相続の手続き

借金・ローンの相続|調べ方と信用情報の開示・放棄の判断

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「父に借金があったかもしれない。相続したら払わないといけないの?」——相続では、預金や家などのプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も引き継ぎます。結論から言うと、借金を引き継ぎたくなければ、原則として相続の開始を知った時から3か月以内に、家庭裁判所で相続放棄か限定承認をする必要があります。その判断のためには、まず借金の全体像を調べることが先決です。この記事では、借金の調べ方(信用情報機関への開示請求)、住宅ローンと団信、相続放棄・限定承認の選び方を、公式情報をもとに整理します。

借金・ローンも相続の対象になる

相続人は、亡くなった人の財産に属した一切の権利と義務を引き継ぎます(民法896条)。借金だけを避けて預金だけ受け取る、ということはできません(相続財産の種類)。

主なマイナスの財産 例
ローン 住宅ローン、自動車ローン、カードローン、教育ローン
借入金 消費者金融、事業資金の借入、知人・親族からの借金
未払い金 クレジットカードの利用残高、医療費・入院費、家賃、公共料金
税金 未納の住民税・固定資産税、亡くなった年の所得税(準確定申告分)
保証債務 他人の借金の連帯保証人になっていた場合(連帯保証人の地位の相続)

相続人どうしの負担は法定相続分が基準

借金は、各相続人が相続分に応じて引き継ぎます(民法899条)。注意したいのは、遺言や話し合いで「借金は長男が全部払う」と決めても、お金を貸した側は、法定相続分に応じて各相続人に請求できることです(民法902条の2)。貸した側がその取り決めを承認した場合は別ですが、家族の中の約束だけでは、ほかの相続人の支払い義務はなくなりません。

借金の調べ方:まず手元の資料から

借金は、本人が家族に話していないことが多い財産です。次の順に手がかりを探します。

  • 郵便物:請求書、督促状、返済予定表、「ご利用明細」など。亡くなった後に届くものも保管する
  • 通帳・口座の履歴:毎月同じ日に同じ額が引き落とされていないか。ローン会社やカード会社の名前を確認する
  • 契約書・カード類:金銭消費貸借契約書、ローンカード、クレジットカード
  • スマホ・パソコン:ローン会社からのメールやSMSの通知(ログインせず、届いている通知の範囲で確認する)
  • 家族・知人:事業の借入や、知人との貸し借りに心当たりがないか

クレジットカードの未払い残高は、カード会社への連絡で確認できます(故人のクレジットカードの解約)。

信用情報機関に開示を請求する

手がかりが少ないときに役立つのが、信用情報機関への開示請求です。ローンやクレジットの契約・返済状況は、金融機関などが加盟する信用情報機関に登録されています。亡くなった人の情報は、法定相続人などが請求できます。3つの機関に加盟する事業者が異なるため、3か所すべてに請求すると漏れを減らせます。

機関 主な加盟先 請求できる人・方法 手数料(2026年10月確認)
CIC クレジットカード会社・信販会社など(割賦販売法・貸金業法の指定信用情報機関) 法定相続人のみ。郵送 1,500円(定額小為替)または1,650円(コンビニで購入するチケット)
JICC(日本信用情報機構) 消費者金融など(貸金業法の指定信用情報機関) 法定相続人または2親等以内の血族。郵送 2,177円(コンビニで郵送開示利用券を購入)
全国銀行個人信用情報センター(KSC) 銀行など(全国銀行協会が設置) 法定相続人とその法定代理人。郵送 2,403円(開示手数料2,060円+発券手数料343円)

主な必要書類

  • 各機関の開示申込書(法定相続人用)
  • 請求する人の本人確認書類(2点など。機関ごとに条件あり)
  • 亡くなった人の死亡と、請求する人が相続人であることが分かる戸籍謄本など。法定相続情報一覧図で代えられる場合もある
  • 手数料

JICCは、書類の到着から7〜10日かかると案内しています。書類の細かな条件は変わることがあるため、申し込む前に各機関の公式サイトで確認してください。

信用情報で分からない借金もある信用情報に載るのは、加盟している事業者との取引です。知人・親族からの借金、税金の滞納、病院や家賃の未払いなどは分かりません。また全国銀行個人信用情報センターは、債務者の死亡を理由に、加盟金融機関が情報を削除することがあると案内しています。開示結果に何もなくても「借金ゼロ」とは言い切れない点に注意してください。

住宅ローンは団信で完済されることが多い

住宅ローンを組むとき、多くの場合は団体信用生命保険(団信)に加入しています。住宅金融支援機構の団信では、加入者が亡くなると残りの住宅ローンが全額弁済されると案内されています。まずは金融機関に連絡し、団信の有無と手続きを確認しましょう。

一方で、団信に入っていなかった場合や、加入から1年以内の自殺、告知書への虚偽の記載など、弁済されないケースもあります。夫婦でそれぞれローンを組んでいた場合も、残る分が出ることがあります。完済される場合・されない場合や、相続放棄との関係は団信と住宅ローンの相続で詳しく解説しています。自動車ローンやカードローンには団信のような保険が付いていないことも多いので、契約ごとに確認が必要です。

