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「親の財産を調べ始めたけれど、どこまでが相続の対象なのか分からない」——相続財産というと預貯金や家を思い浮かべがちですが、実際にはもっと幅広いものが含まれます。結論から言うと、相続では亡くなった方の財産に属した一切の権利と義務を引き継ぐため、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も対象です。さらに、相続税の計算では、死亡保険金などのみなし相続財産も加わります。一方で、お墓や仏壇、遺族年金のように相続財産にならないものもあります。この記事では、相続財産の種類を一覧で整理し、見落としやすいものと調べ方まで解説します。
相続財産とは:引き継ぐのは「権利と義務」のすべて
民法は、相続人は相続が始まった時から、亡くなった方の財産に属した一切の権利義務を引き継ぐと定めています(民法896条)。ただし、その人だけに認められた権利義務(一身専属のもの)は引き継ぎません。
相続財産を考えるときは、次の3つの場面で範囲が少しずつ違うことを押さえておくと混乱しません。
| 財産の例 | 民法上の相続財産 | 遺産分割の話し合い | 相続税の計算 |
|---|---|---|---|
| 預貯金・不動産・株式 | 含まれる | 対象 | 対象 |
| 借入金などの債務 | 含まれる | 話し合いで負担者を決めても、債権者は法定相続分に応じて各相続人に請求できる(民法902条の2) | 差し引ける(債務控除) |
| 受取人が指定された死亡保険金 | 一般に受取人固有の財産 | 原則として対象外 | みなし相続財産として対象(非課税枠あり) |
| お墓・仏壇などの祭祀財産 | 別のルールで承継 | 対象外 | 原則非課税 |
プラスの財産の種類一覧
国税庁は、相続税がかかる財産を「現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」と説明しています。主な種類は次のとおりです。
| 種類 | 主な例 |
|---|---|
| 現金・預貯金 | 手元の現金、銀行・ゆうちょ・信用金庫・ネット銀行の口座 |
| 不動産と不動産の権利 | 土地、建物、マンション、借地権 |
| 有価証券など | 株式、投資信託、国債・社債 |
| 動産 | 自動車、貴金属・宝石、美術品・骨とう品、家財 |
| 債権 | 貸付金、未収の家賃や報酬、税金の還付金 |
| 知的財産権など | 特許権、著作権 |
| その他 | ゴルフ会員権、暗号資産、事業用の資産 |
株式や投資信託は、相続手続きで相続人の口座へ移す必要があります。ゴルフ会員権や貸付金、税金の還付金のように、通帳に表れない財産は見落とされがちです。
マイナスの財産の種類一覧
| 種類 | 主な例 |
|---|---|
| 借入金 | 住宅ローン、カードローン、事業の借入れ、個人からの借金 |
| 未払金 | 入院費・医療費、クレジットカードの利用残高、家賃、公共料金 |
| 未払いの税金 | 住民税、固定資産税、準確定申告で納める所得税 |
| 保証債務 | 連帯保証人としての責任 |
住宅ローンは、団体信用生命保険に入っていれば保険金で完済される場合があります。保証債務は、本人も家族も把握していないことが多く、後から請求が来て初めて分かることがあります。借金の調べ方は借金・ローンの相続を参考にしてください。
相続税の計算では、亡くなった時点で確実にあった借入金や未払金を、遺産の総額から差し引けます。葬式費用は債務ではありませんが、同じように差し引けます。ただし、生前に買ったお墓の未払い代金など、非課税財産に関する債務は差し引けません。
みなし相続財産と、相続税で加算される財産
民法上は相続財産ではなくても、相続税の計算では対象になるものがあります。代表的なのがみなし相続財産です。
死亡保険金・死亡退職金
亡くなった方が保険料を負担していた生命保険の死亡保険金や、勤務先から遺族に支払われる死亡退職金は、相続税の対象です。それぞれ「500万円×法定相続人の数」までは非課税になります。保険金と遺産分割の関係は保険金は相続財産?で解説しています。
生前に贈与された財産
相続や遺贈で財産を受け取った人が、亡くなった方から生前に暦年課税の贈与を受けていた場合、一定期間内の贈与は相続税の計算に加算されます。2024年1月1日以後の贈与から、加算の対象期間が3年から7年へ段階的に延びています。
| 亡くなった日 | 加算の対象になる贈与 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 亡くなる前3年以内 |
| 2027年1月1日〜2030年12月31日 | 2024年1月1日から亡くなった日まで |
| 2031年1月1日以降 | 亡くなる前7年以内 |
