も通えません。
帰省の回数が限られるなら、1回目は貴重品と書類の捜索、2回目以降に家財の処分と、目的を分けて進めましょう。登記や売却の手続きは郵送やオンラインで進められる部分もあります。近くに住む親族とは、費用や手間の分担を早めに話し合っておくと安心です。
家財を残したまま売ることはできますか?
買い手や不動産会社との条件しだいで、家財が残った状態での売却を相談できる場合もあります。ただし、処分費用の分だけ価格に影響することがあります。複数の不動産会社に相談し、条件を比べて判断しましょう。
まとめ:方針を先に、処分は最後に
実家じまいは、方針を家族で決め、名義を確認し、貴重品を探してから家財を片付け、売却・活用・解体へ進むのが基本の流れです。親が存命なら売却は親本人の意思が前提で、判断能力が落ちると成年後見と家庭裁判所の許可が必要になります。相続放棄を考えているなら家財の処分は慎重に。相続登記は原則3年以内の義務で、空き家の3,000万円控除は2027年12月31日までの譲渡が対象です。期限を確認しながら、家族で無理のない計画を立てましょう。
※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関の情報をもとにした一般的な解説です。特定の不動産会社・片付け業者を推奨するものではありません。登記・相続放棄・税金の判断は個別の事情で異なります。法務局・家庭裁判所・税務署や、司法書士・税理士などの専門家にご確認ください。
法務省「不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00435.html
e-Gov法令検索「不動産登記法」第76条の2・第164条 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
e-Gov法令検索「民法」第3条の2・第859条の3・第898条・第915条・第921条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
e-Gov法令検索「地方税法」第349条の3の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
e-Gov法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」第2条 https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000025
国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
国民生活センター「不用品回収サービスのトラブル-市区町村から一般廃棄物処理業の許可を受けず、違法に回収を行う事業者に注意!-」https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20221102_1.html






