本ページはプロモーションを含みます
「きょうだいと遺産の分け方で話がかみ合わない」「親の預金が生前に引き出されていたようだ」。相続の話し合いがこじれかけたとき、弁護士に頼むべきか迷う方は少なくありません。結論から言うと、弁護士が必要になるのは、相続人の代理人として相手と交渉したり、家庭裁判所の調停・審判や訴訟で主張したりしてほしいときです。これは法律で弁護士の仕事と決まっており、税理士や司法書士には頼めません。反対に、争いがなく手続きだけが必要なら、弁護士でなくても進められます。この記事では、弁護士に頼むべき場面、弁護士以外で足りる場面、期限から考える相談時期、費用の決まり方を、法令と公的機関の案内をもとに整理します。
相続で弁護士に頼むべき6つのケース
次のような場面では、弁護士への相談を考える時期です。共通するのは、相手のある話で、自分の主張を法的に組み立てて伝える必要があるという点です。
| ケース | 弁護士が担うこと(一般的な例) |
|---|---|
| 遺産分割の話し合いがまとまらない | 代理人として他の相続人と交渉。まとまらなければ遺産分割調停・審判の代理 |
| 生前の預金の引き出し(使い込み)が疑われる | 取引履歴などの資料の整理、相手への説明の求め、返還を求める交渉や訴訟 |
| 遺言の内容で取り分が極端に少ない | 遺留分侵害額請求の通知、交渉、調停・訴訟 |
| 遺言書が本物か、書いた時の判断能力に疑問がある | 遺言の効力を争うかどうかの検討と、その手続きの代理 |
| 相手方がすでに弁護士を立てている | 法的な主張に対等に対応する |
| 相続人どうしが直接話せないほど関係が悪い | 窓口を弁護士に一本化し、感情的な衝突を避ける |
使い込みが疑われるときの確認の進め方は相続の預金使い込み、遺留分のしくみは遺留分とはで詳しく解説しています。
弁護士にしかできないこと:弁護士法72条
弁護士法72条は、弁護士でない人が、報酬を得る目的で、法律事件について代理や和解などの法律事務を取り扱うこと、またその周旋(あっせん)をすることを業とすることを禁じています。相続人の一人の立場に立って他の相続人と交渉することは、この「代理」にあたります。そのため、相続人どうしの交渉や、裁判所での代理を業として引き受けられるのは、原則として弁護士だけです。
代理人としての交渉
弁護士に依頼すると、相手方とのやりとりは弁護士が窓口になります。主張の根拠となる資料(戸籍、財産の資料、通帳の履歴など)を整理し、法的に通る主張かどうかを見極めたうえで伝えるため、話し合いが感情論から論点の整理へと移りやすくなります。
遺産分割調停・審判の代理
相続人の間で話し合いがつかない場合、家庭裁判所の遺産分割調停を利用できます。裁判所の案内によると、申立先は相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で定める家庭裁判所で、費用は被相続人1人につき収入印紙1,200円分と郵便切手です。調停が成立しなければ自動的に審判に移り、裁判官が一切の事情を考えて判断します。調停は本人だけでも申し立てられますが、主張の組み立てや書面の準備を任せたいときに弁護士が代理人になります。流れは遺産分割の調停・審判で整理しています。
訴訟
使い込まれたお金の返還や遺言の効力など、遺産分割とは別の争いは、地方裁判所などでの訴訟で決着をつけることがあります。訴訟の代理も弁護士の業務です。
弁護士以外で足りるケース
相続人の間に争いがなく、決まったことを手続きに落とし込むだけなら、弁護士に頼む必要はないことが多いです。
| やりたいこと | 主な相談先 |
|---|---|
| 不動産の名義変更(相続登記) | 司法書士(自分で申請も可) |
| 相続税の申告 | 税理士 |
| 争いのない遺産分割協議書などの作成 | 行政書士・司法書士 |
| 相続放棄の申述書の作成 | 司法書士(自分で申述も可) |
「争いがあるか、これから生じそうか」が分かれ目です。どの専門家に何を頼めるかの全体像は相続の専門家の選び方にまとめています。
相談のタイミングは「期限」と「関係の悪化」で考える
相続には、過ぎると選べなくなる期限があります。争いの気配があるなら、期限に余裕のあるうちに一度相談しておくと、選べる方法が多く残ります。
| 手続き | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内 | 民法915条 |
| 遺留分侵害額請求 | 相続の開始と、遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から1年(相続開始から10年でも消滅) | 民法1048条 |
| 相続税の申告 | 亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内 | 国税庁の案内 |
借金が多く放棄を考えている場合は相続放棄の手続きも確認してください。期限のほかに目安になるのは、相手と冷静に話せなくなってきたと感じたときです。対立が深まる前に第三者が入るほうが、解決の選択肢を広く保ちやすくなります。依頼まで決めていなくても、状況を聞いてもらい、見通しを確認するだけの相談もできます。
弁護士費用の決まり方