相続する・放棄する・限定承認する:3つの選択肢

借金の状況が見えてきたら、次の3つから選びます。期限はいずれも、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です(民法915条1項)。

選択肢 内容 向いている場合 手続き
単純承認 プラスもマイナスもすべて引き継ぐ 財産が借金を明らかに上回る 手続き不要(3か月が過ぎると単純承認になる)
相続放棄 初めから相続人でなかったことになる(民法939条) 借金が財産を明らかに上回る 各自が家庭裁判所に申述。収入印紙800円など
限定承認 相続した財産の範囲内でだけ借金を払う(民法922条) 借金がどれだけあるか分からない、残したい財産がある 相続人全員が共同で家庭裁判所に申述。財産目録の提出が必要。収入印紙800円など

相続放棄は一人でもできますが、自分が放棄すると次の順位の人(親や兄弟姉妹など)が相続人になります。放棄するときは、親族にもひと声かけておくと混乱を防げます(相続放棄の手続き)。限定承認は、全員の足並みをそろえる必要があり、手続き後の清算も複雑です(限定承認とは)。

財産に手をつけると放棄できなくなる3か月以内でも、相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認したものとみなされます(民法921条)。借金の返済を相続財産から済ませる、故人の預金を引き出して使う、車や家財を売るといった行動は、放棄を考えている間は控えてください。判断に迷う行為は、事前に家庭裁判所や専門家に確認しましょう。

3か月で調べきれないときは期間を延ばせる

信用情報の開示や、財産の評価に時間がかかって3か月では決められない場合は、期限内に家庭裁判所へ申し立てることで、熟慮期間を延ばしてもらえることがあります(民法915条1項ただし書)。期限が迫ったら、まず延長の申し立てを検討してください。

借金を引き継ぐ場合の注意点

  • 債権者への連絡:返済先に相続の発生を伝え、残高と今後の返済方法を確認する
  • 相続税の債務控除:亡くなった時点で確実に存在した借入金や未払い金は、相続税の計算で遺産から差し引けます(国税庁 No.4126)。団信で完済された住宅ローンは差し引けません
  • 時効が完成している借金:相続開始の時点ですでに消滅時効が完成している債務は、相続税の計算では「確実な債務」として扱われません。時効は援用しないと効果が生じないため、支払う前に専門家に相談すると安心です

よくある質問

Q. 死亡保険金を受け取ったら、相続放棄はできなくなりますか?

受取人が指定された死亡保険金は、受取人固有の財産として扱われるのが一般的で、受け取っても相続放棄はできます。ただし、相続を放棄した人は、相続税の生命保険金の非課税枠を使えません(相続放棄と生命保険金)。

Q. 親が亡くなって数か月後に督促状が届きました。もう放棄できませんか?

3か月は「相続の開始を知った時」から数えます。期限を過ぎてから借金を知った場合の扱いは、個別の事情によって判断が分かれます。いつ・どうやって借金を知ったのかが分かる資料(督促状の封筒など)を保管し、すぐに家庭裁判所や専門家に相談してください。

Q. 家族が代わりに返済しなければならない義務はありますか?

相続人でなければ、支払う義務はありません。相続放棄をした人も同様です。ただし、相続人でない家族が自分で保証人になっていた場合は、その保証人としての責任は残ります。

まとめ

借金・ローンも相続の対象で、相続人どうしで分け方を決めても、貸した側は法定相続分に応じて請求できます。まず郵便物や通帳で手がかりを探し、CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターの3か所に開示を請求すると、ローンやクレジットの把握に役立ちます。住宅ローンは団信の有無を確認しましょう。借金が多ければ相続放棄、分からなければ限定承認を、3か月以内に検討します。それまでは、財産を処分しないことが大切です。

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※本記事は2026年10月時点の法令と各機関の公式案内をもとにした一般的な解説です。信用情報の開示手続き・手数料は変わることがあるため、申し込む前に各機関にご確認ください。相続放棄・限定承認をするかどうかの判断は、個別の事情によって異なります。家庭裁判所、または弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。

参考にした公的情報・公式案内(2026年10月確認)
e-Gov法令検索「民法」第145条・第896条・第899条・第902条の2・第915条・第921条・第922条・第923条・第939条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
裁判所「相続の放棄の申述」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
裁判所「相続の限定承認の申述」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_14/index.html
CIC「郵送で開示する」https://www.cic.co.jp/mydata/mailing/index.html
日本信用情報機構(JICC)「二親等以内の血族 法定相続人等による開示」https://www.jicc.co.jp/kaiji/31
全国銀行個人信用情報センター「郵送による開示手続」https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/open/mail/
住宅金融支援機構「団体信用生命保険の債務弁済手続について」https://www.jhf.go.jp/danshin_menu/danshin/bensai.html
国税庁「No.4126 相続財産から控除できる債務」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4126.htm
国税庁「相続税法基本通達 第14条関係(14-3・14-4)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/03.htm

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