相続時精算課税を選んで受けた贈与も、相続税の計算に加えます(2024年以降の贈与は年110万円の基礎控除部分を除く)。詳しくは暦年贈与と2024年改正をご覧ください。
相続財産にならないもの
- 一身専属の権利義務:その人だけに認められた資格や地位などは引き継ぎません(民法896条ただし書)
- お墓・仏壇などの祭祀財産:系譜・祭具・墳墓は、慣習や故人の指定に従って祭祀を主宰する人が引き継ぎ、遺産分割とは別に扱われます(民法897条)。相続税も原則かかりませんが、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものには課税されます
- 受取人が指定された死亡保険金:一般に受取人固有の財産と考えられ、遺産分割の対象にはなりません(相続税ではみなし相続財産)
- 遺族年金・未支給年金:法律にもとづいて遺族が自分の権利として受け取るもので、相続人が分け合う遺産とは別です(遺族年金とは)
見落としやすい財産と、調べ方のコツ
相続財産は、相続放棄の判断・遺産分割・相続税の申告のすべての土台になります。漏れがあると、後で分割協議をやり直したり、修正申告が必要になったりすることがあります(相続財産が後から見つかったとき)。
- ネット銀行・ネット証券:通帳がなく、郵便物も届かないことがあります。メールやスマホのアプリ、取引報告書を手がかりに、各社の相続窓口へ問い合わせます
- 家族名義の預金:実質的に亡くなった方のお金とみなされると、相続税の対象になることがあります
- 自宅以外の不動産:固定資産税の納税通知書や、市区町村の名寄帳で確認します
- 暗号資産・電子マネー:取引所や発行会社に問い合わせます。ご本人のIDとパスワードでログインして調べるのは避けてください
よくある質問
Q. 葬儀費用は相続財産から差し引けますか?
相続税の計算では、葬式費用は債務ではありませんが、遺産の総額から差し引けます。差し引ける範囲には決まりがあるため、領収書を残しておきましょう。誰が負担するかは葬儀費用は誰が払う?で解説しています。
Q. 亡くなった後に振り込まれた年金は相続財産ですか?
亡くなった月の分までの年金は、未支給年金として生計を同じくしていた遺族が自分の名前で請求するもので、日本年金機構は受け取った人の一時所得にあたるとしています。
Q. 借金だけ放棄して、預金は受け取れますか?
できません。相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産もまとめて引き継がないことになります。プラスの範囲内でだけ借金を返す方法として限定承認がありますが、相続人が複数いるときは全員が共同で行う必要があります(民法923条)。
Q. 財産の一覧はどう作ればよいですか?
この記事の表の種類ごとに、金融機関名・所在地・おおよその金額・資料の保管場所を書き出していくと漏れを防げます。生前のうちに本人と一緒に作っておくのが理想です。
まとめ
相続財産には、預貯金・不動産・有価証券などのプラスの財産と、借金・未払金・保証債務などのマイナスの財産の両方が含まれます。相続税の計算では、死亡保険金や死亡退職金などのみなし相続財産や、一定期間内の生前贈与も加わります。一方、お墓などの祭祀財産、受取人が決まった保険金、遺族年金は遺産分割の対象外です。種類ごとに一覧にしておくことが、放棄の判断や申告で困らないための第一歩です。
※本記事は2026年10月時点の法令と国税庁などの公表情報にもとづく一般的な解説です。個々の財産が相続財産や課税対象になるか、どのように評価するかは個別の事情で異なります。具体的な判断は税理士・司法書士などの専門家や税務署にご確認ください。
国税庁「No.4105 相続税がかかる財産」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4105.htm
国税庁「No.4108 相続税がかからない財産」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4108.htm
国税庁「No.4126 相続財産から控除できる債務」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4126.htm
国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm
日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140731-01.html
e-Gov法令検索「民法」(896条・897条・902条の2・909条の2・915条・921条・923条)https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089