日本弁護士連合会は、弁護士の費用は個々の弁護士がその基準を定めることになっており、標準小売価格のようなものはないと説明しています。つまり、同じような相続の争いでも、事務所によって金額が違うのが前提です。費用の種類として、同会は次のものを挙げています。
| 費用の種類 | 内容 |
|---|---|
| 法律相談料 | 相談に対して支払う費用 |
| 着手金 | 依頼したときに支払う。結果にかかわらず返還されない |
| 報酬金 | 事件が成功したときに、成功の度合いに応じて支払う |
| 手数料 | 当事者間に実質的な争いのない事務手続きなどの費用 |
| 日当・実費 | 出張の日当、裁判所に納める費用、交通費など |
費用が心配なときは法テラスの民事法律扶助
経済的な余裕がない方向けに、法テラス(日本司法支援センター)が民事法律扶助として、弁護士・司法書士による無料の法律相談と、費用の立替えを行っています。利用には審査があり、法テラスの案内では次の3つが条件です。
- 収入・資産が一定の基準以下であること(単身の場合の目安は、月収18万2,000円以下、東京都特別区・大阪市などの地域は20万200円以下。資産は180万円以下。家族の人数や家賃の負担で基準が変わります)
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと
- 民事法律扶助の趣旨に適すること(報復目的や権利の濫用にあたる場合は対象外)
無料法律相談は1回30分、同じ問題について3回までです。立て替えてもらった費用は、利息なしで分割して返済します。無料で使えるほかの窓口は相続の無料相談窓口で紹介しています。
よくある質問
相続人の全員がそれぞれ弁護士を立てる必要がありますか?
いいえ。依頼するかどうかは各相続人が決めることです。ただし、弁護士法25条は、相手方から相談を受けて賛助したり、相手方の依頼を引き受けたりした事件について、弁護士が職務を行うことを禁じています。そのため、意見の対立する相続人どうしが同じ弁護士に依頼することは基本的にできず、それぞれ別の弁護士に相談することになります。
調停は弁護士なしでもできますか?
できます。遺産分割調停は本人が申し立て、出席することができます。書類の準備や主張の整理に不安があるときや、相手方に弁護士がついているときは、弁護士への依頼を検討するとよいでしょう。
弁護士に相談すると、必ず裁判になりますか?
なりません。多くは交渉から始まり、話し合いでまとまれば遺産分割協議書を作って終わります。調停や訴訟は、交渉で解決できないときの手段です。
相談の前に何を用意すればよいですか?
相続人の顔ぶれ、分かっている財産の一覧、遺言書の有無、これまでのやりとりの経緯をメモにしておくと、短い時間でも見通しを聞きやすくなります。詳しくは相続の相談の準備を参考にしてください。
まとめ
相続で弁護士に頼むべきなのは、相続人どうしの交渉や、調停・審判・訴訟で代理人が必要なときです。これは弁護士法72条で弁護士の仕事とされており、登記は司法書士、申告は税理士と役割が分かれます。争いの気配があるなら、相続放棄の3か月や遺留分の1年といった期限に余裕があるうちに相談しておくと安心です。費用は事務所ごとに自由に決められているため、計算方法と総額の見通しを書面で確認しましょう。費用が心配なときは、法テラスの要件にあてはまるかも確かめてみてください。
※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関・団体の公式案内をもとにした一般的な解説です。弁護士に依頼すべきか、どのような主張ができるか、費用がいくらかは個別の事情で異なります。具体的な判断は弁護士や公的な相談窓口にご確認ください。ゆいのわは法律相談や弁護士の紹介は行っていません。
e-Gov法令検索「弁護士法」第3条・第25条・第72条 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205
e-Gov法令検索「司法書士法」第3条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000197
e-Gov法令検索「民法」第915条・第1048条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
裁判所「遺産分割調停」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html
日本弁護士連合会「弁護士費用(報酬)とは」https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/cost/legal_aid/
日本弁護士連合会「弁護士費用(報酬)」https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/cost/legal_aid.html
法テラス「費用の立替制度のご利用の流れ」https://www.houterasu.or.jp/site/soudan-tatekae/goriyou.html
法テラス「無料法律相談の予約」https://www.houterasu.or.jp/site/soudan-tatekae/houterasuhouritusoudanyoyaku.html
国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm






